変身ヒロインですわ
今週分です。
「変身ヒロインってえっちいですわよね?」
「それはお前の脳内がえっちいだけだと思う」
日曜の昼間から頭のオカシイ発言をしているエルフが居た。
というか、俺の嫁だった。
「だってわざわざ脱がしやすそうでヒラヒラしてたり色々ギリギリな服装に変わるんですのよ?! あれもう痴女ですわよ!」
「お前が言ってんの絶対エ〇ゲの変身ヒロインだろ! 普通の魔法少女とかは……別に……モノにもよるけどそんなことないだろ」
ちょっと怪しい判定のモノを思い出して言葉が詰まってしまったが概ね普通の変身ヒロインは別にエロくは無い。
「大体、変身なんてしなくても魔法使えそうなもんですわ。てか使えますわ」
「お前はな。一般人は違うんだよ」
「変身ヒロインは一般人枠なんですの?」
「いや、違うけど、ややこしいな。兎に角必要な手順なんだよ」
「様式美みたいな話になって来てますわね」
「そうだな、それだよ」
あぁいうのは一種のお約束みたいなものだ。真面目に考えて敵の目の前で変身とかありえないし。隙だらけにも程がある。
「そんなわけで変身しますわ」
「どうしてそうなった」
今の話の中にコイツが変身する要素が一つも見当たらない。
「いえ、変身したらこう丁度良くエロモンスターとか湧かないかなぁと思って」
「湧いてどうする」
「サービスシーンに入る?」
「色々駄目過ぎる……」
もう何の話してたというか、したかったのかすらわからない。
「ユウキ的にはわたくしのサービスカットは要らない感じですの?」
「必要ないだろ、夫婦だし」
「あー、見慣れていると」
「そうだけども、言い方よ」
「なんか慣れられるのも癪ですわね」
「慣れては無いつもりだけどな。いつ見てもキレイだし」
「え、セクハラですの?」
「どうしろと……」
慣れているとなれば怒られ、褒めればセクハラ、どうしようもない。
「とりあえず勿体ないから変身しますわ」
「勿体ないとは」
よくわからんが変身するらしい、大丈夫だろうか。放送コードに引っかかりそうな痴女服じゃないことを祈りたい。
「はい、変身終わりですわ」
「あ、意外と普通な上に似合ってる」
光に包まれたシュエリアが姿を現すとそこには普通の魔法少女っぽいフリフリの可愛い服を着たシュエリアが居た。
色は若草色を基調に白の二色で構成されている何とも目に優しい色使いであった。
「むしろユウキは何を想像していたんですの」
「いや、お前の事だからエ〇ゲ寄りの露出度高めの痴女服かと思って」
「酷い言われ様ですわ。ちゃんとデザインから考えたものですわよ」
「え」
ってことはなんだ、コイツはまた無駄に器用な手先でこの服を作ったのか。
「ああでも、作ったのは魔力でだから魔力切れとか魔力阻害とかあると消えますわ」
「その場合服はどうなる」
「全裸ですわね、困りますわ」
「困るねホントに」
まあでもコイツに限って魔力切れなんてなさそうなので問題も無いだろう。
「普通に変身解けばいつもの姿ですわ」
「そうなのか。それはよかった」
普通に変身解いても全裸だったら……別に困らないな。自宅だし。
「それで?」
「それでとは」
「感想は無いんですの? 嫁の変身ヒロイン姿に」
「え、可愛いけど。いつものことじゃね」
「はあ、この阿保は女心がわかってねぇですわね」
「お前から女心という言葉が出てきたことに驚いているよ」
「ぶん殴りますわよ」
「すんません」
今のは流石に言い過ぎな気もしたので素直に謝っておく。
「でもシュエリアが可愛くて、綺麗で、それでいて一緒に居て楽しい最高の嫁なのはいつものことだろ」
「ちょ、急に褒め殺すの止めるんですわ。それが事実だとしてもですわ」
「謙遜はしない自信家だけど」
「それが事実だとしても言っていいことと悪いことがありますわ」
「それはすまんかった」
今度はさほど悪くない気もするけど流れ的に謝っておいた。
「まあ、感想が聞けて何よりですわ」
「っていうか一体何がしたかったんだお前」
「え、暇つぶしですわ」
「あ、はい」
つまり、いつも通りじゃないか。
「でもそういう恰好ならアイネが似合いそうだよな」
「出ましたわね、可愛い=アイネ」
「だって可愛いだろアイネ」
「可愛いけども、それはそれですわ」
そう言いながら、何故かシュエリアはクローゼットをごそごそ漁りだした。
「まあアイネ用あるんだけれど」
「あるのかよ」
ピンク基調のフリフリのロリータファッションで変身ヒロインならメインヒロインとかが着てそうな感じだ。
「一応人数分作ってみたんですわ」
「へえ、凄いじゃないか」
言われて見て気になったので、シュエリアの許可を貰ってクローゼットの服を覗く。
すると確かにフリフリしたそれっぽい衣装が六つあった。
……うん?
「なあ、なんで六着?」
「え?」
「え?」
俺とシュエリアはお互いに顔を見合わせて?マークを浮かべる。
「だってわたくしとアイネ、トモリにアシェ、シオンに『ユウキ』で六人でしょう」
「俺を頭数に入れるなよ!!」
通りで、おかしいと思ったのだ。なんで六着なのかと。
「よく考えたらユウキは男だからヒロインじゃないですわね」
「そうだな」
「似合わないだろうし」
「そうだな」
「あ、でもそう言うのも案外一定層は需要が」
「有ってたまるか!!」
俺の女装に需要を見出しそうなのは義姉さんくらいだ。
「しゃあないですわね、黒はエルにでもあげますわ」
「紫は誰なんだ?」
「シオンですわね」
「じゃあこの赤は?」
「トモリですわ」
「へえ、トモリさんが赤かあ」
ちょっと意外だが悪くない、髪を束ねた時の凛としたイメージもあるし似合いそうだ。
「ところでユウキ」
「ん?」
「変身ヒロインってやっぱりえっちいですわよね?」
「なんで振り出しに戻った?!」
唐突に振り出しに戻るのは一体どういう事だろう。
「いえ、服見てて思ったけどやっぱりこう、特別な衣装に着替えるのってエロいですわよ」
「うーん、お前のエロいのツボがわからん」
そんなこと言ったら仕事着に着替えただけでコスプレとかエロとか言われることになる。
「絶対負けるし」
「それエ〇ゲだろ?! そりゃあエロいでしょうよ!!」
コイツ本当に脳内ピンク色なんじゃないだろうか。そういう事ばっかり考えてるのはアシェくらいだと思っていたんだけど。
「変身ヒロインと言えばエロ、エロと言えば変身ヒロインですわ」
「何をしたり顔で語ってんだお前」
コイツと話してると俺の常識が通用しなくて非常に面白……面倒である。
「という訳で今夜はこれで行こうと思いますわ!」
「盛大にとんでもないことカミングアウトしなくていいから!」
唐突に夜の予定をカミングアウトしてくる嫁にツッコむ俺。
こうしていつも通りの日常はまた無駄に消費されていく。
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