表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
161/266

花火大会ですわ!

「夏祭り回かと思ったんですの? 残念違いますわ!」

「何を言っているのか分からないが嘘は止めろ」

 以前、義姉さんの別荘で約束した花火大会、それにやってきた先から変な事を言い出すシュエリア。相変わらずの阿保である。

「誰が見ても祭り回だよ。浴衣まで着て何言ってんだ」

 シュエリアは見事に美しい浴衣姿だった。それはもう大変似合っている。

 まあ言うと調子に乗るから言わないが。

「まあ言わなくても伝わる思いってあると思いますわよ」

「絶対心読んだだろ」

 これだから日常の妙な場面で魔法使う奴は、まったく。

「冗談はさておき夏祭り、人が多いですわね?」

「あぁ……現実のコロナ禍では考えられない量だな」

「何の話ですの?」

「リアルの話だよ」

 それにしても本当に人が多い。これははぐれたら大変だな。

「皆、はぐれない様に気を付け――もう一人既にいねぇ……」

 トモリさんが行方不明になっていた。どこ行ったんだあの天然魔王。

「そんなこと言ってる間にアシェまで消えましたわよ」

「マジか! アイネ、手を繋ぐぞ」

「迷子対策ですねっ!」

「シュエリアもほら」

「しゃーないですわねぇ」

「なんで嫌そうなんだよ……」

 嫁から嫌そうに手を差し出される心境は中々に厳しい物だった。

「で、義姉さんは」

「抱き着くから大丈夫」

「大丈夫じゃねぇよ。アイネの手握ってくれ」

「ゆう君は照屋さんだなぁ」

「あーはいはい、それでいいから」

 まったく、抱き着かれたら歩き難いことこの上ない。ただでさえ迷子を二人も探さなきゃならないのに。

「ユウキユウキ!」

「なんだシュエリア、アシェでも見つけたか」

「たこ焼きですわ!」

「お前迷子探す気ないだろ」

 もう迷ったヤツの事は忘れて楽しもうという感じが伝わって来てる、なんて最低な嫁なんだ……そんなところが好きな俺も大概だけど。

「まあ最悪スマホで連絡とれば問題無いし、出店巡りながら探すか」

「そうですわ。それが一番ですわ!」

「一番ではないと思いますっ」

「うん」

「じゃあ二番ですわ。でも一番より楽しいから二番を選びますわ!」

「お前本当につくづく楽しみしか考えてないな」

 俺の嫁、これで大丈夫なんだろうかとちょっと心配になるレベルで遊ぶことしか考えてなかった。

「ユウキ、射的がありますわ」

「あるなあ」

「やりますわよ!」

「やるんだ」

 あぁ言うのって取れる様に出来てるのはやっすい景品だけで高いのは取れない様に出来てるからどうかと思うんだが。

 いや、もしかしたらこれは素人の考えでシュエリアなら取れんのかな。

「キャラメルを手に入れましたわ」

「普通に買った方が安い奴を無難に取って来たな」

「?」

 シュエリアから「何言ってんだコイツ」という顔をされてしまった。なんでだ。

「こういうのって雰囲気っていうか、ゲームとして楽しむのに料金払ってるような物だから戦利品が安かろうが楽しければ勝ちですわよ?」

「すっげえまともな事を言われてしまった」

 確かにそうだ。射的というゲームを楽しみつつ、戦利品も取れたらなお楽しい、それでいいのだ。それが射的の楽しみ方でいいのだ。

「兄さまっ私でっかいもふもふを手に入れましたっ」

「え?」

 見てみると、確かにデカいもふもふのぬいぐるみ……羊? をアイネが持っていた。

「ま、負けましたわ」

「えっへんですっ」

「何の勝負だよ。っていうかこんなの獲れるんだな」

 射的でこんなデカいもん取ってる奴初めて見た。俺の妹はスナイパーなのかも知れない。

「義姉さんは?」

「お姉ちゃんもシュエちゃんと変わらないよ。ト〇ポだね」

「全員戦利品あるだけ十分凄いけどな……」

 そもそもシュエリアはアイネに負けたって言ってるけど的の小ささを考えると難易度はシュエリアのだって高いわけで、一概に獲物の大きさが勝敗とも言えない気がするし。

「さて次は……って、あ」

「あら~ゆっく~ん~?」

 次に何をするかと辺りを見ると焼きそばの前にトモリさんが居た。

 見ると焼きそば、たこ焼き、綿あめと食べ物を色々持っていた。そして思った。

「本当に一気に持つ人いるんだなあ」

「大抵一つずつ処理してから次買いますわよね」

「お前祭り初めてだろ……」

 まあシュエリアの言った通りなんだけど。

 アニメとかでよく見る夏祭りをエンジョイしている表現としてやるなんか色々全部乗せみたいなの、本当にやってる人を初めて見たと言う話である。

 まあトモリさんの場合は食料だけだが。

「トモリさん勝手に居なくなっちゃ駄目ですよ」

「すみま~せん~お腹が~空いてたも~ので~」

「とりあえずシュエリアと手繋いでください」

「はい~」

 うちは人数が多いから迷子になりやすいので手を繋いで歩いているが、出来るだけ周りの迷惑にならない様に心がける。

 団体で動くとどうしても周りの通行の妨げになりやすい。

「後はアシェだけだが……さてどうするか」

「ユウキ、金魚すくいありますわよ」

「お前……やるか」

 もうツッコむのもメンドクサイ。トモリさんもなんとなくで見つかったしアシェもなんとなくで見つかるだろ、多分、きっと。……恐らく。

「さて、行きますわよ」

「シュエリアー、ポイが表裏逆だぞー」

「え?」

 金魚すくい、これにつかうポイというアイテムには表と裏が存在する。

 これを間違えると結構あっさり破ける。そうでなくてもあっさり破けるが。

「表裏あったんですのね」

「そうだな、俺もマンガで知った知識だから知らんかったけど」

 まあパッと見でわかる人もいるだろうけど。

「それじゃあ気を取り直していきますわ」

「はいよ」

 シュエリアはポイを水に入れるとそのまま金魚の尾をポイの外に出す形で救い上げた。

「上手いな」

「手先の器用さが取り柄ですわ」

 本当に上手いものだった。コイツは何やらせても上手いけど、手先の器用さが出る物とかは特に上手い。

「アイネは、失敗してるな」

「あっさり破けましたっ、素手の方が早いと思いますっ」

「やっちゃ駄目だからな絶対」

 金魚の摑み取りとか、何のゲームだそれ。

「トモリさんはやりますか?」

「はい~」

 そう言うとトモリさんはしゃがみ込んでポイを持った。

「行きます」

「なんで本気になってんですか」

 本気になったトモリさんはポイを素早く動かし、かつポイを破ることなく金魚を次々とすくい上げていく。

「トモリさんストップストップ!」

「え? なんでしょう?」

「やり過ぎですから、営業妨害レベルですから!」

 屋台荒らしかこの人は。

「新ルールですか?」

「ルールというか気持ちの問題というか」

「まあゆっ君が言うなら……これく~らいにして~おきます~」

「そうしてください……」

 って言うかそんなに一杯金魚取ってどうするんだろう、飼えなくない?

「おっきな水槽買ってこないとだね」

「そうだな。っていうか義姉さんは何もしなくていいのか?」

「お姉ちゃんはゆう君と居れるだけで楽しいからね」

「そう言うのとは違う気がするんだが……」

 まあ本人が良いと言うのだから良いのだろうけど。

「さて、流石に遊んでばかりでアシェ一人じゃ可哀そうだし、何なら打ち上げ花火始まる時間だからな、真面目に探すぞ」

 そう言って取り合えず俺はアシェと連絡を取ろうとスマホを取り出した。

「最初からそうすればよかったんですわ」

「そうする前に遊びに興じてたお前に言われるとは」

 スマホで連絡を取ると、直ぐに返事が来た。

「アシェはアシェで飲み食いしながら歩き回ってたみたいだな。今場所聞きだしたから迎え行くぞ」

「手のかかる奴ですわまったく」

「お前も大概だけどな……」

 目を離したらすぐどっかの屋台に行ってそうでとても気疲れする。

「あ、居た」

 目的の場所で目的の人物はすぐ見つかった。

「アシェ、なんて言うか、楽しんでる感じだな」

「えぇ、なんだか早々にはぐれてしまったけど、まあその内何処かで会えると思って遊んでたわ。結果的にはこうして会う事になったわけだけれど」

 どうやらアシェもこちらと同じように考えて一人で出店巡りをしていたようだ。凄いハートの強さだ。普通一人はぐれたらもうちょっと焦ったりするものだと思う。

「そろそろ打ち上げ花火が始まってしまいますわよ」

「そうだな、見やすい場所に移動しようか」

「そうですわね、えい」

「うおっ?!」

 シュエリアが「えい」とやると俺達は瞬時に別の場所に移動していた。

「ここが穴場だと事前情報で調べてありますわ」

「転移か……お前ホント日常で魔法使うなよ……」

 しかも地味な事にばかり使いやがる。今回は人前でいきなり消えたから派手な方だが。

「大丈夫ですわ。認識疎外使ってから転移してるから誰も気づきませんわ」

「さよで」

「さよですわ」

 まあそういう事ならいいってことにしておこう。

「さ、花火を見ますわよ」

「この前はビーチで花火、今度は打ち上げ花火か。今年の夏は随分風流だな」

 今までそういうイベントには俺一人で参加なんてしなかったので、シュエリアが来たことによる変化だと言える。

「あ、始まりましたわ!」

「おぉ」

 花火が上がってドンッと芯に響くような音と共に夜空に大輪の花が咲く。

「綺麗ですわねぇでも音うっせぇですわ」

「お前一言多いな」

 その後も打ち上げ花火は次々と咲いては散って、また咲く。

「今年の夏、楽しかったな」

「何言ってんですの、まだ夏終わってないですわよ」

「まあ、そうなんだけどさ」

 なんだかもう、夏の終わりを感じてしまった。花火が散る様がそうさせるのかもしれない。

「打ち上げ花火って派手でいいわね」

「ですねっ、魔法みたいですっ」

「魔法で~真似しま~す~?」

「出来そうだけどやっちゃ駄目だよトモちゃん。周りの人驚くからね」

 そりゃそうだと思いながら、個人で打ち上げ花火準備しようとしてた人が何をとも思う。

「あ、終わった」

 話しながら見ていると、花火はあっと言う間に終わってしまった。

「これで花火も見たし出店巡りに戻りますわよ!」

「え、マジか」

 コイツ本当に元気だな。

「まあ、でもそうだな。まだ見てない場所あるもんな」

「そうですわ、まだ楽しみが残ってるんですわ!」

 そう言ってまた魔法でさっきアシェと会った場所に戻るシュエリアと俺達。

 その後俺達はひたすら出店を巡り、夏祭りを最後まで楽しんだ。

ご読了ありがとうございました!

感想、評価、ブックマーク等頂けますと励みになります!!

次回更新は翌週の土曜日21:00までを予定しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ