名前って大事ですわ
「結城遊生ねえ」
「なんだ急に」
いつも通りの休日、シュエリアの部屋でダラダラしていると、急にフルネームで呼ばれた。
「いえね、遊生だったらまだしも、ユウキだとどっちのイントネーションなのかわかりにくいと思って」
「また妙なことを考え始めたな」
俺の嫁はいつも通り変なことばかり考えている奴だった。安心。
「それで、名前って大事だなあと、思ったわけですわ」
「ふむ」
まあ、そうかもしれない?
「例えばB〇SSですわ」
「あー」
なんだっけ、名前を変えたら売れるようになったコーヒーだった気がする。
「名前ってその物の在り方を示したりする重要な物だと思うわけですわ」
「ふうむ」
「そこいくとユウキは遊びに生きると書くわけだから、まんま遊び人ですわね?」
「誰が遊び人だこら」
失礼な、これでもたまには働いてるわ。
「いえ、仕事云々ではなく」
「さらっと人の心理描写に返事するな」
「美人、美少女侍らせてるんだからまごうことなき遊び人でしょう」
「……すんません」
確かに、そういわれてしまうと、そうかもしれない。
「そこで、えっと、なんですの?」
「いや、何って聞かれても」
「えーっと、ああ、そうですわ。うちの店のメニュー名を考えたいんですわ」
「仕事の話かよ」
なんだ、いつもの無駄話かと思いきや、そこそこ役に立つ? 使い道のある話なようだ。
「で、なんかないんですの」
「いや、そもそもどんなメニューなのかもまだ聞いてないのに、なんかないかも無いだろう」
「そりゃそうですわね?」
というわけで、俺はシュエリアから新しいメニューの大まかな内容を聞き取ることにした。
「まず、誰が提供する料理なんだ?」
「女騎士ですわ」
「ほー」
女騎士かあ。
「くっころせんべい」
「コスプレ喫茶でせんべい出すんですの?」
「ごめん、語呂だけで言った」
流石にないか。うん。
「面白いからありですわ」
「ありなのかよ」
また面白いからでやってしまうのかこのエルフは。
「でもさすがにせんべいだけってわけにもいかないですわね」
「そうなりますか」
そしたらどうしようか……。
「ダメだ、思いつかん」
「わたくしもパッとは出てこないですわね」
二人して思いつかず、うーん、と唸る。
しばらく何も答えが出ない時間が続くと、扉をノックする音が聞こえた。
「いいですわよー」
「は~い~」
「トモリさん」
「は~い~」
トモリさん登場。ふむ、トモリさんにも聞いてみるか。
「トモリさんは女騎士って聞いて、もしコスプレ喫茶でメニュー出すなら何がいいとかありますか?」
「あ~なる~ほど~? オ~ク~?」
「ふむ、オーク」
オークをまんま出すのは……流石にどうだろう。
「女騎士のオーク漫画肉にしますわ」
「適当に決めただろ」
「えぇ、何か問題でも?」
「開き~直~り~」
「すげぇな」
コイツ、自分からお題だしといてやる気ないのかよ。
「っていうかもう尺なんですわ」
「もうかよ」
今日も今日とて尺……もとい飯の時間来るの早かったな。
「ってことで飯ですわ」
「はいよ」
そこでふと思う。
「試しに今日の夕飯は漫画肉にしてみるか」
「おー、いいですわねえ」
と、うちの嫁からもOKが出たので。
「じゃあちょっと肉買いに行ってくるわ」
「いてらですわ~」
「いってら~しゃい~?」
そんな感じで。
名前が大事ってことがいろんな意味で身に染みるような、そうでもないような話し合いは終わり。
俺は漫画肉のために厚切りの肉を買い出しに、出かけるのであった。
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