心配ですわ
「心配ですわねえ」
「心配事か?」
いつも通りの休日に、いつも通りのダラダラと過ごす時間。
シュエリアは珍しく、何か心配事があるようだ。
「シュキとシキが勇者に〇されないか心配ですわ」
「急にアシェみたいなこと言いだすじゃん」
というか、シュキとシキは両方優秀だから、勇者に何か手を出されるようなことはないと思う。
「まあ、〇されるは冗談にしても、何かしらか害されないか心配ですわ」
「そんな奴だったのか、勇者」
それはなんていうか、困るな。
「まあ、シュキはわたくしに似て美少女だし、シキもシオン似でスタイルいいから、心配になるのは無理ないですわよ? 勇者がどうというより、男なら手を出しかねないでしょう?」
「うーん、どうかな」
まあ確かに可愛い娘二人だが、そもそも俺ら以外の親は同行しているかもしれない。
そんな中で下手な真似もしないだろうと思うのだが。
「というわけで、対策を考えたいですわ」
「うーんまあ、いいか」
そういうことなら、うん、とりあえずあれだな。
「暇なんだな?」
「……暇ですわ」
「じゃあやるか」
つまり、うちの嫁はなんだかんだ言いつつ、暇だからお喋りしたかっただけなので、付き合うことにした。
「それで、対策って?」
「一番いいのは鈴をつけることですわね」
「クマよけか」
それで勇者が、というか男が寄ってこなくなったら凄いな。
まあ、無理だろうが。
「さて、ツッコみも頂いたし、本気で対策考えますわ」
「なんだ、冗談だけで突っ走るのかと思ったら」
なんだかんだ娘のことが心配なのかもしれない。
「リアルに男を寄らせない対策って何ですの?」
「結婚願望がないことを宣言しておくとか」
「……なんですのそれ」
「いや、結構有効かなあと」
「それはまあ、成人男性には有効かもしれないですわね……?」
なんかシュエリアの反応が微妙なので、これは無しなのか?
「他にないんですの?」
「ありますっ」
「あら、アイネ、居たんですの」
「最初からいましたがっ?!」
シュエリアの心無い言葉に動揺するアイネ。
うん、アイネとトモリさん、アシェもいる。アイネ以外は今のところ聞いてるだけだが。
「そうなんですのね……で、どんな対策が?」
「はいっ。それはですね、名札ですっ」
「名札?」
なんだ、名札って。つけてどうなるんだ。
「兄さまの所有物だとわかるように、首輪に名札もつけておけば安心ですっ」
「めっちゃ猫視点の話ですわね」
「だな……」
可愛いけど、それだとなんか絵面が怖い。
親の所有物っていう感覚がもうね、恐怖の対象でしかない。
「ある意味寄ってこないんじゃない?」
「そういうアシェは何か策はないんですの」
「私? 私なら、そうねえ」
そういいながら口元に手を当てて考えてますポーズをするアシェ。
「……そうね、敢えて『勇者様の性〇隷になりたいです』っていうことでドン引きさせるとか」
「頭湧いてんのかお前」
そんなこと言えるわけないだろう……阿保過ぎる。
「というか、それで勇者がOK出したら問題ですわよ」
「ふむ……確かにそうね?」
「お前らな……」
この阿保エルフ二人、大丈夫かよ。
「トモリさんは何か、無いですか」
「は~い~」
こういう時は実は一番まともなトモリさんに頼るしかない。
そう思い、声をかけた。
「そうで~すね~。婚約指輪~?」
「あ、めっちゃまとも」
それなら決まった相手がいますよということを非言語コミュニケーションで示せる。
若干口下手気味なシキにも安心の内容だ。
「それで行きましょう」
「指輪代はユウキ持ちですわ」
「マジかよ」
それは考えてなかった。まあ、いいか。
「いやあ、今日もしゃべりましたわねえ」
「そうだな」
まあほとんど無駄話だったんだが。
「というわけでユウキ、飯ですわ」
「はいはい」
時間を見ると、もう昼だった。
「いつも通り飯で切り上げるんだな」
「話し合いも結論出たし、いいでしょう?」
「まあな」
適当な結論が出たところで終われるのはまあ、いいことだ。
そんなわけで、俺は後日男除けとして指輪を買い。
シュキとシキに妙な勘違いをされそうになったのであった。
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