長いですわね
「温泉に来たのはいいけれど、この話、長くないかしら?」
「うーん……」
いつも通りの日常。いつも通りのだらっと過ごす午後。いつも通りのわけわからん発言。いつもと違うのはここが旅館ということくらいか。
「温泉に来ただけでもう3話ですわよ? 長くない?」
「……いや、そんなこともないだろ……」
大抵温泉回ともなれば旅行でもありそこそこのイベントなので話数を使ったりするものだ。
というか、3話とかなんとか、またメタい話をしやがって。
「ほとんど内容も無いのに温泉来てだらだらと……こんなの長々と見せられる方の気持ちにもなるべきですわ」
「お前盛大に自虐してるけど大丈夫か? ドMなのか? 目覚めたのか?」
大体、ほとんど内容がないのなんていつものことだ。むしろ内容の濃い日常生活を送っている奴なんてそうはいないだろ。
「目覚めてないですわよ。っていうかこのままだと本当に駄弁って終わるわりますわね……さっさと温泉らしいことしますわよ!」
「え。おう」
そう息巻くシュエリアだが、温泉らしいことってもなぁ。
「あぁ、そういえばあれだな、シュエリア」
「ん? なんですの」
「浴衣に合ってるな」
「今ですの? まったく、遅いですわよ」
などと文句を垂れながらも、褒められたのは嬉しかったのか胸を張るシュエリア。
「わたくし以外はどうですの?」
「ん? うーん、まあ義姉さんとトモリさんは普通に似合ってるよな、やっぱ黒髪って相性良いなぁと思った」
「そうですわね、わたくしも黒髪ならもっと良かったのかしら」
「え、勿体ないな。シュエリアの髪綺麗なのに」
「……あんた、ホント、はぁ……」
「何」
「はぁ……」
なんか溜息吐かれてしまったのだが、なんでだろう。普通に褒めただけなのに。
「ユウキ。素直なのはいいことだけれど、あんまりストレートに女の子を褒め過ぎないことですわ」
「なんで」
「勘違いされるからですわ」
「? 別にシュエリアは俺の嫁だしよくないか?」
「わたくし以外にもそうでしょうが」
「……確かに」
むぅ……なるほど、今後気を付けてみよう……できる限り、前向きに検討し善処します。多分。
「で、アイネとアシェはどうですの」
「そうだなぁ……アイネはいつでも何着てても可愛いからなぁ」
「はいはい、猫バカシスコン」
「アシェは、まあ……普通?」
「聞かれてたら間違いなく蹴られるわね」
「そんなに?」
「素直なのは美徳だけれど、ほどほどにしないと駄目ですわ。お世辞とかも覚えないと」
「う、うーん?」
だがそれだと下手な事言えば勘違いさせてしまうわけで……女の子を褒めるのって難しいんだな。
「まあ、つまり浴衣はわたくしが一番似合っていると」
「そこまでは言ってない。個人的にはトモ――」
「素直過ぎるのはよくないですわよ?」
「……シュエリアが一番可愛いよなぁ」
「よろしいですわ」
うん、やっぱり難しいわ……。
「さて、ところでユウキ」
「ん?」
「他のメンバーはどこですの?」
「アイネとトモリさんは卓球してたぞ」
「なんで温泉まできて卓球なんですの」
「……なんでだろうな」
そういえば温泉と言えば卓球するイメージがあるけど、あれって何故なんだろう。
「おしえてグー〇ル先生」
ふむふむ……なるほど。
「どうやら狭いスペースで手頃に遊べるものとして設置されたのが初めらしい……まあ諸説あるみたいだけど屋内で限られたスペースで遊ぶのには確かにいいのかもな」
「ふうん、やりに行く?」
「そうだな、アイネとトモリさんの様子も気になるし」
ということで、俺達は部屋を出て二人の様子を見に行くことにした。
「……で、何やってんですか」
「たっきゅ~を~?」
「やってますっ」
「いや、うん……」
まあ、見た目には卓球のように見えなくもないのだが……。
「二人とも、卓球のルールわかってる?」
「球を~落とさずに~」
「撃ち合うゲームですよねっ」
「微妙に違う!」
なんだろう、イメージとしては近しい気はするのだが、微妙に違っている。
何故って、この二人、球を落とさないことを意識しているからか、卓上に球が落ちていないのだ。
つまり、空中でラリーしているだけ。卓球とは一体。
「凄く高度な遊びをしているところ申し訳ないけど、それ、間違ってるから」
「にゃっ!?」
「あら~」
俺の言葉に衝撃を受けたアイネが球を落とし、ゲームが一旦止まった。
この二人にはちゃんとした卓球を教えた方がいいかもしれない。とはいえ、俺もそこまで詳しいわけではないが……。
こんな時にもグー〇ルが役に立つ。
「なるほどなるほど……口で説明するのメンドクサイな」
「とりあえずそのサイト見せなさいよ」
「そうだな、ほれ、アイネ、これが卓球の基本的なルールらしいぞ」
「うう?…………。……なるほどっわかりました!」
「わたし~も~…………わかりました~」
「ということで、全員ルール把握したところで、古今東西でもしますわよ」
「シンプルに卓球じゃないのか……」
「だって、無言で卓球する字面とか、めっちゃ地味になりますわよ?」
「ま、まあ……」
シュエリアの言うことももっともなので、ここは素直に従っておこう。
「古今東西ですっ?」
「マスタ~アジア~?」
「それは東方不敗です」
「じゃあスーパーアジア?」
「それは東西南北中央不敗……って、シュエリアは知ってるだろうが、ボケんなよ」
「ついボケたくなってしまうのよね……温泉の魔力かしら」
そう言って「やれやれですわ」とか言ってやがるシュエリアだが、コイツがボケてんのはいつものことだと思う。
「じゃあ古今東西のルールもググるから、皆覚えるように」
ということで、俺がルールを検索し、皆が覚えたところで、ゲームスタート。
「お題は……ユウキに言われたいセリフですわ!」
「オイ待てコラ!!」
「愛してる!」
「いや待てよ!!」
俺の制止を無視してシュエリアから始まる古今東西。
お題は「ユウキに言われたいセリフ」つまり俺だ。
俺が俺に言われたい言葉言うのっておかしくない?
「可愛いっ!」
「それいつも言って――」
「キレイだ!」
「おい俺の番は?!」
「笑顔が素敵だね!」
「トモリさんっ?!」
「シたい!」
「おいシュエリアてめぇ!」
「もふもふしたいっ!」
「だからそれいつもしてる――」
「抱き締めたい!」
「だから俺の番はっ?!」
さっきから俺の番になるとシュエリアが打ち返しているので実質1対2でラリーしている。
しかもこの打ち返すときにお題を答える古今東西。間延びした口調のトモリさんには不利かと思われたがあの人ちゃっかり髪縛って普通に喋ってるし、なんでそんなにマジなんだ。
とか思いつつも、そんなラリーもお互い言って欲しい言葉が早くも出てこなくなったのか、適当な感じになり始めた……トモリさん以外は。
「君の瞳に乾杯!」
「トモリさん?!」
「えぇっと……声が可愛い!」
「にゃっ……ナデナデしたい!」
「もう無理しなくていいんじゃ――」
「俺の話を聞け!」
「いやホントにな?!」
「君に涙は似合わないよ」
「トモリさんホントどうしたんですか?!」
なんでこの人だけさっきから乙女ゲーで出てきそうなセリフばっかり並べてんだ……。
「飽きた!」
「それお前の感想だろ?!」
「暇っ!」
「それシュエリアが言いそうなやつ!」
「お前は俺の事だけ見ていればいい!」
「だからなんでトモリさんはガチなんです?!」
さっきから一人だけガチなんだよな……意外とそういうゲーム好きなんだろうか。
「えぇっと……あぁ、もう出ないですわ」
「はぁ、やっと終わりか」
シュエリアがこれ以上言葉が出なかったようなのでゲームセット。もう後半は既に俺に言って欲しい言葉じゃなかった気がするが。
「というか、そもそもユウキに言われたい言葉なんてほとんどないですわ」
「じゃあなんでお題にしたんだよ……」
「ノリ?」
「お前は本当にそれだけで生きてるな」
「褒めても何も出ないですわ?」
「褒めてないけどな」
なんで今ので褒められていると思ったのか、馬鹿なのだろうか。
「じゃあ次は私がお題を出したいです~」
「いいですわよ?」
「次は俺も参加できる内容でお願いします」
「はい。では…………お題は、性〇体位の名前です!」
「ちょっ、まっ!」
「正〇位~」
「待てって!!」
「後〇位!」
「立〇鼎っ!」
「アイネ?!……側位!」
「伸〇位~」
「騎〇位!」
「立ち〇葉っ!」
「アイネさん?!?!?!」
あまりのショックの連続に、つい球を逃してしまい……ゲームセット。
「ちょっと、何やってんですの。まだ始まったばかりですわ?」
「いや、色々受け止めきれなかったというか……」
「ふぅーいい汗掻きました~」
「楽しかったですっ」
「ま、そうですわね。ユウキが頑張ってくれたら、もっと楽しめたのだけれど」
「お……おう……」
これ、俺が悪いのか……? お題の方に多大な問題があった気がするのだが……。
「さて、そろそろシオンとアシェも探しますわよ」
「そうだな……アイネ達はどうする?」
「ご一緒しますっ」
「では~わたし~も~」
ということで、四人で義姉さん達を探して館内を歩くことに。
「それにしてもユウキは情けないですわね、体位の名称くらいで動揺しちゃって」
「いや……どちらかというとアイネの発言にショックを受けたんだが……」
「私ですかっ?」
「う、うん……」
なんでアイネはあんな名称知っていたのだろうか……。
「確かに~気には~なり~ました~」
「んー、そうですの? 別に普通だった気もするけれど」
「いやいや。アイネ、どこで知ったんだ、ああいうの」
「う? 義姉さまに教えてもらいましたっ『いつか兄さまと使うからお勉強しようね』てっ」
「あのクズ会ったらしばこう」
「シオンってアイネにとって害悪でしかないんじゃないかしら……」
「??」
あのバカな義姉は本当に余計な事ばかりしやがる……。いっぺん痛い目見といた方がいいと思う…………。あぁでも、あの人Mだから喜ぶな。どうすりゃいいんだ。
「って言ってる間にシオンですわね」
「アシェさんも~います~ね~」
確かに、言われて二人の視線を追うと、そこには義姉さんとアシェの姿があった。
しかし……。
「なんか変じゃないか、特に義姉さんが」
「そうですわね……何時も変だけど」
「余計に~変~ですね~」
「そうですかっ?」
遠目でもわかる様子の違う二人、それの原因は二人の傍に寄ったらすぐに分かった。
「酒臭っ!」
「うへぇ? あー! ゆう君らー!」
「あら、ユウキさん……ごきげんにょう」
「うん、変だコイツ等」
「二人して酔ってますわねぇ」
「お酒~いいですね~」
二人は酒を飲んで酔っ払っていた。二人の前にあるテーブルにはかなりの数の開いた酒瓶があり、かなりの量を飲んだのが伺える。
「っていうか義姉さんは酔ったらこうなるのは知ってたけど、アシェも大分変った酔い方するんだな」
「ですわね。言葉使いがお嬢様って感じですわ。呂律回ってないけれど」
「しょんなことにゃいですわ。いつもどーりれしてよ!」
「なんかシュエリアが二人いるみたいだ」
「あんですって?」
「い、いや、なんでもない」
ちょっと呂律が回ってないシュエリアっぽい気がするのだが、本人的にはこれと一緒にされるのは嫌だったようだ。
「にしてもこれ、どうするよ」
「部屋に連れて行って寝かすしかないですわね」
「そう~ですね~」
「それじゃ、とりあえず義姉さんを俺が運ぶわ」
「んー? ゆーきゅんがおねーちゃんにやらしーことするの?」
「ここに転がしといてよくないかコレ?」
「気持ちはわかるけれど運んであげなさいよ……一応義姉でしょう」
「はぁ。仕方ないか……」
「アシェ~さんは~歩け~ます~か~?」
「らいりょうぶれすわ! ふっふん!」
ということで、俺が義姉さんをおぶり、アシェはトモリさんに支えられながら徒歩。シュエリアとアイネは酒瓶を持って、皆で部屋に戻った。
「ふぅ……重かった」
「えーおもたくないよーゆうきゅうのあほー」
「いや、絶対重いから。米俵くらいあるから」
「ユウキはシオン相手だと容赦ないですわね……」
「そうか?」
そうだろうか? まあ義姉さん相手だと若干の塩対応な自覚はあるが。
「まあ、姉弟仲のいい証拠かしらね」
「それは無い」
「断言しますわね……」
「無いからな」
俺と義姉さんは不仲ではないが仲良しってこともないと思う。
「そんなことより、この後どうする?」
「義姉の事さらっと『そんなこと』に纏めましわね……まあ、そうですわね。明日の朝には帰るのだし、せっかくだからもっと遊びたいですわねぇ」
「おねえちゃんもあそぶー!」
「わらひも参加しましゅわ」
「お前らは寝てろ」
酔っ払って絡み辛い二人はアイネが敷いておいてくれた布団に寝かせる。
なんか二人してやたらと俺に絡みたがるが兎に角寝かせた。
「ふぅ……さて。それじゃあ何をする?」
「そうですわねぇ……まずは――」
シュエリアが荷物をゴソゴソしながら取り出したのはトランプだった。
なんだ、結構普通だ。
「これでヒ〇カごっこしますわ」
「遊び方が斬新」
「ズキュウゥウウン!」
「チョイスが酷い」
っていうかなんでわざわざトランプ出して、この人数でヒ〇カごっこなんだ。
「そんな目で見つめるなよ……興奮しちゃうじゃないか~」
「トモリさんもやるんですね……」
「あの二人の所為で欲情してきちゃったよ……鎮めなきゃっ」
「アイネもやるのかよ……」
なんで皆楽しそうにヒ〇カになりきっているのだろうか。絶対トランプ要らないよね、これ。
「ユウキはやらないんですの?」
「やらねぇよ……」
「んもう、ノリ悪いですわ?」
「って言われてもなぁ」
そもそもなんでコイツ等ヒ〇カの物まねが直ぐ出て来るのか。事前に打ち合わせでもしてんのか。
「仕方ないですわね。それじゃあ次は……」
「トランプもう使わないのかよ……」
とまあ、こんな感じで、この後もシュエリアが取り出したアイテムの数々で遊び、夜を迎えた。
で、夕食。
「すっごいですわね。まさしく和って感じですわ」
シュエリアの言う通り、出てきた料理は和食、それも見た感じで「あ、これ高い奴だ」ってわかるような豪勢なものばかり。
「これ、食べちゃっていいんですかっ?」
「いいぞアイネ、どうせ義姉さんのおごりだから」
「あれ? さらっとお姉ちゃんに出させる気なの?」
「じゃなかったらこんな高そうなもん食えねぇよ」
「まあいいけどさー」
「それじゃあさっそく」
『いただきます』
皆で食べる食事だが、義姉さんとアシェは一緒に暮らしているわけではないのでいつもは一緒に食べていないのでちょっとだけ新鮮な気がする。
「シュエリア、あんたなんでそう高そうなものばかり食べるのよ」
「ユウキが貧乏性でこういうのは日頃食べられないからですわね」
「じゃあ自分で働いたお金で食べればいいじゃない」
「駄目ですわ、ゲームに使うお金が減るもの」
「なんていうか、そういうところがゆう君のお嫁さんって感じだよね」
「……そうかしら?」
「そうそう」
シュエリアと義姉さん、アシェは三人仲良くおしゃべりしている。となると、残るのはアイネとトモリさんだが……。
「ゴクゴクゴクッ」
「おぉっ、凄い飲みっぷりですっ!」
「うふふ~お酒~好きです~から~」
「一升瓶そのまま行くとか凄いと言うレベルだろうか……」
あの魔王様は本当に酒好きだなぁ……なんか飲むたびに酒に強くなっている気がするし。
「アイにゃんも~飲みます~か~?」
「はいっ」
「はいじゃないだろ」
魔王から一升瓶を受け取ろうとする勇者を止めに入る俺。アイネにお酒は駄目だ。
「なんでですか兄さまっ」
「いや、アイネはほら、子供だし」
「見た目の話じゃないですかっ」
「見た目が子供なのは受け入れたのか……」
なんかちょっと悲しくなったわ。
「それにしてもトモリさん、ホントに酒強いですよね」
「そうで~すか~?」
「確かにトモリさんはお酒強いですっ」
「アイネは弱いから飲んじゃダメだぞ」
「う? 私弱いんですかっ?」
「自覚ないのかぁ」
正直アイネは匂いだけで酔ってしまうような子だからお酒を飲ませたくないのだが、本人に自覚がないと知らんところで飲んで問題起こしそうで怖いな。
「アイネは匂いだけで酔っちゃうからな。飲んだら大変だぞ?」
「うーそうでしたかっ」
「では一升を~」
「トモリさん、人の話聞いてますか?」
なんで匂いだけで酔うアイネに一升から勧めようとしてんだこの人。
「では~一口~なら~?」
「そんなに一緒にお酒飲みたいんですか?」
「いえ~酔っている~アイにゃんを~愛で~たくて~」
「却下で」
酔ったアイネはいつにもまして可愛いのだが、流石に他者を酔わせてどうこうというのは倫理的にマズいだろう。
「でも~本人は~飲みたそう~ですよ~?」
「(キラキラキラ)」
「うっ……」
……まあ、本人の自由を尊重するのは……大事だよな。
「とりあえず一口から始めるんだぞ?」
「! はいっ!!」
俺からの許可に嬉しそうに飛びつくアイネ。悪酔いしないように注意してあげないとな……。
そう思っていると。
「ゆう君ゆう君」
「ん? 何、義姉さん」
「シュエちゃんが完成したよ!」
「……は?」
なんだ、シュエリアが完成したって。そう思い、シュエリアの方を見てみると。
「……ゆーき。ぎゅーして」
「…………。あんたら、シュエリア酔わせただろ」
「うん!」
「ふふんっ」
「なんで二人してドヤ顔なんだよ」
っていうか、この二人が酔っているのならわかるのだが、なぜシュエリアが?
「どうしてシュエリアを酔わせた?」
「えー、だってシュエちゃんが『シオン達は昼間からお酒飲んで迷惑かけたからお酒禁止』とかいうから、じゃあ代わりにシュエちゃんが飲んでよーって言ったらこうなったの!」
「なんで代わりに飲ませる必要が……」
「うーん、面白いかなぁって」
「面倒が増えただけだろうが……」
「ゆーきー」
俺と義姉さんの会話にも興味はないのか、シュエリアが俺にスリスリと頬擦りしながらくっ付いてくる。
「ぎゅーっ……して?」
「……おう」
「えへへ」
「どうすんだこれ……」
シュエリアは酔うと甘えん坊というか、子供っぽくなる……これじゃあ手が掛かって仕方ない。
「にーさまっ」
「ん? どした、アイネ」
「わらひもきゅーってされたいれすっ」
「こっちも酔ったのか」
恐らくまだ一口しか飲んでいないアイネがもう酔ってしまっていた……なんて面倒な。
この酔っ払った二人を相手にするのはとても疲れそうだ。
「にゃー」
「にへへ」
「……うーん」
「ゆう君嬉しそうだねぇ」
「まあ、こんだけ可愛い子にデレられたら、酔っているからだってわかっていてもちょっと嬉しいかもな」
「別に酔ってなくてもそんな感じな気もするけど」
「そうか?……まあアイネはそうかもな。シュエリアはこんなじゃないけど」
「いやいや。シュエちゃんだって我慢してるだけできっと本音ではそうしたいんだよ」
「そういうもんかなぁ」
そればっかりはシュエリア本人に聞かないとわからないが……。
「さて、これじゃあ食事どころじゃないし、お姉ちゃんが布団を敷いてあげよう!」
「そうだな……ってそういやアシェは?」
「ん、アーちゃんならそこで寝てるよ?」
見ると、アシェは壁にもたれ掛かって眠りこけていた。
「食べたら眠くなったみたい」
「子供か……」
そして未だにトモリさんは料理をつまみながらお酒をがぶがぶ飲んでるし……。
まあ、何はともあれ、俺達の温泉旅行はこんな感じでぐたぐだと幕を閉じたのであった。
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