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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
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名言を考えますわ

「今日も一日頑張るぞいっ……って私が最初に言いだしたことになんねーかな。ってわたくしが言い出したことにならないかしら」

「お前もう色々アウトだよ。どこ目指してんだ」


 先ほどまで漫画を読んでいて静かだったシュエリアがかなりギリギリでアウトな発言をしてきた。


「じゃあ、かめピーめ波はわたくしが元祖ってことで」

「じゃあってなんだよ……ていうかピー音を発音するなよ」

「何よ? ダメなんですの? なら、そうね。やれやれだぜはわたくしの口癖ってことにしますわ」

「お前ホントどこに向かいたいんだよ」


 そもそもか〇はめ派の元祖でやれやれだぜとか言い出したらかなりジャン〇っぽくなるじゃないか。

 絶対偉い人に怒られるわ。


「お前はアレだ『暇』が口癖の駄エルフだから、もう大丈夫」

「そんなに『暇』なんて言って無いですわ! でも、大丈夫ってなんか良いわよね、そんなのポピーモンにも居たわね」


 おいおい、ポケ〇ンとか言い出しちゃったよコイツ。

 それは某夢の国と同じくらい触れるとヤバいと噂だった奴じゃないか。

 まあ今では薄い本とか出てるけどさ。


「おいそろそろ止めないと本当に消されるぞ」

「……消されるって、何に、誰によ」

「神的な何かにだよ」


 俺がそう言うと、シュエリアは渋々了承した。


「じゃあ、せめてこれからは甲高い声で話しますわ。ハハッ」

「おっと、お前は今日中に存在を抹消されたいようだな」


 有名な少年誌とポ〇モンと夢の国、うん、完全に踏み込んではいけない領域だ。


「ついでにプリティでキュアキュアしますわ。ぞいっハハッ」

「片っ端から突っ込むの止めてくれない?! ツッコミ追い付かないどころか回収しきれなくてもうお腹いっぱいだからさぁ!! あとその笑いはホント止めろ!!」


 コイツは何がしたいんだろう、自滅願望でもあるんだろうか。


「お前今日はなんかおかしくないか? いつも以上に」

「おかしくなんてないですわ! ていうかいつも以上にって何よ……。ただ、そう。名言とかあると後にもネタにされるから何か一つくらい後世に残る伝説の名言を作りたいのですわ!!」

「お、おぅ…………」


 なるほど、そういう事か。

 でもまあ、それならもうすでに今作ったから問題ないと思う。

 そこら辺のネタを片っ端からパクる上に丁寧なパロディではなく本当に片っ端から突っ込むだけのパワープレイをし、抹消された愚かなエルフとして、きっとこの世の末まで語り草だ。


「てことで、暇だから何か名言を生み出したいですわ。キャッチーでインパクトのあるセリフがいいわね?」

「結局暇なんじゃねぇか」


 これもう、暇が口癖でいいんじゃねぇのかな。

 ある意味コイツの生き方を象徴する言葉でもあるし、うん。


「で、何かないかしら?」

「『暇』でいいんじゃねぇの?」

「イヤですわよそんな怠け者みたいな口癖」

「おっと、存在全否定か?」

「あん?」


 なんか凄く怒っているが、よく考えて欲しい。

 日頃から「暇だ暇だ」といい、あくまでも嫁として養うということで家に置いているにも関わらず家事はまったくしない。バイトはしているとはいえ、家に居ると日がな一日ゲームやアニメと娯楽三昧。

 これは完全に怠け者だと思うのだが、それがイヤって。


「お前はどう考えても怠け者だろ」

「そ、そんなことないですわ! そうよ、アレよ、いざとなったら『仕方ないな!』とか言いながら、何とかするタイプですわ」

「いや、暇すぎて『仕方なく』ゲームで暇潰すタイプだろ、お前」

「そんなこと……! あるかもしれないですわね」

「あ、認めるんだ」


 なぜそこは素直なのか。もっと色々な部分で素直に自分を見つめ直して欲しいものだ。


「で、どんな口癖、名言がいいかしら?」

「いや……うん。まあ口癖まではいいにしても、名言は狙って言うもんじゃないだろ」

「そうかしら?」

「そうだと思うぞ? 作者だって『これは名言! 良いこと描いたな、俺!』とか思って無いと思う。多分」


 いやまあ、実際上手いこと言おうとしてないとは限らないが、それでもキャラが狙って言ってるとか、なんか夢が壊れるからやめて欲しい。


「んじゃあ口癖でいいですわ」

「んじゃあって……まあ、いいけど。なんかキャラ付けになるのが良いのか?」


 俺が問うと、シュエリアは呆れたように首を横に振った。


「何を聞いていたんですの? 私はキャラ付けの為ではなく、伝説を残したいのですわ。そう、聞いた者がつい真似したり、ネットで使いたくなるような語尾、あるいは口癖を!」

「はぁ、さいですか」

「さいですわ」


 つまりあれだ、語感が良い物、あるいは汎用性に富むような使いやすい何かが良いわけだ。


「淫〇語録的な奴か」

「え、いや……そういうのはちょっと……ほら、それは何処でも構わず使うと煙たがられる奴ですわ? もっと誰でも使って行けるような……だからほら、がんばるぞい的な、ね?」


 なんだかシュエリアが急に消極的だ。そちらは苦手な話題なのだろうか。


「同じ理由で兄貴もダメなのか」

「ですわ」

「じゃあ一体どうしたら……」

「何よ、貴方そっちの気あるんですの……?」


 別にそういう訳ではないんだが、何となくパッと思いついたのがそれってだけで。

 というか、キャラ付けならまだしも、誰でも真似したくなるような言葉って難しくないか?


「やっぱり語感がいい方がいいよな?」

「そうね、ポプテピーピックとか語感のいい言葉の多さでは英雄王の宝物庫級よね」

「そ、そうだな」


 しかしあそこから持ってくるのは非常にリスキーだ。本当にいろんな意味で。


「ハッ! そうですわ! 既存のセリフに似ている物をアレンジしたらどうかしら?」

「……ほう、例えば?」

「それはですわね――」 


 そういうとシュエリアは少し間を置いて口を開いた。


「俺、このゲームが終ったらアニメ見るんだ――とか」

「いや、ただの遊び人じゃんそれ」


 なんでそんな「この戦いが終わったら」みたいな感じで言うのか。

 というか一人称が俺になってるし。


「じゃあ。ヤったか?! とか」

「なんでその変換をしたのか。ダメだろそれ」

「なら、押し倒してしまっても、構わんのだろ。とか」

「なんで下の方に繋げようとする?」

「俺に構わず先にイケーっ! ならどうですの」

「だから。なんで下に持っていく」


 このアホエルフ、前から思ってたけど下ネタ大好きだな。


「はぁ、埒が明かないですわね?」

「お前が阿保ばっか抜かすからだろ……」

「っていうことで援軍を呼びましたわ?」


 シュエリアがそういって指をパチンと鳴らすと、同時にドアをバーンッと開けて入ってくる人影が三つ。


「下ネタ好き最カワお姉ちゃん、シオン!」

「え、えっとっ、癒し系最強勇者、アイネっ!」

「天然ドS~? 和服系最凶魔王~トモリ~」

『三人合わせて、色物ヒロインズ~っ!』

「なんだこの茶番は……」


 姉さん、アイネ、トモリさんは入って来るなりシュエリアに仕込まれたのであろう茶番を繰り広げてきた。

 というかやらせたであろうシュエリア本人はメンバーに入ってないんだな……。


「うわーやらせといてなんだけど、くっそ恥ずかしいわね?」

『グハッ!』

「……言ってやるなよ」


 あくまでもシュエリアにやらされての事だというのになんとも酷い評価である。


「で、何しに出てきたんですかヒロインズの方々は」

『もうそれで呼ぶのやめてくださいっ』

「う、うん……ごめん」


 せっかくだから俺も茶化してみたんだが……どうやら思った以上に本人たちのダメージは大きいようだ。


「で、何しに呼んだのだったかしら」

「お前が忘れんなよ……」

「シュエちゃんが名言欲しいって言ってたから各自案を持参してきたんだよ?!」

「シュエリアさん酷いですっ」

「あら~あらあら~?」


 シュエリアの余りの塩対応にヒロインズ……もといいつものメンバーから苦情が出る。

 まあトモリさんはあらあら言ってるだけだが、笑顔に含みがあるので異議はあるのだろう。


「そ、そうでしたわね、それでは、シオンから発表して欲しいですわ? わたくしに使えそうな名言!」

「よしきた! お姉ちゃんが考えてきたのは……「暇ですわ」だよ!」

「それもう言ってますわ?!」

「おぉ、シュエちゃんの中でも名言判定なんだね!」

「そういう意味じゃないのだけれど……」


 言いながら肩を落とすシュエリア……そしてそれを見て首をかしげる姉さん。


「ほんと、こういうところ姉弟ですわよね……」

「まあ義理とはいえ共に過ごした時間が長いからな」

「あっ、もしかしてゆう君も?」

「あぁ、暇でいいんじゃないかって」

「だよねー! 代名詞~~!」

「代名詞?!」


 俺と同じ答えだったのが余程嬉しかったのか、姉さんはやたらデレデレした笑顔になっていた。


「! わ、私も兄さまと同じでしたっ!!」

「ん? そうなのか?」

「は、はいっ」

「アイネまで乗らなくていいですわ?!」

「へ?」


 アイネも同じ意見だと言っていたが、シュエリアの乗らなくていいというのはどういう意味なのか?

 俺が疑問に思っていると、アイネが口を開いた。


「うぅ……兄さまとお揃い……」

「あぁ……そういう」

「ホント、結城家はユウキ大好きなブラコンばっかりですわね……」


 どうやらアイネは俺と同じ答えに行きついた義姉さんとの姉弟らしさに自分も混ざりたかったようだ。

 そんなことしなくてもアイネは俺の自慢の妹なんだけどなぁ。


「それで、アイネは何を考えてきてくれたんですの?」

「う? 私はシュエリアさんにこの言葉を贈ります! 「ラヴい」です!」

「は、はぁ」

「なんだかちょっとイマドキっぽくてエモいじゃないですかっ」

「完全にそこから取って来てますわね。いえ、いいけれど、どうかしら……うん、アイネ、マジラヴいですわ?」

「ナイスちゃらいですっ!」

「どうですのユウキ? これって口癖としてラヴいかしら?」

「うーん」


 俺はむしろアイネの喋り方が可愛い事しかわからないんだよな。

 いつも元気で「○○ですっ」って語尾が強めなところとか、微妙な言葉選びのセンスとか……。


「無いな」

「ですわよねー」

「うっ……ダメですか? 兄さまっ?」

「アリだな」

「おいこのダメシスコン。何オーケー出してんですの」

「アイネが可愛いからな?」

「兄さまラヴいですっ」

「うん、かわいい」

「もう一生やってろですわ……」


 シュエリアは呆れた様子で俺達から顔を逸らすと、視線をトモリさんに向けた。


「これはもう、頼りはトモリだけですわ!」

「でしたら~わたしからは~『~』を贈りま~す~」

「今なんて発音したんですの……?」


 シュエリアの感想には俺も同意したい。

 恐らくトモリさん独特の間延び……トモリ節とでもいうような特徴的な喋り方をシュエリアにもして欲しいという話なんだろうが……話の趣旨的にシュエリアが印象に残る語尾とか名言を発するというのを目的とすると、被りはあまりよろしくないのではと思うのだが……


「まあなんとなく言いたいことはわかりますけれど……ゴホン。この~喋り方~わたく~し~には~合わないんじゃ~ないかし~ら~?」

「うん、真似してはいるけどなんか違うな?」

「~が多いですっ」

「いや、無理ですわよこれ、話しにくいったらないですわ?」

「シュエちゃ~ん~、ワガママばっかり~じゃ~ダメ~だよ~?」

「あら~? あら~」


 なんだこの間延び空間。めっちゃ時の流れが遅く感じるわ。

 っていうか姉さんは相変わらずそつないな。普通にトモリ節が上手い。


「なんだか謎空間過ぎて頭痛くなってきましたわ……」

「まあ俺もこの空間は苦手かもしれん、もどかしい」


 トモリさん一人ならまだしもこのペースで話すメンツが増えたら余りのスローペースにそこはかとないストレスが溜まるんじゃないかという気がする。


「さて、まあ何はともあれ全員意見が出そろった訳だが、どうだったシュエリア?」

「そう、ですわね……」


 俺の言葉に応じるように、シュエリアは額に手を当てると深く考える様子……もなく、言葉を放った。


「ぶっちゃけ飽きてきましたわね?」

「飽きちゃったよ!!」


 こいつ散々口癖がだの名言がだの言ってた癖に最初から暇だっただけのようだ。

 結局先ほどまでの話は暇だから適当に持ち出した話題にすぎなかったようだ。


「お前ホントは名言とかどうでもいいんだろ」

「今更何を……わたくしってもう存在がレジェンドですもの。そんなものに頼る必要性ありませんわ!」

「お、おぅ……」


 久しぶりにコイツの自信過剰を体感した気がする。

 しかしそれより問題なのは、『ズ』の方々だろう。


「シュエちゃ~ん?」

「? え? な、なんですの?」

「シュエリアさん、おちょくってたんですかっ?」

「え、おちょ?」

「あら~? これは頂けません……ね~?」

「あー……テヘぺろですわ?」

『イラッ』


 曲がりなりにも、おふざけも入っていたが、それでもシュエリアの要請に答えて恥ずかしい登場をして名言を考えてきてくれた『色物ヒロインズ』の面々だ。思うところがあってもしかたないだろう。


「シュエちゃん?」

「は、はい」

『正座っ!』

「ハイッ!(びしっ)」


 こうしてシュエリアの名言への道は経たれ、ついでに正座の影響で足腰立たなくなるまで、『ズ』の方々にこってり絞られたシュエリアなのであった。

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