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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
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わたくし達の冒険はこれからですわ!

「あ、あれが魔王……」

「母さん、隠れて」

「お姉ちゃん……もといお母さんは平気だよ」


 突然転移してきた魔王に驚愕するシュキと、母である義姉さんを守ろうと前に立つシキとのほほんと構えている義姉さん。

 そんな様子を見て、現れた魔王は口を開く。


「勇者たちよ、お前たちの旅はここで終わりだ。そう、この魔王ハダカーン様が直々に終わらせてやる」

「肌姦? 新しいプレイ?」

「いや、ハダカーンな。きっと裸由来だ」


 何せ出てきた魔王も、タイトなスパッツ一枚の裸体魔王だった。


「裸王でもいいですわね」

「そだねえ、ラオウだったら強そうだしね」

「言ってる場合か」


 こんな話をしている間も、なぜか待ってくれている魔王。


「ふっ、勇者たちよ、この魔王ハダカーンをみて、臆さない度胸だけは誉めてやろう」

「裸の王様見慣れた後だから、新鮮味に欠けますわね」

「そういや王様どこ行った」


 俺がそう言って周りを見ると、シュエリアが俺の方を振り返って答える。


「あれ、交換転移の魔法陣だから、今頃魔王城ですわよ」

「え」


 それってヤバいのでは。


「そのとおりだ勇者よ。今この国の王は我らの手中にある。おとなしく首を差し出せ。そうすれば王は解放してやろう」

「っていうのが狙いみたいですわ」

「うん、ところでさ」


 さっきから気になってたんだけど……。


「勇者って誰のことだ?」

「何?」


 ここには勇者は……いやまあ、アイネは居るけど、いない。

 王様も軍資金云々言ってたけど……マジで誰を勇者だと言ってるんだ。


「今ここに勇者はいないぞ?」

「じゃあそこの縦ロールの異常な魔力はなんだ」

「わたくしですの?」


 そういってシュエリアが首をかしげる。


「っていうか隠してるのに魔力を感知できるなんて、肌姦のくせにやりますわね」

「貴様……その強さで勇者ではないのか?」

「そうですわね、勇者達の保護者みたいなもんですわ」

「なん……だと……」


 シュエリアの言葉に驚愕する魔王。うん、まあ、そうなるか。


「い、いや、だとしてもだ。王はこちらの手中。いくら強かろうが手出しできまい」

「……やっていいならやりますわよ?」


 そういって俺を見るシュエリア。うーん。


「やっちまえ」

「了解ですわ」

「え」


 その瞬間。魔王が消えて、王様が現れた。


「な、なんじゃこれは?」

「転移し直しましたわ。これで旅ができますわね」

「魔王倒さないんだな」

「旅終わっちゃうじゃない」

「俺の嫁って暇なんだなあ」


 まあ、楽しい旅行はこれからってことで。


「どういう状況なんじゃこれ??」

「説明だるいから、かくかくしかじかですわ」

「え、わからないんじゃけど」

「説明終わったし、軍資金はよですわ」

「いや、何も終わってないんじゃけど??」


 うん、めんどくさがって話さないせいで、時間が余計に消費されているな?


「えっとですね、王様――」


 仕方がないので、俺が説明することにした。

 ちょっと時間をもらって、裸の愚王にもわかるように、丁寧に説明した。


「なるほど……つまり、お前たちは魔王を倒す機会をみすみす逃したのじゃな?」

「阿保かお前」

「何?!」


 おっと、つい口がすべった。


「あんた人質になってたんだから、これでもだいぶいい方よ?」

「そうですそうですっ、馬鹿みたいに人質になった王様が悪いんですっ」

「ぼん~くら~?」

「役立たないよねぇ」

「ボロクソ言うじゃん」


 うちのメンツ、全員口悪かったっけ。アイネまで毒吐くのは珍しい……珍しいよな?


「わし、泣きそうなんじゃけど」

「はい、テッシュ」


 そういってシキが王様にテッシュを献上する。


「心優しい者もおったんじゃな……」

「おっさんの涙は見苦しいから早く拭くべき」

「うん……なんかわしが間違っとった」


 シキもシキで王様に思うところあったらしく、毒を吐いている。


「とりあえず、軍資金出すから、早く討伐してくれるかの?」

「承知ですわ」


 ということで……。

 魔王襲来から一転、俺たちの旅は結局行われることになったのだった。


ご読了ありがとうございました!

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次回更新は次回日曜日の21:00までを予定しております。

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