真剣勝負? ですわ
「それで、今回は何するの?」
少年Aに連れられて訓練所とやらに着くと、シュキがそう言った。
「え、そ、そうだな……今回は……」
シュキの質問にしどろもどろな少年A。
どうしたのだろうか。
「なあシキ、あの子誰だ?」
「リオンだよ。いつもシュキに絡んでは負かされてる」
「なんだろう、そんな奴他にも居た気がする」
誰とは言わないが、うちの嫁に絡んでは負けてる赤髪のエルフが居た気がするなあ。
「今回はじゃ、じゃんけんだ!」
「じゃじゃんけん?」
「シュキ、それが伝わるのは日本だけだと思う」
ハ〇ター×ハ〇ターネタは異世界では通じないだろう。
「とにかく! じゃんけんで勝負だ!」
「はあ……なんで訓練場来たのよ」
確かに、じゃんけんだけなら訓練場まで来る必要ないよな。
うーん、何考えてんだろうなこの子。
「リオンはシュキの事好きだから絡んで来る」
「そうなのか?」
へえ、それならなんとなくわかる。
好きな子に何でもいいから構ってしまうという奴だろう。
「準備は良いかシュキ」
「いいよロリ」
「そのあだ名で呼ぶな!」
「ロリ?」
少年Aことリオン君は実は女の子だったのだろうか。
それだとシュキとリオンで百合ってことになると思うのだが。
「リオンは日ノ本国から来た東洋人とのハーフで、関口リオンっていう」
「関口リオン……口リでロリか」
「そう、でもそのあだ名嫌ってる。ロリじゃないって」
「まあ、そうだろうな」
男の子にロリってあだ名はひでぇもんだ。
子供ってそういう無慈悲さというか、配慮のなさがあって怖い。
「それじゃあ行くぞ!」
「はいはい」
そんな話をしている間にも、遂にバトル(?)が始まろうとしていた。
「最初はグー!」
「じゃんけん」
「「ぽん」」
結果はリオンがグー、シュキがパーだ。
「はい、また私の勝」
「くそっ」
異世界でバトル展開かと思いきやまさかのじゃんけん。
俺が思う事はただ一つ。
「異世界にもじゃんけんあるんだな」
「流石父さん、目の付け所が違う」
なんかシキに褒められてしまった。
普通に疑問だから口にしただけなんだが。
「それで、これで用件は終わり?」
「うぅ……なんでいつも勝てないんだよ……」
なんか一人落ち込んでいるリオン君であった。
うーん、じゃんけんだから今回のは運だと思うが、いつもはどんな勝負をしているのだろう。
「いつもはどんな勝負を?」
「ん。テストの成績とか、魔法の威力勝負とか、かけっことか」
「なんか今一つだけしかファンタジー要素なかったんだけど」
しかもシュエリアの娘のシュキにそこらの少年が魔法で勝てるわけがない。
言っちゃ悪いが相手が悪すぎる。
「さて、それじゃあ私はお父さん達と見学に戻るね」
「ま、待ってくれ」
「何??」
「えっと、お、俺も一緒に周ってやるよ」
「え、要らない」
余りにも無慈悲な言葉に一瞬我が娘ながら恐れ入った。
シュキはこの子の気持ちに気づいてはいないようだ。
「そ、そうか……」
「それじゃあね」
それだけ言うとシュキは俺の手を引いてその場を離れてしまう。
「よかったのか?」
「いつもの事だからね。あれでもメンタルは強いから大丈夫」
「そ、そうか」
まあ好きな子に構って欲しくて、その一心でというのもあるのだろうが。
シキは気づいていても教えたりしないのはリオン君への優しさだろうか。
「まったく、無駄に時間使った。漸く父さん達を案内できる」
「そうだねシキ。いこ、お父さん」
「お、おう」
そんなわけで、俺達は漸く学院の見学を再開するのであった。
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