あなたはどっち派? ですわ
「私は断然キノコが好きよ!」
「お前はそういう話しかしないのか?」
いつもどおりの休日、みんなでシュエリアの部屋に集まってだらだらしていると、アシェがいきなり叫びだした。
どうせまた下ネタだろうと思ったのだが……。
「違うわよ。『き〇この山』派ってことよ」
「なんだ、ってっきりまた下ネタかと」
どうやら違ったらしい。そうか、きのこ派か。
「で、ユウキ達はどうなの?」
「ん?」
この場合のどうっていうのは、どちら派かという話だろうか。
「ふむ……暇なのか?」
「そうね、暇ね」
「暇ですわ」
「お前には聞いてなかったんだが……」
でもまあ、エルフ二人が両方暇というなら、付き合うのはやぶさかではない。
俺も暇だし。
「じゃあ、俺は――」
「待ってユウキ」
「ん?」
俺がどちら派か話そうとすると、シュエリアからストップがかかった。
「順番が大事ですわ」
「は?」
「そうね、ここは順番が大事よね」
「??」
どういうことだ? 順番??
「アイネ、どっち派ですの」
「えっ、私ですかっ」
そして最初に聞かれたのはアイネだった。
なんでアイネが最初がいいのだろう。
「えっとっ……き……たけのこ?」
「ふうん、たけのこ派ね」
アイネの返答に、アシェが興味深そうに頷く。
「で、ユウキは?」
「ん、今度こそ俺か」
なんで俺より先にアイネだったのかはさておき、さて、俺は。
「きのこ派だな」
「っ!」
「あら、同志ね」
アシェが嬉しそうに笑う。こんなことでイチイチ嬉しそうにせんでも。
そう、思ったのだが。
「やはり断然きのこかとっ」
「あら凄い、あっさり裏切ったわね」
「まあ、アイネだからしゃあないですわ」
「ん?」
なんかいきなり手のひら返したアイネと、それを見て、いかにも知ってましたと言わんばかりな反応のエルフ二人。
「どういうことだ?」
「そりゃあまあ」
「きのこVSたけのこの戦いは凄惨の一言ですわ」
「意味わからん」
そんな凄惨な戦いがあっただろうか。少なくとも俺は知らない。
「それと、アイネがきのこ派に改宗するのになんの関係が」
「そりゃあ愛しのお兄さまと同じチームがいいだけでしょ」
「あー」
それでどっち派か先に聞いたのか。アイネが裏切らないように。
まあ結果、どっち派か聞いた後に、あっさり裏切ってるんだけど。
「アイネ、別に無理しなくてもいいんだぞ」
「いえっ、正直どっちでもいいのでっ、兄さまと同じものが好きで間違いないかとっ」
「どっちでもいいとか言っちゃったよ」
いやまあ、俺もそこまで拘りないんだけどさ。
「じゃあ次ですわね、シオンはどっち派ですの?」
「ん。お姉ちゃん? お姉ちゃんはねえ、民主主義が通りそうなたけのこ派だよ」
「すごい怖い発言しますわね」
「まるできのこ派に民主主義は適応されないかのような言い分だ」
恐ろしい発言である。何がとは言わないが。
「だって考えてもみてよ。たけのこは『里』だけど、きのこは『山』なんだよ? せめて村とかならまだしも、山って、蛮族じゃないんだから」
「とんでもねぇ発言飛んできたんだが」
「シオンが熱狂的かつ過激派なのはわかりましたわ」
俺の義姉、怖い。
まさかお菓子一つでここまで言うやつがいるとは。
「で、トモちゃんは?」
「た~けのこ~」
「いえーい!」
ハイタッチをかます義姉さんとトモリさん。
「トモリさんはたけのこのどういうところが好きなんですか?」
「そ~ですね~。食感~?」
「なるほど」
義姉さんよりはまともそうだ。よかった。
「で、シュエリアは?」
「わたくし? わたくしはアルフ〇ート派ですわ」
「第三の勢力」
まさかの部外者連れてきたよ。しかも洋風。
「一人のはずのシュエリアが一番強く見えるの不思議よね」
「いや、まあ、シュエリア単体が最強だしな」
一見して、両陣営から離れた答えをするのは逃げのように見えるが、シュエリアはきっとそんなこと考えていないだろう。
単純に自分の好きを貫いた結果、ああいう答えになったと思われる。
「ちなみにどこが好きなんだ」
「最後までチョコたっぷりなところですわ」
「それト〇ポじゃん」
まさかここでボケてくるとはな。
「冗談ですわ。大きめで食べ応えあるところかしら」
「まあ、たけのこもきのこも小さいしな」
「ですわ。貧弱貧弱ぅですわ」
「お、おう」
コイツもコイツで若干ヘイト貰いそうな発言だけど、何。おかしってそんな争うような物だっけ?
「まあいいや、これで答えは出そろったわけだが?」
「ですわね?」
「そうね、じゃあこれから……」
「これから?」
アシェはそこで言葉を止めると。何やら袋を取り出した。
「おかしの試食会よ」
「おぉ」
そこには先ほどまで話に出ていたたけのこときのこ、それに、ん? なんでアルフォートまであるんだ。
「おい、アシェ」
「なによ」
「お前今、錬成しただろ」
「……なんのことかしら」
コイツ買わないで作ったな?
「経済回すためにも、お前ら異能禁止な」
「わ、わかったわよ」
「アシェは阿保ですわねぇ」
「お前も転移禁止だからな。公共交通機関使え?」
「う……」
こうして、阿保エルフ二人に一応の注意をした後。
俺たちは各派閥のお菓子を食べ比べながら、なんだかんだどれもおいしく食べながら、だらだらと時を過ごすのであった。
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