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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
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クリスマスで2話やる度胸ですわ


「ふぁ~……暇ですわ」

「寝起きでそれ言う?」


 12月25日、クリスマス、夜。時間は7時頃。

 シュエリアは朝方に買ったケーキを食うと、眠くなったと言って昼寝(朝だけど)を要求、俺の膝枕で完全に熟睡し今の今まで寝ていた。


「んー…………っと。暇ですわね」

「寝起きで背伸びして、まだいうか」


 寝起きにあくびをして「暇」その後背伸びをしてまた「暇」

 どんだけ暇ならこうも短期間に、ワンモーション挟むごとに「暇」が出て来るのか。


「だって暇なんだもの。何かないんですの? 面白いこと」

「んーそうだな」


 そう言われて俺は現状を思い出す。


「まず、今日はクリスマスだ」

「あっ、そうですわね!」

「うん、で、もう夜だ」

「パーティですわ!」

「で、今修羅場ね」

「……は?」


 そう言った俺の言葉に、シュエリアは辺りを見回す。

 そこにはいつものメンバーと、そして。


「あら、リセリアじゃない。久しぶりですわね?」

「……姉さま……」


 激おこのリセリアさんがいた。


「……ねえユウキ」

「なんだシュエリア」

「なんであの子キレてるんですの?」


 どうやら流石に姉妹。リセリアの機嫌がすこぶる悪いことは見たらわかったらしく、俺に質問してくる。


「お前が寝言で俺と結婚するって言っちゃったから」

「え、でも寝言でしょう?」

「でも事実じゃん?」

「ま、まあ……」

「問い詰められて、否定できなくてさ」

「それでこうなってるのね……」


 と、まあ、そういう訳で。

 楽しいクリスマスパーティは、修羅場から始まった。


「で、なんで姉さまは本当にこの男と結婚しようと?」

「ユウキの事好きだからですわ」

「姉さまは一国の姫ですよ? こんな人間と結婚が許されるとでも?」

「許しなんていらないでしょう、国放ってこっちに逃げてきておいて何を今更」

「母様がお許しになりませんよ?!」

「余計に下らないわね。あの人のいう事を聞く必要なんて、わたくしにはないですわ」


 などという様子から始まったクリスマスパーティだが、思いの外、他のハーレムメンバー達はパーティをエンジョイしていた。


「もぐもぐ……このケーキおいしいですっ」

「アイちゃん、こっちも中々イケるよ?」

「アイにゃん~こっちの~チーズケーキ~も~おいしいです~よ~」

「あっ、私もそれ食べたいわ!」

「……うん、平和」


 なんというか、こっちは飲んで、食べて、話して、笑って。平和そのものという感じだ。

 それに対してあっちは……。


「なんでこんな下等な人種と結婚してしまうんですか!!」

「あん? 次ユウキを悪く言ったら殺しますわよ?」

「……こわ」


 エルフ姉妹の方は「殺す」とかいう物騒な言葉が飛び交うほど殺伐としていた。


「大体、なんで貴女はわたくしの好きな人にケチをつけるのかしら?」

「そ、それは……姉さまのことを想って」

「本当にわたくしのことを想うなら、祝福して欲しいですわ」

「そ……そうかもしれませんが……」


 うーん、相変わらず姉妹仲上手く行ってないな……。


「はぁ。どうしたら認めるんですの?」

「……認めません」

「あー。もうこの話終わりですわー」

「待ってください姉さま!」

「嫌ですわよ、どうあっても認めるつもりはないのでしょう? なら、わたくしも好きにやりますわ」

「そ、それは……私の一存では決まらないというか……」

「何よ、それ」


 リセリアの言葉に、何か事情があると感じたのか、問い詰めるシュエリア。

 うーん、また妙なことにならないといいが。


「私、その、妹達に姉さまの事、頼まれてしまって」

「……はぁ。あの子達まで反対してるんですの?」

「い、いえ、今のところ反対しているのは私だけで……でも、その、相手が人間だと知ったら妹達も何て言うか……それに姉さまが幸せになれないと困るといいますか……」

「幸せになりますわよ。ていうか現在進行形で幸せだったのに、貴女が来て水を差された感じですわよ?」

「うぅ……」


 うん、これはまず間違いなく面倒な奴だ。

 そしてそうなれば、絡まれるのは当然……。


「ユウキ、こっち来なさい」

「はい……」

「なんでもう既に死にそうな顔してんですの?」

「面倒ごとの予感しかしないからだよ!!」


 俺がそう叫ぶと、シュエリアが「あー、なるほど」と納得したようにうんうんと頷いた。


「まあ、実際面倒ごとですわ」

「はぁ。なんだよ、俺になにしろと」

「今度わたくしと一緒に母と妹達に会ってもらいますわ」

「姉さま?!」

「そこでわたくしとの結婚を認めさせるんですの」

「ほ、ほう」

「まあ、認めようとしなかったら焼き払うけど」

「暴力は止めような?」

「えー」

「なんて嫌そうにするんだコイツ」


 身内にためらいなく暴力振るうとか、結構ヤバい奴……いや、元からか。

 出会ってすぐに脅迫に及ぶ奴だしな……。


「てことで、いいかしら、リセリア」

「う……ま、まあ、今日の成果としては……妹達に報告できる範囲かと」

「そう、ならパーティ楽しみますわよ」

「え。いいんですか姉さま」

「何がよ?」

「私、居てもいいんですか?」

「はあ? 何言ってんですのこの子」


 それだけ言うと、シュエリアは背を向けてアイネ達の方に向かってしまった。


「え……っと?」

「ああ、いいんだよ。シュエリアは人数多い方が楽しいってさ」

「そう、なんですか?」

「……まあ、そんな感じですわー」


 リセリアの言葉にそう返すシュエリアはなんか照れているようだった。

 前から思ってたがシュエリアは身内に素直になれないタイプなんだろうか。


「ふむ……ところでユウキ」

「ん?」

「プロポーズはよ」

「このタイミングで言うかそれ?」


 プロポーズはよって……こんな状況で?

 ムードもへったくれもないじゃないか。

 っていうか、確かに朝にプロポーズの話してたけど、俺側にプロポーズの準備があるとどうして思ったのか……。


「心読んだのよ」

「お前最低なことシレっと言うな」


 俺の彼女、そのうち盗撮とか盗聴まで始めないか心配になってきたわ。


「てか、ムードは?」

「今この賑やかな空気でいいわよ?」

「今さっき結婚を認めないと騒がれたばかりだが?」

「だからこそ、今、言って欲しいのよ」

「さいですか」

「さいですわ」


 シュエリアの「プロポーズ」という言葉に皆こっち向いてるんですが……。

 マジで言うの? ここで?


「……よし」

「あら、覚悟は決まったんですの?」

「あぁ」


 俺が深く頷くと、シュエリアも軽く頷き返した。


「ではどうぞ?」

「シュエリア、俺と結婚してくれ」

「はいやり直し」

「やり直し?!」


 やり直しってあり?! っていうかある?!


「まてまて、やり直しってなんだ」

「心に響かなかったから、再トライですわ?」

「再トライとかあんの?」

「ありますわ。よかったですわね、寛大なわたくしに感謝なさい?」

「よかないんですが……」


 ま、まあ……正直普通にプロポーズして成功するとは思っていなかったが……。

 かといって再トライか……うーん……うーん。


「緊急ハーレム会議!」

「は?」


 言うや否や、俺はシュエリアとリセリアを部屋に残し、ハーレムメンバーを連れて部屋を出た。


「で、困ったことになった」

「プロポーズ……ですかっ」

「そう」

「それ私たちに聞く?」

「知恵を貸してもらおうかと」

「困り~ました~ね~?」

「困りました」

「お姉ちゃんも連れ出すくらいだもんねぇ……」


 本当に困った。いや、マジで。


「ゆう君、指輪は?」

「ここに婚約指輪がある」

「一応の用意はあるのね」

「あぁ、でも、プロポーズに気の利いた言葉が思いつかない」

「兄さまらしいですっ」

「ぐっ」

「あ。おもい~つきました~」

「お、トモリさん! 流石です!」


 どうやらトモリさんが今の会話の間にも作戦を思いついてくれたようだ。


「全員で~たたみ~かけましょう~」

「……というと?」

「皆で~一斉に~ゆっ君との~結婚~を~迫る~んです~」

「なるほど?」

「そして~……ヒソヒソヒソ――」

「な、なるほど! そんな手が!」


 正直、若干フラッシュモブの感が無くはないが、まあ何とかなるか?


「あまり時間掛けてもシュエリアのハードル上がるわよ?」

「そだね。早速行ってみよ、ゆう君」

「お、おう」


 俺は返事をすると、皆を引き連れてシュエリアの待つ部屋に戻った。


「で、何かいい案は思いついたんですの?」

「あぁ、行くぞ!」


 俺の掛け声で皆が一斉にシュエリアを取り囲む。


「シュエリア!」

「兄さまと!」

「ゆう君と!」

「ゆっ君と~」

「ユウキと」

『結婚して下さい!』

「あ、普通にこれ嫌ですわ」

『ぐはぁっ』


 まさかの玉砕。

 ど……どうしろと。


「っていうか普通にプロポーズされた方がよかったわね?」

「お前はっ倒すぞ」

「ですよっ」

「そうだそうだー」

「こんなバカやっちまいなさい」

「ギロチンです~」


 なんか最後の一人だけ凄く怖いこと言っている気がするけど。

 まあ、なんだ。

 みんなからの一斉放火を受けて、シュエリアも若干悪いと思ったのか、バツが悪そうに口を開いた。


「わ、わかりましたわ。じゃあ、今から普通にプロポーズしてくれたら、許可しますわ?」

「言ったな?」

「姉さまっ!」

「あっ」


 そう……そうだ、これこそが真の集中砲火作戦。

 皆でブーイングを浴びせてシュエリアを改心させる作戦だ。


「シュエリア」

「……はぁ。はい」

「結婚してください」

「普通ですわね」

「お前な」


 今さっき普通でいいと言っておきながら、何言ってやがるか。


「ま、いいですわ。ほれ、指輪はよですわ」

「ったく……はいよ」


 こうして俺のプロポーズはなんとか成功し。


「やっぱり認められませんーー!!!!」


 リセリアは捨てセリフを吐いて姿を消し。

 クリスマスパーティは結局、俺のプロポーズの舞台として幕を閉じたのであった。


ご読了ありがとうございました!

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次回更新は火曜日です。

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