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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
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こういう展開ってどうなんですの

 デート三連戦、二日目。俺はアシェ邸に招かれていた。

 どうやら今日のお相手はアシェのようだ。


「待たせたわね、ユウキ」

「いや、今来たばかりだよ」

「……その嘘自宅デートで言う奴初めて見たわよ私」


 そう言って俺の隣に腰掛けるアシェ。

 今日は邸宅でのお家デートと言うことで、アシェの服装もとてもシンプルな部屋着……ではなく。


「何故にパジャマ」

「あぁ。これ?」


 俺の質問にパジャマを見せびらかすように体をひねり、胸を張るアシェ。


「この国では仲のいい男女が集まるとぱじゃまぱーてぃとかいう乱交をするんでしょ?」

「色々違う!!」


 間違った知識と、偏見と、育ちの悪さが相まって、酷い発言が出てきた。


「というか、男女が集まるも何も、今日は俺とアシェの二人きりだろ?」

「あー。それなんだけどね?」


 そう言いつつ、アシェがパチンッと指を鳴らすと、部屋の扉が開いた。

 そして、入ってきた人物は……。


「トモリさんっ?!」

「はい~」


 トモリさんがパジャマ姿で現れた!!


「なんでこういうことになる?!」

「いやートモリとデートの優先権争ってたら、最終的に一緒にデートしちゃえばよくない? ってなって」

「なるほどなるほど……ってなるか!!」

「あらぁ~」


 この二人、デートを俺と二人きりでするより、たった一日デートが早い方を選んだというのか……?


「嫌なの?」

「嫌じゃないけども」

「けど?」

「むしろいいのか? 二人まとめてデートとか」

「あぁ。いいわよ? 別に」

「え? そ、そうか」


 まあ本人達が良いと言うのなら、いいのか?


「さって、それじゃ早速……スルスル」

「おーい、待て待て待て」

「?」


 俺の制止に「何よ?」と返すアシェ。


「なんで脱ごうとしてる」

「……乱交」

「だからそれ間違いだから!」

「ふふっ冗談よ。私本当は裸族なのよ」

「まさかの事実!」


 俺がそういう間にも、パジャマを脱ぎ捨てるアシェ。


「おまっ!」

「あー、大丈夫よ? 下着は付けてるから。流石に男性の前で全裸にはならないわよ」

「微妙な線引き!!」


 とてつもなくギリギリのラインを攻めた線引きである。これが悪役令嬢育ちというものか?


「では~わたし~も~」

「トモリさんは駄目です」

「……あらぁ」


 俺に止められて残念そうなトモリさん。

 だがしかし、トモリさんは駄目だ、マジで。

 だってこの人サキュバスだし、スタイル抜群だし。

 こんな人に脱がれたら色々問題が生じる。


「ダメ~ですか~?」

「マジで勘弁してください……」

「ん~。仕方~ないです~ね~?」


 そう言って脱ぎかけたパジャマを元に戻すトモリさん。


「それで、お家デートって何するんだ?」

「あー、それね?」

「なん~でしょう~?」

「ねー?」

「知らないのかよっ!!」


 お家デート指定してきた本人達、情報皆無。


「とりあえず何したらいいかググってみるわね」


 そう言ってアシェはスマホを取り出し検索をかけ……。


「意外とやれることあるわね……この動画の撮影とか面白そうよ?」

「動画の撮影ねぇ」


 それって何するんだ? まんま動画を撮るだけか?


「イマイチわかってないって顔ね」

「んー。動画撮るって、例えばどんなの撮るんだ?」

「そうねぇ。アルミホイルでも球状にする?」

「ユーチューバーか」

「じゃあスライム風呂に……」

「ユーチューバーか!」

「じゃあじゃあ、オフ会開いて人がまったく集まらない絵とか」

「ユーチューバーか!!」


 はあ……まさかこの短期間で同じツッコミを三回も使わされるとは……。


「んもう、わかったわよ。じゃあ普通に踊りでも踊ってみようかしら」

「……ほう」

「女の子が下着姿で踊ってたらみんな見るでしょ?」

「アップするのかよ!!」


 それ絶対バンされる奴だろ。


「冗談よ。ユウキ以外に見せる気無いわ」

「……はあ」

「もうちょっと嬉しそうにしてくれてもいいんじゃない?」

「はあ?」

「何かしら、今ユウキがシュエリアの彼氏なのが凄く納得行ったわ」


 それは一体どういう意味だろうか。


「トモリは何かしてみたいことないかしら?」

「そう~ですね~」


 そう言ってトモリさんはぼーっと何かを考え。


「可愛い衣装で~撮影~会~なんて~どうです~か~?」

「悪くない」

「あんた単純にトモリの写真欲しいだけでしょう」

「はっはっは。なんのことやら」

「ホンっトにシュエリアの彼氏って感じよねあんた」


 いやだから、それ、どういう意味だよ。

 すげえ聞きたいけど、聞くのが怖い気もする。


「で、どうしようかしら」

「何が」

「撮影会と踊りどっちをやるかよ」

「ふむ」


 それなら答えは決まっている。


「踊りだな」

「下着姿で踊ってる女の子が見たいと」

「それはお前だけだ」

「私はどちらかといえば全裸で恥ずかしい踊りをさせられている女の子が見たいわ」

「相変わらず趣味悪いな」

「いやね『わかってる』だけよ」


 ……『わかってる』ね。

 敢えて何をとは聞くまいよ。どうせろくな事じゃない。

 ていうかシュエリアもだけど、エルフってのは下の話好きなのか? 完全にエロフじゃねぇか。


「ま、無駄話はこれくらいにして踊りましょうか」

「はい~」

「おお?」


 まだ踊る曲も内容も決まっていないのに「よしやるか!」と腰を上げるアシェとトモリさん。

 え、何、まさかと思うけど。


「創作ダンス?」

「えぇ。そうよ?」


 そう言ってアシェは軽やかに舞い始めた。

 即興の創作ダンスだけに、ややぎこちないというか、行き当たりばったりな感はあるが、それでも美少女が優雅に体を動かすというだけで結構見栄えがいい。


「ユウキ」

「ん? なんだ」

「ちゃんと撮りなさいよ」

「お前シュエリアみたいなこと言うな」


 多分これ、シュエリアでも今同じこと言ったと思うんだ。

 勝手にいきなり始めてこの言い草である。


「まあいいや、録画録画……」


 スマホをポケットから取り出し、録画を開始する。


「ふんふふんふんふ~ん」


 流石にアシェはご令嬢というだけあって踊り慣れしているというか、楽しそうに踊っている。


 そしてトモリさんは……。

 トモリ……さんは…………。


「(たゆんたゆんたゆんたゆん)」

「……うん」

「ん? どうしたの……よ……」


 俺の反応を見て横で踊るトモリさんを見たアシェが絶句する。

 まあ、無理もない……。

 だってトモリさん。完全に飛んでるだけである。

 なんかちょっと手をパタパタ動かしているが、完全に垂直飛びを繰り返しているだけだ。


 そして、たったそれだけのことを、トモリさんがやっているという事実が破壊力を増す。


「これは……すごい」

「…………」

「(たぷんたぷん)」


 めっちゃ揺れてる、胸が。

 いや、まあ、胸が揺れるのは想定内なのだ。

 なんだかんだ言って、コレをちょっと見てみたくて踊りを選択したところがある。

 しかし、それを感じ取ったのか、トモリさんのこの踊りはまさに、胸を揺らすための行為でしかない。

 完全に狙っている。


「……トモリ」

「たぷんたゆん……」

「この女口で効果音言い始めたわよ」

「まあ待てアシェ、落ち着け」


 踊りながらも若干イラっとしたのか、回転をつけて回し蹴りを放とうと勢いついていたアシェを止める。


「多分、悪気しかないが、まあ待て」

「……あんた擁護する気ある?」

「無い」

「断言……」


 俺の言葉に何か呆れた様子を見せるアシェ。

 しかし思いとどまってはくれたのか、再び先ほどのように踊り始める。


「トモリさん」

「たゆん……はい~」

「これ録画してますよ?」

「はい~」

「わかったうえでやっていると」

「ゆっ君が~好き~かと~?」

「サービス精神の女神様かな」

「あんたを蹴りたくなってきたわ」


 そうは言っても、実際やる気はないのか今回は回転を付けていない。


「ていうか蹴るわ」

「ふぁっ?!」


 そして放たれる無回転の上段蹴り。

 普通に不意打ちだったので思いっきり鼻っ柱に食らった。


「い……いってぇ……暴力反対」

「悪の令嬢に正論唱えるなんてユウキも馬鹿ね」

「コイツこんな時だけ自分のキャラ引っ張り出してきやがって」


 と、まあ。こんな感じで俺が蹴られたのをオチにダンスは終わり……。


「次、何しようかしら?」

「そう~です~ね~」

「次は危険じゃない物がいいな……」

「うーん、そうねぇ」


 とか言いながら、アシェは次にやることがある程度決まっていたのか、先ほど参考にしていたスマホも見ずに口を開いた。


「お風呂、入りましょっか」

「……は?」

「あら~」


 こうして……俺とアシェ達のお家デートは更に危険な領域に踏み込むのだった。


ご読了ありがとうございました!

感想やコメントなど頂けますと励みになります。

次回更新は金曜日です。

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