夏と言ったら海ですわ!
「夏と言えば海ですわ!」
「はぁ。暑い……」
夏、暑く、しんどく、暑い。そんな夏。
俺達は海に来ていた。
以前は普通に近場の海だったが今回は義姉さんの用意したプライベートビーチだ。
まあ理由は多々あるが基本的な理由はコイツ等が目立つからである。
「ルックスだけじゃなくてやることなすこと目立つからなぁ」
「何の話ですの?」
「お前らのこと」
俺の言葉に意味不明と首をかしげるシュエリア。自覚無しか。
「にしても、海っていいわねぇ。この広大な塩水を見ていると世界の広さを感じるわ」
「アシェの言い方は何とも風情に欠けるけどな」
広大な塩水って。海水とかこう、俺の語彙力も酷いが言い方ってものがある気がする。
「さて、せっかく海に来たし泳ぐなり何なりするか」
「そうですわねぇ。とりあえずビーチにアシェを埋めるのはどうですの?」
「とりあえずで埋められるの私?!」
ショックを受けて嫌そうな顔をするアシェ。まあ嫌だよなそりゃあ。
「大丈夫だアシェ。息は出来るようにしてやるから」
「そういう問題じゃないから!」
「もう、アシェは我儘ですわねえ」
「私が悪い感じなの?!」
いつも通り弄られてるアシェを見ながら、ふと視線の端に移った人物に目が留まる。
あれは……何を……いやまさか。
「トモリさん、何してるんですか」
「あ~ゆっ君~夕日を~見ようと思~って~」
「やっぱりそうでしたか」
夕日も何も昼飯すらまだの俺達である。なんか前に海に来た時もこんな事してたな。
「トモリさん、夕日は夕方に見ましょう。今は昼前です」
「あら~そ~うですね~。流石~ゆっ君~」
「何が流石だったのか……」
むしろトモリさんは相変わらずの天然だ。
「で、アイネは可愛いな」
「ありがとうございます兄さまっ」
パレオ姿のアイネが可愛かったので素直に褒めるとアイネも素直にお礼をいう。
「正直最近影薄いので頑張りますっ」
「何の話かな……」
アイネはいつでも可愛いから影薄いなんてことはないと思うのだが。
「さて、それじゃ何するかな」
「ちょっと待ちなさいよ!」
「んあ?」
俺を呼び止める声に振り替えるとアシェが居た。
「私には何か無いわけ?」
「え。あー、似合ってると思う」
「可愛いとかは?」
「可愛い? いや、どっちかって言うとクール?」
「褒め方が斜め上に来たわね」
と言われても、他に表現が思いつかなかったのだからしかたない。
「って言うかアシェはほら、埋めてやるって言っただろアレで今日の絡み終わりだから」
「うっそアレで?! 私出番少なすぎない?!」
「日頃多いからたまには良いじゃないかと」
「謎の作者目線!」
まあ冗談だけど、アシェはリアクションが大きいからからかうと楽しいな。
「で、なんだったっけか」
「アシェの所為で忘れてますわね。砂の城コンテストですわ」
「そんな話は絶対してない」
なんだ砂の城コンテストって。いや、意味は分かるんだけど。
「仕方ないですわね。ビーチバレーとかどうですの?」
「おお、いいんじゃないか」
夏っぽいし海っぽい。非常によさそうである。
「それじゃあチーム分けしますわよ。くじ引き作りますわ。ほいっと、さ、引いて」
「サラっと魔法使ったなあ」
こういう日常の一コマにたまに混ざって来るファンタジーはシュエリアなりのボケなんだろうか。ツッコミ待ちかな。
「便利だから仕方ないですわ。さてチームは……げ、足手まといと一緒ですわ」
「人の事足手まといとかハッキリ言わないでくれる? 割と普通に傷つくわ」
「出番無いハズですのに……」
「それは冗談でしょ」
どうやらくじの結果はアシェとシュエリアのエルフチームのようだ。
ってことは必然、相手はアイネとトモリさんの勇者魔王チームだ。
「ふと思ったんだが当たり前のように俺は除外されてんのな」
「こういうのは女の子同士でキャッキャッやってるから良いんですのよ」
「さよで」
「さよですわ」
まあコイツ等の戦いのレベルに付いていける自信ないから良いけど。そういう意味ではアシェは心配だな。アイツはポンコツだし。
「さて、行きますわよー」
「おっけ~です~」
「全然オッケーじゃない気がする」
あの人やる気全然出てないじゃないか。思いっきり間延びしてるし。
そんな状態でもビーチボールがスタートする。
流石に全員本気でやると危険なので手加減は互いにするルールとなったが……。
「これ殆どシュエリア対アイネだな」
暑さの所為か速攻でバテたアシェとでろでろと動くトモリさん。
それに反して素早い動きでコート内全域をカバーするシュエリアとアイネ。
両チームの力は互角だった。色んな意味で。
「やりますわねアイネ!」
「今日は目立ちたいのでっ」
「何の話ですの?」
「最近影が薄いのでっ!!」
なんかまたアイネが自分の影の薄さを気にしているようだ。
可愛いからそんなこと無いと思うんだけどなぁ。
「あー、アイネって可愛いだけですものねぇ」
「うぐっ!」
胸に刺さる言葉を言われたのか、動きが鈍ってボールを拾い損ねるアイネ。
「そ、そんなことは無いですよっ」
「喋り方の特徴も別に慣れれば普通だし」
「グサグサッ!」
「実は若干黒いのとかアシェもそうだし」
「ぐふうっ」
シュエリアの精神攻撃にダウンするアイネ。勝敗は決した。
「しかし何とも卑怯な勝ち方だな」
「勝てば官軍ですわ」
「お前なあ……」
そこまでして勝とうと言うシュエリアにちょっと引きながらもとりあえずアイネのフォローを先にすることにした。
「アイネ、大丈夫か」
「兄さまっ……私、キャラ薄いでしょうかっ!」
「薄くないよ、周りが異常なだけで」
まあでも、そういう意味で言えば周りに比べたら薄いってことになるのか。
「やっぱり薄いんですねっ!?」
「おっと心を読まれたか」
「うにゃあ……」
自分の影が薄いと知ってへこむアイネ。あぁ、可愛いなぁ。
「大丈夫ですわよ、存在感が薄いキャラが一人くらい居ないと落ち着かないものですわ」
「なんだか慰められている雰囲気で貶されているような気がするのですがっ」
「大丈夫よ、キャラが薄いとか被ってるとか、作者は気にして無いわ」
「それ大丈夫じゃないですよねっ?!」
「どん~まい~?」
「ふにゃあーっ!」
トモリさんのドンマイが止めになったようでアイネは叫びながらビーチにぶっ倒れた。
「こうなったら日焼けして黒猫になってやりますっ」
「どうなったらそういう事になるんだ妹よ」
うちの妹が血迷って変な方向に進みそうになっている。
日焼けしても黒猫にはならないと思うのだが。
「というか色が変わっても存在感には関係ないですわね?」
「むしろ白の方が明るい色だし目立ちそうよね」
「真っ白で~透明感~?」
「それで黒ですの? 流石トモリ。アイネの考えに精通していますわね」
どうやらそういう事らしい。いや、白だから存在感無いとか視認し難いとかそういう問題ではない気がするんだが。
「大丈夫だアイネ」
「兄さまっ?」
「アイネはいつも可愛くて明るい、存在感ある美少女だから」
「そ、そうですかっ?」
「そうだよ。アイネ程可愛い妹は居ない」
「そ、そうですよねっ!!」
よかった、アイネがビーチに大の字になるのを止めてくれた。
本当に日焼けして、ほんのわずかにでも黒猫になる可能性あったらキャラがブレるからな。
白猫なのに腹は黒めなのがアイネの可愛さでもあるのだから。
「さて、次は何するか」
「そうですわね、とりあえず昼飯ですわ」
「そうだな……丁度いい時間か」
そう言って俺達は義姉さんの用意してくれた別荘に戻ることにした。
俺達の夏の海はまだまだ続く。
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