馬肥ゆる秋ですわ
「天高く馬肥ゆる秋。ウ〇娘も絶好調ですわ」
「いや、作者の方は好調じゃないが」
シュエリアは好調らしいが、作者のウ〇娘は好調ではない。
って言うか最近やれてない、俺も含めて。
「そんなわけで馬に乗りたいですわ」
「急!」
急に乗馬の話になっちゃったよ。どんなカーブの仕方だよ。
「シオンに頼んだら乗せてもらえないかしら」
「義姉さんか……いけるかもな」
あの人なんにでも手を出してるし、うん、行けそうな気がする。
「聞いてみるか」
物は試し、俺も乗馬には興味があるので義姉さんに早速連絡を取ってみる。
「あ、義姉さん? 乗馬した――」
「できるよ!」
「――いんだけど……できるのか」
かなり食い気味に来てたけど、乗馬そんなに好きなのか?
とりあえず俺は電話を切るとシュエリアに向かって話しかける。
「できるってさ。どうする? すぐ行くか?」
「そうですわね、他のメンツを集めてからシオンの所に転移しますわ」
「あいよ」
そんなわけで、いつも通りに皆に連絡を取って待ち、集合してから皆で転移魔法で義姉さんの元に飛んだ。
「お、シュエちゃん達勢ぞろいでどしたの」
「乗馬ですわ」
「あー、さっきの電話、シュエちゃんが乗りたかったんだ?」
どうやら俺が乗りたいのだろうと思って食い気味だったようだ。なんか一つテンションが落ちた様子に見受けられる。
「それで、乗馬は何処で出来るんですの?」
「それじゃあグーグ〇マップ出すからそこに飛んで貰っていいかな」
「良いですわよ」
「便利だな」
もちろんこの場合便利なのは転移魔法でもありグー〇ルでもある。
「ほいっと、転移完了ですわ……ってここ何処ですの」
「北海道だけど?」
「どおりで寒いですわね!」
辺りを見渡すと広々とした牧草地だった。
ファームというのか牧場というのか、どちらも同じか。
「ここで馬を育ててるんだよー」
「食べるようですの?」
「走るようだよ……なんですぐ食べる方に行っちゃうかなあ」
シュエリアの食欲に義姉さんは若干引きながら答えている。
「そうですの。まあ乗馬に来たんだからそうですわよね」
「そうそう、乗馬に来たんだからね?」
シュエリアも当初の目的を思い出したようで一安心だ。
「で、どうやって乗るんですの? アレ」
「まずは近寄ってみようね」
そういいながら俺達は馬に近づくがシュエリアが付いてこない。
シュエリアから馬までかなり距離がある、なんであんな距離取ってんだろう。
「何してるのシュエちゃん」
「その、思ったよりデカいですわね」
「そうだね。ポニーじゃないからね」
「近づいたら蹴られたりしませんわよね?」
「しないよー。っていうかされてもシュエちゃんなら大丈夫でしょ?」
「い、いきなり来られたら過剰防衛しかねないですわ」
どうやらシュエリアの奴、珍しくビビっているようだ。
まあ実際、近寄って見ると馬って思ったよりデカいし分からなくはない。
「ま、まあアシェに出来てわたくしにできないことは無いですわね」
「そこで引き合いに出されるのなんかムカつくわね、ビビってないでこっち来なさいよ」
もう早速馬に興味深々で撫で始めていたアシェがビビったシュエリアに対して挑発する。
「ぐぬっ……い、行きますわよ」
そう言いつつ、深呼吸をしてようやくこっちに来る気になったシュエリア、そろりそろりとこちらに近寄って来る。
「ふっ、何てことないですわね」
「だから大丈夫だって言ってるのに」
さっきまであれ程ビビってたのに馬の横に着くなり余裕をかますシュエリアに義姉さんが呆れる。
「さて、それでどうやって乗るんですの?」
「うん、まず馬に慣れて欲しいから乗るのはちょっと後かな。撫でたりするところから始めてみようね」
シュエリアがビビってたのがまだ気になるのか。シュエリアはとりあえず馬に慣れるところからスタートのようだ。
ちなみにトモリさんは乗馬経験ありということで今馬で颯爽と牧場内を駆け抜けている。まさかの特技であった。
「やっぱり近くで見ると大きいですわね」
「そだね。実際乗ると高くて怖いかも知れないから先に言っておくね、ビビったら馬に舐められて主導権持ってかれて言うこと聞かないから何があっても平常心で自分が主導権を握るつもりで居てね」
「な、なるほど、結構賢い生き物ですわね」
「そだよー、馬って人を見てるからね、気を付けないと意外と危ないし」
そう言うのを訊くと、尚更初対面の馬でダッシュ決めてるトモリさんって本当に馬に乗るの上手いんだなと思う。
「トモちゃんはどこで乗馬してたのかな」
「いちお~う~魔王です~から~? 戦場に~出る時~とかに~ちょっとだ~け~?」
「ちょっとだけってレベルじゃない走り方してましたわよね……」
障害物があってもジャンプして超えそうなレベルの乗馬スキルだったように見えたがアレでちょっとなのか?
「さて、それじゃあ早速乗ってみようか」
「ついにですわね」
シュエリアより先に馬と触れ合っていたアシェとアイネもここでついに乗馬体験となる。
「馬より猫の方が上だと教えてやりますっ」
「趣旨が違うぞアイネ」
「まあ? 私くらいの淑女なら乗馬くらい余裕よ」
「そうだといいな運動音痴」
「い、行きますわよ」
「お前は一回落ち着け」
三者三様、様々な反応を見せているが心配なのはシュエリアよりアシェだ。
シュエリアは持ち前の才能があるから案外何とかしそうだが、アシェの方はバランス取れなくて落っこちたりしそうで非常に不安である。
「それじゃあ今からお姉ちゃんが乗るから、それを真似して乗ってみてね」
「難しいこと言いますわね……」
見たとおりにやるだけとは言え初挑戦だ、中々の難易度だろう。
ちなみに俺は見学だ。高所恐怖症なので馬になんか乗れない。乗ってみたいが、怖いもんは怖い。
「よっと。こんな感じなんだけど、大丈夫?」
「大丈夫でしたわ? 余裕ですわね」
「な、何とか、いえ、全然余裕だけど?」
「馬の背中が高すぎて色々届きませんっ」
アイネは身長的に色々と届かなくて乗りにくいようだ。
「あーアイちゃんにはいきなりは難しかったかぁ。じゃあ私がアイちゃんの面倒みるからゆう君達はまあゆっくり歩かせて遊んでて?」
「お、おう」
と言われても、どうしたらいいのかさっぱりわからないんだが。
「ググるか」
「出ましたわね」
困ったらググる、これ基本。
「とりあえず手綱を軽く引けば歩く……と思う」
「やってみますわ」
言われた通りシュエリアが軽く手綱を引くと、馬がゆっくりだが確実に歩き始めた。
「お、おお、これは、ふふっ、楽しいですわ」
「そりゃよかったな」
早速自分で馬を動かせたのが楽しかったようで、笑顔のシュエリア。
半面、めちゃめちゃ焦ってる奴が居た。
アシェである。
「ちょっこわっ! めっちゃうごっ! えっ!! 止まって?!」
どうやら思ったより高い上にかなり体が動くのにビックリしたらしく、止まって欲しいが止め方が分からない様だ。
「アシェー、体で引くように手綱を引け、そしたら止まるから。多分」
「えぇ?! こ、こうっ!?」
アシェが上半身を逸らしながら手綱を引くと馬が止まった。よかった。
「はぁ、馬って結構揺れるのね」
馬から降りたアシェがぜぇぜぇしながら言う。
「アシェにはキツイだろ、無理するな」
「う、そ、そうね……無理しても仕方ないわね、楽しかったけど私にはハード過ぎるわ」
そんなわけでアシェも俺と一緒に観覧側に回った。
「シュエリア、調子はどうだ」
「高いし揺れるけど、見える景色が違って見えていいですわよ?」
「なるほど、いつもより視点が高いだけでも違って見えるもんだしな」
それが乗馬なら尚更なのかもしれない。
「トモリみたいに乗れるようになってみたいですわね」
「そうだな、でもあれは随分掛かると思うぞ」
流石に天才のシュエリアでもちょっとばかり時間が必要そうだ。
無理しても危険だしな。
「そうですわね、今日の所はこの経験を楽しみに記憶しておきますわ」
そう言うとシュエリアは馬を降りた。
「もういいのか?」
「えぇ、そろそろ尺もあるから仕方ないですわ」
「またメタいことを」
そんなこと気にせずに遊んでいても作者が適当にやってくれそうだが……まあ初めての事でシュエリアも疲れたりしたのかもしれない。
「シオンー、アイネはどうですの」
「うん、うまく乗れたよー。今お散歩中ー」
「じゃあそれが終わったらお昼にしますわよ」
「うん、オッケー」
という訳で、俺達はアイネの散歩とトモリさんの疾走を待ちながら昼に何を食べるかを相談し合うのだった。
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