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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
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お仕事ですわ

「暇だな……」

 いつも通りの日常。

 俺は仕事が無い上にシュエリアが居ないので暇を持て余していた。

「寝るかなあ」

 寝るのは好きなので暇な一日、眠って過ごすのも悪くない、が。

「……シュエリアの仕事先でも行こうかな」

 ふと、シュエリアの働いてる姿でも見てやろうと思った。

 丁度暇だし、行ってみるのもいいだろう。

 暇だからどうだと言うと自分がいかにシュエリアに侵食されているかが分かる。

「他の誰かも誘ってみるか」

 一人で行くのも寂しいのでちょっと誰かいないか探してみよう。

 そんなわけで俺は自室を出てすぐ近くの部屋を訪ねた。

「アシェー、入るぞー」

 俺はそれだけいうと部屋の扉を開けた。

「ちょ、アンタ了解得てから開けなさいよ。着替えてたりしたらどうするのよ」

「え、別に何とも」

「腹立つわね……」

「いやでも、ほら、将来的に夫婦になるわけだからよくないか?」

「それでもマナーとして、モラルを大事にしなさいよ」

「うーむ、確かに」

 親しき中にも礼儀ありという奴だな。

「で? 何の用で来たのよ」

「やあ。暇だからシュエリアの仕事ぶりでも観察しに行こうかと思って」

「それで一人だと寂しいから連れが欲しいと」

「そういうこと」

 アシェは頭の回転速いから話が早くて助かる。

「まあ休日だからこそ客として行ってシュエリアをおちょくるのも悪くないわね」

「お前ならそう来ると思ったよ」

 という訳で俺とアシェで『しす☆こーん』に向かう事になった。

「アイネは誘わなくて良かったの?」

「たまにはアシェと二人って言うのもいいかと思ってな」

「ふうん、アンタって案外気分屋よね」

「そうか?」

 自分ではそんな気はしないが、人から見たらそうなんだろうか?

「適応力というか、順応性の高さもその辺から来てそうよね」

「そんなに順応性あるか、俺」

 これも人から見た俺の姿だ、自分ではそんな気はあまりしない、あまりというのはシュエリアとかエルフを受け入れられている事実があるだけに否定も仕切れないという思いからだが……。

「着いたらシュエリア驚くだろうか」

「いや、普通に嫌そうな顔するんじゃないかしら」

 あぁ、なんか想像できる。前に行った時も「いらっ」とか言われたしな。

「ま、その辺も含めて楽しみだな」

「そうね、あの阿保がどんな接客をしてくれるか楽しみだわ」

 アシェもシュエリアの反応が楽しみなようだ。まあシュエリアが接客してくれるとは限らないんだけどな。何せアイツあれでもう結構昇進しちゃってるからホールとかに出てないかもしれない。

「さて、そんなこんなで着いたわけだが」

 取り留めもない話をしたりしなかったりしながら、俺達は目的の店までたどり着いた。

「入店するぞ」

「なんでちょっと緊張してんのよ」

 俺が態々入店の合図を送ったのを緊張と取ったらしいアシェにそう言われて初めてちょっと緊張気味な事に気づいた。

 まあ、それでも店に入らない選択肢は無いわけだが。

「いらっしゃ~いませ~?」

「お、トモリさんだ」

「なんで疑問形なのかしら」

 確かになんでちょっと疑問形だったのだろう。

「冷やか~し~かと~?」

「とんでもねぇ誤解だ」

「いくら私でもそこまでしないわよ」

 ならどこまでならするのか聞いてみたいが……アシェが悪いことをする姿が思い浮かばない。

「お客様~?」

「そうそう」

「二名様~?」

「そうよ」

「ご案内~こちらのお席~へ~どうぞ~」

 トモリさんの案内で座ったのは窓際の二人席だ。

「これならシュエリアがサボりに来れないな」

「そうですわねぇ」

「おわっ?!」

 急に現れたシュエリアに驚く俺。それを見てケラケラ笑うシュエリア。

 シュエリアはどっかから引っ張って来たのかはたまた魔法で出したのか(恐らく後者だろうが)椅子に座り込んでいた。

「何しに来たんですの? 暇なんですの?」

「悪かったな暇人で。お前こそこんなとこで座ってていいのか?」

 シュエリアを見ると片手にパフェを持ち、もう片手にスプーンを持っている。

 どうみても働いてる奴の姿ではない。

「いいんですわ、他の子がその分働くから」

「よくねぇだろそれ……」

 なんか凄い問題発言したぞコイツ。

「ユウキは知らないかもしれないけれどわたくしこれでももう店長まで上り詰めてますのよ? せかせか接客とかあんまりしないんですの」

「あれ、そうなのか」

「まあ店長兼看板娘だからそこまで暇でもないけれど」

「じゃあ駄目じゃん」

 自称看板娘なら暇してちゃ駄目だろう。

「今は……休憩ですわ。そう、休憩中ですの」

「ユウキ、これ絶対嘘よ」

「今考えたよな絶対」

「信用されないって辛いですわね……」

 そんなことを言いながら遠い眼をするシュエリア。

「まあ下らない嘘と冗談はさておき、暇で態々ここまで足を運んだんですの?」

「そうだよ」

「ユウキがシュエリアが居ないと寂しいって言うから付いて来てやったわ」

「そんなことは言ってないが」

 嘘でもないけど、言っては無いな。うん。

「まあユウキって基本わたくし大好きだから仕方ないですわね」

「あーはいはい、そうですよ」

「もうちょっと素直になってもいいんですのよ?」

「愛してるよ」

「あ駄目、やっぱり照れるから無しですわ」

「お前なあ……」

 相変わらずストレートな好意に弱い俺のちょろ嫁だった。

「で、そろそろ注文いいかしら」

「ん、おう。なんか気になるのでもあるのか?」

「この熊鍋って何よ」

「熊鍋だろ……いや、なんで熊鍋?」

 ここコスプレ喫茶だよな? なんで鍋。なんで熊。

「最近熊の女の子を雇ったからですわね」

「その語彙だけ聞くとある人物しか思い浮かばないんだが」

 作者が好きな某作品の某キャラクターの呼称とそっくりだ。

「ユーナって言うのだけれど」

「アウトだからなそれ」

 それ偽名の方だからアリとか無いからな。

「何がアウトなのか分からないけれど、違いますわよ?」

「何が」

「ユ〇のコスプレをした女の子ですわよ? 名前はたまたま似てるだけですわ」

「どっちにしてもアウトなんだよ!」

 いくらなんでもパクリはよくない、よくないぞ。

 しかもその熊の女の子のメニューが熊鍋って。せめてクマパンにしてくれよ。

「そうですわね、パンがありましたわね」

「人の心読んだ上にパクリを重ねようとするな」

 うちの嫁何処まで落ちれば気が済むのか。

「で、頼むんですの?」

「会ってみたいし……アシェと二人で一つシェアでいいよな」

「わたくしも入れて三人ですわよ」

「お前ホント……」

 仕事しろよコイツ。

「それじゃ、オーダー入りますわー、熊さんの熊鍋一つ~」

「はーい」

 やり取りから数分、鍋をもってこちらに来たのは本当に熊の恰好をした可愛い女の子だった。

「ユーナです、よろしく」

「ユウキです、こちらこそよろしく」

 声も結構似てるだけに本物みたいだ。

 ここまで来るとアウト過ぎて世間にお見せできない気がする。

「あくまでもコスプレですわ」

「そ、そうだな」

 まあ、うん、そうなんだけど、そうかなあ。

「さ、ほら皆で鍋を囲みますわよ」

「窓際席じゃ無理だろこれ」

「空いてる席に移りますわよ、ほら」

 そう言うシュエリアについて俺達は席を移動する。

 さあ、俺達の昼飯は熊鍋になったわけだが……この後どうなることやら。


ご読了ありがとうございました!

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次回更新は翌週の土曜日21:00までを予定しております。

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