表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
45/266

将来の話ですわ

「わたくしとユウキっていつ結婚するのかしら」

「唐突かつストレート」


 いつも通りの日常、いつもの昼。

 俺は彼女に結婚を迫られている……のか?


「で、いつするんですの」

「なぜ急にそういう話になった」


 俺がそう問うと、シュエリアは真面目に、しかし困ったような表情で答えた。


「わたくしとユウキって仲が良すぎてお友達みたいなカップルじゃない?」

「んまあ。仲はいいよな」

「で、このまま行くとダラダラと同じ関係のまま時が過ぎて行ってしまう気がするんですわ」

「ふむ」


 まあ確かに、そういう関係になってしまうことも、あるのかもしれない。

 しかしまあ、不老不死になってしまっているわけだし、そこまで焦らなくてもいい気もするんだけどなぁ。

 だがそう思っているのは俺だけのようだ。


「だから、結婚の話をしますわ」

「は、はい」


 今日は珍しく、真面目な話のようだ。

 そして、シュエリアは俺の右隣から抱き着くと。


「まず、セックスの話だけれど」

「結婚の話では」


 なぜいきなりその話になってしまったのか。

 真面目な話感ゼロだ。


「結婚したらほぼ毎日したいですわ」

「ほ、ほう」

「エルフって妊娠率低いのよ? だから根気強くやる必要がありますわ」

「なるほど」

「で、結婚はいつになるかしら」

「会話の脈絡皆無かお前」


 ちょいちょい挟んでくるな。婚期逃さないように必死なOLか。


「いつですの?」

「うーん、6月?」

「ジューンブライドね。悪くないですわ」

「問題は他のハーレムのメンツがどう思うかだが」

「……そういえばそんなのありましたわね」

「お前が言い出したんだけどな」


 にしてもどう説明したらいいものか。

 シュエリアが正妻なのは皆知っていることではあるが、結婚するとなると色々と話を通す必要もあるだろう。

 まさかハーレムそっちのけでいつの間にか結婚してましたというのは筋が通らないだろうしな。


「アイネはユウキから話せば丸め込めそうですわね」

「丸め込むとかいうな。人聞き悪い」

「トモリは……どうなのかしら」

「案外すんなり受け入れてくれるイメージだけどな」

「シオンは……駄目ね」

「義姉さんは結構しぶといからなぁ。最後まで食い下がるかもな」


 とはいえ一度は俺の為に? 諦めてくれた人だ。シュエリアとの幸せを祝福してくれる可能性もなくはない。


「まあそこはユウキに任せますわ。男らしく頑張るんですのよ?」

「は、はあ」


 結局丸投げか……。

 いや、まあ、ハーレムで役得をえている分、これくらいは俺の仕事だろうか。


「……っていうかアシェを忘れていたわね」

「アシェはどうだろうな……母がああだからなぁ……」

「結婚するならアシェをって推してきそうよね」

「まあ、それでも俺はシュエリアと結婚するけどな」

「っ……そう。そうよね」

「?」


 なんか顔を真っ赤にしているんだが、何か気に障ることでも言ってしまっただろうか。


「それで? 婚期は決まって、後はプロポーズとかも欲しいですわよ?」

「む。それは確かに」


 本人から直接「欲しい」と求められるのもどうかとも思うのだが。

 でも実際あった方がいいよな、プロポーズ。


「……結婚してください」

「今言ってどうすんですの、この阿保は」


 なんだろう。手酷く振られてしまった気がする。


「もっとムードとか、状況を考えて欲しいですわ?」

「さいですか」

「さいですわ」


 うーん、難しい。

 世の男性たちはどのように告白、プロポーズを成功させているのだろうか。

 攻略プレイ動画とか上がってないだろうか。


「男性、プロポーズ、成功、検索」

「目の前でやらないでほしいですわね……」


 そういうと「はぁ」と溜息をつくシュエリア。

 どうやらこれも違ったようだ。


「フラッシュモブ?」

「やったら怒りますわよ」

「嫌なのか。楽しそうだぞ?」

「楽しそうではあるけれど、わたくしは恋愛ならもっとロマンやムードを重視したいですわ」

「ふむふむ」


 なんだかんだ言ってこうやって情報を与えてくれる辺り、いい彼女である。とてもありがたい。

 そうか、ムード。ロマンかぁ。


「この前のデートでプロポーズもしてたら行けてたか?」

「そういうの聞くのは駄目だと思うけれど……まあ、悪くはないですわねぇ」

「なるほど?」


 ふむふむ、やはりデートして、気分を盛り上げてからの方がいいのかもしれないな。


「じゃあプロポーズに関してはプランを練るので少々お待ちいただくということで」

「へぇ。プランを練るのね? 期待しますわよ?」

「あ、ハードルは深海レベルでお願いします」

「めちゃくちゃ低いわね……もはやハードル設置できないんじゃないかしら」


 コイツにプロポーズするってなると、やっぱ面白系かと思ってたんだが、モブは駄目だっていうしなぁ。

 何かいい案はないものだろうか、こんな時相談できる女性とかいたらよかったんだが。


「さて、婚期、プロポーズと決まったら後は何かしら?」

「んー指輪とか」

「指輪……いいですわね」

「婚約指輪と結婚指輪、両方必要だよな?」

「えぇ、そうですわね。あ、でも値段的な無理はしなくていいですわよ?」

「お、随分優しいことを言う」

「無理されて食事の品質が落ちたらそっちの方が困りますわ」

「色気より食い気だった」


 指輪より食事。とてもシュエリアらしい価値観だった。


「さて、ここまで決まったら後は?」

「そうだなぁ」


 後は……なんだろう。


「式はいつ挙げるんですの?」

「む、そう来たか」


 確かに式も必要だ。できれば……ああ、できればアレも……。


「レンタルは無いな」

「何の話ですの?」

「ドレス」

「頭おかしいんですの?」

「え」


 俺そんなに酷い言われようするようなこと言っただろうか。


「そんなの自作で十分ですわ」

「まさかの自作」


 そうだった、コイツ異常なほどに手先器用なんだった。


「自分に合った衣装は自分でデザイン、作成までしますわ。ユウキは費用だけ考えていればいいですわ」

「そこは俺持ちなのね」


 まあ、そこに異論はないが。できれば財布に優しいといいなぁ。


「式は6月、ってあれ。式って結婚する前に挙げるのか? してから挙げるのか?」

「知らないですわよそんなこと。ググるしかないですわね」

「ふむふむ。結婚式、タイミング、検索」


 なるほど、入籍から1年以内がほとんどなのか……。


「6月に入籍してそのまま式も6月に挙げよう」

「今は12月……頑張ってほしいものですわね、旦那様」

「誠心誠意頑張りますとも」


 人間やめてまで添い遂げると決めた相手だ。そりゃあ頑張るさ。

 幸い貯金も無くはないし、仕事をバリバリ頑張って、後はまあ……うん。


「金銭面は最終的に義姉さんに借金しよう」

「それ妻の前で言うセリフではないですわね」

「まあそれを言っちゃうのが俺なんだけど」

「そしてそんなこと言っちゃうのが面白くて好きなわたくしですわね」


 うんうん、息の合った仲のいい夫婦感出てるな、俺ら。


「後はハネムーンですわね」

「あー。どこか希望はあるか?」

「……秋葉原?」

「オタクでもそこは選ばないんじゃないかな」


 秋葉原、電車で片道500円しないんですが。


「でも楽しいですわよ?」

「まあ」

「ホテルもありますわ」

「うん」

「決定ですわね」

「お、おう……」


 そこまで行きたいか。秋葉原。

 普通に今からでも連れて行ってやれる範囲なんですが。

 てか、バイト先秋葉原じゃん、コイツ。どんだけ好きなんだよ。


「これでハネムーンは秋葉原ラーメン店巡りで決定ですわね」

「お前本当にムードとか気にしてる?」


 さっきから完全に色気より食い気なんですが。


「ラーメン店の雰囲気が悪いとか、喧嘩売ってるんですの?」

「そんなに肩入れする?!」


 別に喧嘩売っちゃいないが、ハネムーンにラーメン巡りってどうだろう。


「アキバのラーメンは旨いですわ」

「ま、まあ」

「だから行きますわよ」

「……はい」


 シュエリアの有無を言わさぬ圧力に屈してしまった……。


「まあ、ラーメン以外も美味しいから、余裕があればそちらも巡りますわ」

「……オーケー」


 もうどうにでもなれだ。

俺らのハネムーンは秋葉原グルメツアーで決定。


 とかなんとか……。


 なんだかんだありつつも、この後も俺達は夫婦としての未来に、思いをはせて楽しい一日を過ごした。


ご読了ありがとうございます。

評価やブックマークなど、頂けますと励みになります。

次回更新は金曜日18時です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ