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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
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旅行は行くまでも行った後もだるいですわ

「新婚旅行って行く意味あるんですの?」

「わぁお……」


 新婚さんである俺とシュエリア。昨日は式疲れもあったので決行しなかったが、今日こそはと新婚旅行に行こうと誘おうと思っていたら、まさかの発言が飛んできてしまった。


「無いですわよね? 意味」

「まあ……意味は、無いな……多分」


 正直、なんか記念というか、そういう意味合いはある気がするが、実際嫁に行く意味ないよね? と言われてしまうと「記念だから」とも言いにくくなってしまった。


「ですわよねぇ」

「……うん」


 どうしようか、凄く誘い難い。


「……もしかして、行きたいんですの?」

「え、まあ、うん」

「……ふうん」


 シュエリアが何を考えているのかはわからないが、何かを考え込んでいるのだけはわかる。

 もしかして新婚旅行に行くか、悩んでいるのだろうか。


「ねぇユウキ」

「ん?」

「新婚旅行ってそんなにいいものかしら?」

「え。いや……どうだろう」

「いいものかどうかもわからないことの為にやる気のない嫁を動かすのはいかがな物かしら?」

「う、うーん」


 新婚早々、やる気のない嫁……すごくシュエリアらしいといえば、らしいのだが。それを堂々と言うのは……らしいといえばらしい。あれ? 俺の嫁、駄目な奴では?


「でもほら、秋葉原グルメツアーするんだろ?」

「……わざわざ新婚ですることでもないですわよね」

「今更気づいてしまったのか」


 うん、正直新婚にもなってわざわざすることじゃないとは思う。

 でもなあ……せっかくだから、シュエリアと一緒に……。


「うーん……」

「……はあ。じゃあ言い方を変えますわね」

「ん?」

「新婚夫婦で秋葉原でご飯を食べ歩くのと、家でゆっくり可愛い妻とイチャイチャするの、どっちがいいんですの?」

「……後者で」

「んー? 聞こえないですわ?」

「…………シュエリアとイチャイチャしたいです」

「ですわよね」


 この二択で秋葉原を選ぶ奴いるだろうか、いや、居ない。


「で、イチャイチャしてくれるんだよな?」

「モノのたとえですわ」

「…………」

「な、なんですの」

「……………………」

「っ……わ、わかりましたわ。わかったから、その捨てられた子犬みたいな目で見るのやめるんですわ」

「どちらかというと子猫のつもりなんだが」

「クッソどうでもいいですわね」


 いやいや、猫派の俺的にはここ結構重要。シュエリアにはどうでもいいようだが。


「はぁ、で、どうイチャイチャしたいんですの?」

「まさか嫁とイチャイチャしたいって話で思いっきり溜息吐かれると思わなかったわ。結構ショック」

「はぁっ……で、どうしたいんですの?」

「また露骨に……。いや、そうだな……膝枕して欲しいかも」

「ユウキって結構甘えん坊よね」

「悪いか。男っていうのは皆実は甘ったれなんだよ」

「勝手に男代表みたいな面して情けないこといいますわね」


 でも実際、男だって甘えたい時はあるのだ。俺だけが特殊ということはない……はず。多分。恐らく?


「で、して貰えるんでしょうか」

「……ふむ。いいですわよ」


 そう言ってシュエリアはポンポンと膝を叩く、それを見てから、俺は遠慮なく、シュエリアの膝に頭を預ける。


「で、満足ですの?」

「できれば頭を撫でて欲しい」

「欲深いですわねぇ」

「でもそう言いながらも撫でてくれるシュエリアが好きなんだよなぁ」

「そういう誘導の仕方は卑怯じゃないかしら……」


 などと言いながらも、頭を撫でてくれるシュエリア。やっぱりいいなぁ。膝枕してもらって頭撫でられるの、すごくいい。


「……ユウキ」

「んー?」

「好き」

「……はい?」

「大好き」

「…………え?」

「愛してますわ」

「…………ど、どうした?」

「どうしたっていうか、普通に、夫に愛を囁いているだけですわよ?」

「お、おう……」


 まあ確かに……俺ら新婚だし……特段変でもないか。

 ……いや? そうか? 俺の嫁こんなこと言う奴だった?


「というか、これだけ好きって言われているんだから、わたくしにも何か言うべきではないかしら」

「そういうもんですか」

「そういうもんですわ」


 うん、まあ。そう言われればそういうものな気もする。

 でもなあ……うーん。


「……好きだ、シュエリア」

「えぇ、わたくしも好きですわよ」

「…………だ、大好き」

「わたしもだーい好きですわ」

「……………………愛してる」

「えぇ。相思相愛ラッブラブですわ」

「なにこれめっちゃ恥ずかしい!」


 あれ? おかしいな? 以前膝枕されながら好きだって告白したときは笑われたんだけどな?

 なんでコイツ嬉しそうなの? そこは笑うところでは?


「ユウキってなんでわたくしとイチャ付くと照れるんですの?」

「むしろなんでお前は平気なんだ、というか笑えよ」

「何の話ですの……? っていうか、本当のこと言ってるだけなのに照れる必要ないですわ?」

「さいですか」

「さいですわ」


 本当のこと……か。まあ、うん。なんだろう、やっぱ照れるだろ、これ。


「あー、嫁とイチャイチャするの、思ったよりいいなぁ」

「食べ歩きよりよっぽど有意義じゃないかしら」

「だなぁ」

「ということで、他にないんですの? イチャイチャ」

「んーそうだなぁ……」


 俺はシュエリアの膝の上から嫁の顔を見上げて考える。何か、何かないだろうか、いい感じにイチャイチャできる方法。


「シュエリア」

「エロいことはしないわよ」

「…………まだ名前しか呼んでない」

「違ったんですの?」

「……違くはないけど。っていうか別によくないか? ほら、夫婦なんだし」

「駄目ですわよ。こんな昼間から。誰に見られるか分かったもんじゃないですわ」

「まあ……そう、だな」


 残念だ。非常に残念だ。せっかく夫婦になっても思った時にできないとは。


「夜になったら、いいですわよ」

「おお……今から夜が楽しみだ」

「まあ、アイネとトモリに話を通さないといけないのだけれどね、寝室一緒だし」

「新婚だし、許してくれるだろ。多分」

「どうかしら」


 アイネは俺と一緒じゃないと寝つきが悪い子だから、ちょっと心配ではあるけど。うーん。


「いっそ四人でするとか」

「お前はなんでそういうことをサラっと言えてしまうのか」

「天才だからですわ」

「さいですか」

「さいですわ」


 凡人の俺には天才の考えることはよくわからない……ってことにしておこう。実際はコイツが阿保なだけな気もするが。


「どちらにしても、今できるイチャイチャは他にないんですの?」

「うーん……他にか」


 といっても、俺もこの手の絡みは経験ないからな……正直これで結構十分幸せだし、これ以外……これ以上? うーむ。


「キス……とか?」

「駄目ですわ」

「なんで」

「恥ずかしいから」

「おーい」


 ここに来て恥ずかしがりますか、マジか。


「さっきは散々好きだの愛してるだの言ってて恥ずかしくないって」

「言うは易しってことですわね」

「うわあ。ここでそういう言葉使いますか」


 なんかすっげぇ傷ついた気がする。


「じゃあ胸を触らしてください」

「じゃあってなんですの、じゃあって」

「駄目?」

「駄目に決まっているでしょう。キスが駄目なのになんで行けると思ったんですの?」

「夫婦だから?」

「便利ですわね、夫婦」


 いや、便利っていうか、わりと至極まっとうな関係性……でもないのか? いやでも、夫婦だし、新婚だし。よくない? 駄目?


「ならどうするんだよ」

「……添い寝?」

「おぉ! って、いや、まて。ソファで? 狭くね?」

「っていうか無理ですわね」

「よし、俺の部屋に行くか」

「いやですわ、めんどくさい」

「えぇ……」


 イチャイチャにあんまり乗り気じゃない新婚の嫁さんだった。部屋から動くのはめんどくさいようだ。


「なら、ハグとか」

「ふむ。いいですわよ?」

「よし来た!」


 ここに来てようやくお許しが出たので、俺はシュエリアの膝枕から起き上がりシュエリアにハグを決行した。


「…………うん、なんか幸せって感じだな」

「そーですわね」

「おっと、あんまり幸せそうでない」

「いえ、別に嫌なわけでは無いのよ? むしろ幸せですわ。でも、膝枕して頭撫でている方がわたくし的には、よかったですわ」

「ふむ、なるほど」

「それにこれ、いつ終わるんですの?」


 いつ終わるのか、か。確かにこれ、喋りにくいし、正直ずっとこのままだとなんもできないし、なんならシュエリアの顔も見えない。


「うーん……満足したら、かな」

「いつ満足するんですの?」

「えぇっ? っと……うん、よし、満足」

「こうも素早く満足されるとそれはそれで若干イラっとしますわね」

「いや、どうしろと……」


 うちの嫁は相変わらず扱いに困るめんどくさい奴だな……。


「まあでも、ユウキが満足したなら、次はわたくしですわね」

「お。シュエリアを満足させろと?」

「ですわ」

「で、何を?」

「胸に抱きよせて、頭を撫でて欲しいですわね」

「ほうほう」


 胸に抱きよせて、頭を……ね。


「こんな感じか? よしよし」

「ん、そうですわ。相変わらず頭撫でるの上手いですわね」

「まあ、アイネで撫で慣れているからかな」

「それがちょっと癪だけど、まあ、今回に限ってはいいことですわね……」


 どうやらうちの嫁さんは俺に頭を撫でられたかったようだ。胸に抱き寄せてはいるものの、チラッと見える表情が思いっきり緩みきっている。


「はー……今日はもうこれで終わりでいいですわねぇ」

「何のオチも付いてないけどな」

「日常にオチなんてつかないのが普通ですわぁ……」

「ま、まあ……そうなんだけど」


 それを言い出すと俺らのこの物語は毎回オチ無しで終わりかねないんだが……。

 まあ、でも……今日はいいか。


「幸せなだけで終わるっていうのは、悪くないよな」

「ですわ……」


 ということで、俺とシュエリアのイチャイチャは夜まで続き、夜も夜とて、先ほどの約束通りイチャイチャして過ごしましたとさ。

 ……あぁ、ちなみに。後日このことをネタに脅さ……もとい交渉され、他の女子達に対する補填が行われたのはまた別の話である。


ご読了ありがとうございました!

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次回更新は金曜日です。

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