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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
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そろそろ最終回でもおかしくないですわ!

「もう明日には最終回ですわね」

「あぁ…………。…………。…………ん? 何が?」


 いつも通りの昼間、いつも通りごろごろ暇する俺達。

 そんな中、シュエリアから出る突拍子もない言葉に、俺はついなんとなく「あぁ」と答えてしまったが、なんだって。最終回?


「だって、ほら、明日は結婚式じゃない?」

「……そうだけど」

「この物語、結婚したら終わりそうよね」

「なんてメタい発言を」


 そういうの言っちゃっていいんだろうか。どちらかというと駄目な気がする。


「最終回はやっぱり感動のラストがいいのかしら」

「最終回かどうかという議論はしないのか……まあ、でも。どうだろうな。俺達じゃどうあがいても喜劇になる気がするが」

「そんなこともないですわよ? 例えばほら、ユウキが直前に記憶喪失とか……あっ、死んだりとか!」

「まて、なんで嬉々としてそういう提案するかな」

「面白そうだから?」

「面白かないわ!!」


 誰だ、俺と死別するのが嫌で別れようとか言い出したメンタル豆腐女は。っていうか俺もう不老不死になっちゃったし、今更死ねんだろう。


「大体、不老不死の俺にどう死ねと」

「社会的に?」

「残酷!」

「人間として死んで畜生に堕ちるとか」

「よくそんなこと夫に言えるなお前!」

「じゃあ記憶喪失でいいですわ」

「じゃあってなに?! そんな手軽に記憶喪失になってたまるか!」

「えぇー」

「何でそんな残念そうなんだよ……」

「このままだと普通に結婚して終わりそうですわ。つまんねぇですわねぇ」

「お前結婚をなんだと思ってんだよ……」

「お笑いのピーク?」

「じゃあ悲劇じゃ駄目だろ!!」

「あぁ。それもそうね?」

「お前もうちょっと考えて物言えよ」


 コイツ天才なのに馬鹿だよなぁホント……天才的な要素見た覚えあんまりないけど。魔法が凄いことしかわからんし。


「なら、熱いバトル展開とか」

「急にバトルしてどうするんだよ……俺とお前の結婚に何の関係が」

「ライバルのイケメンを用意して戦いでわたくしを奪い合うとか?」

「俺が戦うのかよ! 無理無理! 俺一般人だから!」

「言っても、体は鍛えてるじゃない」

「……まあ、暇だから」

「大丈夫ですわよ、多分」

「多分で自分の婚約者戦わせるとかお前正気か」

「最悪負けたらわたくしがパワーインフレでひっくり返すから問題ないですわ」

「最初からそうしてくれない?」

「最初からスペシ〇ム光線撃つウルト〇マンなんて居ないでしょう」

「最初っからクライマックスな主人公だっているだろ」

「まあ、居ますわね。でも他力本願はよくないですわ」

「いや……えぇ……?」


 他力本願って……えぇ。俺が悪い感じになるの? これ。


「まあでも、ぶっちゃけ今更ぽっと出に惚れるほどわたくしはちょろくないから、奪い合うも何もないですわね」

「いや、ちょろいのはちょろいだろ」

「うーん。何かいい案ないかしら」

「スルーかよ……。って言われてもなぁ、普通に結婚すりゃよくない?」

「よくないですわよ。ってことでトモリ、何かないかしら?」


 そう言ってトモリさんに話を振るシュエリアだったが……。


「…………すぴー…………すぴー…………」

「寝てますわね……起きなさい! トモリ!!」

「起こすんかい」


 こんなどうでもいい話の為に起こされるトモリさんがかわいそうだが……俺一人でこれの戯言の相手するのもしんどいし、ここは犠牲になってもらおう。


「トモリ! 起きて! ほら!!

「…………はっ…………。はい~?」

「起きたわね。で、何かないんですの?」

「……? 何か~……あ~。アメ~たべ~ます~?」

「そういう何かじゃないですわ」

「??」

「いや、説明しろよ……」


 ということで、阿保のシュエリアに任せると天然と阿保で永遠とボケそうなので俺からトモリさんに話の流れを説明した。


「なるほ~ど~。では~サスペンス~は~どうでしょ~う~」

「誰か死ぬんですの?」

「はい~お二人は~不死~なので~別の誰かが~死に~ます~」

「いやいや、だから、誰か殺すなって」

「駄目~ですか~?」

「駄目ですね」

「バレずに~殺す~の~得意~ですよ~?」

「それ言ってる段階で犯人トモリさんじゃないですか」

「……あら~。バレて~しまいまし~た~」

「殺人未遂の現行犯逮捕ですわね」

「ということで、サスペンスは無しで」

「では~私が~幽霊に~なって~皆さんを殺し~ます~」

「ホラー路線にしても駄目です。殺しは無しで」


 っていうか幽霊になるってなんだ……?


「……つまんない~です~」

「トモリさんシュエリアに毒されてませんか……」

「わたくしの所為ですの? これ」


 いや、つまらないとか言い出す辺りが凄くシュエリアっぽいので、確実にコイツの影響だと思うのだが。


「うーん。でも困りましたわねぇ。これじゃあ本当にただの結婚式になってしまいますわ?」

「だからいいだろ、普通で」

「むぅ…………アイネ、アイネはどう思いますの?」

「アイネにまで振るか」


 話を振られたアイネは俺の膝の上で丸まっていたが、どうやら起きてはいたらしく、体を伸ばしてあくびをすると、膝の上でそのまま人の姿になった。


「どうって言われても、普通でいいと思いますっ」

「うん、その前にアイネ、服着てくれ」

「にゃあ」

「持ってきますわね」


 言って、シュエリアは立ち上がることなく、魔法を使って衣服を取り出す……いや、取り出したのかこれ? 作ったのか? よくわからんがまあ、服がある。


「…………ふぅ。で、普通じゃダメなんですかっ?」

「つまらないと思わない?」

「普通の結婚式……したことあるんですかっ?」

「…………無いですわね?」

「なら何故つまらないと思ったのか」

「謎ですっ」

「ノリ?」

「お前ホント、考えて物言えよ」


 ノリでこんなん言い出したのか、コイツ。そろそろ阿保の極みに到達しそうなんじゃないか?


「はぁー。なんとか面白い最終回にしたいですわねぇ」

「というかそもそも最終回なのかという件について」

「……違うんですの?」

「違うと思いますっ」

「なんで?」

「これは~日常~なので~」

「しかも至って平凡……ではないが、メンツ以外は一般的な日常なので、結婚で終わるとは限らないのではないかと」

「……でも、結婚って人生の墓場って言いますわよ」

「お前これから結婚する相手にそういう事言う?」


 正直その話は聞かないわけでは無いが、これからって時にそういうこと言っちゃうかな、フツー。


「結婚は終わりじゃありませんっ」

「始り~かと~」

「うーん、そういうものかしら」

「というかもし仮に終わりなんだったら結婚しない方がよくないか?」

「駄目ですわよそんなの」

「駄目ですか」

「えぇ。わたくしが一番だっていう証は必要ですわ」

「さいですか」

「さいですわ」


 となると、やっぱコイツの結婚=終わり。的なイメージをなんとかした方がいいか。


「シュエリアさんっ」

「ん?」

「結婚したらいっぱいイチャイチャできますよ!」

「……今よりイチャ付いたら周りから反感買いそうだけれど」

「買いますねっ!」

「駄目じゃない……」

「子作りが~堂々~と~できま~す~?」

「それはそうですわね。でも、それ物語に載せられないでしょう」

「……です~ね~?」

「新婚旅行があるぞ?」

「それ後日談的なおまけにならないか不安ですわ」

「妙なことに不安を感じる奴だな……いや、まあ、後日談っぽいけどさ」


 確かに新婚旅行とかまんま、後日談って感じだ。でもなあ、そうなると他にはあんまり思いつかないんだが。


「……こう考えると結婚しても特に新しいことは無いな」

「ですわよね」

「精々俺とシュエリアの関係が変わるくらいだ」

「別にバフとかつかないものね」

「確かに。なんのボーナスも無い」

「ゲーム脳ですっ?」

「です~ね~」


 なんかアイネとトモリさんから「コイツ等ダメだ」みたいな目で見られているんだが……俺とシュエリアは何か変な事を言っただろうか?


「やっぱり最終回じゃないかしら」

「でもまだやってないこととか、色々あるぞ」

「……そうですわねぇ」

「食ってない料理も色々あるだろ」

「……ですわね?」

「まだ終わるには早くないか?」

「ですわね!」


 よし、なんか知らんけど、もう人生終わり的なイメージは払拭できたみたいだ。多分。


「そうなると、やっぱり新婚旅行は食べ歩きですわねぇ」

「秋葉原でグルメツアーだっけ」

「ですわ」

「えっ?!」

「あら~……」

「ん?」

「なんですの?」

「いえっ……なんていうかっ」

「しょぼい~です~ね~」

「そ、そんなことないですわ! ね、ユウキ!!」

「え、あぁ…………。…………。うん」

「なんですのその間は?!」


 いや、だって、なあ? 新婚旅行で秋葉原…………だしなぁ?


「それは流石にどうかと思いますっ」

「です~ね~」

「マジですの?」

「マジですっ」

「です~」

「う、うーん……」


 流石にアイネとトモリさんに言われてシュエリアも思うところあるようだ。

 何かを真剣に考えている。


「…………二人は、どこが良いと思いますの?」

「そうですねっ。ベタにハワイはどうでしょうかっ」

「なるほど?」

「わたし~は~夢の~国も~あり~かと~?」

「それ秋葉原と大差ないですわ」

「そんなことはねぇだろ……」


 別に秋葉原が悪いわけでは無いが、流石に夢の国と大差がないかと言われたら、それは……な。


「でも海外まで行くのだるいですわよ?」

「そうですかっ?」

「えぇ、作者が」

「……なんのお話ですかっ?」

「ほら、取材とか」

「なんの~話~でしょう~?」

「リアルの話ですわ」

「やめい」


 なんつうメタい理由で旅行先決めようとしてんだコイツ。


「というかよく考えたら旅行自体だるいですわね?」

「話の根幹に関わる問題発言来たなコレ」


 そんなこと言い出してしまえばもういっそ旅行しなくていいのではないかという話になってくる。


「……でも、アレですわね」

「ん?」

「なんだかんだ、結婚しても今と変わらないってことは、結婚した後もこういう日々が続くのよね」

「そうだな」

「楽しいですわね、それ」

「……だな」

「ですねっ」

「はい~」


 確かに、そうかもしれない。俺達二人が結婚しても、皆とはずっと一緒で、楽しく暮らせる。

 それならこれまでと変わりない日常が続いて行くってことだ。このだらだらと、楽しい毎日が。


「なんか、そう考えたら最終回とかどうでもいいですわね」

「まさしく、今日の会話が無駄になる問題発言出たな」

「まあ実際どうでもいいですがっ」

「です~ね~」

「まあ、そうなんだけどさ」


 そんなん気にして生きてる奴なんて、普通、いないわけで。

 どうでもいいことこの上ない話だったのだ、最初から。


「ということで、アレですわね」

「ん?」

「ゲームでもしますわよ」

「……はぁ。了解」


 なんというか、今回の話にも特にこれといったオチは無く。

 俺達は結婚式というイベントを前にしても、いつも通り、今日という日をだらだら楽しく過ごすのだった。


ご読了ありがとうございました!

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次回更新は金曜日です。

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