遊びに来ますわ
今回短いので二話連続投稿させていただくことにしました。
季節は巡って秋。
秋と言えば食欲の秋、スポーツの秋、読書の秋等々、さまざまに言われるが実際のところ他の季節に比べてぱっとするイベントの無い季節とも思われる秋。
まあ秋にはハロウィンがあるが日本の風習で無いのもそうだがそこまで定着もしていないので都会の若い子等はこぞって仮装したりもするだろうが、一般のご家庭では同じ他国の風習の中でもクリスマス程に賑わいはしないだろう。
そんなハロウィンの日、我が家の居候兼暇人のシュエリアは珍しく忙しそうに、また楽しそうにしている。
「飾りつけはこれでいいですわね! 後は食事とお菓子の用意もしないといけませんわ!」
なぜこんなにシュエリアが張り切っているのか、それは娯楽好きであり転じて祭り好きでもあるシュエリアが秋のイベントである『ハロウィン』を楽しみにしているのもあるが、今日はバイト先の仲間を家に招くことになっている。
そして仲間を家に招くのは初めてということもあり、イベントと合わせてテンションが高いのである。
「ま、いつも暇だ飽きただ言ってる奴が友達とのイベントを心の底から楽しめるっていうんだから、十分良いことではあるんだよなぁ」
そんな俺の独り言にシュエリアは即座に反応した。
「独り言してる暇があるのでしたら手伝うのですわ!! わたくし料理などできないのですから!」
「まさかのドヤ顔ですか。料理できないとか特に女子なら自慢にならないだろ……んまあいいや、お前お菓子出しとけよ? さっさと作ってやるからよ」
というか、コイツ料理練習してからできるようになっていたはずなんだが……まあ手が空いてないだろうし、いいか……。
「さっさと作るのはいいですけれど、わたくしの友人の食べる料理に手を抜いたら殺しますわよ?」
シュエリアはそういうとものすごい殺気を放ってくる。
うわぁ……こんなマジになってるの出会った時に暇だから自害するとか言い始めた時以来だなぁ……。
「あ~はいはい。わかってますよ、わかってますって」
「返事がてきとうですわねぇ……まあいいですわ」
俺の返事になんとなく納得した様子をみせたシュエリアはあらかじめ買っておいたお菓子を段ボールからどっさりと持ち出してテーブルの上に置いたり、可愛い袋でラッピングし始めた。
「ていうかラッピングすげえな……流石はエルフというか、手先器用過ぎてめっちゃラッピングが凝っててビビるわ……」
これはラッピングだけに留まらず部屋のハロウィン装飾全般に言える事なのだが、とにかくどれもこれも細部まで拘った装飾がなされている。
実はハロウィンの準備を今現在、当日の朝にしていることにも関係するのだが、凝り過ぎて前日からの準備だけでは終わらなかった……ということで、それなりの時間を使った装飾はシュエリアの器用さと美的センスも合わさって装飾だけで言えばある意味一般のご家庭のハロウィンパーティのレベルを裕に超えている。
あ、いやまって、そこでお前の家そもそも豪邸じゃんとかやめて、うん。住まい以外の生活レベル事態は庶民だからね?
で、だ。特にヤバいのが部屋に飾られている人形なのだが、ヴァンパイアに魔女、ジャックオーランタンやフランケンシュタイン等々……それら人形の全てが等身大――実物の等身は分からないが全て150cmから2mくらい――でありしかもまさかの木彫りの上に特殊な塗装を施したとてもリアルな物である。
正直売り物として出してもかなりの高値で売れるであろうことは間違いなく、あまりの才能の無駄使いに素直に関心できない代物だ。
他にも手乗りサイズの布製のスケルトン人形やサキュバス人形もあるがこれらも木彫りで無いからと手を抜かれたものではなくむしろスケルトン人形は人型に骨の模様を施したのではなくまんまスケルトンに見えるよう骨の一つ一つが細かく造形されている。
サキュバスに至っては本人が「木彫りの巨乳ってどうですの? 硬いんですのよ? いいんですの?」といって非常に胸にこだわりを持って作っていた程だ。
まあその後に「エルフとしては巨乳を造ることにはいささかコンプレックスを感じる」とか言っていたけれどそれはまあ、関係ないな。うん。
「しかしなんで硬い骨のスケルトンが人形なのか……」
今更だけどちょっと気になるんだよなぁ。
胸に柔らかさを求めるなら魔女もそうだし、スケルトンは逆に木製のほうがよかったのでは、と。
「さっきから独り言の多い奴ですわねぇ。大体、すべてが木彫りだなんだってそんなの芸がありませんわ! スケルトンをあえて柔らかい素材の布で作り上げるのが良いのですわ! これは魔女にも近い物がありますわね、というかあれですわ。魔女はほら……あれですわ」
あれ……?
あれ……アレ………………あぁ、アレか。
「あぁ。魔女はペッタンにしたから木製なのか。魔女まで巨乳にして谷間に囲まれるとペッタンのエルフの立場がないと」
「……随分ハッキリ言ってくれますわね、撲殺しますわよ?」
「ハハハ、まな板に撲殺されるとは上手いこと言うもんだな」
「ふふ、ふふふふふふふ……」
あ、ヤバい、口が滑った……?
なんかシュエリアさんの笑顔が、怖い。
というか、つい忘れがちだがシュエリアの胸は着やせする魔法解けたからもうぺったんではないんだった。
「なら試してみましょうか? ここにちょうどいいまな板がありますわよ?」
「え、ちょ、まって。それ木彫りの魔女……まな板じゃない!!」
「いえいえ! これだけペッタンならまな板同然ですわ!!」
「ちょ、おま…………俺が悪かった! わっ……ぎゃあああああああああああああああああああ!!」
「…………ふう、制裁完了ですわ!」
……あー、なんか暖かくなってきた気がするなぁ……主に頭頂部が、ついでに体が冷たい。
エルフに魔女で撲殺されかかった俺が生命の危機を感じていると、インターホンの音が鳴った。
「あら、六々達が来たのかしら。ユウキ、とっととお出迎えするのですわ」
「あの、俺今重症なんですが、ついでに料理もまだだし」
「わたくしに行けと? 主人は座して来客を待つものですわ」
「この家の主人は俺なんですが……」
まあ今日のパーティの主催はシュエリアだし、今日くらいはいいか……
俺はそれなりに負傷している体で奮起すると玄関に行き、ドアを開けた。
そしてそこには予想通り――ではなく、姉さんが居た。
「帰れ」
「うわ。ドストレートだね……。今日はシュエちゃんに呼ばれて六々ちゃんとエっちゃん連れてきたんだよ」
「あぁ……エっちゃん誰だっけ」
「私よ」
そういって顔を出したのはいつかの食器クラッシャー兼殺人ドリンクのダークエルフちゃんだった。
「エルゥ・ルナーって言います」
「あぁ、そういう名前だったのね」
バイト先ではエルちゃんって呼んでて名前まで聞いて無かったな。
「シオン様にはエっちゃん、六々ちゃんからはエルゥちゃん、シュエリアのアホからはエルって呼ばれてるわ。好きに呼んでくれていいわよ」
「あ、あぁ。うん」
なんだろう、一瞬どっかの駄エルフに対してだけ敵意むき出しだった気がするんだが。
「遅いと思って見に来たら、何してるんですの? ほら、そんなところで突っ立ってたら冷えますわよ、早く中に入るのですわ」
「お邪魔します!」
「失礼します~」
姉さんとバイト仲間一同を家に上げ、パーティ用の広間に通すと二人とも中の異常なくらい凝った装飾に目を奪われたようだった。
「これは……凄すぎますねぇ……天使的にはかなりアウトなメンツがそろってます」
「この魔女の置物なんて血糊が良い感じに滴っていてカッコいいわね。無駄に器用なエルフらしいわ」
「ふふん! わたくしの自信作ですわ!」
……その血糊ってさっき俺を殴った時の返り血じゃないですかね……
と思ってもまさかそんなことは言えまい……そんなん聞かされたらドン引きするだろうしな。
その後、アイネとトモリさんも外出から帰って来て、メンバー全員が集まったところでようやくパーティーが始まった。
「さて、役者も全員揃ったことですし。これよりハロウィンパーティの開催ですわ!!」
ご読了ありがとうございます。
続いて二話目もお楽しみいただけますと幸いです。




