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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
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ダイブするゲームですわ

「暇で――」

「ゆっうくーーーん!! あーそーぼー!!」

「……すわ」

「お、おう」

 いつも通りの日常にいつも通り暇するシュエリアだが、もはや決め台詞というか、代名詞に近い「暇ですわ」を思いっきり義姉さんに妨害されていた。

「ていうか義姉さん、なんで今日はそんなにテンション高いんだ」

「シオンっていつもこんな感じな気がしますわよ?」

「いや、いつもより若干ウザい」

「シオンのテンションが高い=ウザい。覚えましたわ」

「なんだろう、元気よく遊びに来たらウザがられてる。結構悲しいねこれ。しくしく」

 そう言いながら泣き真似をする義姉さん、やっぱりウザい。

「で、何しに来たんだよ」

「遊びに――」

「帰れ」

「え、遊びに来ただけなのに?!」

「必要性がない時はできるだけ絡みたくないんだ」

「お姉ちゃん一応ハーレムの一員だよね?」

「必要性があったからな」

「……どんな?」

「シュエリアが面白がる」

「付加価値じゃん……」

 まあ正直、義姉さんのことが嫌いなわけでは無いし、むしろ好きではあると思うのだが、好きって言ったら確実に調子乗るから絶対言わないでおかないといけないしなぁ。

「うぅ……もいいや、帰ろ…………せっかく新しいゲーム開発したから誘いに来たのに……」

「ちょっとユウキ、止めなさいよ」

「え、なんで」

「せっかく新しいゲームで遊べるんですのよ? みすみす帰す気ですの? それでもわたくしの夫?? とっととあのゲームを回収して欲しいですわ」

「お前鬼畜か? 理由が人でなし過ぎるんだが」

「? でもあれって引き留めて欲しいから言っているんでしょう? ならゲーム目当てに止められても文句ないと思いますわよ?」

「い、いや……そうかもしれんが……もうちょっとこう、あくまでもゲームの為ではない体を装うとかさ……」

「ユウキって優しいですわよねぇ。でも時には優しさよりも大切なこともあるんですのよ」

「それは?」

「面白さですわ」

「……聞いた俺が馬鹿だった」

「やーい、バーカバーカ」

「うっわぁ、俺の嫁超腹立つな」

「…………これいつ止めてくれるの?」

 そう言った義姉さんは思いっきり足を止めてこっちを見ていた。もういっそ止まってるから止める必要もないんだが、そういう問題でないのは流石の俺にもわかる。

「あー……とりあえず俺もシュエリアも暇だし、その。新作とやらで義姉さんと遊ぶのも……いいかなあ……とか?」

「ジィー」

「うっ……わかった、冷たくして悪かったよ、ごめん」

「ゆう君のそういう素直なとこ好きだよ」

「さいですか」

「うんうん。ってことで早速家に来て欲しいんだけど、他の皆も誘う?」

「そうだな、誘わないと後で面倒かもしれないし」

「理由酷いですわね……一緒だと楽しいとか、無いんですの?」

「違うよシュエちゃん、これは照れ隠しだから」

「いや……まあ……」

 照れてはいないんだが……面倒だしそれでいいか。

「じゃあ皆誘いますわよ」

「義姉さんの家集合でいいよな」

「うん、オッケー」

 ということで俺はアイネ達に連絡を取り、義姉さんの家に向かった。

 で、義姉さんの家に来たんだが……これは。

「なんだこの凄くSA〇なナー〇ギアは」

「VRゲームだからね」

「そういう問題ですの?」

「パクリよね、普通に」

「ぱち~もんで~す~」

「わくわくしますねっ」

「良い子はアイちゃんだけかぁ」

 そう言って義姉さんはナーヴ〇アをアイネに渡すと、俺達には別の物を寄こして来た。

「これは……?」

「ハチマキだよ?」

「そういうことじゃねぇよ」

「いや、だってこのメット嫌だって言うから」

「え、この鉢巻きでゲームできるんですの?」

「できないよ?」

「なんで渡したのよ」

「メット嫌だって言うから」

「あら~」

「メット嫌だって言うから」

「あーもう! わかったから! 悪かったよ! でもデザインは変えてくれ! 流石に丸パクリはマズイ!」

「うーん、じゃあデザイナーでも雇おうっと」

「そうしてくれ……」

 とりあえず今日の所はこのギア使うしかないだろうけど。

「で、VRゲームなのはわかったが、どういうゲームなんだ?」

「ぶっちゃけSA〇だよ」

「みたいなゲームってことですの?」

「ううん、SA〇」

「おい」

 それは駄目だろ……完全に駄目だろ……。

「お姉ちゃん天才じゃない? マジでSA〇作っちゃったんだよ? この2021年に」

「天才過ぎるけど、せめてこう、SA〇をリスペクトした……オマージュ的作品とかさ、駄目だろまんまSA〇作っちゃ」

「そう? 一応コレ個人用のゲームで購買しないからいいかなぁと思ったんだけど……じゃあもう一個の、来年度購買予定のVRゲームやる? 自社製でオリジナルだから、SA〇はできないけど」

「いや、別にSA〇にそこまでこだわり無いし……」

 なんで義姉さんはこんなにSA〇やらせたがるんだろう……もしかして好きなのか?

「で、そっちはどんなゲームなんだ?」

「フルダイブVRMMOのアクションRPGでオープンワールド制、ストーリーはダークファンタジー系、声優は豪華にエロゲ声優ばっかり起用したよ!」

「なぜエロゲ限定なのか」

「え、ゆう君好きでしょ?」

「別にエロゲ限定ではないんだが」

「え……」

「なんならひーちゃん大好きですわよコイツ、下手したらわたくしより好きですわよ、ホント、ユウキ死ねばいいのに」

「酷くない?」

「大丈夫ですわよ、不死だから実際は死なないのだから」

「そういう問題ではないと思うんだが……」

 普通に夫の死を願うのが酷くないかなって思うんだけど……死なないとはいえ痛いし苦しいだろうし、そういうの願われるのは嫌だなぁと思う訳で。

「ま、そんなことはどうでもいいですわね。さっそくプレイしたいですわ?」

「うんうん、じゃあこれ、付けてね」

「……なんですのこれは」

「スカ〇ター型ナー〇ギアだよ」

「名前をパクるのやめなさいよ」

「そうですわ。せめてモノクル型と言い張るべきですわ」

「そういう問題でもないだろ」

 名前をパクる以前にデザインもパクっちゃだめだし、モノクル型と言い張るのも質が悪い、どうみてもス〇ウターだし。

「まあまあ、話を戻して。そんなことより早くゲームしよう?」

「話逸れる原因作ってんのは義姉さんだけどな」

「あはははは」

「笑うな」

 義姉さんの笑いの焦点が相変わらずわからん……どこで笑ってんだこの人。

「これって付けたらどうすんですの?」

「そこはほら、装備したらガイドが流れるからそれに従ってもらう感じで……あ、一応ベッドとかお布団の上でやろうね? 意識落ちるから」

「ふうん、で、ベッドは?」

「お姉ちゃんの部屋のがクイーンサイズだよ」

「なんで一人で使うのにクイーンなんですの」

「え、六々ちゃんとリセっちも一緒に寝るもん」

「そういやバイでしたわね」

「違うよ?! お友達だよ! なんでサラっとバイにされてるの?!」

「バイじゃないにしても、その歳でお友達と一緒には寝ないですわ」

「えぇ……シュエちゃんだって皆で寝てるじゃん」

「わたくしのは夫婦なんだから普通でしょう……」

 そう言って呆れるシュエリアだが、ぶっちゃけアイネやトモリさんとも寝てるので友達と寝てないと言えばそんなこともないのだが……まあこの場合は俺と寝るとセットでアイネとトモリさんが付いてくるだけなので、違うと言えば違う……のか?

「っていうかそんなことよりゲームですわ」

「お姉ちゃん的にはその疑惑晴らしたいんだけど……まいいや。尺もあるしね」

「ですわ」

 ということで皆で義姉さんのベッドに寝て……まあ俺だけは何故か床だけど。とにかく寝転んで、早速ゲームをスタートすることに。

最初は簡単なプロフィール登録から身体特徴のスキャンとか色々変わったのもあったが、それでも設定は全部含めても10分くらいで終わった。

 そしてゲームは最初からインストールされていた「イクリプス・ソウル」とかいう痛い名前のゲームを選択。

 キャラ設定画面ではクリエイトアバターとリアルインストールなるものが……ってこれ後者はリアルの外見のアバターか。これを一般購買されるゲームで選ぶのはリスキーだなぁ……。

「とりあえずアバター作るか……」

 ということで俺はクリエイトしたアバターを使うことにしたんだが……。

「なんで俺が居るんだ」

「兄さまっ……アレ? 兄さま……兄さまの……着ぐるみ、ですっ?」

 ゲームに入ると、初期エリアと思わしき町の噴水のある広場に既に待っていたメンツの中に俺、結城遊生のアバターが居た。

「着ぐるみじゃなくてアバターだけどな」

「うわっ、喋りましたっ! なんかこの兄さまキモいですっ!!」

 なんだろう、どうやらアイネにはあの見た目だけ俺のアバターが俺自身じゃないことも分かってるみたいなんだけど、流石に見た目がまんま俺のキャラクターをキモイって言われるとショックだ。

「とりあえずアイネはこっちおいで、アレは一種の変質者だから」

「こっちは見た目はビミョーですけど兄さまですねっ! むぎゅっ!」

「うん……一言……多いけど」

 別にイケメンにしたりはしてないし、その気も無いからいいんだけど、微妙とか言われちゃうと……やっぱりちょっと……なあ?

「にしてもアイネのアバター可愛いな」

「にゃっ、いつもとどちらがいいですかっ」

「いつもの方が可愛い」

「リアルアバターにすべきでしたねっ」

「でも今のアイネも可愛いよ」

「ふんすっ」

「チッ、わたくしの件もう終わりですの……」

「素が出たな」

 俺がアイネのアバターについて言及し、話が逸れてしまったからか、シュエリアが俺の顔で、俺の声でいつもの口調で喋りだす。

 俺の顔であの言葉使いはすっげー違和感あるな。

「はー、ウケ狙いで選んだけど、ぶっちゃけわたくしも自身のリアルアバターの方がよかったですわね」

「アイネみたいにクリエイトしてもいいんじゃないか?」

「えぇ……だってどう頑張ってもわたくしより可愛くならないんですのよ? ならいっそ慣れ親しんだ自分の姿で遊ぶ方がいいですわよ」

 出た出た、自己愛マックス発言。俺も言ってみたいわ、アバターよりリアルの方がカッコいいとか。

「じゃあなんで俺の姿にしちゃったんだよ……」

「慣れ親しんだ夫の姿でやらかして、ユウキの立場を面白くしようかと思って」

「お前ホント……ホントそういうとこだぞ」

 コイツはなんでこう、いつもロクでもないことばっかり思いついてしまうんだろう……。

「もっとこう、ちゃんと考えてから行動しろよ」

「なっ、考えてますわよ! 具体的にはシオン辺りにセクハラとかしまくって、後で面白くなったらいいなぁとか考えてますわよ!!」

「考えて犯行に及ぶな! 考えて自重しろ!」

 俺の嫁は相変わらず阿保だ、ホント、どうしようもない。まったく。

「仕方ないですわねぇ、ちょっとアバターから作り直してきますわ……まったくもう」

「なんでちょっと俺が我儘言ってる感じになってるんだ……」

 まあでも、これですげぇややこしい状況は回避できそうだ。

 とりあえずシュエリア待ちしつつ、他のメンツも待つこと15分。

「なんで俺とアイネ以外みんなリアルアバターなんだよ」

「メンドクサイからよ。色んな意味で」

「そうだよゆう君、デザインはタダじゃないんだからね」

「見慣れ~て~ますし~?」

「まあ、確かにそうですけど……まあいいか」

 確かにあんまり見た目が変わり過ぎてもな……違和感が……うん。

「それで、これ、こっからどうするんだ?」

「ん? 何してもいいよ?」

「……いや、うん……RPGだろ? ストーリーとか」

「ストーリーやりたいの? お使いとか言わない?」

「いやっ……おまっ……そういう事言わないから、っていうか言うな」

「んじゃあこっちこっち」

 そう言って義姉さんは俺達の前を歩いて行く。

 画面……というか視界を見るに、メインストーリーなどのガイドラインは無い様だ。こういう仕様は人を選びそうだなぁ。

「っていうか普通こういうのってチュートリアルから始まらね?」

「そこはお姉ちゃんのGM権限で皆の分のチュートリアルはスキップしたから」

「なんでそんなことしたんですの? 正直フルダイブのVRなんてやったことないから、操作というか、動きに困りますわよ? これ」

「えー、だってそこから始めたら尺めっちゃ使うよ? こんなゲームに何話も使えないでしょ?」

「何の話してんですの……」

「いつもの話じゃないか?」

 もう正直このノリは慣れて来た。まあ製作者の義姉さんがいるんだし、何か困ったら直接聞けばいいだろう。

 今のところは順調に体も操作出来てるし、話も出来てる、問題はあまり感じてないし。

「さて、ここの大通りを歩くとイベントが発生するから、それを目撃したら特定のNPCが出現、会話するとメインストーリーが進むよ。そこからは一応次の目標とかはメニューの手帳から確認出来て――」

 なんかこの後もクエスト周りの仕様を色々説明されたが、どうやらこのゲーム、普通のゲームなら画面となる視界にはそれほど多くの情報は出ないように設定されているようだ。

 まあ要はHUDの非表示だな。手の動きでスワイプしたり、意識してメニューを開こうとすると初めてそれらが表示され、コマンドを選ばないと地図やクエストの確認もできない。

 言っちゃなんだがゲームとしては不便だ。だが、そういった情報が必要な時に自分で確認しないと出ていないだけに、視界はクリアだ。

それに現実に比べればまだ便利だし。何より義姉さん的にはこの不便さがリアリティであり、VRだからこそよりこの世界でリアルに「生きて」欲しい、らしいので、まあそういう意味で言えば不便さとはリアリティとの兼ね合いとも言えなくもないのか?

「で、このイベントってみんなに見えてんの?」

「このクエストを発生させていないプレイヤーが通ると範囲に居るプレイヤー全員に見えるようになってるよ。初狩りが捗っちゃう?」

「そこまで言ってねぇよ……」

 っていうかこのゲーム初狩りとかあんの? VPあるのか……?

 まあ、そんなことよりストーリーだが……。

 どうやら内容的には俺達はこの世界に転生した異界人という設定で、身分も住処も無い根無し草。国民権も持たず、戦うことでしか生きていけない者達という扱いをされていて……今回は待ちの外から逃げて来た少女に、なんだかんだ経緯があった後に、故郷の村を救って欲しいと頼まれるところから始まるようだ。

「で、村に行けばいいのか」

「行かなくてもいいよ?」

「なんで」

「このゲーム自由だから、っていうか多分今行っても勝てないし」

「フラグ立ててないとかですの? 必敗?」

「ううん、そうじゃないよ? 単純に戦闘経験無いし、ステータスも死んでるし、ぶっちゃけほぼ一般人だし。普通に死ねるよ?」

「戦う力どこ行った」

 イベントでは戦える力があるから頼まれた体……だったはず。

「いやあ、ホントはこれ一定以上のステータスとレベルの合算値で発生するイベントだから」

「なんで発生したんだよ」

「え、ゆう君がメインストーリーやりたそうだったからGM権限で?」

「うーん……」

 そこは普通にメインストーリー入るための手順から案内して欲しかったなぁ。

「じゃあレベリングでもするか……」

「あー、待って待って」

「ん?」

「このゲーム、いきなり外出て戦ったら死ぬよ?」

「え…………」

「ちゃんとステータス見て欲しいなぁ」

「ステータスって……これか」

 基本的によく見るようなSTR、DEX、VIT、AGIのステータスにそれを基準に得ているであろう攻撃力や防御力、命中、体力など……確かにこちらはレベル1らしくというか、高い数字には見えないが。

「これがどうかしたのか?」

「基礎ステータスの隣のページにスキルステータスっていうのがあるんだけど、そっちを見て?」

「スキルステータス……これか」

 そこにはものすごい量のスキルが載っていて、そのほとんどが「???」表記だった。

「これがどうかしたのか?」

「そこに戦闘に使えそうなスキル載ってる?」

「……無いな」

「だよねー。まずはそこからかな」

「ふむ?」

 確かに戦闘に使えそうなスキル名の物はない。あるのは……持久力、歩き、声量、体捌き……とかか。なんだこれ。

「このゲームは特定の行動を検知して、その行動に見合ったスキルが上昇していく仕組みが取られてて……だからここまで話したり、歩いたりした分のスキルは少しは入ってるはずだけど、戦闘関連はまだないし、こんなんで1レベルで言ったらマジで死ねるからね。今の皆は実戦経験レベル1で訓練すら詰んでない雑魚だから。まずは訓練からかなぁ」

「マジか……」

 このゲーム……スキル性だったのか……マスターオブエピ〇クみたいなもんか。これは長丁場になりそうだなぁ……。

 ということで、その後俺達は義姉さんの指示に従い、訓練場に到達。

 各々使いたい武器などを選んで、訓練を積んだ。

 ちなみに俺は無難に片手剣と盾を選んだが、剣の訓練は素振り、木人叩き、盾の使い方指南などだった。これを一時間ほど続けて片手剣15、盾10、力と体力のスキルが15上がった。

「ふぅ……これで戦えるもんなんだろうか」

「この世界基準だとソロなら死ねるステータスだね。基本死にゲーだし。でもこの人数でなら普通に立ち回れる範囲だし、実践の方がスキルの上りもいいし、ついでにレベルが上がればそっちでもステータスが上がるから、とりあえずはこれで大丈夫だよ」

 とまあ、製作者様がこう言っているので、まあ大丈夫だろう……。

「ちなみに義姉さんは訓練、なにしたんだ?」

「お姉ちゃんはしてないよ?」

「……なんで」

「お姉ちゃんはステータス高いもん」

「なんで」

「自分でテストプレイしたアカウントだからねー」

「……まあ一人くらい強いプレイヤー居た方が安心ではあるか」

「ま、気楽に遊んで欲しいからね、そういうこと」

 一応義姉さんなりに考えての事のようだし……まあ、いいか。

 実際このゲームは難易度高そうだし、いざって時のフォローを期待したいものだ。

「で、シュエリア達も終わったのか、訓練」

「えぇ。斧って武器向けじゃないですわね?」

「なんで選んだし……」

「歌って斧れる感じになろうと思ったんですわ。ハント〇スですわ」

「キラー志望だったか」

 それもうゲーム違うし。っていうか斧はわかるけど歌って……?

「歌って、スキルにあるのか?」

「さっき鼻歌歌ってたら上がりましたわ?」

「……義姉さん、歌って何ができるんだ?」

「なんか気分上がるよね」

「……なんだそのクソスキル」

 うーん……シュエリアは果たして戦力になるんだろうか。

「で、アシェは?」

「魔法使いよ!」

「……なんでそんなドヤ顔なんだろう」

「エルフで魔法使いって完璧じゃない?」

「完璧って言うか、普通?」

「……普通…………そう……普通…………」

「え。え何?」

 なんか俺が普通って言ったら、急にアシェのテンションが死んだんだが……?

「あー、アシェは錬金術はできても、エルフ基準の魔法は使えないから、アシェにとっては普通じゃないんですのよ?」

「え……でも花見の時魔法で人体切断マジックしようとしてなかったか?」

「この子は魔法使えないのを隠すために錬金術を魔法と言い張ってるだけですわ」

「……なにそれ悲しい」

 ぶっちゃけ等価交換の法則を無視した視界内錬成とか凄まじい才能を持っていても、それの使い道が魔法の偽装って……。

「わ、私のことはもういいでしょ! そ、それよりほら、アイネとトモリはなんにしたのよ?」

「お、おう……」

 うん……がんばれ、アシェ。

「で、アイネと、トモリさんは……」

「わたしは短剣にしましたっ」

「わた~し~は~槍~を~」

「マジか……なんかそれっぽい感じに収まったな……」

「なんでちょっと残念そうなんですの」

「いや、ボケて来るかなぁと思ってたから」

 まあ正直、あんまりボケばっかされても困るけど、まともに来られるとそれはそれで反応に困ってしまう辺り、大分コイツ等との絡みに毒されている気がしないでもない。

 まあ……とにかく。

 こうして俺達の冒険は、ようやく始まることになったのだった。


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