お仕事の続きですわ
「熊鍋、美味いな」
いつも通りの休日にたまにはとシュエリアの仕事先に来てみた俺とアシェは熊さんに出された熊鍋をシュエリアとユーナ含めた四人で囲っていた。
「そ、そうだね」
なんか熊さんがせつなげな表情で食べてるのが心に来るんだけど、これそういうプレイですかね。
「今更だけど他の人達もいつもと違ってなにかしらかのアニメのコスプレしてんのな」
周りを見るとSA〇のア〇ナとかリコ〇コの千束とかごち〇さのココアとか色々居る。
「シュエリアの趣味か?」
「どっちかと言えばユウキの趣味ですわね」
「俺SA〇はリズ派なんだけど」
「そういうこともありますわね」
「どういう事だよ……」
まあ別に俺専用に合わされてなくてもいいんだけどな。普通そんな店無いし。
「それで、アシェは何しに来やがったんですの?」
「私に対してトゲトゲしいわね……ユウキとデートよデート」
「え。デートなのかこれ」
「男女二人きりでお出かけなんだからデートでしょ?」
「なるほど、そういう事らしいぞシュエリア」
「なるほど。ま、楽しそうで何よりですわね」
「ほう」
俺とアシェが二人で楽しそうにしてるのを見て何か思う所有りかと思ったが特にそう言うのは無いようだ。
「どうかしたんですの?」
「いや、焼き餅とか焼かれないのってそれはそれで寂しいもんだなと」
「わたくしがアシェに? 冗談は生き様だけにして欲しいですわ」
「俺の生き方そんなに冗談くさい?」
まあ確かに、振り返れば冗談のようなことばかりの人生な気もしないでもないが。
「でもそれってほとんどお前の所為じゃねえ?」
「……そうとも言いますわね」
そういって鍋をつつきながらそっぽ向くシュエリア。俺の人生を冗談みたいな人生にした自覚はあるようだ。
「シュエリア……さんってユウキさん? と仲いいんだね」
「ん? あぁ、ユーナは知らないだろうけれど、コイツわたくしの旦那ですわ」
「え!」
相当驚いたのか俺とシュエリアを交互に二度見するユーナ。
まあ、普通驚くよなあ。この差だもんな。
「ユウキさん、良く生きてますね」
「だろ、俺もそう思う」
シュエリアに付いて回って生きてるのってアシェの作った薬のおかげだよなと、ホントにそう思う。
「なんか今私に対する感謝の念を感じたわ」
「変なもんに敏感だな」
「まあユウキが活きてるのって私のおかげもあるものね」
「わたくしのおかげでもありますわね」
確かに両者に助けられての命ではあるが……何かこう、釈然としないのは何故だろう。
「少なくともアシェに危険な事させられたことは無いな」
「わたくしにはあるって言うんですの?」
「あるだろ……」
主に魔王戦でアイネについて行けと言われた辺りだ、まあ自分の意思で決めた事なので文句を言う気は無いが。
「ま、まあそういうこともありますわよ。でも楽しいことも多いでしょう?」
「それに関しては否定しないよ。お前のおかげで毎日楽しいとも」
コイツと一緒に居ると飽きないからな。うん。
「あら、そろそろ鍋も終わりですわね」
「だな、四人で食うにはちょっと少なかったかもな」
「あ、それじゃあ私はこれで……」
そういうとユーナは鍋をもって厨房の奥に消えた。
「お前あんまり従業員に無理させるなよ?」
「分かってますわ。でもほら、うちってコスプレ喫茶なのに皆して実質素の姿でしょう? それじゃあコスプレ喫茶とは言えないから、たまにはこうしてコスプレしてるんですわ」
「じゃあさっきのユウナも?」
「そうですわよ。だから何度もコスプレだって言ってますわ」
それならあのせつなげな顔はなんだったんだろう。個人的に熊好きとか?
「そんなことよりユウキ」
「ん?」
「暇ですわ、なんか面白いことして欲しいですわ」
「仕事中の奴の発言じゃねぇ」
って言うか無茶ぶりが過ぎるし。
「店の手伝いっていうか、店長なんだから働けばいいだろ」
「ふっ、有能過ぎてもう仕事が無いですわ」
「腹立つなあコイツ」
ドヤ顔なのが余計に来るものがある。
「それじゃあ私達に接客しなさいよ」
「なに正論かましてくれてんですの。それじゃあ暇ですわ」
「いや、だから、それ仕事中の奴の発言じゃねぇから」
コイツどんだけ仕事したくないんだよ。そのくせ暇だ暇だと言うし。
「まあ、冗談はこの辺にして暇だからなんかしたいですわね」
「いやだから仕事しろって」
コイツ話がエンドレスに続きそうなんだけど、何なのコイツ。
「しかたないですわね、そろそろ読者もこのやり取りに飽きてきている頃だろうからここで一発アシェが面白いことを言いますわ」
「何その無茶ぶり! ユウキの時もそうだけどフリが雑過ぎでしょ!」
「チッ、しゃあないですわねぇ」
「この女無茶ぶりした上に舌打ちかまして来たんだけど……これが嫁でいいわけ?」
「まあそんなところも奇抜で面白い嫁なんで」
とはいえ無茶ぶりは勘弁して欲しいが。
「さて、そろそろなんかしないと暇だな」
「でしょう? ユウキならわかってくれると思ってましたわ」
「アンタら似た者夫婦だものね」
似てるかどうかはまあ……シュエリアに影響を受けている感はあるか。
「で、何か面白いことないんですの?」
「あったらここまで来てないけどな……」
「暇だから来たわけだしね」
さっきから暇暇暇とそればかりだ。何かいい案は無いものか。
「とりあえず俺千束の子と写真撮ってきていい?」
「そういやリコ〇コ好きでしたわね」
「そうそう。せっかくだから写真撮りたいなって」
「じゃあ呼んできてあげますわ」
そう言うとシュエリアは千束コスの子のところに行って連れてきてくれた。
「はい、コスプレ喫茶しす☆こーん看板娘!」
「あ、そういう感じなんだ。よろしく」
見た感じ元は九尾の人な気がする。前にチラッと見た記憶でしかないが。
「それじゃ早速写真を」
「別料金ですわよ?」
「わかってるよ」
「わたくしも撮っていいんですのよ?」
「お前はいつでも撮れるじゃん」
そう言う意味では希少度が違う。優先順位は低い。
「それじゃツーショットでお願いします」
「オッケー」
そんなわけで千束コスの子と写真を一枚撮って別料金が発生した。
「ユウキの事だから可愛い女の子と見たらハーレムに加えるとか言い出すかと思ったけれどそんなことは無いんですのね?」
「お前俺をなんだと思ってんの」
「美少女なら手当たり次第に嫁にしようとする色魔」
「ひでぇ認識されてて言葉が出なくなりそうだわ」
それでもまあ何とか言葉が絞り出せるのは自覚があるからだろう。
案外認めてしまえば楽な物だ。
「事実既に複数の美少女に手を出している訳だから、人によっては女の敵ですわよ」
「まあ、確かにな……」
複数の女性と関係を持って、しかもそれが美少女限定とか最低と言われても仕方がない。シュエリアのいう事も正しいのだ。
「ま、それでもユウキはそれでいいと思いますわよ」
「急にシュエリア一筋とか言い出したら背中から刺されそうだしな」
うちのメンツ結構怖い連中なのでうっかり発言で暴発しかねない。
「さて、それで面白いことだけれど」
「じゃあ面白くなるようなドリンクでも作って来てくれ」
「お、いいですわよ」
そんなわけでお任せドリンクを頼むことにした俺だが、アシェは無難にケーキを頼んでいた。
「で、シュエリア、これはなんだ」
「抹茶ですわね」
「ほう、抹茶とな」
しかしこう、見るからに、抹茶じゃない現象が起きているように見受けられるのだが。
「まあいいや、飲んでみるか」
「ユウキのそういうとこ好きですわ」
あんまり嬉しくない誉め言葉と共に俺はドリンクを飲んだ。
「シュワシュワするな」
「炭酸抹茶ですわ」
「何故に炭酸」
「抹茶ラテが流行っているから行けるかと思って」
「無理があるだろ……」
またこう、何とも微妙な味のドリンクだ。まったく、困ったもんだ。
「リアクションに困るからもうちょっとパンチの効いたのがよかったな」
「そこを大袈裟にやるのがリアクション芸人ですわ?」
「俺リアクション芸人なの?」
初知りである。俺はそんな立場だったのか。
「ユウキは超人に囲まれて唯一一般人視点からリアクションするポジ、つまりヤム〇ャですわ」
「ヤ〇チャだって頑張れば栽培マンくらいなら戦えるわ」
まあ俺は無理だけど。不老不死以外能力ねぇし。
「ふう、結構話し込んで暇が潰せましたわね」
「そうだな。お前もそろそろ働け?」
「そうですわね……休憩し過ぎて他の店員に嫌な眼で見られても困りますわ」
「一応そういうのは気にするのな」
シュエリアの事だから誰にどう見られても気にしないかと思ったが。違ったようだ。
「さて、そんなわけでわたくしは仕事に戻りますわよ」
「おう、頑張れよ」
「私はもうちょっとユウキとのデートを楽しんでるわ」
「はいはい、妄想乙ですわ」
「妄想じゃないし! 事実だし!」
どうやらシュエリアの中ではアシェのデート発言は妄想の類らしい。
まあ、俺としてはデートでもいいんだけども。
「さて、それじゃあ次は何を注文しようか……」
「そうねぇ、これなんて良いんじゃない」
アシェが指したのはチョコケーキだった。まだ食うのかコイツ。
「まあいいか。じゃあチョコケーキを――」
「三つですわね」
「お前も食う気満々かよ」
まあ別に、構わないけどさ。
「なんだかんだこうして駄弁ってるのも楽しいな」
「そうですわね、凄く無駄な話ばかりだけれど」
「つまりいつも通りってことじゃない?」
確かにその通りだ。
結局のところ場所が変わってもメンツが同じならいつもの俺達って訳か。
「それじゃシュエリア、ケーキ頼んだぞ」
「はいはい、任されましたわ」
そう言うとシュエリアは厨房に消え、まともに仕事に従事することにしたようだ。
「シュエリア、この店に馴染んでるなあ」
「何? 心配だったの?」
アシェに訊かれて、もしかしたらほんの少しそんな気持ちがあったのかもしれないと自分で気づいた。
「そうかもな、ま、杞憂だったみたいだけどな」
シュエリアは見事に溶け込んでそれどころか店長にまで上り詰めているくらいだし。
「さて、ケーキが来たら何を話すか考えないとな」
「ふう、アンタも大変ね、いつもいつも」
俺の労を労ってくれるアシェも、シュエリアの相手の大変さは理解しているようだ。
「まあな、でもアイツと居ると自然と楽しい気持ちになるんだよ。だからまあ、このくらいはなんてことないさ」
そう、なんてことない。なんてことの無い雑談をするだけだ。
「早くケーキ来ねぇかなぁ」
「そうね、来たら何か面白いトークに花を咲かせたいわね」
俺とアシェは顔を見合わせると、そう言って笑い合い、何を話すか考えながらも、シュエリアがケーキを持って戻って来るのを待つのであった。
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