かくしごと、ですわ
「それで? 説明して貰えるんだよな?」
「仕方ないですわねぇ」
シュエリアを母さんと呼ぶ少女が現れてすぐ、俺は居ないメンバーにも召集という名の救援要請を出し、メンバーが揃うのを待ち、今に至る。
「この子は朱姫、ユウキとわたくしの娘ですわ」
「お前……何でそうなる……」
このシュエリアにそっくりな美少女は朱姫というらしい。
違う所と言えば髪に黒いメッシュが入ってるくらいだ。
しかし、なんとなくだが、コイツのやりそうなことには想像の付く俺だが、今回ばかりは読めなかったな。
とは言えだ、事ここに至ればなんとなくだが想像は出来ている。だが一応、本人から確認しておくのがいいだろう。
「何でって、生まれたから?」
「ざっくりしてんなあ!」
コイツに説明を求めるのってなんか難しい気がしてきた。
ここは俺の推理を披露するターンだろうか?
「お前、まさかとは思うけどここより『時間の流れ』が早い場所で育てたりしてないだろうな」
「あら、正解ですわ。流石探偵()ですわね」
「だから()いらねぇって」
しかしそうか、この阿保はそこまで阿保だったか。
「そんなわけでわたくしの隠し事は隠し子ですわ」
「お前、それ言いたいがためにやったんじゃあるまいな」
「え、そうですわよ?」
「お前世界一阿保だと思う」
俺の嫁なんなの、何処まで阿保こじらせたらこうなる。
「そんなわけで、今150歳記念な朱姫ですわ」
「よろしくお願いします、お父さん」
「お、おう……」
ここに来て隠し事が隠し子(?)で、その上年上と来た。
「兄さま兄さまっ」
「お? なんだアイネ」
「お父さんになっても兄さまは兄さまですよっ」
「ん? おう??」
それは父親になっても俺は俺ということなのか、それとも兄は兄という事なのか……?
ややこしいので気にしない方向性でいこう。
「それに~しても~シュエリさ~ん~は~阿保ですね~」
「誉め言葉として受け取っておきますわ」
「関西人か」
阿保はOKで馬鹿はNGなんだっけ、今でもその風潮があるのかは知らんが。
「いやあ、ゆう君もついにお父さんかぁ」
「残念ながら実感を得るタイミングを失ってるけどな」
娘には悪いと思うが実感がもてない。認知しないとかじゃなくて、なんていうんだろうな。
「ちなみに朱姫の朱はシュエリアのシュで、姫はユウキのキから取ってますわ」
「なるほど、エルフのネーミングって確か親譲りにするんだったよな」
それで朱姫か。綺麗な名前だなあ。
「いっぱいしゅきみたいでいいでしょう」
「どっちかと言えばだいしゅきホールドじゃない?」
「どっちもなんか嫌だな」
阿保エルフ二人の発言にちょっとそれは……と思う。
本人はどう思っているのだろう。
「お母さんって変な人だよね」
「ストレートに失礼な娘ですわ」
「お父さんは意外と真っ当」
「ストレートに失礼な娘だ」
意外とって何だ。どこら辺が意外だったのか。
「だってこんなお母さんと結婚するくらいだから変わり者だろうなって思ってたから」
「あー、なるほど、すげぇ納得した」
「納得するんじゃねぇですわ」
いやだって、納得の理由だろ。
「ていうかシュキはどうやって育てたんだ? 勉強とかさせてるのか?」
「あら、真面目な事いいますわね。勉強は学校に通わせてるから問題ないですわ」
「学校行かせてんのか」
新事実、娘が学生だった。
「まだ高校だけど、これから大学にも行かせますわ」
「いい大学に入っていい就職をしたい。お母さん達と違って不老不死じゃないし、老後も考えないと」
「めっちゃ真面目な娘だった」
でもエルフの老後って何年先だ? どんだけ先を見据えて生きてんだシュキは。
「しっかりした子に育ってわたくしは鼻が高いですわ」
「お前の教育とは思えないくらいしっかりしてるよ」
「反面教師って奴だけどね」
「失礼な娘ですわ」
「ちょっとクセのある所はお前譲りだと思うよ」
いやしかし、本当に娘が出来たんだな……。
「そういえば150歳記念って言ってたけど誕生日はいつなんだ?」
「3月9日ですわね」
「ミクの日かあ」
初音ミクの日ですねぇ……意図的だろうか?
「まあそんなわけで、これからは一緒に暮らして行こうと思った訳ですわ」
「どんな訳かは知らんが、そうか、わかったよ」
「聞いてた通り順応性高いね、お父さんって」
「お前は一体何を語ったんだ……」
俺についてどう話したのか凄く気になる。
「まあまあ、そんなことより、初の親子対面、もっと話すこともあるはずですわ」
「まあ、そうだな……」
聞きたい事、離したいことは山ほどある。
「じゃあまずは――」
俺はシュキに向き合うと決め、この後様々な話をするのであった。
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