イラストですわ
「ふんふふんふんふっふふ~ん」
「なんだ、やけに機嫌いいな」
休日、いつも通りシュエリアと過ごそうと部屋に訪れると、やけに機嫌の良さそうなシュエリアがいた。
「あら、そう見えるんですの?」
「そうとしか見えん」
鼻歌歌ってニコニコしてれば、そりゃあ機嫌がいいのだろうと思うだろう。
「わたくし今、イラストを描いてますの」
「ほほう」
絵を描いてるのか。なるほどなあ。
「それでなんで上機嫌に?」
「楽しくてつい、ですわ」
「そうか」
まあ、楽しいのは良い事だ。うん。
「で、どんなイラストを描いてるんだ?」
「ん? これですわ」
「どれどれ……」
シュエリアが描くのに使っていた紙を覗く。
「おいシュエリア、これは」
「なんですの?」
「画風がすごく、アレなんだが」
「アレとは?」
「いや……」
本人無意識なのか、それともツッコミ待ちなのか……。
いや、どっちにしても言うべきだろう。
「これ、いらすとやじゃね?」
「あら」
シュエリアは俺の言葉に反応こそしたが、この反応からはどちらなのかまでは区別がつかなかった。
「真似して描いたのか?」
「よくわかりましたわね」
「まあ、有名なフリー素材だし」
というか凄いな、これだけ画風を似せて、描けるなんて。
「で、これはアイネで、こっちはトモリさんだよな」
「そうですわね」
「で、これは? 義姉さんか。で俺で、シュエリアで……うん?」
なんか一つだけ、最後に変なのがあった。
「この紅い、変なものはなんだ」
「うん?」
紅い、どろっとしたスライムみたいな何かが描かれていた。
なんだろう、わかる気がするけど、分かりたくない気もする。
「あぁ、これ? アシェですわ」
「お前アシェを何だと思ってんだ」
「クソ雑魚スライム?」
「ひでぇ認識だな」
アシェに対する認識が酷過ぎる。可哀そうに。
「まあ、冗談はさておきそれはスライムですわ。こっちがアシェですわ」
「なんだ、こんな冗談言う為にわざわざ描いたのか……」
そう言いつつ、アシェの絵も見せてもらう。うん、上手い。
「他にも描く予定は?」
「六々とか、仕事先の子も描いてみようと思ってましたわ」
「ほうほう」
なるほどなあ。うーん。
「それだと俺が一緒だと描きにくいか?」
「そんなことないですわよ」
「そっか」
じゃあお言葉に甘えて俺はシュエリアの部屋でゲームでもやらせてもらおう。
「あら、スマホゲームですのね」
「あぁ、最近またシャドバやり始めてな」
「ああ……なるほどですわ」
「絵柄がキレイなのが良いんだよなあ」
「ゲームシステムには追及しないんですの」
「しない」
特に文句はない。なんかアレだけど、ない。
「シュエリアはこういう絵柄も真似して描けるのか?」
「できますわよ」
「すげぇな」
何が凄いって、言い切れるところが凄い。
「じゃあちょっと書いてみてくれよ、六々をシャドバ風に」
「いいですわよ」
そして待つこと一時間。
「出来ましたわ」
「はやっ」
見てみると、確かにシャドバ風の六々が居た。
すげぇキラキラしてる。
「ビショップのカードかニュートラルに出てきそうだ」
「ですわねぇ」
うん、シュエリアやっぱり手先器用で絵が上手いな。
「さて、それじゃ俺はゲームするから」
「わかりましたわ。私は絵の続きを楽しみますわ」
という訳で。
こうして俺達は一緒の空間に居ながらも、別々の事をして、それでも楽しくお互いに時間を有意義に使うのであった。
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