俳句とかどうですの?
「五七五って微妙に難しいですわよね?」
「は?」
いつも通り過ぎていく秋のお昼時。
シュエリアがいつも通り唐突に話を切り出して来た。
「字余りアリアリなら行ける自身あるけれど五七五は難しいですわよ」
「……まあ、そうだな」
唐突に五七五とか言われたら確かに難しいだろう。
実際何も思い浮かばないし。
「というわけで皆で俳句合戦をしますわ」
「作者の負担が大きい合戦だな」
頑張れ作者、五七五に負けるな。逃げるな。
という訳で、いつも通りいつものメンバーが集合した。
「五七五ねぇ、また難題を言ってくれちゃって……」
「そうですねっ、シュエリアさんドンマイですっ」
「どんま~い~」
「なんで励まされてるんですの」
シュエリアの言う唐突な無理難題に付いてけないというか付いて行く気が無いのか、励まされ始めるシュエリア。
「ほら、いいからやりますわよ」
「仕方ないわねぇ」
「どうせ暇なのでっ」
「付き合~います~」
「お姉ちゃんもいるよ」
そんなこんなでついに、俳句合戦スタートだ。
「まずは誰から行きますの?」
「私から行くわ」
速攻で手を挙げたのはやはりというかアシェだった。
めんどくさそうにしてたクセに一番早い。なんだかんだノリの良い奴である。
「フルボ〇キ、したならあとは、挿れるだけ」
「最低だなお前」
アシェだからどうせ下ネタだろうとは思ってたけどストレートに来た上に五七五なのがなんともイラッとくる。なんでコイツこんな才能ばっかりあるんだよ。
「最低じゃないわよ、天才よ」
「下ネタのな」
「もっと褒めていいのよ?」
「今の褒められた判定なのか」
駄目だコイツ、早く何とかしないと。
「アシェはいつでもアシェですわね」
「ブレない女アシェと呼んでくれていいわよ」
「そんなダサい二つ名でいいのか」
どうせだったら失敗しない女くらいの方がカッコイイ。
「さ、お次は誰ですの」
「私が行きますっ」
「お、アイネか」
以外に頭の回転が速いアイネである、きっと大丈夫だろう、多分。
「カリカリが、ふやけてマズい、昼ごはん」
「シュエリア」
「うっ、今日はたまたまですわ」
今日はシュエリアがアイネにご飯を出していたハズなので句を通してアイネに怒られているようだ。
「怒ってますっ」
「可愛いですわね」
「怒ってますよっ」
「わかりましたわ。次は無いですわ」
「それならいいですっ」
どうやら二人の間の問題はあっさり解決したようなので次は誰だろう。
「わたし~が~?」
「良いですわよトモリ」
シュエリアがゴーサインを出すとトモリさんが考えた句を詠みだす。
「夕暮れや、赤とんぼ舞う、秋の空」
「めっちゃ普通に来ましたわね」
「そしてハキハキしてるな、全然間延びしてない」
トモリさん、ガチである。
「もっとボケてもいいんですのよ?」
「とっさ~に~浮かんだの~で~?」
「それじゃあまあ、仕方ないですわね」
「いや、トモリさんので正解だから」
なんかトモリさんのが駄目みたいになってるけど今の所一番俳句っぽさがあるのはトモリさんだ。
「まあまあ、ここはお姉ちゃんが俳句に正解なんてないことを教えて上げるよ」
「自信満々ですわね?」
「任せて!」
「不安しかねぇ」
この人が張り切ってるとロクでもないことやらかしそうで怖い。
「ゆう君と、いっしょういっしょ、嬉しいな!」
「めちゃめちゃ字余りしてるじゃねぇか」
やっぱり駄目だった俺の義姉。
「良いんだよ~気持ちがこもってればそれでいいの!」
「そういう問題以前では……」
五七五の中に詰めてくれ、と思うが言っても聞かなそうなテンションなのでやめておく。
「それじゃあ後はわたくしとユウキですわね?」
「じゃあ俺も一句……って浮かばねぇな」
流石にここまで来て俺だけ言わないのもなんだが、まったく思い浮かばない。
「あらあら、情けないですわねぇ」
「そういうお前はあるのかよ」
「ありますわよ?」
「マジかよ」
それが本当なら俺だけが出てこなかったことになってしまうな。
「じゃあ、そうだな……猫愛でる、アイネと共に、過ごす昼」
「普通ですわね」
「普通だよ。アシェみたいにボケ含めたのなんてそうそう出て来ねぇよ」
「なになに? やっぱり私って天才?」
「下ネタのな」
なんかアシェが嬉しそうにしてるんだけど、褒めてないんだけどな、別に。
「じゃあ最後はわたくしですわね」
「おう」
ここまで人の句を普通だなんだと言ったのだ、自分はさぞ面白い句を詠むのだろう。
「美味しいよ、今夜食べたい、ビーフシチュー、字余り、ですわ」
「ただの晩飯の要求じゃねぇか」
しかもまたビーフシチューである、どんだけ好きなんだコイツ。
「結局この大戦、誰の勝ちなんだ?」
「面白かった人の勝ちですわ」
「なるほど、アシェか」
「え、ほんと??」
俺に指名されて驚くアシェ。
「まともにボケられたのお前くらいだしな」
「や、やったわ。何だか知らないけどシュエリアに勝ったわ!」
どうやらシュエリアに勝ったのがよほど嬉しいようで立ち上がって万歳までしている。
「なんかあそこまで喜ばれると癪ですわね」
「お前も大概な性格だよな」
そこは温かい目で見守ってやろうじゃないか。
「さて、夕飯の要求は済んだし、後は暇つぶしですわね?」
「これ暇つぶしじゃねぇの?」
今までの俳句合戦とやらはなんだったのか。
「まあ暇つぶしだけれど、次何か無いんですの?」
「はあ、仕方ねぇなぁ――」
こうして、俺達の俳句披露会は終わり、夕飯までの時間も遊んで過ごし。夕飯はシュエリアの要求が通りビーフシチューとなったのであった。
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