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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
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参りますわ

「墓参り行くぞ」

「え?」


 いつも通りの休日、シュエリアの部屋を訪ねた俺は、早速シュエリアに声を掛けた。

 まあ返事は間の抜けたものだったが。


「30秒で支度しな」

「いや無理ですわよ」

「冗談だ。でも支度はしろ」

「何なんですの?」

「墓参り行くって言っただろ?」

「言ったけれども……」


 シュエリアは何が何やら、よくわかっていない様だ。


「誰のお墓に行くんですかっ?」

「お、アイネ、アイネも準備してくれ。お墓はな、両親だ」

「それってユウキのですの?」

「まあそんなもんかな」

「そんなもんってなんですの」

「義姉さんの親だからな」

「あぁ。そういうことね、いいわ、私も行ってあげる」


 今度はアシェが反応した。なんでちょっと上からなんだろう。


「そういうわけだから、シュエリア、準備してくれ」

「分かりましたわ? でも、トモリ。貴女も行くでしょう?」

「はい~」

「こんな大人数で行っていいものなんですの?」

「まあ、大丈夫だろう」


 どうせ墓はそんなに混むような場所でもない。俺らが多少人数居たところで迷惑になる他の人っていうのも居ないわけで。


「さて、それじゃあ1時間後にまたここに集合な」

「いいけれど、人の部屋をたまり場みたいにするのどうなんですの」


 とは言え本当に迷惑だと思ってたら「いいけれど」なんて言わない性格だ。

 どうなんだろうという疑問はあっても嫌ではないのだろう。


「皆が集まる場所と言えばシュエリアのところだろ」

「そう? まあ、そうですわね?」

「なんでちょっと嬉しそうなんだ」

「別に、嬉しそうなんかじゃないですわよ」


 照れてそういうシュエリアはなんか可愛かった。

 まあ、いつだって美少女は可愛いのだが。

 そんなこんなで一時間後。


「さて、行こうか」

「はいはい、行きますわ」


 全員の準備が整っているのを確認してから家を出る。

 移動は住所をシュエリアに教えて転移することにしたのだが、一応靴を履く都合上、このような形となった。


「で、到着したわけだが。久しぶりだなあ」

「そうだねえ、お墓参りは久しぶりだね」

「なんでシオンが居るんですの」

「待ってたからね、来るのを」

「義姉さんには連絡済みだったからな」


 義姉さんの一言だけだとなんか怖いので、一応付け足しておく。


「そう、連絡済みだったんですのね。てっきり墓場に入り浸る系の人なのかと思いましたわ」

「私なんだと思われてるのかなあ。そこまで暇じゃないよ」

「それもそれでどうなんだ」


 別に墓場によく来てても暇とは限らないだろうに。


「で、なんで墓参りなんですの?」

「んや、そうだな、何処から話そうか」


 これは今日の本題でもあるので、なんて話せばいいものか。


「シュエリアに何処まで話したか分からんから、最初から話すか」

「そうして貰えると助かりますわね」

「まず俺って親に捨てられたんだよね」

「いきなり重いですわねえ」


 とはいえ口調は軽く、至って重々しくない話し方だ。

 なにせ本人がそのことを特に気にしていないからだ。


「まあ物心つく前だから、なんの思い入れも親にないんだけどな」

「それはそれでどうなんですの」

「まあまあ。で、義姉さんに気に入られて拾われたんだけど。この辺は長いから省略するわ」

「ザックリ言うと、捨てられたのも孤児院みたいな施設にだったんだけど、そこが私がよく遊びに行ってた施設でね、それでゆう君に会う内に気に入って、親に頼んで養子に貰ったの」

「そうそう、そんな感じ」

「へぇ、良い縁ですわね」

「あぁ、まあ、そうだな」

「めっちゃ歯切れ悪いじゃん。もっとこう、嬉しそうにしていいんだよ」

「義姉さんとの縁はな……良い様な悪い様な」

「酷くないっ?!」

「冗談だ」


 まあ非常に人の縁には恵まれていると思っている。

 特に義姉さんと出会わなければ今のこの生活もなかっただろうからな。


「それで……まあ俺は元々義姉さんの旦那になるのが前提で貰われたんだけど」

「お父さんとお母さん、実はこれには反対でね。だからゆう君には自由に生きていいよって話してたらしいんだよね、私は知らなかったけど」

「そうそう、それで俺は結局家を出て……義姉さんの持ち家の今の家に住むようになったんだよな」


 墓参りの手続きなどをしながら、そんな話を続ける。


「今時のお量ってこんななんですの?」

「ビルの中にあるんだよ、凄いだろ。で、なんだっけ。あぁ、そう、その後シュエリアと出会うちょっと前に、義姉さんの両親が亡くなってな」


 ちょっと話が逸れつつも、会話を続ける。


「そうしてゆう君と私は二人っきりの家族になったんだよねえ」

「結局俺が話したのは最後に家を出る前に義姉さんとは結婚しなくていいから自由に生きろって言われたことくらいなんだよな」

「そうなんですのねえ」

「で、ここからが重要で、なんでここに来たかって話な」

「お、なんでなんですの?」


 俺は墓の前まで行くと、手を合わせて死んだ義姉さんの両親に報告する。


「この度俺は、自由に生きた結果。ここに居る全員を嫁に貰う事になりました。すみません、義姉さんと結婚しないって話、守れないです」

「でも大丈夫、お姉ちゃん達が必ずゆう君を幸せにするから」

「っていう報告をしに来たんだよ」

「なんで今なんですの?」

「うん? 命日だから?」


 そう俺が言うと、なるほどと頷くシュエリア。


「でもまたアレですわね、どっちにしろ急ですわね」

「まあな。でもそろそろこっちの世界でも一夫多妻が認められそうだし、新世界はそんなの気にしないだろ?」

「ですわねえ」

「だからそろそろ報告しとこうと思ってさ」

「そう」


 シュエリアはそう言うと、自分もなにやら墓の前で手を合わせている。


「何か報告することでも?」

「阿保のユウキはわたくしが守ってるから大丈夫だって、報告ですわ」

「あじゃあ私も」

「私もっ」

「わた~し~も~」


 そう言ってゾロゾロと、墓の前に並んで手を合わせる皆。


「ユウキは私が居ないと駄目だから一緒にいてやるわっと」

「兄様は寂しがりやなので私が一緒に居ますっ」

「ゆっ君は~……くー」

「寝るなよ」


 アシェ、アイネと来てトモリさんがボケた。


「冗談です~。ツッコミ~させてあげ~ま~す~」

「妙な報告しなくていいから」


 故人になんて微妙なこと報告してんだこの人。


「さて、これでやるべきことは終わりですの?」

「そうだな、こっちの世界で思い残したことはもうないな」

「そう、そうなんですのね」


 これでやらなきゃいけないことはもうない。


「さて、帰ってゲームでもするか」

「そうですわね」


 そんなこんなで、俺達の墓参りは終わり、帰ってゲームでもすることにしたのであった。

ご読了ありがとうございました!

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次回更新は次回日曜日の21:00までを予定しております。

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