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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
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久し振りなのにメインじゃないですわ

「姉さま、ご結婚おめでとうございます」

「え、今更何ですの」

 いつも通りの休日、いつも通りダラダラと過ごす時間に、リセリアという最近会ってなかった義妹が現れた。

「貴方に義妹と呼ばれる筋合いはありません」

「いや、俺の嫁の妹なんだから筋合いはあるだろ……っていうか人の心を読むの止めろ」

「シスコンのユウキの義妹になんてなったら襲われますわね?」

「シスコンじゃねぇし、襲わねぇよ」

「シスコンじゃないは嘘ですわね」

 そう言ってジト目で睨んでくるシュエリアだが、イヤイヤ、濡れ衣だろこれ。

「あのなあ、俺はアイネだから好きなんであって、妹という肩書なら誰でもいいわけじゃないぞ?」

「でもなんだかんだ言っても、リセリアってほら、わたくしに似ているし、妹版シュエリアと考えると萌えないかしら?」

「劣化版シュエリアの間違いだろ」

「ちょっ! いくらなんでも失礼過ぎますよ?! ねえ、姉さま!」

「あー……」

「姉さま?!」

 姉に助けを求めるリセリアだが、コイツにそういうのを期待しちゃいけない。

「確かに、妹になる代わりに色々犠牲にした感出ちゃいますわね」

「色々犠牲に?! 私、姉さまにどう思われてるんですか!!」

「わたくしの下位互換」

「ひどっ?!」

 シュエリアのあまりに辛辣な評価に、若干涙目のリセリア。うん、まあ、酷い姉なのは間違いない。

 正直な話、流石に下位互換は言い過ぎだが、見た目が似ている割にシュエリアの方が明らかに綺麗(この辺は人によって好みが別れると言えなくもないレベルだけど)なのでルックスという点に関してはシュエリアに軍配が上がる。性格は……どっちもどっちな気がする。

「大丈夫ですわ、ルックスの話ですわ。そういう意味では全人型種族はわたくしの下位互換だから、大した問題でもないですわよ?」

「なんでしょう……今凄まじく失礼な発言が放たれた気がします」

「シュエリアはこういう奴だろ」

「えぇ、まあ、そうなんですけれど」

 まあでも、さっきの発言が事実でもおかしくないレベルでシュエリアは美人だし、ホントなぁ、口だけなら笑って終わるんだが、笑い飛ばせないレベルで美人なのが厄介だ。

「で、その下位互換シスターは何しに来たんですの?」

「その呼び方やめてください……まあ用事というのは特にないですけど、強いて言うなら姉さまに対して、たまにはフローレスの家族にも顔を出して欲しい。という要望が出ているからお伝えに来たという感じでしょうか」

「あっそう」

「ホントに興味なさそうですね」

「無いもの」

 そう言ってシュエリアはリセリアに眼も向けずに、俺に寄りかかってテーブルにあった菓子を手に取り、ポリポリ食べている。

「家族相手にもその辛辣さ、流石は姉さまです」

「褒められている気しないですわね」

「褒めてますよ。姉さまらしいです」

「……やっぱり褒められている気しないですわね?」

「シュエリアらしさって誉め言葉じゃないのか」

 自信過剰な性格の割に自分らしさに誇りはない様だ。

「そうだ、ユウキさん」

「ん、なんだ?」

「式では妹達が失礼しました……」

 そう言って頭を下げるリセリア。俺にこんな態度取るなんて珍しいな。

「いや別に、大したことないし、気にしなくていいぞ」

「なんかされたんですの?」

「いや、ホント大したことじゃないぞ?」

「だから、なんですの?」

「いやあ、以前会ったときに姉さまを泣かせたら殺すって脅されてたんだけど、ほら、シュエリア嬉し泣きしたじゃん?」

「してねぇですわ」

「いやこの話の流れで照れ隠しして話ややこしくするなよ……」

「じゃあ、泣いた体でいいですわ」

「素直じゃねぇな……まあ、それで、妹ちゃん達に泣かせたから殺すって迫られてたんだけど、アルゼリアさんが助けてくれてな」

「それ脅迫……大した事ありますわよ。っていうか母様も来ていたんですの?」

「お前気づいてなかったの?」

「興味ないと気づかないもんですわねぇ」

 そう言って遠い目をするシュエリア……おいおい、自分の結婚式に来てくれた親に「興味ない」とか凄まじい暴言吐くな、コイツ……。

「お前……それ本人に言うなよ?」

「わざわざ言わないですわ。めんどくさいもの」

「姉さま、私が居たのは覚えていますよね?」

「え?」

「……話しかけましたよ?」

「…………興味ないと覚えてない物ですわね」

「お前人でなしかよ……」

 いくらなんでも直接話した妹すら忘れてるとか……。

「そういうユウキはどうなんですの?」

「どうって、何が」

「ご両親は来ていたんですの? 紹介されてないですわよ?」

「呼んでないからな」

「自分の結婚式に両親呼ばない養子ってどうなんですの」

「世話にはなってるけどな……呼んでも来れないよ」

「シオンは居ましたのに」

「呼んでないのにな。でも義姉さんはアレで暇だし、なんなら段取りしたのが義姉さんなんだから居ても仕方ない」

「式に自分の義姉が居るのが『仕方ない』とか言うのも大分ロクでもないですわ?」

「ぶっちゃけ俺の親族はアイネだけでよかった」

「それこそ人でなしな気がする発言ですわね……」

 というか……正直、結城家の両親を結婚式に会わせるのはな……。

「まあ、その内紹介するよ」

「あら、会わせたくないのかと思っていたけれど?」

「そういうのではないよ。ただ日を選ぶっていうか……まあ、そんな感じだ」

「そう?」

「あぁ、で。何の話だったっけ?」

 なんかリセリアと話をしていた気がしたんだが……。

「話というのはさっきの、妹達が失礼をした、という物だけです。後は久しぶりに姉さまにお会いしたかった、それくらいですね」

「んじゃあ会ったから帰っていいですわよ?」

「姉さま私と一緒に居るのそんなに嫌ですか……?」

「一緒に居るのが嫌って言うか、ユウキと二人がいいだけですわ」

「あぁ、イチャ付きたいんですね」

「察しが良いですわね、じゃ、帰って?」

「超ゴリ押しで帰そうとするな、お前」

「正直な話、わたくしの事を未だにラヴ寄りで好きかもしれない実妹とあんまり一緒に居たくないですわ」

 そう言って露骨に嫌そうな顔をするシュエリアだが……そういえばそんな設定もあったな。

「そういやそういう子だったな」

「もちろん今でも愛していますよ」

「ほーら、ほら。コレですわよ。一緒に居たくないですわよ、普通に嫌ですわよ」

「同性愛に理解がないと」

「そうは言ってないですわ。っていうか何ならユウキと交際、結婚するまではまだいくらか平気でしたわよ? でも、流石に特定の異性と特別な関係になった後もこうだと……流石にちょっと、勘弁して欲しいですわ」

 確かに、そう言われるとそうかもしれないな。前半の結婚するまでは云々ってのは置いておくにしても、結婚してからもこれだと確かにキツイ。

「大丈夫です、略奪愛は狙ってないですから」

「当然ですわよ……」

「でもおこぼれは狙ってます」

「リセリア、そういうとこですわよ」

「だってこの男と別れたらチャンスあるじゃないですか!」

「そーいうのを本人を前にして言う神経が問題なんですわ」

「姉さまだってこういうクズみたいなこと言うじゃないですか!」

「ぐっ……悔しいけど否定できないですわね……」

「似た者姉妹で良かったな……」

 っていうかリセリアもシュエリアの事好きって言いつつ「クズみたい」とか結構ストレートな暴言吐くな。

「適当に纏めんじゃねぇですわ、似た者夫婦なんだからユウキも同じですわよ」

「俺は流石にそこまで酷いこと言った記憶……無くは無いな」

「特にシオン相手が最低ですわよねぇ」

「アレはあっちが最低だからってのもあるんだけどな……」

 と、言い訳はしたものの、酷いこと言っている自覚はあるので否定まではできないが。

「お前は俺が義姉さんに素直に対応したらどうなるか知らないからそういう事を言えるんだよ」

「シオンに素直に対応したらどうなるんですの?」

「そりゃお前……アレだよ」

「なんですの」

「ずっと義姉のターンになる」

「ずっと……シオンの?」

「そう」

 あの人のそういうところに疲れて、距離を取った部分もあるし……ホント、大変なんだよな、あの人の相手。

「やってみようか?」

「ちょっと気になりますわね。あ、リセリアは帰っていいですわよ」

「思い出したように追い出そうとしますね……帰るときはシオンさんと一緒に帰ります」

「ふーん、ま、いいですわ。で、シオンはどこに?」

「呼んだ?」

「……呼んだけど、何かしら、この。釈然としないというか、納得いかないというか」

「まあ、なんでいるんだよって話だな」

「呼ばれたから?」

「呼ばれる前からどっかには居たんだろ?」

「お姉ちゃんは何処にでもいるし何処にもいないんだよ……」

「じゃあ帰れ」

 俺がそういうと、俺の後ろから前に回って、なにやら決めポーズっぽい物を決める義姉さん。なんだこの人。

「ゆう君の居るところが、お姉ちゃんの帰る場所……さっ!」

 決めポーズのまま言ってやったぜと言わんばかりにドヤ顔してやがる義姉さんに割とイラっとした。

「うっわ腹立つなコイツ」

「今日はまた一段とテンション高いというか、発言の阿保さが増してますわね」

 この義姉相手に、素直に……できるだけ好意的に、そんなことしたら……したら……。

「で、なんだっけ、ゆう君がお姉ちゃんに素直になれないから、その練習をするって話だっけ?」

「もうその辺りから聞いてる時点でずっと居たんじゃねぇか。っていうか変な解釈されてるみたいだが、素直に、かつ好意的に接するとアンタが調子乗ってグイグイきてウザいって話だからな、アレ」

「えー、そんなことないよー。お姉ちゃんウザくないってー」

 そう言ってヘラヘラ笑いながら手を振る義姉さん。うん、ウザい。

「もう既にウザいんだけどな」

「えーーー」

「その感じだよ……その感じ」

 もう既に、若干ウザい。このやたら伸ばしてくる感じとか、絡み方が……。

「じゃあ試してみてよ!」

「そうそれ、見てみたいですわ」

「お前は完全に見世物として楽しみたいだけだろ」

「わかってるならさっさとして欲しいですわ」

「凄い、まったく悪びれない、どころか急かして来るだと」

 俺の嫁は変わったやつだが、ホントになんていうか、うん、すげぇ。

「じゃあ、うん、やってみるか」

 ということで、ここから俺は義姉さんに好意的に接するわけだが……。

「ゆっうくーん!」

「……何? 義姉さん」

「お姉ちゃんが膝枕してあげよっか~」

「あ? あー……わー、嬉しいなー」

「マジ?! よっしゃ! ゆう君はお姉ちゃんの物だー!」

「は……ははは、そう、だな……はぁ」

「ぷふふっ……なんですの……これ……くひひひひっ、だめ。これやばっ……ふふっ」

「なんで既にツボに入ってるんですか姉さま……」

「だってユウキの顔……ふひひひっ! アレ! ゲッソリして……! ぶはははは!!」

 義姉さんに好意的に接するたびに俺の理性がゴリゴリ削れてる気がする……。しかし不思議とシュエリアの笑顔を見ているとその分回復している気もする……なんか笑ってる理由が凄く腹立たしい気がしなくもないが。

 とは言え好きな人の笑顔の為なら、まだ頑張れる気がしてくると言うものだ。そんないい話ではない気もするが。

「じゃあゆう君、お膝にごろーんして、あ、ゆう君が好きな耳かきしてあげようか!」

「あ、それはやってくれ。早く」

「急に素になるなぁ。ゆう君のそういう現金なとこも好き!」

「お……俺も義姉さんのありのまま俺を好きになってくれるところ、好きだよ」

「マジか!! お姉ちゃんゆう君になら何されてもいいからね! どんな酷いこともめちゃくちゃされても、お姉ちゃんはゆう君大好きだから!」

「いやあ、そんな、酷いことなんてしないって――」

「遠慮しないで! むしろされたいし!!」

「いやあ……ホント……しないって……」

「ガチで嫌がってますわね……」

「ユウキさんが好意的だとシオンさんって果てしなく調子乗るんですね……」

 もうここまでの俺と義姉さんの絡みを見て、既にお判りいただけたようだ。俺が義姉さんに好意的だとこういうことになると。無限に調子付くのだ、この義姉は。

「あ、あー、それより耳かきは……」

「あ、そうだったね!  よーし、やっちゃうぞー。お姉ちゃん天才だからね! まっかせて!!」

 そう言って義姉さんは何処からともなく耳かき棒を出してきた。いや、マジでどこから出した。

「あら、魔法ですわね」

 シュエリアがそう呟くと、義姉さんがシュエリアの方をチラっと見た。

「うん、リセっちに習って習得したんだー。すっごいでしょー」

「へぇ……でもその割に魔力が感じられないですわね?」

「あー、これ。リセっちに魔力制御を教えてもらって隠してるんだー」

「ん? なんでですの?」

「よくわかんないけど、リセっちが怖がるから?」

「……リセリアが、ですの?」

「うん」

「リセリア、もしかしてシオンって……」

「は、はい……その……姉さまクラスはあるかと」

「……あー」

 ん? なんだ? どういう事だ? なんかリセリアが俯いてるんだけど、どういう反応だアレは。義姉さんがリセリアに魔法を教えてもらって、魔法を使えて、リセリアが怖がるから魔力を抑えてる……って話だよな?

 で、リセリア曰く義姉さんの何かがシュエリアクラス、らしいが。

「わたくしがシオンを怖かった意味がようやく分かった気がしますわ」

「どういう事だ?」

「シオン、ちょっと魔力見せてもらえないかしら?」

「え、リセっち泣くよ?」

「な、泣きませんっ」

「そお? んじゃあ――ほい、これでどーお?」

 義姉さんはそう言って、居るが、どうと言われても、俺にはサッパリわからないんだが……シュエリアは――。

「あー、なるほど、確かにわたくしクラスですわねぇ」

 と、怖かった云々とか言っていた話には関係なかったのか、思ったよりなんてことなさそうな態度だった。

「もーいい?」

「えぇ、いいですわ」

「そっかそっか、そいで? 何がシュエちゃんクラスだったの? まさかお姉ちゃん、魔法の才能まであった感じ?」

「まあ、そうですわね、思ったほどではなかったけれど」

「おやおや?」

「純粋な魔力量はわたくしと同じくらいですわね。ぶっちゃけエルフでもこの量の魔力持ってる奴なんていないですわよ」

「じゃあお姉ちゃん天才だね!」

「まあ間違いなく天才ですわね」

「じゃあシュエリアみたいなインチキ魔法も使えるのか?」

「インチキ言うんじゃねぇですわ。そして問いに答えるならそれはNOですわ。シオンの魔力が発露する瞬間にわかったのだけれど、シオンは魔力の量は多いけれど、魔力を現実に作用させる魔力制御器官が魔力量に対して著しく弱いから無理ですわ」

「つまり、なんだ? どういうこと?」

「ん。そうですわね……魔力量だけならわたくし並みで、そう。ゲームで例えると魔法を使うのに必要なMPはわたくしと同量、でも魔法の効果の大小に直結するINTが低くてついでに覚える魔法もショボいって感じですわ」

「えー、じゃあお姉ちゃんシュエちゃんとバトったら負けちゃう?」

「なんでバトる気なんですの……まあ、マッチの火でわたくしの宇宙1つ焼き払う炎に勝てるかって話ですわね」

「無理だよ? 馬鹿なのシュエちゃん?」

「嫌味で言ってんですわよ」

 自分の嫌味が通じない義姉さんにめんどくさそうな顔を向けるシュエリア。っていうかコイツは相変わらず発言の規模がデカいな。本当にやれるんだろうけど。

「でも同じ魔力量ってことは、マッチの火を出せる数は同じような物ってことか?」

「ですわね、そこだけ見たら普通にド規格外の天才ですわよ? そこだけ見たら」

「むむぅ、マッチの火でも集まったら宇宙燃やせるかな……そうなればシュエちゃんと対等……むむむ」

「阿保言ってないで、耳かき続けたらいいですわ。はー、ビックリした。まさかシオンがわたくし史上最強の敵になるのかと割とマジでビビリましたわ」

「なんで敵対する前提なんだよ……」

「いや、シオン思いっきりバトる前提だったじゃない……この女、強力な力なんて手に入れたら絶対わたくしを消しにかかりますわよ……」

「そんなことしないよ! ただゆう君から引きはがすけどね!」

「ほら、こういう奴ですわよ、シオンって」

「そういやそうだった」

 確かにこれは義姉さんが力を得なくて良かったと言える。手段を択ばない義姉さんの事だ、そうなったら確実にシュエリアとバトる展開に……。

「まあ冗談は置いといて、今は好意的なゆう君とのラヴラヴを楽しもうっと!」

「……そういやそんな設定だったな……」

 あまりの超展開に忘れてたけど、そんなことしてたっけ。

「さー、耳かきだよー、天才姉であるシオンお姉ちゃんがー、大事な弟のゆう君のお耳を綺麗に気持ちよくしちゃうぞー!」

「言い回しがウザ……っと、いかん、つい本音が。わー楽しみだなー」

「なんだかんだ言いつつあの阿保、絶対に耳かきは楽しみにしてやがるのが目に見えてますわね」

「浮気ですよ姉さま、ああいう男なんです奴は」

「浮気ではないんですわよねぇアレが……ハーレム設定だから、コレ」

「なんでそんなことにしちゃったんですか姉さま」

「楽しそうだからですわ」

「……それ、楽しいんですか?」

「これが意外と笑いが絶えないですわ」

「……お幸せそうで何よりです……」

 さっきのシュエリアがケラケラ笑っていたのを思い出したのか、肩を落としながら不承不承と言った感じで、若干嫌味だがシュエリアの幸せを祝うリセリア。

 うん、素直に喜べないのはわかる。シュエリアの幸せは普通じゃないからな……。

「…………っていうか耳かき上手いな」

「シュエちゃんとどっちが巧い?」

「え、なんて?」

 耳かきされながらだったので、何かを言われた気はしたのだが……ハッキリ聞こえなかった。

「シュエちゃんと、どっちが巧い?」

「シュエリア」

「あれ、おかしいな、今お姉ちゃんに好意的タイムのハズでは……」

「好意的であることと嘘を吐くことは違うからなぁ」

「えー、じゃあゆう君ホントはお姉ちゃんの事好きだったりする? じゃないとさっきまでのも嘘になるよね?」

「まあ、好きだよ」

「マジか! 結婚しよ!」

「シュエリアが居るから駄目」

「重婚できるようにするから!!」

「そしたらしようか」

「マジか!!」

「まあ、その頃には義姉さんにドライな俺なわけだが」

「あれ、なんでそーなるの?」

 なんか心底不思議そうにしているんだが、むしろなぜそうならないと思ったのか聞きたいくらいだ。

「義姉さんが無限に調子に乗るから」

「わあお。じゃあお姉ちゃんが調子乗らなくなったら普通に愛してくれる?」

「…………まあ」

「マジかぁ!! お姉ちゃんがんばろー!」

 なんか急にやる気になったなこの人。そんなにか?

「妻の前で他の女に耳かきされながら将来を誓い合うとは、流石ユウキ、天性の屑ですわね」

「シュエリアがこれでいいって言ったんだろ」

「まあ、そうですわね、こういう展開の為のハーレムですわねぇ」

「……お前ってさ」

「なんですの?」

 正直、コイツがなんでハーレムとか言い出したのか、未だに納得はしてないんだ。

 面白そうだからとか言ってたけど、本当はそれだけじゃない気がしてる。シュエリアと言う奴は、面白いことを優先する奴だが、それ以上に『俺』を大事にしてくれていると思っている。

 だから思ってしまうのかもしれない。結局は俺の為なんじゃないかって。

 ……まあ、確証とかないわけだが……たまに、そう思う事もある、的な。

「シュエリアっていい奴だよな」

「え、なんですの、気持ち悪っ」

「…………」

 やっぱ考えすぎかもしんない。

「ハッ、もしかしてお姉ちゃんグイグイ行き過ぎて嫌がられてただけ?」

「え、今更気づいたのか」

「もしかしなくてもストーカーとかやめたら印象良くなる?」

「もしかしなくても当たり前だろ」

「強引な手段を取らずにむしろ控えめなくらいの方が好印象?」

「うん」

「あちゃー。ゆう君エロゲの趣味が酷いから正攻法より邪道の方が好かれると思ったんだけど……もしかして、今までの拒絶って全部照れ隠しとかじゃなくてガチの奴?」

「ゲームとリアルの区別くらいつけろよ……嫌がってるに決まってんだろ」

「…………まじかー」

 なんかさっきまでイキイキしてた義姉さんの顔が無表情になってる。どうしたんだ。

「今まで私……ずっと間違えてたのか……」

「一人称私になってますわよー」

「私……ゆう君に……なんだかんだ言われても世界一愛されてるつもりでいた……」

「マジでか」

「なんならシュエちゃんと結婚したのもなんかそういうプレイかなくらいに……思ってたとこある」

「シオンさん、それは流石に無理があるかと……」

「本当の正妻……裏ボス的な位置のつもりでいた……」

「な、なんか可哀そうになってきましたわ?」

「いや、これに憐れむ余地あるか……?」

「わ、わた、わたたたた――」

「壊れましたわね」

「いやはえぇよ、断ずるなよ」

「わた……し……番目になる」

「え? 何? なんて?」

「私、二番目になるー!!」

 そう言って義姉さんはなんか泣きながら膝上の俺を抱き締めて来た。

「ちょ、義姉さん?!」

「私は二番目でもいいからー!! ゆう君のお嫁さんになるぅー!!」

「わ、わかった! なんかよくわからんけどその決意はわかったから離してくれない?!」

「やだー! ここで約束して!! アイちゃんに二番目取られるー!!」

「おいシュエリア、この阿保義姉なんとかしてくれ!」

「ホント、ハーレムで良かったですわねぇ、めでたしめでたしですわー」

「お前口元抑えながらまとめてんじゃねぇぞ! 絶対内心笑ってるよなお前!」

「愛する人の笑顔を守る、ハーレムの主の鏡ですわぁ」

「はぁ……私今日は一人で帰ります……」

 そう言ってリセリアは部屋を出て、ホントに一人で帰るつもりだ……。

「この義姉連れてってくれー!!」

「…………また来ます、姉さま」

「また来なくていいですわよー」

「おいぃいいい!! 無視しないで助けてくれー!!」

 こうして俺と義姉さんは以前より仲良くなり……ストーカー行為や強引な強硬手段はとらなくなったが。

 代わりに以前にもまして過度なスキンシップや求愛行動が増えたのだが…………あれ、今日何の話してたんだっけ……?

 なぜ、こうなったんだ……。


ご読了ありがとうございます。

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次回更新は金曜日18時です。

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