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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
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テストしますわ?

いつも当作品を読んでくださりありがとうございます。

この作品を読んでくださる皆様に少しでも楽しい時間を提供できていたら嬉しいです。

「アイネって勉強できるんですの?」

「にゃ?」

「ふむ……」


 いつも通りのお昼。

 シュエリアのいつも通りの唐突な発言。


「アイネは妹だからな。賢いぞ?」

「兄さまの妹ですからねっ」

「妹関係ないんじゃないかしら……」


 俺の妹贔屓とアイネの謎の自信に妹は関係ないと言うシュエリア。


「ほら、アイネって猫でしょう?」

「ですねっ」

「喋れるのは……まあいいとして。歴史や化学も……日常にそこまで支障はないからいいけれど、数学とかはできるんですの?」

「ふむ……できないと困るな」


 確かに数学……というか算数レベルの暗算くらいはできないと買い物とか、日常生活レベルで困ることもあるだろう。


「ということで、アイネの数学テストをしてみたいと思いますわ?」

「お前……暇なだけだろ」

「私おもちゃですっ?」

「そ、そんなことはないですわ?」


 アイネのおもちゃ発言に若干悪い気がしたのかきょどるシュエリア。

 まあでも、確かに兄として妹が生活に困ってないか心配ではあるなぁ。


「じゃあちょっとだけ、軽くテストしてみるか」

「いいですわね!」

「楽しそうだなぁ……」


 俺が話題に乗って助かったと思ったのか、楽しくなると思っているのか。

 どちらにしろ、嬉々とした表情を浮かべるシュエリアに素直な感想が出てしまった。


「じゃあまずは……アイネ、俺が10000円持っていたとして」

「貧乏ですわね」

「……アイネがお菓子を欲しいと言って100円をねだったとする」

「あ、わたくしはコーラが欲しいですわ?」

「…………で、俺がアイネにお金を渡したら俺の所持金はいくらになる?」

「とりあえず財布ごと貰えばいいんじゃないかしら」

「お前黙ってろ」


 シュエリアを黙らせると、アイネはウーンウーンと唸った後に一つの結論に至ったようで、パッと顔を輝かせて答えた。


「9500円になると思いますっ」

「……うん、自信満々だけど不正解だからな?」

「え? なんでですか?」

「なんでって……10000から100引いたら9900だからだよ」

「でも兄さまならきっと『100円じゃ消費税が入ったら好きな物買えないだろ?』って言って500円玉をくれると思いますっ」

「…………可愛いから正解」

「おいコラ待ちなさいそこの猫馬鹿シスコン野郎」


 俺とアイネのやり取りに不満があったのか、待ったをかけるシュエリアに、俺は問いかける。


「なんだよ?」

「なんだよじゃねぇですわ! 普通に算数として不正解でしょう!」

「でも正直アイネの言ってる通りになると思うぞ?」

「なるだろうけれど! でもそれで正解にしてたら学力なんて測れないでしょう?!」

「うーん、まあ、そうかもしれない?」

「そうですわよ!!」


 はぁはぁと息を切らしながらツッコむシュエリア。そこまで必死にならんでもいいだろうに。


「んー、じゃあ別の問題だな」

「う?」

「可愛いから正解でよくないか?」

「まだ問題も言ってねぇですわ?!」


 小首をかしげて俺を見上げるアイネがあんまり可愛いから問題とかどうでもよくなってしまった……。


「世の中の問題は大抵可愛ければ解決すると思うんだ」

「勉強の問題は解決しないですわ!」

「それはそうだな」

「勉強できないと駄目ですっ?」

「うーん……」


 アイネから出て来る純粋な質問に対し、少し返答に困る俺。

 勉強はできるに越したことはないができないと駄目かと言われると……。


「そんなことはないな」

「まあ、そんなことはないですわよね」

「なんで勉強するんですっ?」

「なんでかしら……」

「おい」


 そこでお前が疑問に思ってしまったら話がおかしなことになってしまう。

 言い出した本人、しっかりして欲しいものだ。


「でもわたくしもこの国の歴史とか知らないけれど、基本不自由なく生きてますわ?」

「まあ、そうだろうな」

「勉強ってなんでするんですの?」

「一般教養は日常生活に差し障り無い程度にできればいいとして、後はまあ……専門の仕事に就くために必要なんじゃないかな……」

「ユウキは勉強、意味あったんですの?」

「…………あんまり無かった」

「勉強ってなんなのかしら……」

「うん……」

「にゃあ」


 勉強ってなんだろう。

 社会人になった今でも過去にしてきた勉強で役に立っているのは国語と数学くらいで、他はあまり役に立った記憶がない。


「ま、まあそれはさておき、アイネは足し算はわかるか?」

「はいっ」

「掛け算と割り算はどうですの?」

「よゆーですっ」

「ふむ。アイネがそういうなら大丈夫か……」

「いや少しは疑いなさいよ」


 そういいつつ、アイネに疑惑のまなざしを向けるシュエリア。


「アイネが嘘言うわけないじゃないか」

「本人が分かっているつもりなだけかもしれないでしょう?」

「あぁ……そういうこともあるか」

「ほんと、アイネに甘すぎて見落としが多い奴ですわね」


 こう言われてしまうと返す言葉もない。

 確かに甘いのは事実だしな。可愛い妹に甘いのは兄の必然的な性だ。


「じゃあ足し算から行くか……」

「そうそう、確認していくべきですわ」

「どんとこいですっ」


 そして始まったアイネの学力テスト……だったのだが。

 足し算、掛け算、割り算と試した結果。


「……以外ですわね」

「あぁ、普通に俺より頭よかったわ」

「にゃ?」


 この妹、可愛いだけでなく頭もよかった。

 一応大学出てる俺より遥かに優秀な頭脳を持っていらっしゃった。

 100桁の暗算一瞬でできるとか怖い。


「どういう頭脳してたらこうなるんだ」

「意味わからないですわ……」

「兄さま、私すごいですっ?」

「うん、スゴイ、えらいえらい」

「にゃあー」


 うーん、アイネ恐るべし。ハイスペックシスターだった。

 ていうかこんだけ頭いいのに何で最初の問題は盛大に間違えたのだろうか。文章問題弱い子なんだろうか……今度国語を教えた方がいいのかもしれない。


「こうなってくると、トモリとかも気になりますわね」

「俺はお前の学力も気になるけどな」

「わたくしは……普通ですわよ……普通」

「嘘くさいな」

「アイネは無条件で信じたくせに……」

「アイネは可愛いからな」

「わたくしも可愛いですわよ?」

「お前は可愛いより綺麗って感じなんだよなぁ」

「褒められてる気しないですわね」

「別に褒めてないからな」


 俺の言葉に「むぅ」と不貞腐れるシュエリアはとりあえず話の流れで気になったトモリさんに連絡を取ることにしたようだ。


「さて、連絡したからすぐきますわよ」

「そうか、お前ら転移とかできるもんな」

「はい~走ってきまし~た~」

「走って?!」


 唐突に俺の後ろからハグしながら現れるという義姉さんみたいなことをしてきたトモリさんに驚きの声を上げる。

 走って……どこから……。


「シオン~さんと~遊んでました~」

「義姉さんと? 家でですか?」

「はい~」

「あそこ此処から10キロ以上ありますよね……」


 そんな距離から一瞬で走ってこれるってどんな速度だよ……。

 相変わらず見かけによらず身体能力がえげつない魔王だった。


「それで~なんの~御用でしょう~か~」

「用事も言わずに呼んだのかお前」

「来てから教えた方が面白いかと思って」

「サプラ~イズ~ですね~」

「ですわ」

「絶対適当言ってるだろ」


 サプライズ学力テストとか面白いかなぁ……。

 単なる抜き打ちテストだよね、これ。


「トモリ、問題ですわ」

「はい~」

「あなたは肝試しのスタッフとして子供たちを脅かすことになりました。さて、いったいどんな方法で驚かす?」

「それ有名な心理テストだから!!」

「あらぁ~?」


 俺のツッコミによくわかっていないトモリさんが首をかしげている。

 シュエリアはと言えばツッコまれて嬉しいのかニヤニヤしている。う、うざい。


「首を~落とします~?」

「そして回答が怖い!!」

「わたくしなら親をシベリア送りにしますわね」

「問題出す側は答えなくていいから! 後お前も回答が怖いわ!」

「わ、わたしは兄さまの怒ったときの真似しますっ!」

「え、あれ? 怖いの俺?」


 なんだか今さらっと妹に傷つけられた気がする。

 俺、怒ると怖いのか……アイネに怒った記憶ないけど。

 シュエリアには……あるな。


「ユウキが怒ると夕食抜きだものね……怖いですわ」

「そういう?」

「ごはん抜きはとっても怖いですっ」

「アイネにそんなことしないから大丈夫だよ」

「わたしは~勝手に~食べちゃいます~が~」

「それはそれでどうだろう……」


 この魔王の場合食事は普通の人間と同じでもいいらしいが主食は男性の精気だからなぁ。

 勝手に食べられると非常に困る。


「っていうか話逸れてますわね?」

「話が逸れた原因はお前だけどな」

「てへぺろですわね」

「うん、ウザいなお前」


 相変わらずノリがウザくて楽しい奴である。

 はぁ。たまに思うんだが、これが好きって俺、変わってんのかなぁ。


「心理テスト受けたい気分になってきた」

「逸れた先の話がいつしか本題になってしまう奴ですわね」

「色物を好きなつもりはないんだけどな」

「何の話ですの?」

「こっちの話」


 よく考えると普通に可愛いのってアイネくらいで、後は皆個性強めな気がする。

 色物ばっかりか、俺の周り。


「心理テストって面白いですわよね……その人の本質なんてさっぱりわからないけれどなんとなく楽しいですわよね。何が楽しいのかよくわからないけれど」

「まあ確かに、なんとなく楽しいよな。何がとは言い難いけど」


 正直当たらないからこそ娯楽というか、遊びとして機能している節はある。

 あんまり当たりすぎる心理テストはちょっと怖い気がするしな。多分。


「ということで、お勉強は終わりにして、心理テストの時間ですわ?」

「いうほど勉強してないけどな」


 というかトモリさんの学力は調べなくてよかったのだろうか……。

 まあイメージ的に頭よさそうではある。

 何しろ魔王だし。頭の弱い魔王とかちょっと嫌だ。


「それで、どんな心理テストをするんだ?」

「それはこれからネットで探しますわ」


 そう言ってシュエリアはスマホを取り出して検索を始めた。


「とりあえずこれでいいかしら――あなたは動物園に行きました。パンダの檻の前を通るとそこにはパンダの赤ちゃんが……さて、そこには何匹赤ちゃんがいたでしょう」

「ふむ。0だな」

「この手の問題で即座に0って答える神経にはビックリですわ」

「わ、私は3匹だと思いますっ」

「101匹で~しょうか~」

「それ犬ですわ……まともに答えたのアイネだけじゃない」

「オイ待て。俺もまともに答えたろうが」

「さて……結果はっと」

「おーい無視なのかー」


 シュエリアは俺のツッコミを無視すると心理テストの結果を口にした。


「ここで答えた数は……欲しい子供の数らしいですわよ。0のユウキ」

「なんで名指し。いいだろ、子供0でも」

「うわぁ。いい親にはならなそうですわね」

「ひでぇ言われよう」

「わ、私は丁度3人くらい欲しいですっ」

「アイネならできますわよ。ユウキと頑張るといいですわ」

「頑張りますっ」

「いやまて。お前何さらっと彼氏差出してんの」

「ハーレムだもの、そのくらいは、ねぇ?」

「えぇ……」


 いやまあ、俺も別に嫌ではないのだけれど、なんだろう、そこはもっとこう、焼き餅っていうか、嫉妬というか、そういうのが少しくらいはあってくれないと寂しい気がする。

 というか『頑張る』っていう表現よ、地味に嫌だななんか。


「で、トモリの101はあってるんですの?」

「そう~ですね~悪く~は~ないですね~」

「マジでか」


 流石にそれは頑張りすぎ……というか、無理だ。

 その前に俺が死ぬと思う。


「ということはわたくしと合わせて109人ですわねぇ」

「お前は5人なのね……」


 トモリさんのは冗談だとして……冗談だとして。だ。

 アイネの3人とシュエリアの5人ってハーレムなうえにそんだけ子供もいたら普通に犯罪になるんじゃなかろうか、どうなのだろう、日本。

 それにどうせ義姉さんも加わって、更にアシェもとなるとホント、今更ながら大変な状況だと思う……ハーレムってイメージ的に幸せな感じするけど、日本の法律の中では地獄なのではないかと思うくらい悩みが多い。

 最低でも法に触れずにかつ、全員幸せに……うん、キツイなこれ。


「うーん」

「なんだ、シュエリア、次のテストか?」

「いえ……そうではなくて」

「うん?」

「飽きましたわ」

「まだ1個しかやってないのに?!」


 いやまあ心理テストって本格的なものでない限り軽いお遊びみたいなもんだし、熱中ってほどのめり込むものでもないよなぁとは思う。思うが……しかし一回やって飽きるとか、あんまりシュエリアの好みに合ってなかったのか。


「ということでユウキ」

「ん?」

「そろそろご飯にしてほしいですわ」

「ほう」


 時間を見ると、時計はもう既に18時となっていた。

 夕食の準備をするにはまあいい時間である。

「んじゃあ、夕食にするか」


 そういって俺が席を立つとアイネとトモリさんが付いてくる。


「兄さまっ私、お手伝いしますっ」

「私も~手伝い~ましょう~」

「えっ、ちょっ」


 手伝いを買って出て、俺の背中に抱き着くアイネと左腕に絡むトモリさん。

 そしてアイネとトモリさんの行動が意外だったのか、慌てるシュエリア。

 何をそんなに慌てることがあるのか。


「それだとわたくしだけ手伝わない怠け者みたいですわ?!」

「いや、事実だろ」


 そんなことを気にしていたのか……いつものことなのに。

 まあ、アイネは手伝ってくれるのはいつものことだが、トモリさんは少し珍しいか。

 いつもはシュエリアの相手をしていたりのんびりしている人だからな。


「仕方ないですわね……わたくしも料理しますわ」


 そういってシュエリアも席を立ち、俺の右腕に絡んでくる。

 こうして背中に猫の少女、左腕にサキュバスの魔王、右腕にエルフの姫と絵面と字面だけは羨ましい光景が出来上がる。


 うん……まあ、悪くはないな。


「さあ、行きますわよ!」

「はいはい」


 こうして、俺はハーレムの主としての役得を感じながらも、すごく歩きにくい中、キッチンへと向かうのだった。


ご読了ありがとうございます。

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