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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
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お悩みの話ですわ

「そういえば、最近ストーカー被害にあってるんですの」


 季節も秋に入り掛けた頃、いつも通り皆で揃ってだらだらしていると、ふとシュエリアがそんなことを言い出した。


「へぇ……あ、この菓子美味くないか?」

「これっわたしも気に入りましたっ」

「え、ホント? 私にも寄こしなさいよ」

「どこの~お菓子~でしょ~う~?」

「ふっふっふ、これはお姉ちゃんの手作りなんだなぁこれが」

「マジか……なんか食べたら負けな気が――」

「わたくしストーカー被害にあってるんですのよ?!」


 みんなシュエリアのストーカーに余程興味がないのか、シュエリアの話よりお菓子の方に集中していたのだが……それが気に入らなかったのか、声を張り上げるシュエリアに皆の視線が集まる。


「いや、聞いたよ? ストーカーだろ? うん。凄いスゴイ」

「ユウキ、あんたわたくしの旦那ですわよね?」

「だから何だよ」

「え? 塩対応なんですの? 普通嫁がストーキングされてたら心配の一つもしませんこと?」

「いや、お前に限ってそれは無いわ」

「はあ?! 無いぃ?!」


 なんか俺の言葉に若干キレかけてるシュエリアさんだが、いや、実際無いだろ……。


「わたくしこれでも結構モテ――」

「それはわかってる。お前は美人だし、笑顔可愛いし、面白い奴だからモテるだろうなと思う」

「え……えぇ……」

「でもストーカー如きにどうこうされることも無いのがわかってるから心配はしてない」

「まあ……それは……確かに…………」


 俺の言葉に納得して、怒りの炎はすぐに鎮静化したようだ。


「で、でも――」

「ねぇ、その話で気になることがあるんだけど」

「な、アシェ、何か心当たりあるんですの?」

「無いわよ? 普通に、美人で可愛くて面白いからモテるっていう部分が気になっただけ」

「ストーカー気にしやがれですわ?!」

「だから、ユウキも言ってたけど、あんたがストーカーにどうこうされるわけないじゃない。全然気にならないわよ」

「なんでかしら、言っていることはわかるし、その通りなのだけれど、凄く釈然としないですわ……」


 そう言ってなんかむくれてるシュエリアだが、正直本当にシュエリアがストーカーにあってるなら、大変なのはコイツじゃなくて俺なんだよなぁ。


「むしろ旦那のユウキが心配よね」

「ですねっ! シュエリアさんの旦那である兄さまに矛先がいくかもしれませんっ」

「まあストーカーするような屑がそこまで度胸あるとは思えないけどね~」

「現役~が~いうと~違いま~すね~」

「お姉ちゃんはストーカーじゃないよ……たとえストーカーだとしても、ストーカーという名の守護者だよ」

「なんだそれ」

「見守り型のストーカーだから」

「ストーカー自称しちゃってるじゃない」

「ホントクズだな俺の義姉」

「えぇー、クズじゃないよ、たとえクズだとしても――」

「脱線! 脱線してますわよ!!」


 いつも通りのトークをしていたと思うのだが、速くも脱線を咎められてしまった。

 割と常習犯のシュエリアに言われると妙に腑に落ちない感じがするな……。


「はぁ。でも実際、本当にシュエリア自身には何も問題ないでしょう?」

「ありますわよ、単純に監視されてるのが気持ち悪いですわ」

「それはわかる」

「うんうん、そうだよねー」

「言ったな? じゃあやめろ」

「……ストーカーの気持ちも汲んであげる優しさって、必要だと思うなぁ?」

「おい、誰かこのクズ警察に突き出すの手伝ってくれ」

「お姉ちゃんは権力と財力でもみ消すけどね!」

「あからさまにクズですわね……」


 俺の義姉の露骨なクズ発言にツッコむシュエリアに、まったく意にも介さない義姉さん。

 この人がストーキングを止める日は来ないな、多分。


「で、ストーカーっていつからなのよ」

「詳細にはわからないけれど、一週間前から感じてはいますわ」

「なんで捕まえないんだ? シュエリアならできるだろ」

「捕まえようとはしましたわ、でもなぜかうまく逃げられてしまうのよね……かといってストーカー相手にわたくしが全力出すのも……なんか癪ですわ」

「ふむ。ストーカーで、シュエリアから逃げられる能力がある人か……」


 そんなの、一人しか思いつかない。


「あ、それお姉ちゃんかも」

「うん、知ってた」

「え……なんでシオンがわたくしを付けるんですの?」

「弱点探し?」

「なんでそんなことを……」

「いやあ、脅しのネタでもあったらお姉ちゃんとゆう君の関係に利用できるかなあと思って」

「ストーカーのくせにやけに素直ですわね」

「いやあ、これで後でお姉ちゃんだったってなったら、めちゃくちゃ印象悪いかなぁって」

「もともと良くないけどな」


 というか本当にこの人当たり前のように人を付けたり監視したりしてるけど、一応数多の会社を経営する社長兼CEOのはず……なんでこんなに暇なんだ、この人。


「これからはバレないように企業努力を怠りません!」

「ストーカーの企業努力とは」

「まあでも、これでシュエリアの下らない悩みも解決したわね」

「ストーカー被害ってくだらなくないと思いますわ……?」


 まあ実際、これがシュエリアじゃなかったら、そうなんだけど……。

 でもシュエリアが言うとどうでもよく感じてしまうのはやっぱりシュエリアのスペック的にどうとでもなるからなんだよな。


「っていうかサラッとわたくしの弱点を探してるとか、弱みがどうのって言ってたけれど、何か掴んだりしてないですわよね?」

「うん? 無いよ。無さすぎてそろそろやめようかなぁと思ってたくらいだし」

「あ、そう……ならいいですわ」

「せいぜいゆう君のこと呼びながらオ――」

「ザ〇!」

「あぶなっ! 死んだらどうすんの!! お姉ちゃんは不死じゃないんだよ?!」

「いやむしろなんで生きてんですの?!」

「〇キは必中じゃないからね!」


 なんかすげぇくだらないやり取りしてるけど、シュエリアはなぜ義姉さんに即死呪文を……?


「もしかしてなんか弱み握られた?」

「ユウキは知らなくていいですわ!」

「ん? あっ……そっか、これ弱みかー。ふーん……意外だなぁ、気にするんだぁ」

「シオン、それをバラしたらわたくしにダメージあるのは間違いないですわ」

「大丈夫、大丈夫。ちょっと交渉に使うくらいで――」

「その代わり全力でシオンをこの世から消しますわ」

「……大丈夫…………なんか今シュエちゃんが本気でキレそうだなって思ったらから、絶対やらない……あ……なんなら記憶消したりしとく……?」

「そこまでしなくていいですわ。でも、もし何かあったら……」

「お、おっけー」


 ふむ。シュエリアの奴、出会った頃は義姉さんが苦手だったようだが、今ではすっかり慣れたのか、それとも今回は怒りが勝ったからなのか、どちらにしてもあの義姉さんをビビらせて封じてしまうとは……。


「ふう、これでわたくしの悩みも解決ですわね」

「そ、そうか」

「うーん。せっかくだしこれ話題にしたいですわね」

「というと」

「皆って悩みとか……あ、なさそうですわね」

「失礼ね、あんた」


 シュエリアの発現に食いつくアシェだが、実際ここのメンツに悩みとかなさそうである。


「というからには、あるんですのね? アシェ」

「あるわよ。悩み多き令嬢とは私の事よ」

「聞いたことねぇですわ」


 っていうかなんで悩みが多いことをドヤ顔してんだろう。やっぱりエルフってシュエリア共々阿保ばっかりか。


「で、悩みってなんですの?」

「ある男性が複数の美少女を侍らせてるくせに、特定の女ばっかり構ってて。特に緑髪の変なヘアースタイルの頭のオカシイ、イカレた女なんだけど」

「…………不思議と他人な気がしないですわ」

「その女にデレデレしまくって、未だに他の子とは致してないのよね。もうこれただキープされてるだけじゃない? って思って、流石にどうかなって思うのよ」

「確かに、それはそうですわね」

「おい」


 なんでそこでコイツはアシェの方に付いちゃうかな。

 俺は俺なりに頑張っている……いや、そんなこともないか、最近シュエリアばかり構っている気がするのは俺自身、自覚しているし。


「で、とりあえずその特定の女をどうにかしてやろうかと思って」

「え……? それ、どうにかって? なんですの?」

「一応考えたのは不感症にしてやろうかと……」

「こわっ?!」

「でもただ不感になるだけじゃ、イマイチ決定打にならないかなって」

「え、決定打? ちょっとどうこうしようって言うんじゃなくて……? わたくしそんなに不満買ってるんですの?」

「……誰もシュエリアなんて言ってないわよ」

「言ってましたわよねぇ?! ほとんど言っちゃってましたわよねぇ!!」


 まあ確かに、聞いてた感じの特徴からして、俺とシュエリアの話だったと思ったが。


「違うけど……まあ、そう思うんなら、ちょっとは待遇改善して欲しいわね」

「それユウキに言ってくださる?」

「そうね、どうなの? ユウキ」

「え? あぁ……じゃあ、とりあえず一緒に暮らすか?」

「……え、それは嬉しいけど……でもそれだけじゃ……いえ、これ満足すべき案件なのかしら……」

「じゃあ寝室も一緒にするか」

「仕方ないわね、そこまで私と一緒に居たいなら、うん、仕方ないわね」


 どうやらこの提案には満足してくれたのか、アシェも嬉しそうである。

 うん、よかった。


「でも寝る時、場所開いてないですわよね?」

「そこはまあ、交代で?」

「わたくし嫁ですわよ?」

「えーっと、そこはトモリさんが……」


 そこでトモリさんの方を見ると、さっきまでアイネ共々話に入ってこないでお菓子を楽しんでいたのに、ものすっごく不快そうな顔をしてこちらを見ていた。


「あー……トモリさん……あの」

「嫌です」

「あ……はい……でも、交渉の余地とか――」

「無いです」

「…………はい」


 うーん……これは……どうしたら?


「シュエリア、どうしようこれ」

「ふむ。天才のわたくしをもってしてもこの難題、解決方法が一つしか思い浮かばないですわ」

「むしろあるのか、流石天才」

「えぇ……この妙案、まさに天才的発想でしてよ」

「その案とは」

「聞いて驚きなさい! 立ち寝ですわ!」

「……うわ、俺の嫁馬鹿過ぎ」

「何言ってんですの? 立って寝ればユウキに寄り添えるスペースが格段に増えますわ?」

「そもそも立って寝られねぇよ!!」

「そこは努力しなさいよ」

「よしんば俺ができても他も全員立ち寝だろうが!!」

「アイネは頭の上で寝そうだけど」

「それは否定しないけど……他がな?」


 どう考えたって無……いや、できそうだな、コイツ等。


「んじゃあハの字で寝るとかでいいんじゃねぇんですの」

「投げやり……って、ハの字?」

「ユウキを真ん中に仰向けに寝かせて、そこを中心にハの字を二つ、プラスでユウキの上にアイネが寝ればなんと五人一緒に寝れますわよ」

「なる……ほど?」


 それなら立ち寝よりはいい……のか?


「ん? いや、五人?」

「シオンもどうせ、いつか一緒に寝ることになるでしょう」

「お前天才だな」

「でしょう?」

「これなら……どうですか? トモリさん」


 シュエリアから妙案が出たところで、トモリさんにお伺いを立ててみる。


「まあ……それ~なら~」

「よかったです……」


 よかった。どうにかいつも通りのトモリさんと言った感じだ。

 いきなり素で話されると普通に怖いから、元に戻ってホントによかった。


「じゃあこれでアシェの悩みは解決ですわね。後は……」

「わた~しも~」

「トモリの悩み……想像つかないですわ」

「胸が~おも~くて~」

「無重力のおっぱいとか面白いと思いますわよ」

「なる~ほど~?」

「いや、納得しないでくださいトモリさん。ってか対応が雑過ぎる」


 なんだ無重力のおっぱいって。謎発言過ぎる。


「雑じゃないですわよ。実際重力を利用した魔法で胸の重さによる肩の負担とかを軽減しているエルフも居たから提案したんですわ」

「魔法の使い道が相変わらずひでぇ」

「便利だからいいと思いますわよ?」


 いやまあ、便利なんだろうし、魔法だからこそなんだろうなとも、思うんだけど。

 なんていうかこう…………いささかロマンに欠ける気がするのは俺が男だからだろうか。女性にとっては夢のような魔法だったり……するのか?


「とにかく、試してみると良いと思いますわ」

「そう~します~」


 まあ……トモリさんがアレでいいんなら……いいのかな。


「後はアイネとシオンですわね。聞いてないのは」

「お姉ちゃんも実はあるんだよね。悩み」

「へぇ? どんな悩みなんですの?」

「うん、実はシュエちゃんとゆう君のことなんだけど」

「めっちゃストレートに名前出してきて怖いのはわたくしだけ?」

「いや、俺も嫌な予感しかしない」

「お姉ちゃんね、二人が結婚するにあたって、約束したことがあるんだけど、覚えてる?」


 俺達の結婚に対してした、義姉さんとの約束っていうと、アレしか思い浮かばないんだが。


「義姉さんとの子供?」

「そう、それ! でね? それに関してゆう君から、シュエちゃんとデキた後ならいいよって言われて、お姉ちゃん的にもそれはうん、納得したんだけどね?」

「そう、それなら何が気になるんですの?」

「いや、そもそも人間とエルフの間に子供ってできるの? っていう」

「…………え。どうなんだ? シュエリア」

「少なくとも前例はないですわねぇ……ぶっちゃけ不老不死だからそれこそ万年連れ添えば、その内できるかなぁとか、その程度で、大して期待してなかったところありますわ」

「それで行くと、俺と義姉さんの子供っていう約束は反故になるのでは?」

「なりますわよ」

「お前最低か」

「いやいや、わたくしと先に作るって言い出したのはユウキでしょう? 約束したのはわたくしではないもの」

「じゃあ義姉さんと先にしてもいいか? 流石に約束を無かったことにはできないだろ」

「したら殺すわよ」

「不死ですが」

「不死ですら殺せるわたくしって天才」

「おっと、サラッとすげぇ怖いこと言い出したコイツ」


 まあコイツならできそうだなと思ったけど、っていうかそんなことより……。


「あの、義姉さん」

「何?」

「それで、悩みの続きっていうのは――」

「あーうん。だからね、二人には卵子と精子を提供して欲しいの」

「もうむしろ悩みというより相談ですわねこれ」

「まあそこは、悩みと相談は切っても切れないということで」


 というかそれ以前に、この人の発言がかなりヤベェことについて言及すべきではと思うのだが……。


「二人にこれらを提供して貰ったら、こっちで研究を進めてそもそも子供ができるかどうかを調べようかなって、なんなら体外受精で子供を作って……そしたらお姉ちゃんとの約束も果たせるでしょう?」

「ま、まあ」


 それはそうなんだが……この人のこういう手段を選ばない感じが怖いんだよなぁ。


「ふむ……?」

「ん、どした、シュエリア」

「いえ、凄く今更なのだけれど……めんどくさいわね?」

「……何が?」

「子供。作るのも育てるのも」

「おっと、前提から覆されそうな発言だ」


 コイツにその気がないんだったら、子供作っても仕方ない……ということになるわけで、なら義姉さんとの約束はどうなるかっていうと……。


「じゃあシュエちゃんが子供要らないなら、お姉ちゃんが作ってもいい?」

「いいですわよ」

「わー、俺の嫁すっげぇヤベェ奴なの忘れてたわ」


 コイツ相変わらずとんでもねぇなぁ……。さっきは先に作ったら殺すとか言ってたクセに。なんていうか思いきりが良すぎるっていうか……普通こんなあっさり夫を差し出すかね。


「ヤバイことでもないでしょう? そういう約束なのだから」

「まあ、そうだけど……」


 でも普通……いや、コイツに今更『普通』を求めている俺がおかしいな、うん。


「あ、でも一つだけいいかしら」

「ん、何? シュエちゃん」

「夜は一緒に寝るんだから、昼間に作って欲しいですわ」

「うん! わかった!!」

「もうホント常識通用しねぇなコイツ等」


 昼間っから子作りしますよ発言を堂々としやがる。いや、夜にするものっていう固定概念を押し付ける気はないが……しかし白昼堂々というのもどうだろう……。


「さて、これでシオンの悩みも解決したし、一通り終わりましたわね……それじゃあそろそろ夕飯――」

「いやいやいやっ! 終わってないですよっ!」


 シュエリアがこの話はこれでおしまい……という空気に持っていこうとすると、アイネから待ったが掛かった。


「終わってないんですの?」

「終わってないんですよっ! 私のターンがっ!」

「え、アイネに悩みとかあるんですの?」

「すっごく失礼ですっ?!」


 なんかシュエリアからの扱いにアイネがすごーくショックを受けている様子なのだが、正直俺もアイネって悩みとかなさそうだなぁとか、思ってた。


「ありますからねっ! しかも最近特に酷いのがっ!」

「あら、それはなんですの?」

「アイネに悩みがあるなら俺も気になるな」


 可愛い妹の悩みだ、それも特に酷い悩みというなら、放ってはおけない。


「実は…………最近兄さまが二人っきりの時にっ…………」

「ユウキ、殺しますわよ?」

「なんで?!」

「いえ、この感じ絶対イヤラシイことされてるでしょう?」

「してねぇよ?! 俺をなんだと思ってんだ!!」

「美少女侍らせてるクズ野郎かしら」

「事の発端のお前にそこまで言われるのおかしくない?!」


 そもそもハーレムって言い出したのはコイツだろ……もう何度この感想を抱いたことか。


「あの、お二人で盛り上がらないで欲しいですっ」

『あ……すみません……』


 ついシュエリアの阿保に乗っかって話が脱線してしまったが、今はアイネの悩み相談中だった。


「で、ユウキがどうしたんですの?」

「兄さまが……兄さまがっ! シュエリアさんの話ばっかりするんですっ!!」

「あぁ、それは大変ですわ……ね……ん?」


 なんかアイネの発言に適当に相槌を打とうとしたシュエリアだったが、悩みの内容にピンとこなかったのか、疑問符が浮かんでいる。


「それ、何、どういう悩みなんですの?」

「! シュエリアさんわからないんですかっ!!」

「え、わからないですわ」

「マジですかっ! 姉さまはわかりますよねっ?!」

「わかるよー? っていうか多分、ゆう君とシュエちゃん以外はわかってると思う」

「そりゃまあ、この阿保二人にはわからないでしょ」

「そう~ですね~」


 おやおや、俺とシュエリアだけこの悩みの問題点に気づけていないようである。

 ちなみに俺としても正直、アイネにそういう話することが多いのはわかっているんだが、何が問題なのかはよくわからない。


「まあ、シュエちゃんがわからないのは置いといて、この問題はちゃんとゆう君に抗議すべきだね」

「そうね、相変わらず自覚の足りてない馬鹿に言い聞かせるべきだわ」

「反省~して~欲しい~です~」


 とまあ、なんかアイネ側に付いた三人に対し、唯一こっち側っぽいシュエリアはというと。


「この年になって叱られそうになってる男ってなんかちょっと面白いですわね」


 とかなんとか、クソみたいな発言をしていた。

 この阿保の夕飯溶いた生卵オンリーにしてやろうかな……。


「えーっと、それで、俺は何がいけなかったんだろうか」

「普通に考えてわからないわけ?」

「アシェにはわかるのか、普通じゃないのに」

「アンタ次くだらない冗談かましたら棺桶に詰めて『DIO』って書いて沈めるわよ」

「やめろ! そんなことしたら誰も空けてくれないだろ?!」

「そういう問題ですの……?」


 なんかシュエリアにサラッとツッコまれたが、実際俺不老不死で、かといって特別強いわけではないから外から鍵されて沈められたら結構ヤバいと思うんだけど。


「まあそれは置いておいて、何がいけなかったんだ、俺」

「あのね、自分の事慕ってくれてる女の子に、他の女の話ばっかり聞かせるとか、思いやり無さすぎでしょう」

「……なるほど?」

「あ、コイツヤベェわね」

「うん、ゆう君絶対ピンと来てないよ、コレ」


 などとアシェと義姉さんから露骨に呆れ顔で見られているが……いや、意味は分かったんだけど、そんな? そんなにだったか……?


「割と普通にシュエリアの話してただけだと思ったんだが」

「結婚式であんだけデレッデレしといてよくそんなこと抜かせるわね。アンタ多分、話してる時も顔デレデレよ?」

「絶対~デレっと~して~ましたよ~?」

「マジ?」

「マジですよっ! 好きな人ののろけ話延々と聞かされる身にもなって欲しいですっ!」

「あぁ……うん…………ごめんなさい」


 なるほど、そういう感じだったのか、俺。

 そりゃあ怒られても……嫌がられても仕方ないな……。


「ゆう君素直なのは美徳だけど、それだけじゃダメだよ?」

「……というと」

「まあこれはゆう君側の落ち度なわけだし、順当に賠償すべきかなぁと」

「いえ! 普通に許しますけどっ!!」

「と、アイネは言っているが?」

「あっるぇー? これだとお姉ちゃんがガメツイ感じにならない?」

「事実だろう」


 この人は人の弱みに付け込んだりしまくってガツガツ利益を得ようとする人だ。

 まんま言った通りだ。


「そんなことよりっ、これからは他の楽しいお喋りしたいですっ」

「おう、わかった」

「あ、でもでもっ、シュエリアさんのお話が楽しいなら、ちょっとならいいですよっ」

「こういうとこだよ、こういうとこが可愛いんだよアイネは。義姉さんにも見習ってほしい」

「えー。これは単にあざといだけだよー。お姉ちゃんのが可愛いよー」

「何言ってんだコイツ」

「ユウキ、それは思うだけにしとくべきですわ……」


 いや、だって、アイネより可愛いとか嘘ついてやがるしな……。


「あざとくないですっ! 兄さまに好かれる妹になろうと努力してるんですっ」

「そういうのがあざといって言うんじゃないの……?」

「まあ~アイにゃん~なの~で~」

「っていうかむしろどっちでもいいし。アイネが可愛いのは事実だからな」

「そして相変わらずの妹バカですわね」

「シュエちゃんと結婚してもそこはそのままなんだねぇ……」

「良いだろ別に……」


 いや、本当は嫁が居るのに妹好きなのはよくないかもしれないが、そもそも一応ハーレム設定なので、まあこれもアリだと思いたい。アリだよな?


「なんにしても、これでアイネの悩みも解決したわけだし、ようやくこの話も終わりだな」

「尺的に大分使いましたわね……さっさと夕飯にしたいですわ」

「まあ正直、ユウキの悩みとか無いのか気になるけどね」

「え? 夕飯にしたいですわ」

「俺の話より夕飯が勝ったようなので夕飯にしようか」

「あんたここまで大事にされてなくてよく平気よね……」


 そう言って俺を憐れむアシェだったが……いや、大事にされてないってことは……無いだろ。


「まあでも、言うほどの悩みってものもな……」


 正直、無いとは言い難いが、わざわざ飯を後回しにするようなものもないし。

 何より。


「面白い話にはならなそうだからな」

「まあここまでも別に面白くなかったけどね」

「確かにそうかもしれないですわね?」

「おーい、お前が言うなー」


 この話題出して来たのコイツなのに……。

 まあでもおかげで暇は潰せたので、シュエリア的にもこれでよかったと、思っていればいいなぁと思いながら俺はとりあえずその場を後にし、夕食(生卵)の準備を進めるのであった。


ご読了ありがとうございました!

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次回更新は金曜日です。

次回更新からWordのレイアウト変更に伴い改行を減らした編集をしていますが、読み難い、と判断した場合また改行を増やします。

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