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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
72/266

こんなんアリですの?!

「なんでもう翌日なのよ」

「……なんでって」


 いつも通りの日常、いつもと同じく意味の分からん発言の多いシュエリア。

 今日のはまた特に意味が分からない。なぜ翌日なのか、と言われても。


「昨日が終わったから?」

「そういうこと言ってんじゃねぇですわ!!」

「えぇ……」


 じゃあなんだと言うのか。意味が分からん。


「じゃあなんだよ、何が言いたい」

「なんで結婚式終わってんのよ!!」

「……終わったからだろ」

「そういう意味じゃねぇですわ!!」

「意味わからん……」

「わたくしも意味わかりませんわ!!」

「いや……えぇ……?」


 言ってる本人も意味わからないとか、もうどうしろというのか。


「とりあえず落ち着け?」

「こんなの落ち着いていられないでしょう?! おかしいですわよ! こんなの!!」

「落ち着けって。何がおかしいんだよ?」

「何がってっ…………ふぅ…………。だって、これ、71話ですわよ?」

「…………うん?」

「70話で翌日結婚式だなって話をしていて、71話が結婚式翌日なのよ?! おかしいでしょう?!」

「……あぁ、そういう」


 なるほど、納得だ。


「理解はした。でもなシュエリア。これには深い理由があるんだよ」

「深い理由? なんですの、それ」

「結婚式なんて描いたら、なんか本当にクライマックスっぽいだろ? それだとこの物語が終わってしまう。だからそういう表現は避けたんだよ」

「いや、終わっときなさいよ。無駄にだらだらと惰性で続く物語より、よほどキレよく終わりますわよ?」

「まあ……それは否定しないが。でも、もう一つ重大な問題があってだな」

「それは?」

「作者が結婚式を見たことがない」

「……は?」

「だから、材料不足で書けないらしい」

「…………は?」

「仕方ないと思わないか?」

「思う訳ねぇですわ?!」

「あれ?」

「あれ? じゃないでしょう?! わたくし達の結婚式、そんな下らない理由で端折られたんですの?!」

「うん」

「うん、じゃねぇですわっ!!!!」

「おおぅ……」


 なんだ、やたら元気だなシュエリアさん。あの日なんだろうか。


「あの日?」

「ぶっ殺すわよ?!」

「おおぅ、いつもの『転がす』っていうマイルドな発言にすらならないレベルの怒りだったか」

「むしろ自分の結婚式を端折られてなんで平然としてんですの?!」

「いや、ほら、むしろ恥ずかしいじゃん? 結婚式を公に晒されるのって」

「じゃあなんで式しようと思ったんですの?!」

「それにほら、物語としては端折られたけど、実際俺達は結婚式したわけだしさ」

「まあ、それは……そうだけれど」

「そんなに気になるなら、振り返ってみるか?」

「回想するってことですの?」

「まあ、近いな。回想シーンは入らないけれど。結婚式について、お互いに語り合おうというわけだ」

「なるほど……まあ……今更やれることってそのくらいですわよね」

「そうそう。ということで他のメンバーも集めよう」

「なんでですの?」

「いや、客観的に見た意見とかも交えることで、より再限度が高くなる……というか」

「なるほどですわ。じゃ、アシェとシオンに声かけますわね」

「俺はアイネとトモリさんに」


 ということで、1時間後。


「相変わらず集まりいいな、義姉さんとアシェ」

「まあ、暇だったから」

「お姉ちゃんも暇だったから!」

「あんたが暇なのはおかしいだろ」


 なんで多方面に事業を展開している結城家の次期当主が暇なんだよ。ありえないだろ。


「ゆう君と一緒じゃない時は基本暇だよ?」

「なんでそうなる」

「だって仕事ってやったら終わっちゃうじゃん。でもゆう君とはいくら一緒に居ても居足りないもん」

「そっすか……」

「うん!」


 この人と話してると色々常識がズレそうなので、やめとこう、まともに話すだけ損な気がする。


「で、そんなことより、ですわ」

「結婚式~を~振り返~る~ですよね~」

「ですわ」

「どこから振り返るんですかっ?」

「印象的なシーンから、とか?」

「それで行きますわ」

「はいよ」


 ということで、皆で結婚式の印象的なシーンを考えること、数分。

 正直、今になって考えると俺、シュエリアの事しかみてねぇな……と思った。

 思い返せば返すほど、シュエリアの顔ばっかり思い浮かぶし。

 シュエリアは……どうだろうか。


「わたくしとしては印象的な場面は、やっぱり誓いのキスですわね」

「いきなりだなぁ」

「やっぱり山場なだけあって印象深いですわ」

「まあ、俺も印象強いのは、確かだな」

「ですわよね」

「そういえば、キス長かったわよね?」

「ん、ああ。そうだな」

「あれはそういう指示があったからですわ」

「だなあ」

「そうなんですかっ?」

「そうですわ。なんか『シャッターチャンス』の為にとかで。5秒くらい? した方がいいって言われたんですわ」

「そうそう」

「なんかそう聞くと感動が薄れそうね」

「たし~かに~?」

「そんな気しますわね」


 そう言われてみると、確かに、作り物というか、演出っぽくてヤラセ感があるかもしれないな……。うん。


「ねえねえ、舌って入れてたの?」

「なんてこと聞くんですのこの馬鹿は」

「義姉さん。死んでくれ」

「酷くないっ!! そこまで言う?!」

「いや、だって。ねぇ?」

「キモイよ、義姉さん」

「ちょっとした興味本位だったのに!」

「いや、そこに興味を持つのが気持ち悪いですわ」


 うちの義姉はなんでこんなにバカなんだろう。そんなのするわけないのに。


「でもさ、実際、しようと思わなかったの? 5秒もあるんだよ?!」

「思う訳ねぇだろ。なあシュエリア」

「…………当然ですわ」

「オイ待て。なんだ今の間は」

「なんのことかしら」

「……お前」


 こいつ、やろうとしてたのか…………そういえばコイツもとんでもない馬鹿だったな。


「はあ、で、他に何か印象に残ったことってみんなはあるかしら?」

「そうねぇ。料理、美味しかったわね」

「確かにそうですわね」

「シュエリアとか花嫁とは思えないくらいドカ食いしてたもんなぁ」

「シュエちゃんは色気より食い気だからね」

「両立って難しいですわよね」

「そういう話か? 今の」


 いや、まあ、色気と食い気の両立は難しそうだけどさ。


「でも正直、全体的に見栄え重視っていうか、いえ、別に味もよかったのだけれど。こう、量に不満はありましたわね」

「まあ料理の一品一品の量は少なめだったからねぇ。シュエちゃんにはあんまり合わない食事スタイルだったかな」

「でもコイツめっちゃおかわり要求してたわよね。花嫁がああだと、感動も薄れるわね」

「ぐっ……でもほら、ユウキはそういうわたくしも含めて好きなわけだし?」

「いつの間に大食いな嫁が好きな設定追加されたんだ、俺」

「違うんですの?」

「……違わないけど」

「あんたも大概シュエリアに甘いわよね」


 そういって「やれやれ」と首を振るアシェだが……俺そんなにシュエリアに甘いだろうか。


「誓いのキス、料理と出たけれど、後は他にないんですの?」

「わた~しは~衣装が~印象~的でした~」

「衣装か……」


 確かに、あれは印象的だったなぁ。


「どの辺が印象的だったんですの? アレ」

「お色~直し~で~和服になった~時が~特に~?」

「あぁ……アレね。確かにビックリしたわね、アレには」

「なんで和服だったんですかっ?」

「ん。まあ、カラードレスとかもいいかなぁと思ったのだけれど、ほら、ユウキって和装好きじゃない? だからまあ、サービスよね」

「ってことらしいけど、ゆう君的にはどうだったの? シュエちゃんの和服」

「…………」

「……? ゆう君?」

「ん、何?」

「いや、だから、シュエちゃんの和服姿どうだった? って」

「あぁ…………」


 シュエリアの和服か…………和服…………うん。


「なんですのその反応……まさかと思うけれど、お気に召さなかったのかしら?」

「ん? ああ、いや。そうじゃなくて、すっげぇキレイだったなぁって」

「まさかと思うのですが、それでぼーっとしてたのですかっ?」

「え、うん。ごめん」

「うっ……」

「? どした、シュエリア」

「なんでもねぇですわ!」

「お、おう」


 なんか急にキレられたんだが……俺、なんかした?


「うーっ」

「ん、どうしたんですの、アイネ」

「そういえば私もとっても印象深いことがありましたっ」

「なんでかしら、アイネが妙に機嫌悪いのだけれど……」

「さあ……?」


 なぜかアイネが「むぅっ」とふくれっ面で怒ってらっしゃる。なんだろう。シュエリアの阿保が何かやらかしていたりしたんだろうか。


「で、何が印象に残ったんですの?」

「兄さまがめちゃくちゃデレデレしてましたっ」

『あぁ……』

「え、俺デレデレしてたか?」

「してないですわよね…………って、自分で言ってなんか悲しくなりますわね、これ」

「でも実際してないと思うんだが」

「してましたよっめちゃくちゃデレェッとしてましたっ」

「えぇ?」


 そんな記憶、全くないのだが。


「具体的に、どの辺がデレだったんですの?」

「まずシュエリアさんのウェディングドレス姿を見て完全に見惚れてましたっ!」

「ま、まあ。そりゃあ最愛の女性のウェディングドレス姿とか見たら、多少は……でもデレデレって程じゃあないだろ?」

「そこで最愛の女性とか言っちゃう辺りがもうデレデレでしょ」

「です~ね~?」

「なんかこっちが恥ずかしくなってきますわね、やめてくださる? そういう発言」

「嫁にまで拒否られるとは」


 最愛の女性って、結構痛い言葉だっただろうか……駄目? マジで?


「誓いのキスの時なんか、珍しく兄さまが照れてましたよねっ! もう完全にデレッデレですっ」

「確かに……ゆう君が女の子相手に照れてるのとか、見たことないかも」

「確かにそうですわね……近くで見てたからわかるけれど、顔真っ赤だったわね、コイツ」

「シュエリアさんや、そういうの暴露するのやめてくれない?」

「面白いから却下しますわ」

「理由ヒデェな」


 面白いかどうかで人の恥ずかしい情報暴露するの勘弁してもらえないだろうか。


「まあシュエリアさんも兄さまにデレデレでしたけどっ」

「んな?! そんなことねぇですわ!!」

「あーでも、シュエちゃんキスの後、めっちゃだらしない顔で笑ってたよね。もう見てるこっちがむずがゆくなるくらい幸せ! って感じの笑顔だった」

「たし~かに~? シュエリア~さん~珍しく~嬉し泣き~してました~し~?」

「し、してねぇですわ?! あれはそう、目が大きいからゴミがこう! ね!!」

「マジか……嬉しかったの俺だけ……?」

「! そ、そんなこともないですわ! えっと……そう! 嬉し泣きじゃなくて幸せ泣きだから!!」

「誤魔化してるつもりでめっちゃイチャ付くのやめてくれない?」

「い、イチャついてねぇですわ!!」

「これは新婚の標準的なコミュニケーションだ」

「ですわ!」

「それをイチャついてるっていうのよ、バカップル」


 そうだろうか……? 俺からすると割と普通なことな気がするのだが……?


「とにかく、兄さまが私意外にデレデレしているのは初めて見ましたっ」

「あー、確かに。アイちゃんに『可愛い可愛い』ってデレデレしてるのはよく見るけど、シュエちゃん相手にデレデレしてるのってあんまり見ないかも」

「そうね。コイツ、シュエリアに聞こえないところで『綺麗だな』とか『可愛いなぁ』とか『どうみても世界一』とか言ってたしね」

「ふぁっ?!」

「アシェさんや、そういうのを暴露するのやめてくださいませんか」

「あと『シュエリアマジ天使』とか『抱き締めちゃ駄目かなぁ……』とか言ってたわよ」

「ホントにやめてくれない?! 恥ずかしいから!!」

「恥ずかしいのはテメェですわ!! 何考えてんですの?!」

「いや、だって!! ホントに世界一綺麗で可愛い最高の嫁だしさ! そういう風に思っても仕方なくないか?! 天使とか比喩として生ぬるいくらいだぞ?!」

「だ、だあああ!! 恥ずかしいからやめろって言ってんですわ?!」

「あーはいはい、あんたらホントバカップルね、そういうイチャイチャは二人っきりの時にしてくれる? バカップル罪で実刑下すわよ?」

「……ぐぬぅ」

「……なんかごめん」


 っていうか百歩譲ってバカップルはいいとしてバカップル罪ってなんだろう……なんの罪だ、それ。


「まあ~アイにゃん~から~したら~印象的なのも~頷けます~」

「そだねぇ。私もドレス着たらゆう君デレるかな?」

「無い」

「ですわね」

「そうね」

「ですねっ」

「確実~に無いです~」

「酷くないっ?! 全員で否定することなくない?!」


 といわれても、アレは愛する女性がするからいいものだと思うんだ。別に義姉さんにされてもなぁ……。


「それで、阿保のシオンは何か無いんですの? 結婚式について」

「うん? うーん……結婚式ではないんだけど、昨日のことで気になっていることは、あるかなぁ」

「それは?」

「うん。ゆう君とシュエちゃんさ、シたの?」

『…………は?』


 え、何。何。何聞かれてんの、俺ら。


「いや、だからさ。シたのかなぁって」

「……一応聞きますわね? 何を?」

「セ〇クス」

「おい、この馬鹿締め出すぞ」

「ですわね」

「えっ?! なんで!!」

「そうよね、変よ」

「ですっ」

「です~」

「ほら、満場一致ですわ」

「いや、そうじゃないわよ?」

「私もすっごく気になりますっ」

「わたし~も~」

『…………え』


 え、何、俺とシュエリア以外、皆敵なの?


「やっぱり皆気になっていたようだね! さあ! 白状しちゃいなよ!」

「……いや……流石に……なあ?」

「…………しましたわよ?」

「おーい、シュエリアさんや、そこは素直に答えなくてもいいのではー?」

「いいですわよ、別に、夫婦なんだから、しても変じゃないですわ」

「まあ、そりゃあそうだが。公言するもんでもないだろう」

「ちなみにわたくしは処女、ユウキは童貞でしたわ」

「公言するもんじゃないからな?!」


 この阿保、なんだってそんなことまで言うかな……あ、馬鹿だからか。


「どう~でした~?」

「思ったより気持ち良かったのだけれど、これってユウキのおかげなのか、わたくしの体質なのか、どっちなのかしらね?」

「おい、まて、ホントに待て」

「なんですの?」

「なんでそういうの素直に言っちゃいますかね、シュエリアさんや」

「ノリ?」

「そうだった、こういう奴だった」


 どうやら赤裸々に語る恥ずかしさよりノリが勝ってしまったようだ。馬鹿だ、コイツ。


「これはじっくり聞かせて欲しいなー?」

「ですーねー?」

「わ、私はそのっ興味はっ無くはにゃいのでっきっ聞くのもやぶさかではないという感じですっ」

「普通に興味深々じゃない、アイネ」

「しかたないですわねぇ」

「……何この状況」


 このままだと文章にお乗せ出来ない猥談が始まってしまいそうなんですが。


「…………俺、夕食の準備してくるわ」

「あ、逃げましたわね」

「まあ、その分シュエリアにじっくり話を聞けるじゃない?」

「ゆう君のツッコミ無しで猥談かぁ……ノンストップで盛り上がりそうだね!」

「わくわくっ」

「楽しみ~です~」

「…………はぁ」


 なんか俺の背中から今までにないくらいイキイキしたハーレムメンバーの声が聞こえるが……。

 これ以上は聞くに堪えない話が飛び交いそうなので、俺はさっさと部屋を後にして、夕食の準備を進めるのだった……。


ご読了ありがとうございました!

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次回更新は火曜日です。

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