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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
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笑顔の絶えない職場ですわ

「いらっ――」

「おい」


 いつも通りの休日だが、残念ながらシュエリアは仕事だったので、職場にでも顔を出すかと思って行ってみたら、いきなりイラっとされてしまった。


「そこで切ったらイラっとしてるみたいになるだろ」

「実際してますわ」

「するなよ」


 接客業で客が来てイラっとするとか、向いてないだろう。


「なんだ、そんな忙しいのか?」

「いえ、暇ですわ」

「暇なのかよ」


 仕事が回らなくてストレスが……っていうなら話は分からんでもないのだが、別にそういう訳でもないらしい。


「丁度休憩取ろうと思っていたから、ユウキ、事務所行きますわよ」

「え、おう」


 こうして事務所という名の社員の休憩室に通される俺であった。


「あぁ、トモリも休憩中でしたわね」

「は~い~」


 そう言えば忘れていたがこの人もここで働いているんだった。

 淫魔という設定で働いている(実際には設定じゃなく本物)ので露出の多い格好をしている。公序良俗的に大丈夫なんだろうかと疑うレベルである。


「じゃあ三人でちょっとお喋りですわね」


 そう言ってシュエリアはトモリさんと自分の間の席をススメて来る。


「両手に花ですわね?」

「見た目だけはな」

「見た目以外の何が駄目なのか聞きたいところだけれど……まあいいですわ」


 俺の言葉に怒るかと思ったが、思ったよりスルーされた。

 さて、お喋りって何をするんだ。


「うちって仕事をしてても笑顔の絶えないアットホームな職場なのだけれど」

「それだけ聞くとブラック企業を連想するな」


 『笑顔の絶えないアットホームな職場です』ってのはブラック企業の謳い文句みたいなところが若干ある気がする。


「でも事実ですわ。やっぱり上に立つものが立派だと下の物も働きやすいわけですわ」

「誰が立派だって?」

「わたくしですわ」

「自信満々に言うじゃん」


 思いっきりドヤ顔で言われてしまった。流石の自信家だった。


「実際皆、笑顔で楽しく働いているし、お給金もいいからかなりホワイトな職場ですわ」

「休憩も~ちゃん~と~ありますし~」

「ふむふむ」

「残業もないですわ、ほらクリーン」

「なるほどなあ」


 まあでも実際、シュエリアは最初は働くのをあんなに嫌がっていたのに今では店長まで上り詰めている。

 トモリさんも長く働き続けている。悪い職場ではないのはわかっている。


「ただやっぱり表現がなあ」

「まあ言いたいことはわかりますわ」


 シュエリアもなんだか分かっているようで。俺の言葉に共感は示してくれた。


「でも、社員もみんな個性的だし、お客様もだけれど、働いていて飽きないですわよ」

「へぇ、そりゃよかったな」


 まあでも、俺が来た時点では暇だったらしいけど。


「他の子達もきっとそう思ってますわ。楽しいって」

「それならいいな」


 楽しく働ける職場か……理想的だなあ……。


「俺は働いてて楽しいって思ったことあんまり無いな」

「そうなんですの? 好きな猫とじゃれる仕事でしょう?」

「ちゃうわ。探偵だっつうの。人の嫌な場所とか付け回すような仕事……不倫調査とかもあるし、やってて気持ちのいい仕事ではないからな」


 まあもちろん、俺はどちらかというと迷い猫探し専門みたいなところあるから、そういう仕事ばかりではないのだが……。


「もうこうなったらユウキはヒモになるしかないですわね」

「どうなったらヒモになるしかなくなるんだよ」


 確かにうちのメンツは皆かなり稼いでるから、嫁さん達に養ってもらう事は十分可能だが。


「ヒモになったら毎日遊びに来ていいですわよ」

「それお前が俺に来て欲しいだけだろ」

「違いますわよ、トモリだって会いたいだろうなと思っての事ですわ」

「まあ~あい~たいか~と~?」

「何故、疑問形」


 そこはスパッと会いたいですと言って欲しかった。


「まあいいや、でも流石になあ、俺が仕事辞めたら助手のアイネまで無職になってしまうからな」

「アイネはペットだから仕事している必要ないですわ?」

「お前たまにサラッと酷い事言うな。ペットとか」


 いやまあ、俗に言えばペットだけど。俺にとっては大切な妹だ。


「冗談はさておき、マジでヒモになって毎日遊びに来てくれてもいいんですのよ?」

「お前そんなに俺に会いたいの?」

「……そうでもねぇですわね?」

「そこは会いたいって言ってくれよ」


 そうでもないとか言われたら傷ついちゃうじゃん。


「まあいきなり来られるとイラっとするくらいですから、仕方ないですわね」

「いきなりじゃなかったら?」

「ウェルカムですわよ」

「そうなのか」


 じゃあ本当にヒモになって、毎日来るよって話になったらウェルカムなわけだ。


「まあでもやっぱり自分の収入がないと安心できないからな、暫くは続けるよ」

「そう、気が変わったらいつでも言ってくれていいですわよ?」

「はいよ」


 まあ気が変わることは当分ないと思うが。


「そしたらそろそろ休憩上がる時間だから、行きますわね」

「は~い~」

「仕事頑張れよ。俺はもうちょっと店内居るからさ」


 こうしてシュエリアとトモリさんと過ごす休憩時間は終わり。

 俺はその後色んなコスプレ(本物)と一緒に楽しい時間を過ごし。

 笑顔の絶えない職場という物を実際に目の当たりにしたのであった。



ご読了ありがとうございます!


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次回更新は不定期ですが、書け次第更新とさせていただきます。

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