キャラ回(?)ですわ
「未だにキャラ回がないキャラがいますわ!!」
「しょっぱなからメタい発言出たなぁ」
いつも通りの日常。いつも通りのシュエリアの唐突な阿保発言。
今日はキャラ回の話がしたいようだ。
「とういうわけで、キャラ回の無い。このままだと使い捨てになりそうな子達を集めてみましたわ」
そう言いながら、シュエリアが示す先には三人の女性。
「どういうわけよ!」
「シュエリアさんって相変わらず意味が分かりません……」
「うふふっ、シュエリアちゃんってば相変わらずね!」
「最後の誰だ」
最初の発言はしすこーんのダークエルフのエルゥ。二人目は同業の天使で六々ちゃん。
そして三人目が……誰だ。
「リーシェですわ」
「はーい! リーシェでーす!」
「ここにまさかの初登場キャラ?!」
「初じゃないですわよ。以前話したでしょう? リーシェ。わたくしの同年代かつ天然な、エルフの典型みたいな子ですわ」
「わぁい! 褒められてる?」
「褒めてないですわ」
「ん~、残念!」
「なんで嬉しそうなのよ……相変わらずよくわからない子ですわね」
以前話には出ていたけど本人の登場が初である以上これはキャラ回が未だにないキャラというカテゴリーからは外れるのでは……。
「うーん」
「何よ? 文句でも? せっかく普通のエルフに会えたのに」
「それで行くとお前は普通ではないということになるが?」
「……まあぶっちゃけ色物の自覚はありますわ」
「お、おう……」
なんかシュエリアの悲しい一面を見てしまった気がしないでもない。
「大丈夫! シュエリアちゃんは変わり者だけど、とーってもいい子だもの!」
「リーシェ、うざいですわ」
「ひどいっ!」
シュエリアの「うざい」発言に涙目のリーシェ。
う、うーん……この子、ちょっとメンドクサイ子かもしれない?
「シュエリアちゃん私の事嫌い?」
「う……別に嫌いではないですわ」
「わぁい! 大好きっ!!」
「……まあ好きでもないけど」
「……ぐさっ」
物理的に「ぐさっ」と呟くと床に伏すリーシェ。
「うん、なるほど、こういう子か」
「えぇ。非常にウザいでしょう?」
「誰もそこまでは言ってないが」
「そこまでは言わないけれど?」
「多少ウザい」
「この二人ひどいよ?!」
床に伏したリーシェが「うぅぅ」っと涙目でこちらを見上げて来る。
……うん……ややウザい。
「ずっとこのノリなのか、この子?」
「えぇ。少なくともわたくしが知り合った10代の頃から、もう百年以上こうですわ」
「……お前も大変だな」
「ようやくわたくしの苦労を知ったようですわね」
「そして俺は初めてのエルフがシュエリアでよかった」
「でしょう?」
などと、俺とシュエリアが話に花を咲かせていると、リーシェの視線がシュエリア一点に注がれているのが見えた。
「ねえ、シュエリアちゃん」
「ん? なんですの?」
「シュエリアちゃん、結城さんのこと好きなの?」
「……妙な勘だけいいわねこの子」
なるほど? それが気になってシュエリアをガン見していたのか。
「なんでそういう話私にしてくれないのっ!」
「面倒だからよ」
そのシュエリアの態度に、より一層前のめりにツッコんでくるリーシェ。
「恋バナはエルフお花さんだよ!」
「もうその言い回しがウザめんどくさいですわ」
「ダークエルフさんもどうですか?」
「え、私?」
おっと、ここでエルゥに飛び火か。
「私はいいわよ……シュエリアと絡むとロクなことないし」
「じゃあなんで来たのよ」
「シュエリアの彼氏にちょっかいでもかけてやろうかと思って」
「素直なのは美徳だけどぶっ転がしますわよ」
そう言ってエルゥを睨むシュエリア。
と、睨まれてビビるエルゥ。
ビビるくらいなら喧嘩売らなきゃいいのに……。
「で、で、でも、あれでしょ?! ハーレムとか作ってるんでしょう!」
「は? それが何ですの?」
「な、なら私も、ちょっかい出したっていいでしょう?!」
「……あら、ユウキの事好きなんですの?」
「いえ全然」
「サラっと傷つけられたわ」
まさかの被害。俺勝手に振られたんですけど。
「じゃあ駄目ですわ」
「……チッ」
「ホントわたくしに対する悪意が露骨ですわね」
「まあまあ、これもエルちゃんなりの愛情表現だから」
そう言ってシュエリアを宥めるのはここまで俺達の話を静観していた六々ちゃんだ。
「そう言われても困りますわ?」
「リアちゃんだってエルちゃんに強く当たっちゃうところあるでしょ?」
「う……まあ」
「でも嫌いではないよね?」
「……まあ」
「ね? 同じだよ。エルちゃんもリアちゃんのこと嫌いなわけじゃないから」
「はぁ。わかりましたわ」
そう言って不承不承ではあるが納得したシュエリア。
なるほど、六々ちゃんってシュエリアに対して結構効くんだな。
「ねーねー。恋バナは?」
「あーはいはい、どうせ暇だからしてあげますわ」
「わーい!」
「これ私も参加する流れ?」
「エルちゃんの恋バナ興味あるなぁ?」
「し、仕方ないわね、六々が言うなら、ちょっとだけよ?」
と、まあ、こうして女子たち主導の恋バナが始まったわけだが……。
「えー! 結城くんシュエリアちゃんにいきなり脅されたの?!」
「ま、まあ」
「よく付き合う気になったね……?」
「確かに……なんでだろうな」
今話しているのは俺とシュエリアの馴れ初めである。
ちなみにリーシェの俺に対する呼び方が「結城さん」から「結城くん」になっているのは彼女なりに仲良くなった(?)証なのだろう。
「ちょっと、そこで疑問に思ってはいけませんわ」
「いや、でも冷静に考えておかしくないか」
「……冷静になってはいけませんわ」
「おい」
それ、自分の非を認めてるようなもんじゃないか。
「でも確かに、恋は冷静になってみると、案外冷めちゃうかも!」
「本当の愛は、ほのかに暖かく、いつまでも続くものです」
「時には激しく燃え上がるのもいいと思うけど」
「そればっかりだと疲れますわね」
『ねぇー』
「……」
この女子の会話。俺、要る?
「それにしても、アレですわね」
「ん? 何々?」
「これでリーシェも見納めかと思うと、感慨深いですわ」
「私見納められるの?!」
シュエリアの発言にショックを受けるリーシェ。
「だって、まず今後出番ないですわよ?」
「え……なんでそんな寂しいこと言うの? 呼んでよ、シュエリアちゃん」
「嫌よ、めんどくさい」
「ひどいっ!!」
キャラ回がどうのとか言って呼び出しておいて使いきりで見納めとか……確かに酷い話である。
「冗談よ冗談。せめて式には呼びますわ」
『え?』
と、ここで、シュエリアの発言に疑問府の女子三人。
しばらくの沈黙の後、意味を理解するとシュエリアに迫る!
「式って、まさかシュエリアちゃん結婚するの?!」
「なんでそれを早く言わないのよ!」
「そうです! 水臭いですよ!」
「え、ちょ……え?」
どうやらシュエリアはこの女友達三人に結婚の話はしていなかったようで。
この後も思いっきり問い詰められていた。
「それで、式はいつなのよ」
「6月ですわ」
「そう……詳細が決まったらちゃんと教えるのよ?」
「なんでエルゥに言わなきゃいけないんですの」
「祝うからよ」
「……」
「何よその顔」
「心底嫌そうな顔ですわ」
「あんたホント腹立つわね」
そういってエルゥは「はぁ」と溜息をつくと俺を見た。
「こんな阿保エルフだけど、大事にしてやるのよ?」
「お、おう」
「なんでエルゥに心配されなきゃいけないんですの」
「まあまあ、心配してくれる人がいるのも、いいものですよ?」
「まあ……そうかもしれないけれど」
「私も精一杯祝福するねっシュエリアちゃん!」
「リーシェは自分のこと心配した方がいいですわ」
「えっ?!」
シュエリアの言葉に大層驚いた様子のリーシェだが、シュエリアの言うとことも分かる気がする。
この性格だと結婚とか大変そうだ。
「シュエリアちゃんと違って私は普通だからね?!」
「わたくしが普通では無いようなこと言いやがりますわね」
「実際普通じゃないでしょ駄エルフだし」
「あん?」
「ひっ」
「だから怖いなら喧嘩売らなきゃいいのに」
というか、そうか、リーシェは一応エルフだと標準だから、別にエルフ受けを考えるならそこまで恋愛とか結婚の心配は要らないのかな。
「大体、わたくしこれでもリーシェよりはモテたわよ?」
「ぐさっ」
「そもそもリーシェって普通過ぎてエルフの中じゃ影薄いのよね」
「ぐさぐさっ」
「今時そんなんじゃ埋もれる……というか、婚期逃すわよ?」
「グサッ!!」
「なんというフルボッコ」
シュエリアに悪気はない……と思いたいが。これは酷い。
そうか、リーシェってエルフの中だと普通過ぎるのか……これが。
「というわけでリーシェに恋バナとかあるわけないから、エルゥが話すといいですわ」
「あ、あんた容赦ないわね」
「事実ですわよ?」
「それが容赦ないって言ってんのよ……」
そういってリーシェに憐みの視線を向けるエルゥ。
「この子の話の後で恋バナするの? 本当に?」
「えぇ……だって――」
「恋バナ!!」
「――本人がこう言っているし」
「この子がシュエリアと一緒に居られる理由わかった気がする」
こう見えてリーシェはめちゃくちゃタフなようだ。
あれだけ言葉の凶器で傷つけられておきながら、恋バナ一つでケロっと復活する。
「……まあ、それじゃあ――」
そこから語られたエルゥの恋バナは非常に山あり谷ありの恋愛であり、ちょっとした小説でもかけそうなボリュームだった為ここでは割愛させていただくとして。
それでもざっくり説明するなら幼馴染を寝取られた話である。結構重い。
「――って感じかしら」
「それよく話す気になりましたわね」
「あんたが話せって言ったんでしょうが」
言って、「はぁ、まったく」と呆れかえるエルゥ。
そしてシュエリアはそれに「思いのほか人の恋バナってつまらないわねぇ」とか言ってるし。
さらに、もう一人のエルフは……。
「うっぐ……ひっぐ……」
「であんたもなんで泣いてんのよ」
「だって、あまりにもいい恋バナすぎて!」
「今の聞いていい恋バナとか言える辺りシュエリアの友達っぽいわね」
「やめてくださる? こんなのと一緒にしないで」
「こんなの?!」
もうそれはもう、泣ける恋愛映画でも見たかの如くボロボロ泣いていた。
「六々はどうだった?」
「そうですねー。天使としては略奪愛はちょっと」
「ま、そうなるわよね」
「予想通りの反応ですわねぇ」
まあ六々ちゃんは天使だしな……こういう反応にもなるだろう。
「それで、最後に六々は恋バナ、無いんですの?」
「無いですよ」
「ちょっと意外かも。恋愛脳だと思ってたわ」
「天使をなんだと思ってるの……」
「飛ぶ恋愛脳」
「エルちゃん後でお話しよっか」
そう言って「もうっ」とちょっと怒った様子を見せる六々ちゃんだが、多分怒ってはいないだろう。
正直結構酷いことを言われていたような気もするが、心の広い天使様である。
「そもそも天使は皆を愛していますからね」
「あー、出ましたわ。天使特有の博愛ムーブ」
「お前他に天使の知り合い居るのか?」
「いないわね?」
じゃあこれが天使特有か六々ちゃん特有かはわからないではないか……。
あ、でも六々ちゃんも「天使は」って言ってたし、あってるのか?
「ま、どっちでもいいですわ。無いなら無いで。もうそろそろ夕飯だもの」
「おっ……そうだな」
確かに、時間を見ると夕飯時だった。
「リーシェ達も一緒にどうかしら」
「わーい! いただきます!」
「ふん……じゃ、遠慮なく」
「リアちゃんの分減っちゃうよ?」
「……やっぱり帰ってもらおうかしら」
そう言って本当に真面目に帰そうか悩んでいる様子のシュエリア。
相変わらずの食い意地だ。
「じゃ、俺は夕食の準備してくるから」
そう言って俺は部屋を出た。
その後も、夕食が終わり、帰宅するその時まで、部屋からは彼女たちの楽しそうな話声が聞こえ続けていた。
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