ハッピー? ハロウィンですわ!
少々短めです。
「なんで先祖を迎えて、悪霊を払う儀式でハッピーなんて言葉が付いてくるんですの?」
「唐突過ぎて何言ってんのかさっぱりわからねぇ」
いつもと違った休日。ハロウィンパーティーの準備も終わり、後は皆で楽しく騒ぐだけと言ったところでふとシュエリアに妙な事を言われた俺である。
「ハッピーハロウィンって言いますわよね?」
「別にそれはいいんじゃないか? 先祖を迎えるのも良いことだし、そもそも収穫を祝う意味もあるはずだぞ、ハロウィン」
なのでハッピーでも問題は無いハズだ。ハズだ。
「でもなんだか釈然としないわたくしですわ」
「さよで」
「さよですわ」
と言われてもこれ以上の説得材料も無いので納得いかないならそれまでとしか言えない。
「で、何でそんなことを急に?」
「いえ、これからハロウィンパーティをするにあたって『ハッピーハロウィン』と叫ぶかどうか迷ってしまうわたくしが居ただけですわ」
「考え過ぎだ」
そんなことまで一々考えていたら楽しいものも楽しめない。
「そうですわね、気にしないでおきますわ」
「そうしとけ」
さて、それじゃあそろそろ本題だな。
「パーティって誰を呼んだんだ?」
パーティとかに使う用のホールが自宅にあるのでそこを使う予定だが、あんまり人が多いとキャパオーバーしかねない。
「しす☆こーんの従業員と闇の眷属の子達ですわね」
「結構大勢だな」
まあでも会場に入りきらない人数ではない。大丈夫だろう。
「さて、それじゃあ早速始めるか」
「えぇ、早速皆をお出迎えですわ」
今回はシュエリア主催ということもあって相変わらず凝った装飾等の施されたパーティだ。そして何よりシュエリアの転移魔法による送迎付きだ。
飲酒なども気にせず明かせるパーティタイムの始まりである。
「というわけで、全員集合ですわ!」
「お久しぶりですー」
「お涼さんお久しぶりです」
「アタシらも呼んでもらえるとは思わなかったな」
「ジーナさん達もシュエリアさんのお仲間ですからねっ」
しす☆こーんには比較的良く行く方なので久しぶり感のない面々なのだが、バーの方はトモリさんと言って以来あまり顔を出せていないので割と久しぶりな感がある。
それもあってか久しぶりの再会にトモリさんとルンルンなどもまったりトークを開始していたりする。
「えー、こほん。それでは皆様揃ったところで、ハッピーハロウィンパーティ開催ですわ! 今宵は飲んで歌って好きに楽しむといいですわ!!」
『おー!』
本当のハロウィンがどうとか、そんなことはどうでもいい、皆で集まって、皆で過ごす時間が楽しければそれでいいのだ。
「さてシュエリア、今回のパーティ何かスケジュールとかはあるのか?」
「無いですわ。めっちゃフリーダムですわ」
「そうか、無策か」
つまりマジで自由に楽しめってことらしい。何ともシュエリアらしいと言えばらしい。
「ユウキから提案があるならそういうのもありですわよ?」
「ん? いや、流石にいきなりは思い付かないな」
そんな事を言いながらさてどうしようかと辺りを見回すと、トモリさんが面白いことをしていた。
「トモリさん、凄いですね」
「いえいえ、この程度誰でも」
「誰でもは無理かと……」
トモリさんはカボチャを刀でくり抜いてジャックオランタンを作っていた。
本当はカブだよねとか、そういうのもどうでもいいのである。
ただ凄まじい技術を目の当たりにして、それに感嘆していた。
「せっかくだし飾りましょうか」
「お願いします」
トモリさんから作ったジャックオランタンを預かるとシュエリアと共に飾り付けてみた。
「トモリが居れば何でも切って作れそうですわね」
「そうだな」
何と言うか、芸が細かいのだ。刀なのに。
「他に面白いことしてる人いたりしないかな」
「トモリみたいなのは少数派ですわね」
基本的には皆お互いにお喋りしながらお菓子とお茶、お酒を楽しんでいる様だ。
「そういえばシュエリア、仮装とか言い出さなかったな」
「ここに来る連中はもう仮装しているようなものでしょう」
「まあ、そうだが」
そうは言うが約二名、仮装出ないのが居る。
俺とシュエリアだ。
「義姉さんですら仮装してるのに俺とお前だけシャツってのはどうだろう」
俺は普通のヒートテックにYシャツ。シュエリアはいつも通り変なTシャツだ。
ちなみにTシャツの文言は『悪霊退散』である。
「せっかくだし仮装するか」
「良いですわね。何にしますの?」
「吸血鬼とか」
「じゃ、魔法で変身させますわね」
「わーい、超便利」
仮装する手間が省け過ぎてビックリだ。
「わたくしは……狼にしときますわ」
そういうと、シュエリアからもふもふの耳と尻尾が生えた。
「シャツはそのままなのな……」
「え、これ結構いいでしょう?」
「あ、はい」
どうやらお気に入りのようだ。メンドクサイので触れないでおこう。
「なんていうか、こうやって人が楽しくワイワイ騒いでるの見てるのも楽しいもんだな」
「そうですわね、まあ今からそれに混ざりに行くのだけれども」
そういうとシュエリアは俺の手を引いて歩き出す。
「さ、ハッピーハロウィンですわ!」
「おう」
その夜。俺達は疲れて眠り果てるまでハロウィンパーティーを堪能したのであった。
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