また新年ですわ
新年あけましておめでとうございます!
今年もエルフの暇をよろしくお願いいたします。
「あけおめですわ!!」
「はい、あけおめ」
いつもと違う年末年始の休日、新年早々テンションの高い俺の嫁であった。相手をするのも大変だ。
「テンション低いですわねぇ」
「いや、まあ、なあ」
シュエリアの言葉に部屋の惨状を見回して想う。
これは酷い、と。
「忘年会をやったが最後、どいつもこいつも酔って好き勝手しやがったら疲れもするわ」
「ま、まあ。結構嵌め外しましたわね……」
部屋中酒瓶と缶、つまみの食い残しやゴミ塗れだ。
「魔法でササッと大掃除しますわ」
「そうだな、速やかに頼むわ」
この有様のままお送りする程この作品は汚れてないハズだ、多分。
「というわけで、はい、あけおめですわ!!」
「どういう訳か分からんけど掃除してくれたしテンション合わせてやるか。あけおめー!」
「そうそう、良い感じですわよ」
本当にどういう訳かもわからんし、ていうかなんでそんなにあけおめに拘るのかもわからんのだけど、まあいいか。
などと思っていると、むくりと起き上がる人物が一人。
「うっさいわねぇ……頭に響くから止めてくれる?」
「アシェ、二日酔いか?」
「そうよ、あんだけ飲んだらそうなるでしょ普通」
「わたくしはならないですわ」
「俺も平気だな」
「二人とも普通じゃないだけだからそれ」
そんなことはない。俺はちょっと酒に強い程度だ。
どちらかというと酔う速度的にコイツ等が弱いだけである。
「っつう……とりあえず叫ぶのはやめてよね」
「わかったわかった」
流石に二日酔いの相手に大声は出せない。可哀そうだしな。
「まったく、そんなことじゃあこれからの新年会に耐えられないですわよ?」
「ちょっと待って、二日酔いの相手に新年会の話とかする?」
「大丈夫、お酒は飲みませんわ」
「そういう問題じゃないんだけど?」
いくら言ったところで話は平行線だ。
コイツはやるといったらやる女なのだ。いい意味でも悪い意味でも。
「さ、アイネ、トモリ、シオン。起きるんですわ」
「うにゃ……にゃんですかシュエリアさん、まだ朝ですよ」
「いつまで寝てる予定なんですの……」
アイネはまだ寝ぼけているのかちょっと変な事を言っている。
まあ夜行性の猫だからあながち間違っても居ないのだが。
「トモリ、起きるんですわ、ほら」
「うぅ~ん~乱暴は~ちょっと~」
「言い方。別に乱暴にしてないですわ」
こちらも寝ぼけているようで変なリアクションを返している。
「で、シオン。とっとと起きやがれですわ」
「お姉ちゃんだけ扱い雑じゃない?!」
義姉さんはどうやら目覚めもよく二日酔いでもないようで綺麗にツッコみ返していた。
「さ。もうこんなに尺を使ってしまいましたわ。とっとと新年会しますわよ」
「今回に限っては作者も尺を気にせずだらだら書いてるけどな」
新年というか、年末で気の緩んでいる作者は今、だらーっと文章を書いているのである。
え、いつもそんな感じの文章? ま、まあそうともいう。
「さて、それでは新年会スタートですわ!」
「だから叫ばないでって言ってるでしょ……」
「シュエリア、もうちょっとテンション下げてやれ、見るに耐えん」
とりあえずアシェが可哀そうなので俺からもシュエリアに注意を促しておく。
「仕方ないですわね。とりあえずそんなこんなで早速新年会ですわ」
「何も朝一でやることもないでしょうに」
「そうですわね、でも暇だからやりますわ」
「初詣でも行きなさいよ……」
「それは新年会の後ですわ」
どうやら新年会の後には初詣も待っているらしい。慌ただしい一日になりそうだ。
「そんなわけで、まずはこちらをどうぞですわ」
「……何よこれ」
「バニーですわ」
「見たらわかるわよ。なんでバニースーツなのか聞いてるのよ」
「兎年ですわよ?」
「干支が兎年だからバニースーツ? それで?」
「着やがれですわ」
「良いけど何で私なのよ……」
「似合いそうだからですわね」
「トモリだって似合うわよ」
「私だって似合いますがっ?!」
「お姉ちゃんだって似合うけど!」
「あぁもう叫ばないで! って私も五月蠅い……」
二日酔いのアシェが一人、ダメージを受けている。可哀そうに。
「いいから、さっさと着替えるんですわ」
「ユウキも居るのに?」
「旦那の前で着替えくらい普通にできますわよ、大丈夫ですわ」
「それアンタの基準でしょ……まあいいけど」
「いいのかよ」
そんなわけでアシェは一人、バニー衣装でお送りする新年会である。
「さて、ここでクイズですわ」
「なんでこのタイミングで」
「兎年というのは干支で何番目に数えられる年ですの?」
「4番目でしょ、簡単じゃない」
「あらアシェ、正解ですわ。意外と物知りですわね」
「お姉ちゃんもわかってたよ?」
「シオンはこの世界の人間なんだから知ってても普通ですわ」
まあ確かにそうかも知れんが。ちなみに俺は一から数えていたので出遅れていた。
「さて、それじゃあクイズに正解してしまったアシェにはプレゼントですわ」
「何をよ」
「初詣ユウキとデート権ですわ」
「また勝手に俺の権利が剥奪されている気がする」
俺に拒否権とかないんだろうな。まあ拒否する理由もないのだが。
「でもユウキの手はもう片方開いているから、もう一問クイズですわ」
「両手に花でデートって訳ね」
「ですわ」
なるほど……俺の負担、増える一方だな?
「去年流行したアニメ、ス〇イファミリーのアーニャ役の声優と言えば?」
「種〇敦美さんです」
「急にマジになりましたわねトモリ……」
そして正解である。声優まで抑えているとはトモリさんもオタクっぽくなったものだ。
「これでゆっ君とのデートに参加できますね」
「そうですわね。トモリ、ホントわからない子ですわ」
急に本気になったトモリさんにビックリしたようで、シュエリアも困惑している。
「それじゃ、初詣デートの相手も決まったところで新年会の続きだけれど」
「そういや新年会だったな、この流れ」
余りの事に新年会とか全然忘れてたわ。
「ユウキから一つ、何か余興を」
「無茶振りが過ぎるなぁ」
そんな無茶ぶりには中々対応できない俺だが……。
「じゃあここで豆知識を披露しよう」
「何ですの?」
「これは友人から聞いたことなのだが、25メートルプールって言うのは実はキッチリ25メートルではなく27メートル程なのだそうだ」
「へぇ……マジでただの豆知識ですわね」
「だろう」
俺も言っててこれが余興にはならないなとは思ったよ、うん。
「まあいいとしますわ」
「いいのかよ」
意外だ、もっと面白いのを催促されると思っていた。
「ところで、新年会って何するんですの?」
「今の流れでそれを聞くのかお前」
唐突過ぎる上にもはやコイツが何したいのかさっぱりわからん。
「楽しくお喋りとかで良いと思うよ?」
「じゃあシオン何か話題を」
「えっ……そうだね……ゆう君の好きなところ言い合うとか?」
「……いいですわよ?」
「今の間何」
なんで間があったんだ。ちょっと悩んだのか?
「それじゃあわたくしから。こほん。一緒に居て楽しいですわ」
「それお前だけでは」
「そんなことないですわよ、多分、きっと、恐らくですわ」
「自信なさすぎだろ」
別にいいけど、そこは言い切って欲しかった感無くはない。
「それじゃあ次にアイネですわね」
「にゃっ、兄様の良いところですか……いっぱいありますが、やはり優しさでしょうかっ」
「アイネ可愛いなぁ」
「妹バカの間違いじゃないんですの……?」
そんなことはない。アイネが言うんだから間違いない。
「んまあいいですわ。じゃ次、シオン」
「有り過ぎて悩んじゃうなあ……うーん、ツッコみ?」
「有り過ぎるならなんでそこをチョイスした」
俺の長所ツッコミかよ。
「それじゃあ次はデート組の二人ですわね」
「私? そうね、やっぱり体つきが良い事じゃないかしら」
「はいはい変態変態。トモリはどうですの?」
「私の扱いも結構雑よね」
とは言え深く追求する気はないのか、諦めた様子で首を振るアシェ。
「わた~しは~そうです~ね~。美味しい~ところかと~」
「ユウキは食べ物っと」
「変なメモするな、というかトモリさんの発言に既視感がある」
俺いつもトモリさんに美味しいって思われてない? 気のせい?
「なんだか楽しくなってきましたわ」
「さよで」
「さよですわ」
楽しくなったのなら何よりだが、他に話題はあるだろうか、尽きないだろうか。
「そんなわけでここからはデート編ですわ!」
「だから叫ばないでって言ってるでしょ……っていうかえ、新年会は?」
「あ、それはなんか満足したからもういいですわ」
「自分勝手ねホントに!」
いや本当に、アシェの言う通りだ。
まあそれが面白い奴でもあるのだが。
「後は適当にデートを覗いて楽しむからいいですわ」
「しかも監視してますよって宣言してくるしな」
まったく、俺の嫁ときたら、今年も相変わらずのようだ。
「気を付けて行ってくるんですわよ?」
「はいはい」
そんなこんなで、暇つぶしを済ませたシュエリアに追い払われるように家を出る俺とアシェ、トモリさんの三名はシュエリアの監視下で初詣デートをすることになったのだった。
ご読了ありがとうございました!
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次回更新は翌週の土曜日21:00までを予定しております。
三が日を過ぎてしまいますが初詣デートの話となります。




