夏と言ったら花火ですわ!!
「暇ですわ」
「行く途中からそれなのか」
浜辺で遊び終わり、そろそろいい時間になったので義姉さんが準備してくれているであろう花火を受け取りに行こうとした矢先、シュエリアが阿保な事を言い出す。
「まあもう次の行には着くのだけれど、暇ですわ」
そう言いながら別荘の扉を開けるシュエリア。うん、まあ着いてるけども。
着いて中の様子を見ると、もう既にアシェやアイネ、トモリさんは来ており、義姉さんもまた、待っていたと言わんばかりに立って居た。
「待ってたよゆう君、シュエちゃん!」
「本当に言ったよ」
「へ?」
「こっちの話」
どうでもいいことなのでスルーして欲しかったのだが仕方ない。まあとりあえず何を待っていたのか聞いてみようか。
「で、何を待ってたって?」
「うん、花火の準備ができたからね、夕食後にでもどうかなって」
「なるほどな」
まあある程度予想していた内容ではあった。さて、それじゃあ夕食は一体何なのか。
「夕食ってどうするんだ?」
「材料あるからそこから好きな物作ってー」
「丸投げかよ」
義姉さんにしては思ったより雑な対応にビックリしたものの、冷蔵庫の中を見た瞬間、なんとなく何を求められているかはわかった。
「……カレーか」
どうみても材料がそんな感じだった、というより決定的なのがルーがもう容易されている。これでカレーじゃなかったら何を求められているのかと。
「ビーフシチューじゃないんですの?」
「カレーだな」
「ビーフシチュー」
「カレーだよ」
俺の嫁どんだけビーフシチュー好きなんだよ。人の話聞けよ。
「仕方ないですわね、夏、海、カレー。ワンセットだと考えますわ」
「そうしてくれ」
別にそれがワンセットってことも無いだろうけど。まあそう納得してくれるならそれでいい。
「じゃあ作るか」
「お手伝いします兄さまっ」
「お、ありがとな、アイネ」
アイネが手伝いを申し出てくれたので早速二人で調理を開始する。
ちょこちょこシュエリアが様子を見に来ているのはそれだけ腹が減っているんだろうと思っておくことにした。
そしてカレーは手早く完成した。
「さて、これ食ったら花火だな」
「はぐっ……ん、漸くですわね」
「そうだな」
砂の城で時間を潰すのが一番大変だった気がする。シュエリアの阿保は完成品蹴るし。
それ以外は逆に何もしていないので漸くといってもこれといって感慨深さとかはない。
「義姉さんが用意したのって手持ち花火だよな?」
「そだよ? 打ち上げの方がよかったら準備するけど今から間に合うかなぁ」
「いや、いいから、打ち上げんな」
プライベートビーチで打ち上げ花火ってどんな金持ちだよ。いや、義姉さんは金持ちだけども。
「さて、それじゃあ」
「やりますわ」
「待て待て待て」
花火の入った袋を開封して両手に持つシュエリアを全力で止める。
「な、なんですの?」
「屋内でやる馬鹿があるか。外でやれ」
「仕方ないですわね……ベランダで」
「普通に外に出ろよ」
「そんなヤンキーみたいなこと言うとは思いませんでしたわ」
「表出ろとは言ってないだろ……」
どこまでボケ倒す気なんだこのエルフ。
「さて、外で花火しますわよー」
「兄さまもやりますっ?」
「やりますわ」
「じゃあ行きますっ」
「私~も~」
「ちょ、この残った花火誰が持ってくのよ」
「アシェ持ってきていいですわよ」
「持ってきて良いとか言いながらそれパシリよね?!」
「いいよ俺持つから」
「お姉ちゃんも持つよー、たくさんあるからね」
そんなわけで俺達は花火をする為に外に出た。
義姉さんの提案で浜辺でやることになった俺達は全員浜辺に集合する。
「義姉さん、火と水はあるか?」
「準備してあるよー、大丈夫、大丈夫」
見るといつの間にかバケツに水と義姉さんの手にチャッ〇マンがある。
「まあ着火くらいならお姉ちゃんも魔法で出来るけどね!」
「そういやそうですわね」
「そうね」
「ですねっ」
「です~ねえ~」
「待て待て待て」
何か皆して火は要らない雰囲気出してるけど俺出せないから。
「あぁ、ユウキのはわたくしがしますわよ?」
「いや、最初から魔法を使わせる気無いから」
日常に絶妙に無駄なファンタジー混ぜて来るのは止めて欲しいものだ。
せっかくの雰囲気が微妙なファンタジー要素と混じって変になりそうだ。
「しゃーないですわね。シオン、火貸してですわ」
「はい、どーぞ」
シュエリアは義姉さんから火を受け取ると片手に持った花火に火をつけた。
ようやく普通に始まったな……。
「これが花火ですのねぇ、綺麗だけど攻撃力はメ〇より無さそうですわね」
「お前基準のメ〇ってメラ〇ーマくらいありそうだけどな」
「失礼ですわね、あんなのよりもっと強い火出ますわよ」
「さよで」
「さよですわ」
にしても花火しながら攻撃力の話をするって風情の欠片も無いな。
「あ、終わっちゃいましたわ。案外短い物ですわね」
「そうだな。こっちのなんて長くていいんじゃないか?」
「え、ユウキそっちの気があったんですの?」
「お前逐一ボケないと先進めないのかよ……ちげーよ、花火が長持ちしそうって話」
「まあ知ってたけれど」
「だろうな!」
まったく、この阿保エルフとだとせっかくの夏のビーチ、そして花火でも風情が死んでいく感じがする。
「アイネは、普通に遊んでるな、よしよし」
「にゃ? にゃんで急に撫でられたんでしょうかっ?」
唯一マトモに遊んでそうなアイネを見てホッとした後は、気になるトモリさんだ。
「トモリさん二刀流ですね」
「です~」
思ったよりはしゃいでいた。これやるのははしゃいでる人だけだ。
「楽しいですよね、花火」
「キラキラして~しゅばば~で~いいかん~じです~」
「そうですか」
どうやらトモリさんは花火が気に入ったようだ。花火二刀流で円とか描いて遊んでる。危ないけどまあここにいるメンツならケガもしないか。
「そういえば夕日は見れましたか」
「はい~アイにゃんと~見ました~」
「そうでしたか」
そう言えば二人は砂の城を早めに切り上げていたっけ。それで見に行ったのか。
さて、聞きたかったことも聞いたし、後は……。
「で、アシェはなにしてんだ」
「シュエリアの阿保に埋められたのよ!! 監督不行き届きよ!!」
「んな事言われてもな」
いつから俺には奴の監督責任なんてものが追加されたんだろう。
いや、まあ無くはない気もするが。
「とりあえず出してやるから」
「うぅ、ありがとう」
アシェが素直に礼を言うのは珍しい気がしたがそもそも俺はコイツ等とは礼を言う言わないという間柄じゃない気がする。
なんて言うか、お互い様? 当たり前にそうするからアシェの礼はなんだかちょっと新鮮だった。
「さてそれで、アシェも花火やるだろ?」
「やるわよせっかくだし。どれがいいかしら」
アシェは花火選びを始めると直ぐに派手そうなのを選んだ。
「ユウキ、火、お願い」
「はいよ」
アシェの持ってた花火に火をつけると花火は最初、緑色の火花を散らしながら後に紅い光を輝かせた。見た目通りというか、割と派手だった。
「へぇ、面白いわねこれ。どういう作りなのかしら」
「さあ。流石にそこまでは知らんよ」
「日常にある物って結構仕組み知らないで使ってるものね、こういうのも」
そう言いながら終わった花火を水バケツに付けて消してから次の花火を出すアシェとそれに火を点ける俺。
「ユウキこっちにも火ですわ」
「いやお前は持って……うん?!」
なんかしらんがシュエリアからキラキラと火が吹いてる。なんだこれ。
「後ろでトモリとアイネが花火付けてるだけですわ」
「ネタバレ早いな。でも一瞬だがビックリはしたわ」
しかし尻のあたりから火が吹いてるようにしているのは女子としてどうなのだろう。
「いやあ、楽しいですわね花火。何が楽しいのか分からないけど楽しいですわ」
「それはまあ、雰囲気を楽しむものだからかな」
何が楽しいって聞かれると答えにくいものって結構多いけど花火もそうだと思う。
「今度は打ち上げ花火を見たいですわね」
「そうだな。夏祭りでも行くか」
「お姉ちゃんがやってあげようか?」
「夏祭りを?」
「うん」
「そうだな……やってる祭り無かったらな?」
「わかってるよー、なんでもお姉ちゃんに任せて欲しいところだけど、ゆう君はそう言うの嫌なんだよね」
「まあ嫌って言う程でもないけどさ」
なんだかんだ義姉さんには頼りっぱなしだからあまり頼り過ぎないようにしたいだけだ。
「それじゃ、今度は皆で夏祭りだね!」
「だな」
「ですわ」
そう言って俺達は夏の予定を話ながらも、義姉さんが用意してくれた花火を存分に楽しんだ。
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