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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
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人生という名のゲーム? ですわ

「暇ですわ」

「……そうだなぁ」

「にゃ~」

「(だる~ん)」


 いつも通りに戻った休日。

 いつも通り暇するシュエリアと俺。

 そして俺の上で転がる猫のアイネと今日はずっとだる~んとしている魔王のトモリさん。


「……人生って、暇ですわ」

「人生語り始めちゃったよ」


 こんな一時の暇で人生語っちゃう奴、きっとコイツくらいだろう。


「ってことで。ユウキ」

「何かな」

「人生ゲームやりたいですわ」

「ふむ」


 この流れで人生ゲームか。

 悪くはないな。


「暇だし、やるか」

「にゃあー」

「……はい~」


 俺の参加表明に合わせるように返事をするアイネと、若干遅れて返事をするだーるんとしたトモリさん。


 と、いうか、人生ゲームをやる前に確認しておきたいことがある。


「なんでこう、お前は俺に抱き着いているんだ」

「補給ですわね」

「なんの」

「……カレシニウム?」

「カタカナにするとありそうだな、彼氏ニウム」


 膝上のアイネはいつも通りとしても、シュエリアが抱き着いているのはなんなのか。

 そう思っての質問だったのだが、カレシニウムの補給ねえ。

 つまり、なんだ。


「イチャつきたいだけ?」

「ですわね」

「久しぶりだなこの感じ」

「付き合い始めてすぐはこんな感じでしたわね?」

「俺とお前の交際期間そんなに長くないけどな……」


 実際コイツと付き合い始めてまだ半年くらいじゃないだろうか。


「まあ、あれですわね」

「ん?」

「正直、ハーレムの件を言い出したあたりからイチャイチャしすぎるのを制限していたのだけれど」

「ほう」

「でも、先日の復縁でなんかもう色々ガマンするの面倒になったから、これからは堂々とイチャつきますわ」

「お、おう」


 なるほど……そういうことだったのか。

 確かにハーレム云々あたりからイチャつき減ったなぁとは思っていたけど。

 あ、あとアレも確認したい。


「シュエリア」

「人生ゲームのルール確認かしら?」

「いや、この前のデートの話」

「逸れますわねぇ」

「これ確認したら終わるから。俺の呼称がユウキのままだったんですが」

「……は?」

「いや、だから」

「ユウキはユウキでしょう?」


 そう言って何言ってんだコイツという顔をするシュエリア。

 これはなんだろう、忘れている感じなんだろうか。


「以前、愛称の話したよな?」

「……えぇ、したわね」

「その時に二人っきりの時は『ゆっくん』って甘い感じに呼んでくれるという話があったんですが」

「あー、アレですの?」

「おお、覚えてたか」

「えぇ。でもあれ、その日限りの冗談ですわ」

「……えぇ」


 そんなまさか、ちょっと期待してたのに。

 まさかまさか、冗談だったなんて。


「むしろあの日に話した呼び名で呼び続けているトモリの天然にビックリですわ」

「まあ……確かに?」


 そう言われると確かに、あの日の呼称を未だに使っているのはトモリさんくらいか。

 俺もトモリさんを『トモりん』って呼ばないしな……。


「そうか……非常に残念だ」

「そこまで残念がることかしら……っと」


 そう言ってシュエリアは俺から離れ、立ち上がるとタンスをごそごそし始めた。

 多分人生ゲームを取り出すのだろう。


「さて、じゃ、やりますわよ? 人生ゲーム!」

「おう」

「はいっ」

「は~い~」

「やるぞー!」


 と、いうことで始まった人生ゲーム――

 ……ん? 待てよ。なんか今……。


「おい」

「なんですの?」

「にゃ?」

「はい~」

「うん?」

「なんで義姉さんが居る」

「いつものことだよ!」

「……確かに」


 義姉の不法侵入、再び。


「はあ……話逸れるからいいや」

「あはははは」

「笑うな」

「えー」


 まあ正直いつものことだし、今更ツッコんで話逸らすのも馬鹿らしい。

 と、いうことで、改めて。


 人生ゲーム、スタート。


「最初の方ですぐに職業が決まるのね」

「そのようだな」


 俺達の始めた人生ゲームは成人から始まるようで最初はフリーターに始まり、直ぐに就職。その後中盤辺りにはまた職が変わるようだが……。

 今は最初の職選び。といっても、そこはボードゲーム。自分で選ぶというよりはルーレットを回して出た数で職が決まる運要素がある。

 

 で、だ。


 皆でルーレットを回し、決まった各々の職業は……。

 俺、村人。

 シュエリア、姫。

 アイネ、勇者。

 トモリさん、魔王。

 義姉さん、商人。

 だったのだが。


 ……いや、おかしいだろ。


「これ人生ゲームだよな?」

「えぇ。その名も『異世界転生ゲーム』ですわ」

「ゲームのチョイス!!」

「はい?」

「はい? じゃねぇよ! なんで異世界転生した人生を送るゲーム?!」

「異世界要素があると売れるらしいわよ」

「そういうのいいから!!」

「大事よ? 売れ筋」

「大事だけど!!」


 だからと言って人生ゲームに異世界要素だしてどうすんだよ……。


「にしても、アイネが勇者でトモリが魔王って。まんま本職ですわよね」

「おーい、今の話もう終わりかー。スルーなのかー」

「にゃ。本職は兄さまの妹ですがっ」

「わたし~も~ゆっくん~の~愛人~です~」

「いや……それもそれでおかしいですわ?」


 ……まあ確かに、シュエリアの言う通りだ。

 特にトモリさんが愛人の辺りは否定させていただきたい。


「さて、それじゃ、進めますわねっと」


 そう言ってシュエリアがルーレットを廻し、ゲームは進んでいく。


「婚約者との縁談が破談に、一週間引きこもる。7回休み……豆腐メンタルなんですの?」

「ひでぇ言われようだな。お前だって俺と結婚できなかったら嫌だろ? っていうか嫌であってほしい」

「最後願望出てますわ……まあ嫌だけど。そんなことになったらユウキを殺して私は生きますわ」

「そこは一緒に死ぬ流れでは……」

「そんなの面白くないもの」

「さいですか」

「さいですわ」


 まあ実際俺も死んでほしいとは思わないけどさ……好きな人には幸せに生きて欲しいものだ。まあ、たとえ殺されてもな。


「で次は俺な……えーっと。臨時収入で給料が倍額入る……ね」

「村人に給料ねぇ」

「いくらなんですか? 兄さまっ」

「んっと……0?!」

「あらぁ~」

「村人は給料性じゃなくルーレットで出た数で金が決まるから貰えないらしい……」

「ゆう君どんまい!」


 こんなとこ妙にリアルでなくてもいいのに……。

 っていうか他の職は給料あるのか? 勇者とか魔王。


「なんかこのゲームのバランス不安になってきたぞ」

「まあ最後までやってみないとわからないですわ?」

「お前後7回休みだけどな」

「ふぁいとですっ」

「……頑張りようないですわ?」


 まあ頑張ろうにも7回も休みだしな……。


 そんなスタートを切り、ゲームは続きながらも、なんだかんだバランスの悪さを感じながらもツッコミどころのある、違う意味で面白いゲームではある。

 ちなみに勝敗はよくある人生ゲームと同じで最終的な所持金で決まるようだ。

 案外普通である。


 で、中盤。


「村人から冒険者へ転職か……」

「よかったじゃない、異世界転生ものっぽいですわ」

「まあビリだけどな、俺」

「で、一位はシオンですわね……なんでゲームでも商才発揮しているんですの」

「ふっふーん、お姉ちゃんくらいになると運も味方に付けた商売をするものなんだよ!」

「なんか妙にそれっぽいですっ」


 確かにそれっぽいこと言っているようだが、この義姉、多分ノリで言っているから中身は無い薄っぺらい言葉だと思う。

 ちなみに2位はアイネ3位がトモリさん4位シュエリア、ビリ俺である。

 どうやら村人から冒険者になっても生活は楽ではないようだ。


「さて、次は俺の番だが……このマスは結婚マスか」


 俺が止まったのは結婚マス、その内容は一番近いプレイヤーと結婚するというものだ。

 で、その相手は……。


「わたし~ですねぇ~」

「トモリさんかあ」


 まさかトモリさんと結婚することになるとは……。

 というか冒険者と魔王の結婚ってどうなんだろう。

 いや、まあ隣の勇者と魔王が結婚するよりは現実的なのか?

 てか、シュエリアに人を殺しそうな目で見られているのだが、こればっかりは運だし仕方無いと思うのだが……。


「次はお姉ちゃんだね~。えーっと、何々? 商売で大成して大商人になる、か。これでまたお金が増えるね!」

「でもユウキと結婚できなかった時点で人生負けてる気がしますわね」

「い、いいもん、ゲームじゃないところで落とすから!」


 そういって意気込む義姉さんだが、俺にはその気は毛頭ない。

 そしてその後、終盤まで義姉さんは断トツで1位をキープ。しかし婚期は逃したのか独り身。

 アイネは俺と結婚を狙って人生逆転するつもりだったらしいがマスを通過し失敗。しぶしぶ勇者の仕事に専念するもビリに転落。

 半面トモリさんと俺は結婚のイベントなどで着実に稼ぎ夫婦で2位と3位。

 シュエリアは相変わらずの4位である。


「人生って起伏がないとつまらないですわね」

「ずっと4位の奴に言われるとなんか説得力を感じなくもない」

「そしてこの物語も起伏が無いですわね」

「やめてくれ」


 サラっと自虐ネタ突っ込まれたが痛々しくて聞いていられない。


「ユウキはいいですわね。本妻ほったらかしで魔王と結婚、人生も順調に成り上がり、いいご身分ですわ」

「い、いやほら、これゲームだし、運ゲーだし」

「でも主人公は異世界行ったらそういう生活するんでしょう?」

「まあ、ありそうだけど……」


 俺、主人公ってガラじゃないしなあ。

 などと思いながらも、あえては言わない、なんか悲しくなるから。


 で、ゲーム最終盤。


「あっがり~!」

「一番最初に上がったのは義姉さんか」


 義姉さんが最初にゴールに着き、順位も暫定一位。

 しかし。


「人生ゲームでもリアルの人生と同じ道を行くとは思いませんでしたわ」

「それな」

「ちょっ、やめてくれない? それだと私一生独り身でお金だけがフレンドの人みたいじゃ……」


 そういって義姉さんはイヤイヤと首を振る。


「しかし、今のところ事実その通りでは」

「そんなことないよ! シュエちゃんとトモちゃんは友達! アイちゃんは妹!」

「友達っていうか上司ですわね」

「いつもは上司扱いしないのに?!」

「わたし~も~バイト~ですから~」

「トモちゃんまで!!」

「わ、私は義姉さまの妹ですっ」

「俺は違うけど」

「えっ、ゆう君は弟でしょ!?」


 どうやら義姉さんの味方はアイネだけのようだ。

 こんな義姉にも優しいアイネも可愛いな。


「で、そんなことより、わたくしも上がりですわ」

「おう。未だに4位だな」

「何か運命の強制力のようなものを感じますわ」

「人生ゲームでそんな大げさな物言いするかね」


 人生ゲームに働く運命の強制力とは一体。


「で、トモリさんと俺もゴールですね」

「はい~おつかれ~さまです~」


 ここまでの結果としては魔王と結婚して順調な人生を歩み、何とか暫定3位。

 魔王のトモリさんは2位だ。

 で、ビリは……。


「まだ勝負は終わってませんからっ!」

「うん、まあ、そうだな」


 そう、まだ勝負は終わっていない。

 いないのだが。

 その。


「いつになったらゴールできるのかしら……」

「うっ」

「まあいつかはゴールできるようにできてるから」


 アイネは人生の歩みが遅く、一人だけまだゴールから遠いところに居たのだ。

 まあ、だからこそまだまだチャンスがあるわけだが。


 で、結果。


「アイネが1位まで上がるなんて驚きですわ……」

「ひっくり返し方がえげつないな」

「勇者は必ず勝つんですっ」


 そういってドヤ顔を決めるアイネ。ドヤ可愛い。

 にしても本当にすさまじい巻き返しだった。

 バラエティ番組のインチキバランスみたいだ。


「勇者は最後に魔王を倒すと報酬が一気に入るシステムだったとはな」

「勇者って出来高だったんだね」

「私は歩合でしたっ」

「嫌な勇者だな」


 歩合で報酬貰う勇者アイネ。ゲームでも結果を出して報酬をゲットし勝利。

 というか、魔王ってトモリさんだよな……このゲーム本当にバランスというか、設定大丈夫かよ。


「これでアイネ、義姉さん、トモリさん、俺、シュエリアの順で決着だな」

「えぇ……負けたのは悔しいけれど意外と面白いゲームでしたわ」


 確かに、バランスは結構大味だったが総合的に見れば異世界転生をテーマにしているという点をある程度意識したバランスとして悪くない出来ではあった。


「んーっ。さて。人生ゲームも終わったことだし……」

「なんだ? 他のゲームでもやるか?」

「いえ」

「ん?」

「イチャ付きますわ」

「え」


 そういって抱き着いてくるシュエリア。


「寝取られ~ました~?」

「いや、結婚してたのゲームですから」

「だからリアルのユウキはわたくしの物だって、こうして主張しているんですわ」

「そういう?」

「えぇ」


 そういってより一層強く抱き着くシュエリア。

 うーん。

 やっぱりゲームの人生も面白いけど、こっちの方が俺にはいいかもしれない。

 なんてったって美少女ハーレムの主なわけだし。


「私も兄さまに甘えたいですっ」

「甘えてないですわ?」

「お姉ちゃんもキスしたいよ!」

「してないですわ?」

「添い寝~したいです~」

「してねぇですわ!!」

「まあまあ」


 というかキスに関しては以前に不可抗力とは言えしているのだが……。

 とは言えず、みんなの前でイチャ付こうとして全力で煽られるシュエリアをなだめ。

 こうして今日という人生の一コマは終わっていくのだった。


ご読了ありがとうございました。

コメントや感想、評価など頂けますとありがたいです。

次回更新は金曜日となります。

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