電撃戦? ですわ
「というわけで、同行してあげますわ」
「どういうわけじゃ」
出会い頭に開口一番、シュエリアが放った言葉は王様には通用しなかった。
まあうん、普通に考えて通用しない。
「暇だから付いて行きますわ」
「ふむ。魔王舐めとるな?」
「いいぞもっと言ってやれ」
暇だから魔王討伐の旅に同行するとか。何考えてんだって話で。
「舐めませんわよ、汚い」
「そういう意味じゃないんじゃけど?」
「そうよシュエリア、舐める場所が必ずしも汚いとは限らないわ」
「そういう話じゃないんじゃけど??」
うん、うちの阿保二人がすみません。
俺は心の中で謝っといた。
「ところで、なんで裸なんですの?」
「へ? 何の話じゃ?」
「いや、なんか上裸だから」
「そうね、なんでよ」
そういわれて見れば、うん、なんで上裸なんだろう。
俺も俺ですんなり受け入れていたけど……なんか色々怖いな。
「母さん、それは禁句です」
「そう。ヅラの上司にズレてるっていうようなもの」
シュエリア達の言葉に、言ってはいけないと窘めるシュキとシキ。
「でも上裸ですわよ?」
「そうね、人様と会うのに上裸ってどうかしら」
「え、わし上半身裸なの?」
そういわれて自分の腹を見るように顔を向ける王様。
うん、裸だよ。
「これ、謎の人物から送られてきた、馬鹿にしか見えない服なんじゃけど」
「なんで着ようと思った」
いや、うん。だから馬鹿なのか。
「天才だから見えないですわ」
「私も」
「よかった、わし、上裸なのかと思った」
「いや、よくねぇだろ」
結局上裸に見えてることには変わりないし、謎の人物から送られてきた得体の知れないもの着るなよ。
「まあ、とりあえず上裸の謎は解けたし……それで? 同行していいんですの?」
「え、ああ、うむ。よいぞ」
と、さんざん話が逸れたが、ようやく本題、同行の許可がもらえた。
「さて、それじゃ行きますわ」
「うむ。勇者たちと共に旅に出るのじゃ!」
そういって立ち上がり、無いマント……もとい見えないマントをバサっとやる王様。
「勇者一行には旅支度の軍資金……おぉ?! ぐぬぉおおおおおおおお!!」
「あら。もうですの?」
「もうってなんだ?」
軍資金の話をした直後。王様が苦しみ始めた。
そしてそれを見て「もう」と言い出すシュエリア。いったい何が。
「あの服。転移魔法が織り込まれている服ですわ」
「へえ。転移魔法」
それと王様の苦しみに何の関係が。
「多分今、王様は服に締め付けられてますわね。なんでかっていうと……魔法陣が織り込まれた服が、王様のボディで膨張して、機能しないくらい膨張しちゃってるから、機能しようとして元の形に戻ろうとしてるから、ですわね」
「つまり、服が元のサイズに戻ろうとしてる?」
「ですわ」
それで締め付けられているのかあ。
つまり王様がデブなのに無理やり着たから発生した二次被害だ。
「で、もうとういうのは?」
「あー。多分あれ、魔王転移してきますわ」
「マジで?!」
なんでそういうことを早く言わないかな。
俺は話を聞くや否や、王様から隠れるように、シュエリアの背に逃げ込んだ。
「……いいけど、ユウキ、それやってて恥ずかしくないんですの」
「恥ずかしいわけあるか、最善策取ってる自負がある」
「……まあいいですわ」
「ぐわあああああああああ!!」
俺とシュエリアが話している間にも、徐々に王様の体が締め付けられていく。
そして、ついに。
「魔法陣ができましたわ」
「く、来るんだな?」
「まお~」
「魔王ですねっ」
元魔王と、元勇者が魔王の存在に反応したのか、口を開く。
それと同時に王様の体がだいぶスリムになったあたりで、ついに魔法陣が発動。
部屋いっぱいに青白い光が広がっていく。
「さ、来ますわよ」
「まさかの魔王が電撃作戦しかけてくるとはな……」
ホント、どうなってんだよこの世界。
とりあえず。こうして俺たちの魔王討伐の旅は終わり、最初からクライマックスな展開に巻き込まれるのであった。
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