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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
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本怖ですわ

「あー、暇ですわー。暇すぎて溶けますわ」

「冬なのに溶けるのか。凍るとかでなく。冬眠でもなく」

 いつも通りの休日、シュエリアはいつものように暇していた。

 暇だからととりあえず俺にべったりくっ付いて離れないシュエリアは可愛いものだが、流石にずっとこうだと鬱陶しいので何かすることを探さないとな。

「本怖の話とかする?」

「良いですわよ?」

 秋に怪談と言うのもなんだと思ったが、シュエリアは思いの外了承してくれた。

「それじゃあ皆を集めて『本当は怖いグリム童話』の話ですわね!」

「あ、そっち行っちゃったかー」

 なるほど、確かに本怖だ。

 まあシュエリアが楽しければ何でもいいのでここは追及はしないでおく。

「ってことで集めましたわ」

「集められてやったわ」

「えっへ~ん~?」

「どやっですっ」

「なんで皆ドヤってるのかなあ」

「義姉さんだけまともだと違和感あるな」

「それって酷くない?」

 義姉さんから抗議が出るが無視する。日頃の行いの所為ということで。

「それで、何の話だったかしら」

「本当は怖いグリム童話ですわ」

「あぁ、それね。知ってるわ」

「知りませんがっ」

「知りませ~ん~」

「お姉ちゃんはもちろん知ってるよ」

「じゃあそんな義姉さんから説明して貰おうか」

「え」

「分からない人向けに分かりやすくな」

「急に振って来るね……まあいいけどね!」

 そう言うと義姉さんは「こほん」と言ってから、説明を始めた。

「グリム童話は有名だけど日本ではあまり知られてない一面があるんだよね、それがとっても怖いから本当は怖いグリム童話とか恐ろしいって言われるんだけど、具体例は差し控えるね。著作権とかあるし」

「まさかの気遣い」

 著作権を気遣ってくれるのは良いが、ぼんやりとしかわからない回答になってしまっている気はする。

「まあでもシンデレラなんかは怖いですわよね」

「そだねえ、ググったら出て来るくらい有名な話だよね」

実際ググってみると出るわ出るわ、怖い話。

「足を削ぐとか目がどうのとかグロイ描写が多いですわねグリム童話は」

「そうね、私の性的好みじゃないけど話は好きよ」

「誰もお前の性的好みの話はしてない」

 アシェの阿保が阿保な事を言っているのでとりあえずツッコんでおく。

「グロイのはかなり嫌ですっ」

「わたし~も~です~」

 どうやら勇者と魔王はグロは無理なようだ。勇者と魔王なのに。

「でも実際子供を捨てようとした継母が初版だと実の母だったりするのって怖い発想ですわよねえ」

「そだね。まあそうは言ってもグリム童話はそもそも童話集であってグリム兄弟が編集したってだけのものだからグリム兄弟が残酷描写好きだっただけかもね?」

 まあ確かに、実際同じシンデレラでも物凄い数の本が刷られてその中で改稿され編集され、様々なシンデレラが世に放たれている。

 そう言う意味では本当は怖いグリム童話ってよりそもそもグリム兄弟版が怖いって言っても良いのかも知れない。

「うぅ、怖い話は苦手かも知れませんっ」

「わたし~も~」

「怖いって言うかグロイ話ですけどね」

 でもまあ、怖いと言えば怖いのだが。主に発想が。

「まあ普通の女の子は苦手よね」

「それ自分で普通じゃないって言ってるようなもんだからな」

「天才だもの」

「あーはいはい」

「何その態度! 本当の事でしょ?!」

「そうだけど」

「けど?」

「シュエリアに言われた方が納得できる分なんとも。お前だって怖い物あるだろ」

「無いわよ」

「シュエリアのことは?」

「…………ちょっと怖い」

「ほらあった」

 シュエリアが同じ「天才だから怖い物なんて無い」と言ったらまあそうだろうなと思うがアシェには天敵シュエリアが居る。

「さらっと失礼なやり取りしてやがりますわね。誰が怖いって言うんですの」

「「シュエリア」」

 俺とアシェが同時に答える。

 するとシュエリアは吹き出した。

「ぶふっ……ちょ、ユウキまで怖いんですの?」

「だってお前寝相悪いんだよ」

 コイツの寝相は悪い。そしてそうなるとたまに殴られたりするのだがそれが加減がその時々で違ってすこぶる痛いときがある。それが怖い。

 まあ死ぬほどじゃないだけ手加減されている(?)気はするが。

「寝てる間の事を言われてもどうしようもないですわ」

「魔法で寝相が良くなるようにでもしといてくれたらいいじゃん」

「……それもそうですわね」

 シュエリアの魔法は何でもできる魔法なのでそういうどうでもよさそうな事でも解決できるのが便利である。

「さて、ここまで本当は怖いグリム童話の話全然進んでませんわね?」

「まあ、ちょっと話した程度だな」

「そんなところで何だけれど、お腹がすきましたわ」

 時間を見るともう昼時。早いよ、時間たつの。

「じゃあ昼飯にするか」

「またしても飯落ちですわね」

「いつものことだ、気にするな」

 そんなわけで。

 俺が当初思っていたのと違う形の本怖は幕を閉じたのであった。


ご読了ありがとうございました!

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次回更新は翌週の土曜日21:00までを予定しております。

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