相変わらず無駄話が捗りますわ
「この話がいつ終わるのか考えてみたんだけれど」
「まーた変な事を考えてるな」
いつも通りの昼、いつも通り変な事をのたまうシュエリア。
なんかこんな話最近もしたような。
「日常に終わりがないような話を、前にしたわけだけれど」
「おぉ、記憶喪失ではなかったか」
「でも作者も流石にネタ切れとかすることがあるのでは? と思う訳ですわ」
「あるあ……いや、ねえよ。作者とか居ねえし。あるとしたら俺達がな」
「前にあんだけ居る前提で話してよく今更居ないとかいいますわね……」
いや、まあ……あの時はそういう前提で話していたが、それはあくまでも会話を円滑に行う上で一々訂正するのが面倒だっただけで……。
しかしこれを言ってもあんまり意味はないだろうな。そもそもそれなら居ない前提で話を進めればよかったと言われてしまえば、そうだし。
「とにかく今日は居ない体なんだよ」
「まあ、いいけれど。で、絶対日常ってネタ切れするじゃない? 毎日が面白いなんてこと、そんなに無いですわよ」
「俺はお前と一緒で毎日面白いけどな」
「え…………ま、まあわたくしも……そうだけど」
「それはよかった」
「でも、それじゃあこの話、終わっちゃいますわ?」
「終わっちゃ駄目か?」
「せっかくだから、話が広がりそうな方に会話をしたいですわ?」
「いや、でも。俺らの結論的には毎日楽しい、だろ?」
「そうだけど! そうだけど、それはわたくし達の話でしょう? 今回はあくまで一般論として、ですわ」
「まあ、そういうことなら」
まあ、シュエリアと一緒ならいつでも楽しいのは本当だが、暇なのもまた事実だ。
シュエリアもそうなのだろうから、せっかくだしこの話題に乗っておこう。
というか、現代日本でエルフが、一般論って。
「で、飽きますわよね? 日常」
「うーん、まあ。確かにシュエリアが来るまでは毎日楽しい……なんてことはなかったな」
「エロゲはやってたけれど?」
「ま……まあ。唯一の楽しみというか」
「唯一の楽しみがエロゲとかクソみたいな人生ですわね」
「おまっ……人が気にしてたことを平然と言ってのけやがる」
ぶっちゃけ俺自身も楽しみがエロゲしかないことは当時気にしてはいたわけだが……。
「でも実際楽しみがそれしかないっていうのは暇そうよね」
「まあな」
「エルフも草花愛でるくらいしか楽しみがなかったからわかりますわ」
「それと同列にされるのはなんか嫌だな」
流石に草花愛でるだけよりは楽しいよ、エロゲ。いや、人によるかもしれないけどさ。
「今はユウキと居るだけで楽しいから恵まれてますわね」
「俺もシュエリアが来てからは毎日楽しいな」
「何をするかも大事だけれど、日常はずっと続いていくのだから、ともに過ごす人も重要ですわね」
「そうだな、楽しい仲間が居るといいよな」
「まあわたくしの場合楽しい夫がいるからですわね」
「俺もまあ、面白い嫁がいるからだな」
「ユウキ目線で言えば面白い嫁と更に、可愛い美少女が侍っているものね?」
「その言い方やめてくれませんか」
「事実なのに」
「侍ってはねぇだろ、集られては居るけど」
「仮にもハーレムの主が集られてるとかいうのはどうなんですの……」
そうは言ってもな……侍らせてる気は無いし、なんかこう俺に集まってる感じとかそれこそ集られているという感じがするんだが。
「……っていうか、アレですわね?」
「ん?」
「最近わたくしとユウキの二人っきりのこと、多くないかしら」
「……確かに」
そういえばあんまり気にしていなかったが、確かに結婚してからというもの、なんだか俺とシュエリアの二人っきりのことが多い気がする。
「もしかして皆、わたくし達に遠慮していたりするのかしら?」
「アイネはいい子だからあるかもしれんが、他はわからんな」
「出た出た。妹バカ」
「兄っていうのはそういうものだよ」
「全国の兄を勝手にシスコンにするんじゃないですわ」
「兄代表の俺が言うのに?」
「なんで自分が代表だって、そんな堂々と言えるんですの」
「選ばれたからな」
「え、何が、というか何に」
「アイネに、俺が、兄代表に」
「思ったよりブラコンとシスコンで勝手に完結してやがっただけですわね」
そう言って「ふぅ」と一息ついて呆れ顔のシュエリアだが、何を思ったのだろうか。
「思ったよりとは」
「いえ、案外本当に兄日本代表とかあるのかと思って」
「そんなもんはないだろ。多分」
「案外そういう妙な組織とか、グループがあるかもしれないですわよ?」
「この国変だから、一概に無いとは言い切れない」
実際、日本唐揚協会とか全国丼連盟とか、その辺はまだいいが、日本エクストリーム出社協会とかは本当に意味が分からないし。
「むしろ日本兄貴協会とか勝手に作って社団法人として代表を名乗ると言う手があるか」
「そんなことになったら離婚しますわ」
「じゃあ日本エルフ愛好会とか」
「殺しますわ」
「エスカレートするだと!? ならっ、全国シュエリア至高協会とか」
「もはやそこまで来ると宗教ですわね……」
「確かに?」
この場合シュエリアを偶像として俺が教祖という形になるのだろうか。
「でも実際、お前って全能だろ?」
「まあ、間違っちゃいないけれど、そこで『全知全能』という言葉を使わなかった事にキレてもいいかしら」
「全知ではないだろ」
「実際知ってることしか知らないですわね」
などと、某委員長みたいなことを言っているが、大抵そういうもんだよな。
「だろ。でも全能ってだけで凄いよなぁ」
「できないことないものね」
「ギャグじゃなかったら許されないバランスブレイカーだよなぁ」
「ギャグだったらぶっ壊れ性能していても笑いで誤魔化せるからいいですわよね」
「それそれ」
「で、話思いっきり逸れてますわね?」
「……あぁ、それな?」
結局どんな話してて、ここまで流れて来たんだったか。
「皆、最近集まりが悪いのは遠慮しているのかしら?」
「あぁ、そんな話だったな」
うーん、しかしこればかりは本人達に聞かないことにはなぁ。
「集めて聞いてみるか」
「ん、ですわね」
ということで、メンバー招集より30分経過。
「で、なんで呼ばれたのかしら」
「きっとお昼寝ですよっ!」
「あらぁ~」
「この人数でゆう君を囲って……どういう陣形で寝るの?」
「立って……とか?」
「なんでお昼寝前提なのよ、違いますわよ」
アイネの昼寝発言に思いきり釣られて話す面々に前提から否定するシュエリア。
ていうか立って寝るって、そんなことできんのか? いや、できそうだな、コイツ等なら。
「じゃあ何よ?」
「なんで最近皆わたくしの部屋に集まらないんですの?」
「なんで集まるの前提なのよ……」
「いつも勝手に集まるじゃない」
「いや……だから、勝手でしょ? 集まろうが、集まるまいが」
「……そうですわね?」
「オイ待て、丸め込まれるな」
俺の嫁は妙なところで馬鹿というか、なんというか。
そもそも聞きたいことをしっかり聞けていないではないか。
「皆が俺とシュエリアに遠慮してるんじゃないかって話だ」
「ん? あー。あんたら新婚に遠慮してるんじゃないかって話?」
「そうそう。それですわ」
「不老不死の夫婦に遠慮なんてしないわよ。あんたらこれから先、飽きるほど一緒にいられんでしょ」
「飽きないですわよ?」
「だな」
「サラっと人の言葉尻取ってイチャ付くのやめてくれない? 比喩でしょ? 言葉の綾よ、わかる?」
アシェがコイツ等めんどくさいと言わんばかりにツッコんでくるが、実際俺、不思議なことにシュエリアと一緒に居て飽きる気がまったくしないのだ。
なので割と本心から出た言葉なんだが……。このタイミングではよろしくなかったようだ。
「でもそれなら、なんであんまり来ないんですの?」
「母様に寝取り術を学んでいたからよ」
「これって何かしら、謀反?」
「サラっと当たり前のように寝取る発言しやがるとは流石アシェって感じだな」
「だから気にしなくていいわよ? その内頻繁に顔を出すようになるから」
「これ気にしない新妻は居ないと思いますわよ?」
「警戒されたらヤり辛いじゃない」
「なら黙っていればよかったのでは」
こんな話打ち明けられて、警戒しない奴は居ないと思う。
「ま、まあいいですわ。で。トモリとシオンはどうなんですの?」
そう言って話を進めようとするシュエリアだが……いいのか? これ。
「わた~し~は~。暗殺~術~の~訓~練を~してい~たので~」
「何に使うか聞いても?」
「暗殺~ですね~」
「……誰をですの?」
「タ~ゲット~を~」
「いえ、だから、ターゲットは誰ですの?」
「…………」
「なんで黙るんですの?!」
これはなんだろう、俺の嫁、狙われてるんだろうか。
ま、まあでも、俺の嫁は最強だし……一応お互い不老で『不死』だし。大丈夫だろう。多分……。
「ま、まあ……トモリもいいとして、シオンは?」
「普通にシュエちゃんを消す作戦を考えてたんだけどね?」
「普通にそういうの考えるのやめてくださらないかしら」
「シュエちゃん無駄にスペック高すぎて無理だから、やっぱり正攻法としてゆう君を落とそうかなぁと」
「それが正攻法だと思われているのが凄く癪なんだが」
「え?」
「なんだ、その『え?』は」
「シュエちゃん倒すよりは余程現実的じゃない?」
「俺が義姉さん好きになるのが現実的なのか……?」
「そこ疑問に思われるとすっごく悲しいんだけど……」
いや、でも、流石に無いだろう、俺はシュエリアの事好きだしなぁ……。
…………でも、嫁にハーレムを提案されて受け入れてしまう程度には美少女好きの俺だ、義姉さんは無いとしても、他は断言できないか。
「まあシオンの作戦はどうでもいいとして、後はアイネですわね?」
「にゃ、私は遠慮してましたよっ! もちろんですっ」
「あら、思ったよりユウキの予想通りですわね」
「そういう気配りできる可愛い妹の方が兄さまに好かれるかと思いましたからっ」
「そして相変わらず打算で動いてますわね、この猫」
「まあそういうところが可愛いんだけどな」
「この妹にしてこの兄ありですわね……ホント、シスコンで困りますわ」
「まあそれ以上にシュエリアが好きだけどな?」
「あーはいはい、愛してますわー」
「全然愛情感じねぇ……」
なんていう雑対応、これは嫉妬か? 嫉妬なのか?
「俺とアイネにそこまで嫉妬しなくても、兄妹だし」
「まあシュエリアさんよりいっぱい一緒にいますけどねっ!」
「……最近はシュエリアと一緒に居る時間の方が長いぞ?」
「シュエリアさんより一緒に寝てる時間長いですけどねっ!」
「…………でもほら、シュエリアと俺は夫婦の……アレ、してるし」
「その内シュエリアさんよりしますけどねっ!」
「なんでそんな張り合う?! ほら見ろアイネ! シュエリアの顔が笑ってるのに殺意しか感じないぞ!!」
「大丈夫ですっ兄さまは不死なのでっ」
「そういうことではないっ!」
「あっ、なんで張り合うかっていうのは、アレです、一応ハーレムメンバーとして正妻に対する下克上は狙ってますからっ!」
「うん、なるほど! ここにいる連中全員敵対心向きだしか!!」
誰一人シュエリアから俺を奪う心づもりを隠そうとしない……なんて正々堂々としているんだろう。
「これは大変だな? シュエリア」
「え、わたくしですの?」
「え、うん。違うのか?」
「ハーレムの主であるあんたの仕事でしょう? これ」
「ん、なるほど。しかし妻として何かしようとは思いませんか。シュエリアさんや」
「面白くなってきましたわね?」
「うちの嫁ポンコツかよ」
「何言ってんですの、有能過ぎるくらいでしょう?」
「いやだって、面白かったら旦那すら差し出しそうだし」
「しないですわよ」
「面白そうだからハーレムやれって言ったけど?」
「……しないですわよ…………多分」
「ホントか……?」
えらく自信なさそうなんだけど、本当に大丈夫なんだろうか。
「っていうか本当に、なんでコイツがこんなにモテるのかしら、不自然過ぎてこれがラノベ空間だと断定する根拠にすらなりそうですわね?」
「俺がモテるのそんな不自然っすか」
「むしろ自然だとでも?」
「……いや、そうは言わないが」
「なんですの?」
「せめて嫁であるシュエリアくらいは、俺の事モテると思ってくれてもよくない?」
「ガハハハハッ、笑止!」
「キャラ違いな言葉出て来るくらいありえませんかね」
「ですわね?」
「マジかぁ」
まあ実際、アシェは俺の体しか見てなさそうだし、トモリさんは食事として見てるだろうし。
まともに俺の事好きなのってシュエリアとアイネくらいか……あ、一応義姉さんもか。
ん? いや、三人の美少女に純粋に好かれてたら十分じゃね?
「というか、話逸れてない?」
「ゆう君とシュエちゃんがイチャついて話逸れるのはいつものことだけどね?」
「です~ね~」
「あるあるですねっ!」
「話逸れたのは貴方達が寝取る気満々だった所為ですわよね……?」
とは言いながらも「まあハーレム提案したのはわたくしだけれど」と呟くシュエリア。そして「うーん」と唸った後に話を続ける。
「でも、ユウキがわたくしより他の誰かを好きになるとか絶対ないですわね?」
「どこから来るのよ、その自信」
「どこからって、だってわたくしとユウキ、凄く相性良いですわよ?」
「えっちのでうかっ」
「噛みながらとんでもないこと聞きますわね……違いますわよ。普通に、男女仲の相性がって意味ですわ」
「どっちにしろヤる相性に聞こえるのはなんでかな?」
「シオンが色情魔だからですわね」
「わた~しも~そう聞こえ~ました~」
「トモリは淫魔でしょう。それこそソッチに聞こえるってものでしょう」
「偏見~かと~」
「そうなんですの?」
などと、またすっごくどうでもいい話をしている俺の嫁とハーレムメンバー……。
話が逸れてるって話をしたのに、もう話逸れてるじゃねぇか。
……まったく。
「ねえユウキ、ユウキにはいやらしい意味に聞こえたかしら?」
「ん? いや――」
なんだかんだ、コイツ等と居ると話が尽きないな……。
日常に終わりは無いし、不老不死の俺達夫婦にはそれこそ永遠だが……そんな日常も、このメンバーでならずっと楽しく続いていきそうで……きっと、終わり無く続いていくのだろう。
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