ファッションですわ
「お母さん、ダサい」
「いきなり失礼な娘ですわ」
いつも通りの休日、シュエリアとだらだらイチャイチャしていると丁寧にノックをして入って来た娘に唐突にディスられている嫁。
「これは一種のファッションだからいいんですわ」
「元がいいからって何でも似合うと思っちゃ駄目だよお母さん」
「良いぞもっと言ってやれ」
「ちょ、ユウキまで」
俺としては別に今のままでも構わないと言えば構わないが、もっと女性らしいファッションのシュエリアを見てみたい気持ちはある。
「お母さんもいい加減ダサいTシャツは卒業した方が良いと思う」
「立て続けに失礼ですわね……ダサく無いですわ」
「可愛くもないけどな」
「元が良すぎてどんな服着てもそう見えるだけですわ」
「凄まじい自信過剰発言だな」
どんな服着てもって……そんなことはないと思うんだけどな。
どうにかして服を改善できないだろうか。
「シュエリアならどんな服でも着こなせると思うんだけどなあ」
「え、まあ、そうですわね?」
とりあえず褒めて乗せる作戦を取ってみようと思ったのだが、これはいけそうなのか?
「ただでさえ美少女なシュエリアがセンスのいい服着てたらもう無敵なのになあ」
「そ、そうかしら」
こんな見え透いた誉め言葉に顔を紅くして照れている嫁が居る。なんと単純な。
「仕方ないですわねえ、ちょっとだけですわよ」
「おう」
よし、これでシュエリアの衣装が改善されれば面白Tシャツは卒業だ。
「まずはこれで」
「準備良いですわね……」
俺はサッと取り出した服をシュエリアに渡す。
え、どこから取り出したのかって? それはまあ、ほら、アレだよ。
「こんなこともあろうかと思ってな」
「どんなことがあると思ってんですの」
それはまあ、なあ。
「魔法で早着替えっと」
「また妙な事に魔法を使って」
日常的に魔法を使うのどうかと思う。もっとカッコイイ使い道があるはずだ。
「で、これなんですの」
「森ガールだな」
「古いですわねぇ……」
確か流行したのは2000年頃だっただろうか。確かに古い。
しかしだ、シュエリアと言えばエルフ、エルフと言えば森。
似合いそうだなとは思っていたが本当に似合う、凄く可愛い。
「凄く似合ってるよ。可愛い、ヤバイくらいかわいい」
「ふふん、わたくしに似合わない服なんてないですわ」
「凄い調子乗るね、お母さん」
「そりゃあもうノリノリですわ」
娘にツッコまれても気にしないという様子のシュエリア。俺に褒められたのが余程嬉しかったらしい。
「じゃあ次の服を」
「本当に準備いいですわね?」
まあこれも、こんなこともあろうかと、という奴だ。
「これは何ですの?」
「シュエリアならカッコいいのも行けると思ってロックな衣装にしてみた」
「乗りに乗ったわたくしにピッタリのファッションですわね」
これまた似合っていて、カッコよく決まっている。
「本当に何着ても似合うな」
「そうでしょう、そうでしょう」
「イチャ付いてるなぁ」
どうやらシュキには俺達がイチャついて居るように見えたらしい。
「イチャついては無いですわ。ノリがいいだけで」
「そうそう、仲良いいだけだよ」
「それがイチャついて居るって言ってるんだけど……」
どうやらそれ込みでイチャイチャ判定だったらしい。困った、俺とシュエリアはいつもこんな感じだから年中イチャついていることになってしまうじゃないか。
「まあ仲良くてよかったよ」
「そ、そうか」
「うん、家族仲が良いのは素晴らしいことだからね」
「娘が何か良いこと言ってますわ」
ただ着せ替えて遊んでいただけなのになんか良い事言われてしまった。
「それでお父さんはカッコいい系と可愛い系どっちが好みなの?」
「え?」
ここで俺の好みを聞くか?
うーん……うーーーーーん??
「どちらも捨てがたいけど」
「どっちが好きか気になるよね、お母さん」
「そうですわね。どっちなんですの?」
「え、えぇ?」
いや、どっちと言われてもな……。
「強いて言うなら……可愛い系?」
「わかりましたわ。可愛い系ですわね」
何を分かったのか。まさか今後そういう服を着てくれるのだろうか。
「それじゃあそんなところでお昼ですわユウキ」
「またですかい」
また昼落ちか、と思った俺であったが。
後日。
「可愛い服着ましたわ」
「いや、えぇ……?」
可愛い服を着たシュエリアを見て、俺は困惑した。
「可愛いか……?」
「ツチノコTシャツですわよ?」
「可愛いか???」
結局変なTシャツに戻った嫁を見て、こういう落ちかと思ってしまうのであった。
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