キャラじゃない? ですわ
「先週はキャラじゃないことをしてしまったと反省している私よ!」
「開口一番五月蠅いな」
いつもどおりシュエリアの部屋でだらだらしていると、アシェがノックもせずにドアを開けて一言目に放ったセリフがこれだ。
意味が分からないし叫ぶしで、何だコイツ感が凄い。
「というかまたお前のセリフから入るんだな」
「メタいツッコミ止めてくれない? そして私は反省しているわ」
「何をだよ、何がだよ」
何を反省しているのか、というか、何がキャラじゃなかったのか。
「マ〇コなんて私のような淑女が口にする物では無かったと痛く反省しているわ」
「いや、お前のキャラにドンピシャだと思うけど」
コイツが下ネタというか、下品な事を言っても正直「あー、また言ってんなぁ」くらいなものである。
「真顔で言うもんじゃないわね」
「真顔じゃなかったらいいと思ってる時点で淑女じゃないんだよなぁ」
コイツ阿保なんだよなぁ。論点がえらくズレてるというか。
「アシェなら満面の笑みで言っても似合いますわよ」
「そう? マ〇コ」
「超いい笑顔で言うじゃん」
やっぱり阿保だなコイツ。褒められたと思って自爆してる。
「っと、またキャラじゃないことをしてしまったわ」
「今更気づいたのか。キャラだけど」
「満面の笑みなんて私らしくないわ。淑女は微笑するものよ」
「そこなのか?」
問題発言があったことについてはノータッチなのだろうか。
「そこ以外になんかあったの?」
「いやもう、お前はお前で良いと思う」
「何それ口説き文句?」
この阿保エルフはずっとこのままでいいと思う。なんか面白いし。
「キャラじゃない、か」
「何よ急に」
「いや、お前らって自分のことどういうキャラだと認識してるのかと思ってな」
「なんか近い話前にもした記憶がありますわ」
「そうな」
なんかシュエリアがキャラを作るだの、作ってるだの……なんか今まで色々話して来た所為でいつどこで話したかまで覚えてないが、うん、似たような話はした気がする。
「シュエリアは自分の事どういうキャラだと思う?」
「え。可愛くて美しくて万能で女神みたいな存在?」
「過大評価と言いたいのにあながち間違ってないのが腹立つな」
「惚れた弱みでしょそれ」
アシェにはそう見えるらしいが、可愛くて美しくて万能の天才なのは事実だ。
「まあ後は若干ウザいくらいか」
「わたくしウザいんですの?」
「たまに?」
「たまに」
「なるほどですわ。流行りのウザかわですわね」
俺とアシェからの評価に何故かプラス思考のシュエリア。無敵かなコイツ。
「さて、そしたらアイネはどうだ?」
「みゃ?」
俺の膝の上で丸まっていたアイネに声を掛けてみる。
するとアイネはすとん、と俺の膝から降りて人の姿に戻った。
「私は可愛くて癒し系で元気な女の子だと思いますがっ」
「まったくその通りだ」
「妹バカ発症してんじゃねぇですわ」
なんかシュエリアに怒られた気がするが。アイネは可愛い。間違いない。
「こんな可愛い癒し系の妹を捕まえて何が問題だと」
「いやいや、アイネと言えば腹黒といん……」
「にゃー!」
シュエリアが何か最後に言っていた気がするが、アイネの声で掻き消されてしまった。
「腹黒くはないだろ、計算高いおりこうさんなだけだ」
「言い方ですわよねそれ」
そんなことはない……無いと思う。
「じゃあトモリさんはどうですか」
「はい~」
向かいのソファでぽけ~っとしていたトモリさんに問いかけてみる。
「わた~しは~。まったり~お淑や~か~?」
「大体あってますね」
「そうですわねえ」
まああと、魔王でたまに怖くてまったりがキャラ付けで本当はハキハキ喋れるとかあるけど、まあでも大体あってる。
「まあでもなんて言うか、皆自分の評価と他人からの評価の違いみたいなものがありますわね」
「そうだな、まあそこら辺は仕方ないところでもあるだろ、他人から評価されることってあんまりないし」
一々誰々さんはこんなところがいいね! こんなところはちょっと悪いね、なんて口にしないものだ。
「でも皆のキャラを見直すいい機会になったと思いますわ」
「まとめに入ったってことは」
時間を見ると昼飯前だった。
コイツ本当に喰う事好きよな。
「というわけで飯ですわ!!」
「はいはい、わかったから叫ぶな」
そんなわけで俺達は自分のキャラを見つめ直すことを止め、飯にすることにした。
え、俺のキャラ?
そりゃまあ、平凡な社会人でツッコみ役かな……。
シュエリア達に言ったらなんて言われるかはわからないが、それはまた別の機会にしよう。
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