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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
53/266

大喜利したいですわ

今年最後の更新です。来年もまだまだ続く予定ですので、よろしくお願いいたします。

「笑〇って面白いですわね」

「ん? おう」


 休日の夕方頃、〇テレの〇点を見終わった後にシュエリアはいつもは敢えては言わない感想を口にした。


「ということでさっそくなんだけれど」

「うん?」

「大喜利をしようと思いますわ」

「どうしてそうなった」


 もう夕方で幾分かしたら夕食時だというのに、そんなことを思い付きでしようとは……。

 というか大喜利って、具体的に何をしようというのか。


「知っているかシュエリア、大喜利とはそもそもコレと言った主題があるわけではなく、基本的に寄席の終わりに演者が客の要望に応えてするファンサービスであってだな……」

「あー、そういうガチのではなくていいから、普通に笑いたいんですわ」

「さいですか……」

「さいですわ」


 まあ……そうだろうとは思った。

 コイツはいつも面白ければいいというスタイルなのでそれが厳密にどういう物なのかという事にはあまり興味はない。

 やってみて楽しければそれでいいのだ。


「で、アイネとトモリはうちに居るから、直ぐにやりたいのだけれど」


 コイツの事だからもう言っても止まらないだろう。

 しかし夕飯の問題もある為それだけはハッキリ言っておかないとな。


「やるのはいいが、夕食まで一時間くらいだから、その間でな」

「そのくらいズレてもいいと思うのだけれど……」

「そうか、じゃあ夕食のビーフシチューを作る時間ないから他の――」

「一時間で終わらせますわよ」

「おう、そうしてくれ」


 基本的に面白いことが最優先のシュエリアだが食い意地の方が張っているので飯が掛かると急に素直になる。

 なのでこういう時に非常に話しの付けやすいちょろインで本当に助かる。


「それではトモリを呼んでくるから、ユウキはアイネを用意しておいて欲しいですわ」

「用意って……」


 アイネは別に物とかではないのだが……。

 いや、まあ、なんとなく言わんとすることは分かるんだけれど。


「まあいいか……。パンパンッ」

「(ダダダダダダダッ)何ですか兄さまっ」

「相変わらず早いなぁ」


 俺がアイネを呼ぶために手を叩くと、何処からともなく走って駆けつけて来るだけでも凄いのだが、その速さもまたかなりの物。

 というかアイネは魔法でゲートを開けるし、転移魔法もあるんだからそれで来ればいいのではないかといつも思うのだが、これはある意味猫だった頃の習慣なんだろうな。


 あの頃から俺が手を叩いたり名前を呼ぶとすぐに駆け付けてたし。


「シュエリアが大喜利したいっていうから、アイネも呼んだんだけど」

「おぉ、そうでしたか。楽しそうですねっ」


 ぐっとガッツポーズで気合を入れるアイネ。あぁ可愛いなぁ。

 しかしまあ、ぶっちゃけアイネのネタのセンスに不安はあるがそれは俺自身も同じことか……。


「ユウキ、トモリを連れてきましたわ」

「大喜利~を~するんです~よね~」


 俺がアイネを呼んで直ぐに、シュエリアがトモリさんを連れてきた。

 まあトモリさんは同居しているし、部屋も近い方が遊びやすいと言うことで近い所にいつも居るので直ぐに来るだろうとはわかっていたんだが、いつも思うが家の中でも和服なんだよな、この人。過ごし難くないんだろうか。


「それで、この四人で大喜利をするんだな」

「えぇ、そうですわね。今日はシオンも阿保みたいにストーカーしてないみたいですわ」

「そうか。なら――」

「お姉ちゃんストーカーじゃないからね!」

「――おいシュエリア」


 義姉さんの声を聴いた俺は直ぐにシュエリアを問い詰めた。


「なんでここに居るんですの?! 探知魔法は掛けてありますのに!」

「ふっふっふ~お姉ちゃんを舐めちゃあいけないよ。こう見えて秀才だからね私。私くらいになると一回見た物の対策くらいしてくるものなんだよ」

「秀才っていうか天才……というかもはや化け物すぎますわね……」

「魔法を掻い潜って来るとかもはやこの世界の人間とは思えないですねっ」

「まあ……義姉さんだしな」


 皆に褒められていると勘違いしたのか、胸を張ってドヤ顔の義姉さんに俺は心底呆れた。

 この人本当に才能の無駄使いが酷すぎる人だな……。


「じゃあ5人で大喜利ですわね……」

「わーシュエちゃん顔色悪いよ? だいじょーぶ?」

「どうみても義姉さんの所為だけどな」

「えー?」


 俺の言葉に「そんなことないと思うけどなぁ」とか言いながら楽しそうに首をかしげる義姉さん。

 この人のシュエリア弄りというか、いじめは確信犯だよな……。

 別にシュエリアを嫌いってことは無いだろうが、俺の正妻ということもあって若干意地悪である。


「それで、大喜利ですけれど、まずはわたくしから順番に時計回りでお題を言って、それに関連した面白いことを言うといった形式を取りますわね?」

「ふむ、なるほど」

「ということで、早速始めますわよ?」


 シュエリアは俺達の表情を一瞥して始めても良さそうだと感じたのか、コクンと頷くと口を開いた。


「まず最初のお題は『異世界で作られた魔法の鎧、その驚くべき性能とは?』ですわ」

「おぉ、無駄に異世界感アピールしてきたな」

「まあ、ぶっちゃけこの作品の異世界感ってあんまりないもの。たまにはこういう所で出していかないと、いっそわたくしがエルフなことすら忘れられそうですわ」

「……何の視点で言ってるのか凄く気になるがまあ、言わんとしていることはわからんではない」


 実際俺もたまにシュエリアがエルフだと忘れて接している部分があるので、無いとも言い切れない。


「では、何か面白い返答を期待していますわよ?」

『うーん……』


 シュエリアに付き合って大喜利をするとは決めたものの、俺達は別に咄家や芸人という訳ではないので急に面白い答えを出そうと思っても難しい。


 皆、一様に「うーん」と唸っては中々答えが出てこない。


「何もないんですの?」

「ん。いや、俺行こうかな」

「おぉ、いいですわね! それではユウキの『異世界で作られた魔法の鎧、その驚くべき性能とは?』」

「親指を立てると内蔵された翻訳魔法が発動して『I'll be back』してくれる」

「それター〇ネーターですわよねぇ?!」


 シュエリアはテーブルを叩いて立ち上がると声を荒げてツッコんできた。


「でもよくないか? 翻訳機能。異世界なら絶対に欲しいぞ、俺」

「そこだけ翻訳して何になるんですの?!」

「さぁ?」

「さぁ? って!!」


 正直割とノリで言っちゃったから後先考えてないのであまりツッコまれると返答に困る。

 しかしここで、俺とシュエリアのやり取りを見ていたアイネが手を挙げた。


「わたしも思いつきましたっ」

「ん、アイネもですの?……今の流れだと不安だけれど、いいですわよ?」


 シュエリアに促されてアイネはコクンと頷くと、身を乗り出して答えた。


「全裸でタイムリープできますっ」

「だからターミ〇ータよねそれ?!」


 アイネのボケに見事にツッコむシュエリア。

 にしてもアイネが天丼とは……わかってるじゃないか。

 しかし全裸となると、着ていた鎧はどこに行ってしまったんだろうな?


「あ、ならなら、お姉ちゃんも。ダメージを受けると液体金属になるとか!」

「なんでターミネー〇ー縛りですのっ?!」


 義姉さんまで俺とアイネのボケに乗って来てターミ〇ーター2のネタでボケてきた。

 そしてそれを聞いたシュエリアはツッコみつつも「どうせ来るだろうな」と思っていたようで、ツッコみが素早かった。

 その上ツッコみながらも最後にトモリさんからも同じようにボケが来ると思ったのかチラチラと視線を送っている。

 天然な割にこういう事には察しのいいトモリさんがシュエリアの視線に気づいて何かを思いついた表情で口を開いた。


「……体の~半分以上が~機械に~なります~」

「……っ。それはロボ〇ップですわ!!」


 ここに来てのまさかのロ〇コップに一瞬ツッコミが遅れたシュエリア。

 うん、流石天然。微妙にズレてる。


「はぁ……貴女達ユウキのボケに乗っただけじゃない……」

「むぅ~難しいですからねっ」

「そだねぇ。次はシュエちゃんがボケてみてよ」

「う……い、いいですわよ」


 シュエリアは自分がいざボケるとなると思ったより緊張しているようだ。

 まあ自分自身が結構笑いとか面白いことに五月蠅いだけに自分で満足できる物がはっきりないと口にし辛いのかも。


「では何かお題を」

「じゃあ私が出題してあげるね。シュエちゃんから丁度時計回りになるし」


 シュエリアの言葉に義姉さんが答えると、皆了解の意味を込めて頷いた。


「じゃあお題は『異世界で出会ったドワーフ、でもどこか変。それは一体何?』で」

「その濃い目なお題がパっと出てくるんならさっきのお題でもうちょっと真面目にボケて欲しかったですわ」


 義姉さんが出したお題に若干文句を言いながらも、シュエリアはちょっとニヤニヤしていた。

 まあ、このお題の段階で色々面白い答えが出来そうな気はするな。


「じゃあまた俺からいいかな」

「いいよ、ゆう君。ではどうぞ!」

「全員イケメン」

「うわードワーフに失礼だね」

「でもドワーフってみんなモッサイっていうイメージあるから皆美男美女だったら変じゃないか?」

「まあ、確かにドワーフがあの頭身で美形だったら絶対に笑い死ぬわね」

「俺から言っておいてなんだけどお前はお前でドワーフにえらく失礼だな」


 笑い死ぬって、流石にそこまで酷いリアクションは俺にはできないな。


「じゃあじゃあ、私もいいですかっ」


 俺のボケと義姉さん、シュエリアの反応を見てアイネも何か思いついたのか挙手する。


「いいよ、アイちゃん」

「ではではっ……全員8等身あるっ! ていうのはどうでしょうっ」

「うわぁ。アイネらしくさりげにディスってますわね」

「う? 私らしいですかっ?」

「凄くアイネらしいですわね」

「うう?」


 俺達から見ると意外と腹黒くみえるアイネだが、アイネ自身に黒い自覚はないので頭が「?」で一杯になっているようだが、確かにアイネらしい回答ではあった。


「でも実際イケメンで8等身のドワーフとかいたらキモいですわね」

「お前ドワーフ嫌いなのか?」

「いえ、別に? ただ見た目が良くない生き物だなぁとは思っていますわ」

「ひでぇ認識だなおい……」


 あえて生き物という表現をした辺りに人種としてすら見ていない感があるのは気のせいだろうか。


「あ、お姉ちゃん思いついちゃった」

「自分でお題出しといて答え考えてるとか自由過ぎますわね……」

「言っていい? 言っていいよね?」

「まあ、別にいいですわよ? 面白ければなんでも」


 自由過ぎるとか文句を言っておきながらOKするシュエリアも大概自由人だけどな……。


「じゃあね、皆妙にやせ細っている!」

「確かに変だけれども! もうちょっとボケなさいよ!!」

「えぇ……そんな理不尽な怒られ方ってあるかな……」


 義姉さんの相変わらずの微妙なボケにキレるシュエリア。

 まあ、わざわざお題出した本人が答えたにしてはもうちょっと面白いの無かったのかと思ってしまうのはわかる。


「では~わたしも~」

「お、トモちゃんの考えた答えは?」

「皆さん~額に~『肉』の焼き印がして~あります~」

「怖っ?! トモちゃんなんでそんなクレイジーな発想が出てくるの?!」


 義姉さんがトモリさんの回答にドン引きしている。

 いや、あんたも大分クレイジーなブラコンだろ……。


「えげつない闇を感じますわね……流石は魔王」

「まあ、肉っていう字がキン〇マンじゃなくて奴隷的な何かに見えるもんなそれ……」


 実際よくペンとかで額に『肉』って書くイタズラとかはあるけれど、焼き印でそれをするっていうのがもう闇が深い。

 こういう発想をする天然と魔王のハイブリット感はかなりトモリさんらしいと言えばらしいのだが。


「シュエリアは無いのか?」

「え……あぁ、そうですわね」


 シュエリアは顎に手を当てると「ふむ……」と考え始めた。


「そうですわね……整いましたわ」

「おぉ、じゃあその答えとは」

「全員が上げ底のブーツを履いている」

「結局ドワーフに失礼だな」

「正直ドワーフってあの容姿しか弄り甲斐も面白味も無い種族ですわよね」

「とてつもなく失礼だなお前?!」


 ドワーフだってもっといろいろあるだろうに、鍛冶が得意とか、力が強いとか酒好きとか。


「うーん、皆出し切った感じ?」

「あっ、私もう一個思いつきましたっ」


 義姉さんの問いに手を挙げて答えるアイネ。

 意外と積極的だなぁ。


「さっきはなんだか皆さんに私らしいとか言われてしまったのですが……自分で納得いかないのでもっと私らしい答えをしようかと思いましてっ」

「いや……別に無理しなくても」

「いえっ、兄さまの可愛い妹として譲れませんっ」

「そ、そうか」

「はいっ」


 俺としては別に無理に頑張らなくてもいいと思うのだが、本人がやるきなら……まあいいか。


「じゃあアイちゃんが考えた二つ目の答え、いってみよっか」

「はいっ…………皆お髭を可愛くデコっているっです!」

『あぁ、確かにアイネ(ちゃん)っぽい』


 アイネの答えに皆一様に頷き『ぽい』な、と納得する。


「ですよねっ」

「うん、凄くぽいな」

「ですわね」

「うんうん」

「です~ね~」


 本当に皆、アイネの答えをアイネらしいと思っている。

 しかし皆の表情には明らかにアイネの思惑とは違ったアイネらしさを感じている風があった。


『(敢えて可愛い答えをしたあざとさが黒くてアイネっぽい)』


 それがこの場のアイネ以外全員の思った『アイネらしさ』だった。


「それじゃあ、次行きますわよ?」

「ん、順番的にトモリさんのお題かな?」

「はい~では~お題を~」


 姉さんの左隣に座っているトモリさんにはお題を考えるのに少し時間を使っていた。

 まあ義姉さんみたいにパッと出てくる方がおかしいよな。


「では~『異世界で出会った待望のエルフ、でも思っていたより○○だったその○○とは』でどうでしょう~」

「何かしら、わたくし今、喧嘩を売られている気がするのだけれど」

「察しが良いな、ここからシュエリアさんフルボッコタイムだぞ」


 こんなお題。どう考えてもシュエリア弄りが始まるに決まっている。

 そういうのを分かってて選んでいるんだろうな、この魔王は。


「よし、とりあえずユウキを殴りますわ」

「まて、なぜ俺限定?」

「基本的にわたくしに降りかかる不都合、災難の全てはユウキに非がありますわ」

「どういう理屈だよ?!」


 俺が問うと、シュエリアは呆れたようにため息を吐いた。


「はぁ……ハーレムの主なんだから正妻を大切にするべきですわ?」

「つまり夫(仮)の俺がシュエリア(仮)を、守れと」

「ちょっと待ちなさいよ、シュエリア(仮)って何よ、嫁(仮)でしょう」

「……えぇ」

「今凄く嫌そうな『えぇ』が出たわね」


 いや、だって、コイツ自身もう色々エルフとして終わってるし、エルフ(仮)的な意味であっている気がする。


「まあいいや、で、殴られるんですか俺は」

「内容次第ではね」

「うわ……」


 これはもう、他の連中の回答に祈るしかないな。やるといったらやるから、コイツ。


「皆さん~整いました~か~?」

『はーい』


 俺とシュエリアが関係ない話をしている間にもアイネや義姉さんは答えを決めたらしく、自信もあるのか意気揚々と言った感じだ。

 そしてその表情に俺はもう半分確信めいた不安感を抱いていた。


「では~アイにゃん~から~」

「はいっ! エルフがみんなぐうたらでワガママ! ですっ」

「(ピキッ)」


 どう考えてもシュエリアをディスっているとしか取れない回答にもう既にシュエリアがピキってる気がする。

 このままだと義姉さんの回答次第では殴られコース決定だな……。


「確かに~嫌ですよね~ぐうたらの~エルフは~……チラ」

「そうだねぇ。ワガママなのも困っちゃうよね……チラ」

「ですよねっ……チラ」

「ふ、ふふふ、そうですわね」

「お前ら仲いいな……」


 皆言いながらもシュエリアの方をチラチラと見ている辺り、どう考えても確信犯。

 こういう時の連携はどこで培ってきたのだろうか、特にこれが魔王と勇者の友情コンボっていうのがな……。


「じゃあお姉ちゃんも答えていい?」

「えぇ~どうぞ~」


 もう既にシュエリアが大分怒りかけている中、それでも義姉さんとトモリさんは続けようとする。


「じゃあね……エルフが皆金髪碧眼じゃない」

『あぁ~嫌ですね』

「それはよくないかしら?!」


 義姉さんの言葉にアイネとトモリさんが共感し、それにシュエリアがツッコむ。

 しかし正直これに関してはシュエリアに賛成だ。

 黒髪ロング好きとしてはそういうエルフとか見てみたいし。


「わかっていたけれど……わたくしめちゃくちゃディスられるわね……」

「ま、まあ……うん」


 それでも皆言いながらニヤニヤしているというかニコニコしている辺り、悪気があるというよりはいつものシュエリアさん弄りなのだろうから、嫌われていたりとかは無いだろうとは思う。

 しかしまあ、行き過ぎもよくないと思う訳で。


「あー。お前ら、シュエリア弄りも大概にな?」

「う……ごめんなさいですっ」

「ごめんねー。でもほら、ゆう君を好きな子ってイジメたくなるじゃない?」

「同意を求められても困るんだが……」


 まあそうは言っても義姉さんも「次から気を付けるよー」と笑いながら言っている辺り、またやるだろうが気を付けはするだろう、何かしらか、手加減とかを。


「それで~ゆっ君~は~?」

「ん、俺か」


 シュエリアの様子を見過ぎていてうっかりしていたが、一応皆一つは回答する流れだし、俺も何か考えないとな……。


「……そうだな、皆思ったより美形じゃない……とか」

「確かに~嫌ですね~」

「まあ、見た目だけで判断するっていうのはよくないとは思うんだが、やっぱりイメージってあるからな、エルフは美形って」

「でも実際、美形じゃなくて可愛い系とかも結構多いですわよ? まあ、皆して線が細いからガチムチは居ないけれど」

「あぁーガチムチのエルフは絶対見たくないな」

『確かに』


 この結論には皆同意らしく、シュエリアも頷いていた。


「さて、次はどうかしら?」

「次はアイネだな」

「う、私ですかっ」


 結局俺は殴られずに済んだわけだが、これはまあ話しが上手く逸れてくれたからな気はする。


「じゃあじゃあ異世界の……ごはんですっ!」

「……うん、もうちょっと詳しくな?」


 いくらなんでも異世界のごはんだけだとアバウトすぎて何とも答えにくい……。


「えっと、じゃあ、異世界の変わった料理でっ」

「おう、そのくらいなら大丈夫だな」


 アイネの出したお題に皆真剣に考え始める。

 正直アイネの出すお題ってことで腹黒いのが来るかとも思ったんだが、意外と普通だったなぁ。

 というか今更なんだが、異世界ネタって実際異世界を知っているシュエリアとトモリさんは結構有利じゃね?


「整いましたわ」

「おぉ! ではシュエリアさん、お願いしますっ」

「スライム肉まん」

「おい待てコラ」

「何かしら?」


 俺の制止に首をかしげるシュエリア。

 俺に向けられたシュエリアの顔はニヨニヨと笑っている、確実にツッコミ待ちである。


「それ某コンビニでリアルに売ってた奴じゃねぇか」

「ですわね? でもおかしいでしょう、スライム肉まん」

「いや……まあ、確かにおかしいけどな」


 実際の異世界でスライム肉まんとかあったらなんかドロドロした肉の触感が凄まじく食欲を削いできそうだな。


「そういうユウキは無いんですの?」

「ん、俺かぁ」


 そう言われてもそう直ぐには……。


「あ」

「思いつきましたの?」

「おう、ゾンビ肉のシチュー」

「うっわ……よくそんなキモい物を思いつきますわね」

「いや、肉は腐りかけが上手いっていうじゃん?」

「もうドロドロに腐りきってますわよ!!」

「いいじゃん、よく煮込んで溶かし込めばわからないって」

「ユウキはユウキでたまにえげつない事いいますわよね……」

 

 シュエリアは言いながらもドン引きした様子だ。

 俺そんなにキツイこと言ったか?


「はいはーい、お姉ちゃんも思いつきました!」

「う、シオン、大丈夫なんですの?」

「大丈夫! ゆう君みたいに妙に狂ってたりしないから!」

「俺は狂ってないわ!!」


 なんでこの義姉にこんなこと言われなきゃならんのか。

 そんなに変な事言ったか、俺。


「それでは、どうぞっ」

「焼きエルフ!」

『こわっ!!』


 え、何この人怖い!

 今、エルフ食うって言った?!


「わ、わたくしなにか反感買うようなことしたかしら」

「エルフ……食べる……ぶるぶるっ」

「…………」

「トモリさんが絶句してる」


 魔王ですら黙らせる狂気じみた回答。

 勇者ですら震え上がり。

 そして焼かれるかもしれない本人はめっちゃ顔がブルーだ。


「どしたの? みんな」

「わたくし、焼かれるんですの?」

「え? なんでシュエちゃんが?」

「あ……よかっ――」

「シュエちゃんは煮た方がおいしいよ」

「ユウキっ助けて!!」

「おおぅ?!」


 シュエリアは悲鳴のような声を上げると俺に抱き着いてきた。

 うーん……俺に助けを求めるとは珍しい。


「あはははは、冗談冗談!」

「シオンが言うと冗談に聞こえないですわ!」

「まあ欲望は入ってるけどね」

「それが怖いんですわ!!」


 欲望入ってんのかよ……。

 この人俺を「妙に狂ってる」とか言いながら、自分は全力でイカれてるじゃないか。


「はぁ……それで……後は?」

「シュエリアさんお疲れモードだな」


 義姉さんに脅されて疲れてしまったのか、言葉がたどたどしい。

 後回答してないのは、トモリさんか。


「トモリは何かないんですの?」

「そう~ですね~?」


 トモリさんはそう呟いて「う~ん」と唸ると、何かを閃いたという顔をした。


「これは~実際に~あったのですが~」

「へ、実際にあったものですの?」

「人の~心臓~です~」

『…………』


 トモリさんのまさかの回答に、皆、絶句。

 ブラックジョークで済むといいな……これ。


「トモリ……食べたことは?」

「ない~ですよ~? わたしは~淫魔~ですから~」

「そ、そう」

「ただ~他の~魔族は~高級~で~いいものだと~言ってました~」

「お、おう……」


 これを人間である俺と義姉さんの前で話せるトモリさんの神経って流石に魔王って感じがするわ……。


「さ、さーて、最後はユウキにお題を出してもらおうかしら!」

「お、おう。任された!」


 トモリさんの最後の回答で皆、若干引いてしまったので空気が悪い。

 な、なんとか明るい方向に持っていけるだろうか?


「じゃあ『魔王との最終決戦に挑む勇者、しかし、その戦いで魔王から語られた驚愕の真実とは!』で」

「整いましたわ!」

「お、シュエリア!」

「実は魔王が父親」

「今時驚けない!」


 割とありそうで驚けない!

 多分そのパターンはもう見慣れているから「あ、そういうパティーンね」って読者にも受け流されるんじゃないか?


「はいはいっ」

「次はアイネだな」

「実は俺、ベジタリアンなんだっ」

「どうでもいい!」


 魔王が実はベジタリアンとか……酷くどうでもいい。

 いいぞいいぞ、皆この調子でボケて欲しいものだ。


「では~わたしが~」

「っ……と、トモリさん、どうぞ」


 ……大丈夫だろうか、この人にやらせて……。


「実は~勇者が~好きです~」

「まさかの?!」

「私もトモリさん好きですっ」

「アイにゃん~」

「トモリさんっ」

『ぎゅーっ』

「……なんですのこの茶番」


 アイネとトモリさんの友情、ほっこりする絵面を「茶番」といいのけるシュエリア。

 いや、うん……まあ、思ったよりライトな回答でよかった……。


「じゃ、最後はお姉ちゃんだね」

「おう」


 俺の返事にこくんと頷くと、義姉さんは最後の回答を口にした。


「魔王は実は勇者の母だった!」

「ややこしい!!」


 父のパターンは見るけど母のパターンって中々ないよな!

 父より余計に関係性がややこしく成りそうだけど。

 などと思っていると、俺の隣のシュエリアが大きく伸びをした。


「ふーっ大満足ですわ」

「あぁ、今日は結構喋ったな」

「楽しかったですわ?」

「さいで」

「さいですわ」


 そう言いながらニコニコ笑っているシュエリア。

 うん、他の皆も楽しそうだったし、何よりだな。


「それじゃあユウキ」

「ん?」

「時間が押してるから夕飯の準備、早く済ませてくださる?」

「……お前な」


 コイツ……ちょっと人がいい空気味わってたらすぐに台無しにしやがってからに。

 まあ……それが非常にシュエリアらしくていいんだけどさ……。


 何はともあれ、俺達の大喜利はこれにて終了。

 おあとがよろしいようで……?


ご読了ありがとうございました!

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次回更新は1月1日金曜日です。正月ですが平常運転です。よろしくお願いします。

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