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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
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花の話ですわ

「桜を見る会をしますわ――」

「まてまてまてまて」


 いつも通りの昼にいつもよりとんでもないことを言い出すシュエリア。

 こいつ怖い物無しか。


「何よ?」

「その話は具体的にしてはいけない」

「そうなんですの?」

「そうなんですよ」


 なんというか、わざわざ危険物に関わる必要はない。というか、これネタにして大丈夫なんだろうか……。政治と宗教には関わらない主義の俺的にはアウトなんだけど。


「じゃあ花見の話できないじゃない」

「そんなこともないだろ……」

「そうなんですの?」

「そうなんですよ」


 別にそこの関連性なくても花見の話はできるだろうに……。


「じゃあ普通に花見の話をするけれど」

「うん」

「花なんか見て何が楽しんですの?」

「お前がそれ言う?」


 花を愛でるだけで数十年は暇を潰せたらしいエルフがいう事だろうか、これ。


「わたくしは花には飽き飽きですわ?」

「あぁ……まあ、そうか」


 そう言われれば、逆に数十年も花見で暇を潰してしまったから今更楽しくもないのかもしれない。


「でもまあ、花見の楽しみなんて人それぞれとは言え、基本はアレだろうしなぁ」

「アレ?」

「まあなんだ、飲んだり食ったりだよ」

「飲み食いするんですの?」

「そうそう。花を見ながら、酒を飲んだり、上手いもん食ったり、後はまあ、常識外れじゃない範囲で騒いだりとか?」

「ふうん……それこそまさしく花より団子といった感じですわね」

「まあ、そうだな」


 中には純粋に桜を楽しんでいる人もいるだろうが、恐らく現代日本での花見は大半が飲み食いメインだと思われる。


「まあ食べたり騒いだりは好きだからいいけれど、花を見てもつまらないわよね?」

「個人的意見だよなそれ。楽しい人も中に入るって」

「そうかしら……」

「そうだよ」


 というか花を愛でて暇潰してた本人がよくいうよな、ホントに。


「ユウキは花を見て楽しいんですの?」

「んー……まあ、桜を見て綺麗だな、とは思うよ。楽しいかと聞かれるとそれは違う気がするけれど」

「ふうん。わたくしを見てもキレイですわよ?」

「そうだな」

「楽しい?」

「楽しくは無いな」

「よーし殴りますわ」

「なんで?!」


 こんな理不尽あってたまるか! 誘導尋問みたいなもんだろ今の。


「わたくしと一緒にいて楽しくないとか、そんなの許しませんわ」

「いや、一緒にいて楽しいぞ? 見てるだけで楽しいかと言われたら……あ、楽しいかも知れない」

「何かしら、今の楽しいには何か別の意味を感じたのだけれど」

「まあ実際、面白い容姿というより、面白い行動が目立つ嫁だからなぁ」

「滑稽と言いたいのかしら」

「色物だなぁとは思う」

「やっぱ蹴りますわ」

「パワーアップしてね?」


 殴りより蹴りの方が痛いと思うんですが、なぜパワーアップしてしまったのか。


「面白くないって言ったら殴るし、面白いって言ったら蹴られる、どうしろと」

「無理ゲーですわね」

「自分で言っちゃう? そういうこと」


 このまま行くと本当に殴るか蹴るかされそうだな……。


「まあ冗談はいいとして、ですわ」

「冗談でしたか」

「いやですわ、愛する旦那にDVするような嫁ではないですわ」

「本当に?」

「えぇ…………本当に」

「今の間はなんだ」


 本当かどうか非常に怪しいものである。コイツの場合前科があり過ぎるし。


「まあまあ、ほんのスキンシップ程度ですわ」

「可愛げにいっても暴力なんですが」

「ユウキは好きでしょう? そういうの」

「俺殴られるの好きなの?」

「蹴られる方が好きですの?」

「そういう質問じゃねぇよ。暴行さる趣味はないってことだ」

「えぇっ?!」

「何そのマ〇オさんみたいな驚き方!」

「だってユウキ、マゾでしょう?」

「ちがっ……うと言い切れない自分が悲しい」

「ですわよね」


 うんうんと満足気に頷くシュエリアに否定の言葉が浮かばない自分にも悲しくなってくる……どうやら俺はシュエリアから暴行される分にはさして嫌ではない様だ。


「で、ユウキの所為で話が逸れたけれど」

「俺の所為なの?」

「ユウキの所為だけれど、花見をしたいですわ」

「俺の所為なのか。花見な、いいんじゃないか。春らしいイベントだ」


 にしても花見か、随分と長いことそんな情緒あるイベントはしてなかったような気がするな。

 いつからだろうか、桜を見ても特別な何かを感じなくなったのは……。


「で、花見をするとなったら何をすればいいものかしら」

「そうだな……まずは場所取りじゃないか」

「場所取りなんてするんですの? メンドクサイですわねぇ……まあ、どうせやるのはユウキだけれど」

「当たり前のように俺にやらせようとするのな」

「あら、か弱い妻にそんなことさせる気ですの?」

「どこがか弱いって?」

「あん?」

「そういうとこだよ……」


 どう考えてもこの暴力エルフより俺の方がか弱い気がする……。


「で、場所取りはユウキがするでしょう?」

「はいはい、やりますよ」

「それで他には何をするんですの?」

「まあ、飯食うなら料理……弁当だな」

「そう……まあそれはユウキがやるとして」

「それは? これもだろ」

「嫌ですの?」

「そこは分担して欲しいなぁと」

「じゃあアイネにやらせようかしら……」

「自分でやるという選択肢はないのか」

「アイネの方が料理上手いですわよ?」

「……確かに」

「自分で言っといてなんだけど肯定されると腹立つわね」

「どうしろと」

「妻を立てておくべきですわね」

「思ったより正論」


 確かにそこだけ聞くと正論かなって気はしてくるんだけど、なら自分でやったらいいんじゃないのかと思うんだが。


「じゃあシュエリアが作ってくれよ」

「えー、メンドクサイですわ」

「そこをなんとか」

「そんなにわたくしの手料理が食べたいと?」

「食いたい」

「即答……仕方ないですわねぇ」


 お、どうやらやる気になってくれたようだ。


「手を抜いても知らないですわよ?」

「それを臆面もなく言っちゃうのが俺の嫁だなぁって思うわ」

「で、いいんですの?」

「まあ、お前がいいと思うならいいんじゃないか」

「ぬぅ……そういわれると……せっかくやるならちゃんとした方が……うーん」


 まあこう言っておけばシュエリアの性格上それなりにまともな弁当が出て来るだろう。

 本人も呟いていたが「せっかくやるなら」と意気込むタイプだ、コイツは。


「うーん……まあいいですわ。それより、他には無いんですの?」

「んー? そうだなぁ。宴会芸とかやるか?」

「芸ねぇ……まあそれはユウキがやるとして」

「おい、なんでとりあえず俺にやらせようとする」

「え、だって素人芸とか滑るの確定じゃない。そんなのやりたくないですわ」

「い、いや、ほら、一発芸とか、特技の披露とかさ」

「ふむ……まあそのくらいならわたくしもできますわね」

「だろ? それに俺一人で芸やったって場が持たないって」

「それもそうですわね。ユウキって雑魚だし」

「さらっと酷ぇこと言いやがる」


 まあそりゃあ、シュエリアやアイネ、トモリさんとかに比べたら確実に雑魚ではあるんだが……。


「で、他には?」

「他には特に思い浮かばないな」

「そう……なら準備はそんなに大変じゃないから、直ぐに取り掛かれそうですわね?」

「そうだな。後は桜が綺麗に咲く日時だな」

「そこはユウキに任せますわ、ほら、わたくし異世界人じゃない? 桜の見頃とかわからないから」

「さいですか」

「さいですわ」


 まあ最近ならニュースでも見てれば桜の満開予測とか見れるんだけど、シュエリアはそういうの見ないしなぁ。

 どうせ場所取りするのも俺だし、いいだろう。


「ということで、場所取りはユウキ、料理はわたくし。芸はまあ……アイネとかにも声かけてみますわ」

「おう」

「それじゃあユウキ」

「ん?」

「ゲームしますわよ」

「え? おぉ」


 どうやら花見の話はここで一旦終わりのようだ。

 こうして俺とシュエリアの花見の予定はざっくりと決まり、後日、花見をすることになったのであった。


ご読了ありがとうございました!

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次回更新は金曜日です。

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