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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
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これって女子会ですの?

今回はシュエリア視点でお送りします。

「乾杯―! ですわ!!」

『かんぱーい!』


 いつもとちょっと違う日常の夜。

 わたくしの部屋には五人の美少女。

 世界一の美少女ことわたくし、シュエリア・フローレス。

 最強の猫の勇者、アイネ。

 淫魔で魔王のトモリ。

 現代チートスペックストーカーのシオン。

 わたくしの悪友にして悪役令嬢たるアシェ・ハーラルド。


 以上五名。


 今日はこのメンバーでの女子会。なぜかって? 暇だから。

 だからもちろんユウキはいない。なぜかって? 女子会ですもの。

 つまり、わたくしのターンですわ。なぜかって? この集まりの主役だからですわ!!


「あれっ! なんで私だけミルクなんですかっ」

「猫だからじゃないんですの?」

「アイにゃんは~子供~ですから~」

「見た目以上に成人なんですがっ?!」

「あぁ。アイちゃん一応老衰からの転生だもんね。一応大人かぁ」

「そういう言われ方すると老人扱いみたいですっごく傷つきますっ」


 などとアイネは文句を言いながらもミルクを自棄飲みしている。

 後でお腹壊したりしないかしら、心配ですわ。主にわたくしの立場が。

 これでアイネに何かあったらユウキにどやされるのって絶対わたくしだもの。


「私ワインより紅茶がよかったわ」

「ありますわよ、紅茶」

「じゃ、そっちもらうわね」

「あ、お姉ちゃんは度数つよーいお酒がいいなぁ」

「あんたは飲んじゃダメですわ」

「なんで?!」

「んぐんぐんぐんぐ……ぷは~おいし~です~」

「トモリはガンガン飲みますわね」


 各々好き勝手に、特に主題もなく酒を飲み、ジュースを飲み、お菓子を食べ、つまみをいただく。

 騒がしいけれど楽しい雰囲気が充満している。

 とってもいい気分だ。今後もたまにこういう小さな集まりをするのも悪くないかもしれない。


「ところで実は皆に話があるんですわ」

「ん? 何かな?」


 わたくしの切り出した話に、代表としてシオンが答える。


「ユウキとこの前結婚の話をしたのだけれど」

「……すごく真面目な話を持って来たね」

「このワイワイしているタイミングで話す内容じゃないでしょそれ」

「そこを話すのがシュエリアさんらしいですがっ」

「です~ね~」


 みんなわたくしの話出しに賛否両論。

 まあでも、こういう集まりでもして、皆に同時に話さないと誰から順に話すとか、面倒だし、不公平もよくないですものね。


「それで、どうかしら」

「どうってなんでしょうっ」

「日本の法律上、重婚が認められていない以上。わたくし以外は結婚できないわけだけれど」

「まあ、そうなるよねー」

「これに異議や異論はないのかしら」

「まあ、母様は文句ありそうだけど、私は無いわよ。それでもユウキと居られるんでしょ?」

「ええ、それはもちろん」

「愛しても~もらえ~ます~よね~?」

「そこはユウキの匙加減だけれど、まあ悪いようにするような奴ではないですわ。多分」


 流石にそこまではユウキ次第だから何とも言い難い。

 意外なことをするタイプなので案外皆の思い描いている幸せとは違ったことをして、誰かを悲しませるかもしれない。

 まあ、一人ユウキと結婚するわたくしが色々言えたことではないかもしれないけれど。


「アイネとシオンはどうかしら?」

「んー。お姉ちゃん的にはどこまでいけるかが重要かな?」

「というと?」

「子供が欲しい!」

「ユウキと応相談でお願いしますわ……」


 流石にそこまでの決定権はわたくしにはない……。無いわよね?


「まあ日本の法律的に子作りはアウトな気がしないでもないけどね! そこはお姉ちゃん何とかするし! シュエちゃんには口添え含み協力して欲しいなぁ?」

「わ、わかりましたわ」


 まあそのくらいならできるかもしれない。ハーレムとか言い出してしまった責任もある。


「で……アイネは……」

「……嫌ですっ」

「ぐっ……やっぱり」


 以前のユウキとの話では行けそうという判断だったが、わたくし個人としては一番ユウキに懐いている。もといユウキ大好きなアイネである。

 嫌がっても不思議ではない。


「兄さまは皆のものですっ」

「まあ、そうなのだけれど」

「結婚しなくても幸せになれますっ」

「それ完全にブーメランだけれど」


 それを言い出したらわたくしだけ結婚しても結婚していないアイネ達も幸せになれるんだからいいっていう受け取り方もできてしまうわけで……。


「うぅ……とにかく嫌ですっ」

「完全に駄々っ子の言い分ですわね……」


 とは言え、ハーレムと言い出したのはわたくしだし、この『とにかく嫌』というアイネの気持ちも無視はできない。


「こう……何か譲歩とかして貰えたりは……」

「……譲歩ですかっ?」


 そう言ってアイネは「にゃー?」と唸っている……?


「結婚したら寝室はどうなるんですかっ」

「え、そうね。わたくしとユウキ一緒になるのではないかしら」

「それじゃあ私の居場所がなくなっちゃいます!」

「え?」


 でも確か、この子ってユウキの『上』で寝てたわよね。


「アイネは上で寝るんでしょう?」

「夫婦も上で寝るって義姉様に聞きましたっ!」

「それ違う意味ですわ!!」

「にゃ?!」


 この子……完全に勘違いしている。

 アイネって年齢的には大人なハズなんだけれど、人の常識みたいなものは欠けているのよね……。


「じゃあシュエリアさんはどこで寝るんですかっ」

「普通に左右どちらかじゃないかしら」

「右はいつもトモリさんが居ますよっ」

「……じゃあ左でいいですわ」


 そういえば前に添い寝しているとは聞いていたが、固定席だったとは思わなかった。


「なら……それなら兄さまとのデートを取り付けてくれたら許可しなくもないですっ」

「え、ああ。そのくらいならお安い御用ですわ?」


 というか。多分だが、アイネが「兄さまとデートしたいですっ」とか言ったらあの猫好きロリコンシスコン併発者ならデートすると思う。

 だからわたくしから口添えもあれば確実にデートは成立するだろう。

 これって取引にすらなっていない気がするんだけれど、いいのかしら。


「え、デートできるの?」

「デート~」

「わかりましたわ……」


 どうやらアシェ、トモリもデートをしたいようだ。

 シオンはわたくしからの助力を取り付けたからか、はたまたデート経験者だからか何も言わなかった。


「それで、シュエちゃんがこの集まりを催したのってその話がしたかったからかな?」

「え? それは違いますわ?」

「あら~」


 わたくしの言葉が予想外だったのか、皆驚いた様子だった。


 でも本当に違うのだ。

 今回の女子会の意味。それは、単に暇だったからというのもあるのだが、それ以上に結婚の話もあり、だがそんなことよりも重要な事があった。


「その、ユウキとの別れ話の時、皆、わたくしとユウキの中を取り持とうと協力してくれたのでしょう?」

「あれ。あのバカ喋っちゃったの?」

「いえ、だってユウキが不老不死のポーション持っていたんだもの」

「あっ。あー……」


 どうやらこの反応だとユウキにあの秘薬を渡したのはアシェのようだ。


「ユウキだけでアレが手に入れられるはずがないんだもの」

「た、確かに……」

「アイネ直伝の脅迫術で脅されたし」

「うにゃっ」

「あの遊園地って経営者シオンだし」

「あちゃーバレてる」

「正直トモリだけは関与が疑わしかったのだけれど」

「あらぁ~」

「ここまで出揃って何もしてないってことは無いでしょう?」


 わたくしがそう問うと、トモリはこくりと頷いた。


「軽い~アドバイス~を~」

「そう……」


 なるほど、わからないわけだ。直接的な関与というほどではないが、それでもきっと彼女の言葉はユウキにとって重要な働きをしたんじゃないだろうか。

 まあ、そんなわけで。


「だから、お礼をしたかったのよ」

「お礼かぁ」


 そう、お礼。

 この女子会はささやかなお礼を兼ねている。

 だからこそわたくしは話さなければならなかった。

 結婚を考えていることを、そして話した上で、筋を通した上でしっかり、感謝を伝えたかった。


「ありがとう、ですわ」


 わたくしの言葉を皆はどう思うだろうか。

 そう思っていると。


『どういたしまして!』


 みんなそう言って笑ってくれた。

 なんていうか……こう。

『こういうの』いいですわね。


 なんていうか仲間というのかしら。

 そういう存在が居るということはなんと恵まれていることか。

 そう思わされた。

 思わされて。


「うっ……ぐっ」

「シュエちゃん意外と涙もろい?」

「う、うっさいですわっ」


 つい感動して泣いてしまった。

 ……なんか悔しい。


「シュエリアさんっ」

「なんですの?」

「どんまいですっ」

「まさかの気遣い!」


 なんか気を使われてしまうと凄く居た堪れないですわ……。


「ま、シュエリアってこう見えて昔から結構な恋愛乙女だし、ユウキみたいないいひとそうそう捕まえられないだろうから、友人としては協力してあげないとね」

「乙女は余計ですわ……」


 まあ、いい人を捕まえるのって難しいから、そこらへんは否定しないけれど。

 っていうかわたくし昔からそう思われていたの?


「恋愛~乙女~ですか~?」

「そうそう、シュエリアってこう見えて真実の愛とか、無償の愛とか信じてるし、飢えている生粋の乙女脳だから」

「ちょっと! いいでしょう別に! 本物の愛情を求めたって!」

「ほら、こういう子なのよ。だからそういうの受け止めてくれそうなユウキみたいなの、見逃せないでしょう?」

「です~ね~」

「うんうん」

「ふぁいとですっ」

「ぐぬぬぬぬぬっ!」


 何かしら、わたくしが泣いた辺りからアウェーが続いているのだけれど、そういう流れなんですの? これ。

 仲間とかちょっといいなとか思ってしまった、涙してしまった数分前の自分を蹴り飛ばしたい気分だ。


「まあ、そんなわけだから気にしなくていいわよ、シュエリア」

「そうそう、お姉ちゃんこう見えて好きでやってるから」

「裏とか~ないです~よ~?」

「ですっ」

「そういわれると逆に怖いですわ……?」


 魔王が裏はないとか、嘘っぱちにしか聞こえない……。


 まあ、でも。


「でも、本当にありがとう。感謝してますわ」

「シュエちゃんまた泣く?」

「泣かねぇですわ!」


 こうして。

 わたくしはこの愉快でちょっとうざ……面倒なハーレムメンバー達との絆を確認し。

 その後も女子会は仲良く楽しく、和気あいあいと続いていった。


ご読了ありがとうございます!

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次回更新は火曜日18時です。

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