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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
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闇鍋ですわ……

作者の都合(?)により今週から文章間にスペースを入れました。

読み難かったら申し訳ありませんがコメントをお願いします。

「暇ですわ……」

「暇だな」


 いつも通り俺とシュエリアが部屋で暇しながらゴロゴロしていると、唐突にドアをバンッと開く音がした。


「闇鍋するわよ!!」

「唐突に阿保だな」

「失礼ね。どこが阿保なのよ」

「いつものメンツでやってまともな鍋になると思うのか?」

「そこはほら、食べられるもの以外は禁止するルールを作ればいいのよ」

「ふむ……」


 しかしどうだろう、食べられるものと言っても人によって価値観というか、文化の違いとか色々なものが合わさって食べられる食べられないは変わるのではないだろうか。

 例えばアレルギーとか。


「まあでも暇ですわよ?」

「暇なら何でもいいのなお前」


 我が嫁は本当に暇が嫌いらしい。仕方ない、やるか。


「じゃあいつものメンバーで各自素材を三つずつ程持ち寄って集合でいいか?」

「いいですわね、楽しくなってきましたわ」

「さよで」

「さよですわ」


 うちの嫁はやる気満々で楽し気なので良いとしよう。コイツが楽しければ俺も嬉しい、楽しい。

 それからたっぷり一時間三十分後。メンバーと食材が揃った。


「ちなみに何を持ってきたかは勿論非公開だよな」

「当たり前でしょ。闇鍋の意味ないじゃない」

「だよなあ……」


 不安しかねえ。大丈夫だろうか。


「それじゃあ皆で鍋を囲んで。明かりを消すわよ。あ、魔法で暗視とかするんじゃないわよ」

「できねぇよ」


 俺以外は出来そうだけど、俺はそう言うの無理だ。……ん?


「っていうかアイネは猫だし夜目が効くのでは」

「はい、バッチリ見えますっ」

「駄目じゃん」


 見えちゃ駄目だろ。


「でも色彩までは分りにくいので何を入れたかはご想像ですっ」

「そ、そうか、ならいいか?」


 なんか良くない気もするが、まあいいか。


「それで、誰から入れる?」

「え、なんで急に下ネタ言う訳?」

「お前の頭がピンク色だからだよ」


 誰も下ネタなんて言ってない、勝手にアシェだけ脳内変換されているだけだ。


「ビックリしましたわ、まさか暗闇に乗じて闇鍋パーティ(意味深)が始まってしまうのかと思いましたわ」

「始まらねぇよ。何、エルフって皆阿保なの?」


 阿保って言うか、淫乱っていうか。何なのコイツ等。


「はぁ、ほら、とっとと始めよう」

「「乱交を?」」

「闇鍋をだよ!」


 この阿保エルフ二人と絡んでると話が進む気が全くしないのは俺だけでは無いハズだ。


「とりあえず一番信頼できるアイネから頼むわ……」

「お任せくださいっ」


 そう言うとアイネはバシャバシャと何かを入れる音を立てながら鍋に何かしらかをぶち込んだ。


「アイネ、何入れた」

「秘密ですっ」

「なんだろう、実は一番駄目な気がするのだが」


 大丈夫かなこれ、ちゃんとした鍋になるんだよな?


「次は義姉さんだな」

「お姉ちゃんは平気だよ、普通に美味しく頂ける鍋がいいからね」


 そう言うと義姉さんはそっと何かを取り出し、鍋に入れる。今度はバシャバシャと音もしない。それはそれで不安だが。


「次、トモリさんお願いします」

「はい~」


 この人も危険人物の一人だ。魔王でしかも淫魔だ。淫魔の主食は精力、まさかと思うがそんなもん入れないと思いたい。


「そして後はアシェとシュエリアだな」


 呼ばれた二人は交互に鍋に何かを入れていく。

 そしてそれを見終わった俺が最後に鍋にこんにゃくとはんぺん、大根を入れた。

 俺はボケる気も遊ぶ気も無いので普通に鍋で食べられそうなものを入れたつもりだ。


「さて、それじゃあ取り分けるぞ」


 闇鍋のルール二、箸で掴んだものは必ず皿に取り食べる事。


「アイネから順番に行こうか」

「はい兄さまっ」


 という訳でアイネから順に自身の更に具材を取り分け、これで前段階は終了である。

 そしてここからがどうするかだ。


「このまま闇の中で食べて反応を楽しむのもいいが、どうする? 電気付けるか?」

「食べにくい物が入ってたら困りますわ。カニとか」

「じゃあ電気付けるか」


 ということで電気を付けてみる。

 するとそこにはとんでもない鍋があった。


「何だこれ……」

「赤いですわね……」

「私じゃないわよ?」

「わた~しでも~無いです~」

「てことは義姉さんかアイネか」


 なんだこの真っ赤な鍋は。というかなんか鯛が丸ごと一匹入ってるんだが。


「一応聞いとこうか。何入れた?」

「お姉ちゃんはトマト鍋の素とつみれとトマトだけど」

「わたしはキムチと鯛と海老を入れましたっ」

「だから赤いのか……」


 つまりトマト鍋にしようとした人とキムチ鍋にしようとした人、二人の赤が混ざり合ってこんなありさまになったというわけだ。

 しかしおかしいのはなにやらスパイシーな香りと若干のトロミがあることだ。

 まだ何かあるはずだ。


「他に何入れたか一応確認して行こうか」

「まあどうせ見えてるしね。いいんじゃない?」

「種明かしも面白いですわね」


 そんなわけで俺達は自分の持ち寄った食材を各自教え合った。


「鍋にカレー粉……阿保だろうアシェ……」

「カレーうどんとかあるし、良いかなぁって」


 スパイシーの原因はアシェのカレー粉だった。これ本当に美味しく食べられるだろうか。


「まあいいか……ところでトモリさんは何故にそんな材料を?」

「なんと~なく~?」


 トモリさんの選んだ材料はこんにゃく、ところてん、マロニーち〇んだった。


「全体的に何か意味を感じるのは俺だけだろうか……」

「考え~過ぎか~と~?」

「そうですか……」


 なんかとぅるっとしたモノばかりで意味深な気がしたのだが俺の脳がバグってるだけみたいだ。


「で、シュエリア、お前はなんで一切ボケてないんだ」

「何ですのその怒られかた……」


 シュエリアの奴は牛肉、人参、ジャガイモと自分の好きな食材だけだった。

 何の面白みも無い、ただ食いたかっただけの食材だ。


「ユウキだってどうせ普通なんでしょう」

「まあ、そうだが」


 そう言われるとそうなのだが、いつもボケてるのにこういう時だけ真面目なのは調子が狂う。


「それじゃ、食べますわよ」

「あ、あぁ、そうだな」


 兎にも角にも食べるしかない。トマトキムチカレーの味を……。


『頂きます』


 全員で揃って箸をつける。

 ……うんまあ、まあまあ?


「こう、トマトとキムチはまだいいんだが、カレーの風味が色々な物をぶち壊しているような……」

「カレーがアウトですわね……」

「キムチとの相性が悪かった気がするわ」

「トマトとカレーならまだ行けたね」

「うぅっ、微妙なお味ですっ」

「う~ん~これは無しです~」


 全員の意見を総合するとキムチとトマトかトマトとカレーなら良かったという感じで、兎に角キムチとカレーの相性は微妙だった。


「ま、まあこれが闇鍋の醍醐味みたいなもんだし」

「ですわね、残さず食べますわ」

「遊ぶだけ遊ぶんじゃ勿体ないものね」

「ですわね」


 そんなわけで、俺達はキムチカレートマト鍋? を完食し。

 それが昼食になったシュエリアは二度と闇鍋はしないと言い出すのであった。


ご読了ありがとうございました!

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次回更新は翌週の土曜日21:00までを予定しております。

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