結局嫁ってなんですの?
「結局嫁って飯炊きする女性のことなんですの?」
「いきなり何を言い出す」
いつも通りの休日、みんなでシュエリアの部屋でだらだらしていると、シュエリアが急に、何か誤解を受けそうな発言をしだした。
「いきなりじゃないですわ、この前の続きですわ」
「この前……?」
この前っていうと……。
「先週の、嫁らしさ的な話ですわ」
「あぁ」
確かにそんな話をしたな、うん。
「で、どうなんですの」
「何が」
「飯炊きする女性が嫁なんですの?」
「いや、違うと思うけど」
それだけが嫁ではない、だろうなあ。
「じゃあ、どんなのが嫁なのか、みんなの意見を聞きたいですわ」
「ふむ」
今日の議題は「どんな女性が嫁らしいか」といったところか。
まあ暇だし、いいだろ。
「というわけで、アイネあたりから聞きたいですわ」
「私ですかっ」
アイネは急に話を振られてしまったのでうーんうーんと唸る。
「そうですねっ、やはりお嫁さんらしさとは旦那様を支える姿勢でしょうかっ」
「かわいい、100点」
「おいコラですわ」
なんかシュエリアに怒られた。なんでだ。
「姿勢って具体的にどういうことですの?」
「そうですねっ、愛ですねっ」
「愛……ですの?」
「はいっ」
シュエリアの「また曖昧な返答来たな」的な反応に対し、もう全く悪気なく、キラキラとした笑顔で答えるアイネ。
「かわいいからよくね」
「……そーですわね」
どうやらシュエリアも諦めがついたようだ。
「じゃあ……トモリ、どうですの」
「そうで~す~ねぇ~」
トモリさんはそこまで言うと一拍おいて答えた。
「ウェディ~ング~ドレス~?」
「それ花嫁らしさの象徴ですね」
まあ、嫁らしさ……うーん。
また微妙に天然な返しが来てしまったものだ。
「じゃあ嫁らしくしようと思ったらドレス着て暮らすんですの?」
「よい~かと~?」
「トモリさんに服のことは聞くな」
この人年がら年中和服の人だ。どこに行くにもだ。ファッションについては当てにならない。
「まあ、とりあえず参考までに覚えておきますわ」
「いや……いいけどさ」
あまり参考にしない方がいいとは思うが。
「では次は」
「わたし、いいかしら」
「アシェですの?」
アシェはこの前嫁らしさとはという話を振ってきた犯人だ。
何を言い出す気なんだろうか。
「まあ、いいですわよ」
「トモリとアイネの意見を足して二で割った感じなんだけど」
「……どんなだ」
「なんで嫌そうな顔してんのよ。大丈夫よ、ユウキもきっと気に入るわ」
そういって自信満々にアシェは答えた。
「裸エプロンでお出迎え、これが嫁の基本作法よ」
「なるほどですわ」
「なんで納得した」
そこはツッコめよ、何受け入れてんだよ。
「でもすごく理にかなっているというか、本当にいい案だと思いますわ?」
「えぇ……?」
まあ、シュエリアがいいなら……いいのか?
「いいけど、この時期は寒いぞ?」
「魔法で防護してるから問題ないですわ」
「さいですか」
「さいですわ」
なら、好きにしたらいいと思う。
「あとはシオンはどうですの」
「お姉ちゃんはねぇ、甘やかしかなあ」
「裸エプロンで?」
「え? あー、うん」
「あんたもか」
なんでみんなそういうの好きなんだ?
「甘やかしねぇ……耳かきとか?」
「ゆう君大好きだからね、いいと思う」
「まあ、それは歓迎だけど」
でも裸エプロンはどうだろう。
まあ、嫌いではないんだけどさ。
「じゃあいい意見も聞けたところで、シュキはどう思いますの?」
「うん? 私も?」
と、ここで、近くで勉強していたシュキと、多分シキにも話が及んだ。
「どうですの? 何か若者的な意見は」
「お前も若いけどな」
「見た目だけですわ?」
「それいってて悲しくなりませんかね」
まあ、いいけどさ、話進まなくなるし。
「うーん、アイネさんと同じかな」
「というと、姿勢?」
「そう、献身的に旦那様を支え、愛する姿勢」
「ふむ」
なるほどなあ……まあ、シュキが言うなら、うん。
「じゃあシキはどうですの?」
「私は分かってる。嫁とは合法的にセ〇クスできる相手」
「おいアシェ、何を教えた」
「え、私?」
疑問符つけるほどか? どう考えてもコイツの教育だろ。
「母様から学んだ」
「やっぱりお前じゃねぇか」
「ッチ……いいでしょ、事実だし」
「事実だが」
それでもダメだろ。これはシキの教育方針を話し合う必要がありそうだ。
「これで一通りで切りましたわね」
「まあ、そうだな」
俺の意見は先週言ってるし、いいだろう。
「というわけで、わたくしは、裸エプロンでユウキと甘やかし合法セ〇クスしますわ」
「全部合わせたらただのエロ本みたいになったな」
なんともひどい結論である。
とはいえ、まあ、時間もつぶせたし、シュエリアも満足ならそれでいいだろう。
「というわけでユウキ」
「うん?」
「今日のお昼はユウキですわよ」
「あ、はい」
時間を見て、まだ昼前だが、そろそろ準備した方がいいことに気づく。
「じゃあ、行ってくるわ」
「いてらですわ」
こうして、俺たちの嫁らしさトークは、多分今週で本当に終わったのであった。
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