防災訓練? ですわ
「防災訓練をしますわ!」
「はあ?」
いつも通りシェリアの部屋で一緒にイチャイチャもといダラダラしていると、ふと唐突にシュエリアが立ち上がって叫んだ。
まあ、何を思ったのかは知らんが、理由が「暇だから」なのは間違いない。
「聞こえなかったんですの? 防災訓練ですわ」
「いや、聞こえてたよ。聞こえたうえで『はあ?』 だよ」
なんで聞こえてないと思われてんだろう、この距離で叫ばれたら聞こえるわ。
「聞こえてるならやるでしょう? なんではあ? なんですの」
「いや、だってお前の方が災害みたいなもんだし」
下手したら世界滅亡まである危険な存在が防災訓練って。
「大体、防災訓練の意味わかって言ってるのか?」
「サラっと災害扱いされたのはまあ目を瞑るとして、意味くらい知ってますわ。火事や地震と言った災害時に命を守る為の心構えをつくっておく訓練でしょう?」
「思ったよりしっかり答えて来てビックリなんだが」
「わたくしなんだと思われてるんですの……」
いやまさかシュエリアがこんな真面目に災害訓練を語れるとは思わなかった。
「すまん、正直見直したわ」
「これで見直されるわたくしの評価って……?」
シュエリアも真面目にやれば出来るんだなきっと……。
「それじゃあ防災訓練するか。お前には要らない気もするが」
「ユウキには必要だからやった方が良いですわ、はよ」
「そりゃどうもありがとう」
俺の事を気遣ってくれているのか、はたまた暇なだけなのか、よくわからない俺の嫁であった。
「それじゃあ他の連中も呼んでおくか。せっかくやるなら共通認識が必要だしな」
「そうですわね」
そんなわけでいつも通り全員集合した俺達は、シュエリアから今回の集まりの趣旨を聞いた。
「というわけですわ」
「まあ確かに、何かあった時シュエリア以外には必要よね、避難場所の指定とか色々」
「そうそう、シュエリアみたいに何処に誰が居て何してるか把握できたりしないからな」
「わたくしだってそこまですることたまにしか無いですわよ」
「たまにはあるんかい」
冗談のつもりで言ったのにたまにどっかの誰かを監視してるらしい。
「休憩~中に~、ゆっ君を~?」
「なんで知ってるんですの?!」
「勘~?」
「ぐっ」
「シュエリア自爆じゃん」
勘だったなら白を切ればなんとかなったが、普通にバレてしまった。
「なんで俺を?」
「だってほら、好きな人が何してるかなって、気になるでしょう? なりますわよね?」
「ま、まあな」
そう言われてしまうと否とは言えない。うん、気にはなる。
「そんなことよりほら、防災訓練ですわ」
「ああ、そうだな」
そうだった、そんな話だったな。
「それでまず何から確認していこうかしら」
「そうだな、まずお前ら火事にあったらどうする?」
これは結構簡単な質問のハズだが、さて、どうかな。
「規模にもよるけれど、水魔法をぶちまけますわ」
「斬りま~す~」
「魔眼で消すわ」
「大きな声で火事だと周知してから消火器で消化しますっ」
「とりあえず全力で逃げるかなあ」
「うん、まあアイネと義姉さんは正しいと思う」
正直義姉さんのは追加で周知もして欲しいが、基本的にはアイネの答えが正解と言える。
「魔法で消した方が楽って話じゃないんですの?」
「斬れ~ますよ~?」
「消せるわよ?」
「そういう問題じゃねえから。お前らの規模で考えるな」
ここは間違っても承認してはならない気がする。いや、結果良ければすべてよしとも言うが、この世界で魔法関連で解決は目立ち過ぎる。
まあ約一名魔法でも魔眼でもなく「斬る」とかいう恐ろしい単語を放っている魔王もいるが。
「むぅ、仕方ないですわね、次は大丈夫ですわ」
「ホントかよ……」
頼むぞ、本当に。
「じゃあ火事場では移動するとき姿勢はどうする? また、窓があった場合どうする?」
「ほふく前進して窓は壊して回りますわ!」
「中腰~で移~動して~窓は斬り~ます~」
「盗んだバイクで走り出して夜の校舎窓ガラス壊して回るわ」
「姿勢を低くして移動して窓は開けて煙を逃がしますっ」
「中腰でダッシュして逃げるかなあ、あ、窓は開けるよ」
「まあ、わかってたけど正解はアイネと義姉さんだな」
というかアシェに至っては完全にボケに回っただろうというレベルで間違えている。色々ごちゃごちゃになってるし。
「ほふく前進駄目ですの?」
「というより窓を壊すな」
「あぁ、そこ、なるほどですわ」
「窓を斬ったら~?」
「駄目です」
「う~ん~」
「私のは完璧でしょ」
「うん、完璧にボケたよなお前」
なんで一人だけ私よくやったでしょって顔してんの。阿保かコイツ。
「じゃあ次な……地震が起きた場合まずどうする?」
「乳揺れを確認しますわ」
「伏せます~」
「出来る限りジャンプして回避するわ」
「身の安全を確保する為に室内ならテーブルの下などに隠れますっ」
「屋外だったら伏せて待つとかかなあ?」
「まあ概ね正解だな。阿保エルフ二人以外は」
もういっそ二人の名前を阿保に変換したくなってきた、乳揺れだのジャンプで避けるってなんだ。
「確認するでしょう?! しないんですの?!!!」
「しねぇよ!!」
「冗談でしょう。ジャンプで避けるわよね? 攻略wikiに書いてあったわよ?」
「何の攻略wiki読んだんだお前は!」
駄目だ、この二人は阿保だ……。
「はぁ、じゃあ最後、俺達の住む地域ではどこが避難場所に指定されているか知ってるか?」
「わたくしの居る場所でしょう」
「即答して即不正解かよ」
考えるまでもないって表情だった割に思いっきり間違えている。
「近くの小学校でしょ? 知ってるわよそれくらい」
「お、アシェなんで急に素になった」
アシェが急にボケるのを止めて素で答えて来た、ビックリだ。
「だから校舎の窓ガラス壊して回るのは正解でしょ?」
「違うわ!!」
やっぱり阿保だった。
「はあ……こんなんで実際に大地震とか来たら大丈夫なのか?」
「大丈夫ですわよ、わたくしが守るから」
「お」
なんか今ちょっとカッコいい事言ったぞコイツ、あ、でも駄目だ。
「そのドヤ顔やめろ」
「ちぇ、最後にここに話を持ってきたくてボケてたのに残念ですわ」
「まさかの伏線だったのか」
あのボケが全てコイツの計画通りだったとは。
いや、そう考えると腹立つなコイツのドヤ顔。
「ま、基本的にはアイネの言っていたようにするから大丈夫ですわよ。それじゃあどうにもならないような大災害ならわたくしは迷わず魔法でユウキを優先して守りますわ」
「お、おぅ」
今度は真顔で言うシュエリアにさっきまでの冗談めいた雰囲気はない。
「という事でユウキ」
「ん?」
「昼飯ですわ」
「あ?」
時間を見るとまだ11時半だ。でもまあ今から準備すれば丁度いいか。
「そうだな、それじゃあ準備するか」
「お姉ちゃんも食べて行っていい?」
「あいよ」
そんなわけで俺は全員分の飯を作るべく、厨房へ向かった。
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