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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
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星空の下で、ですわ

「ふぅ、ごちそうさまですわ」

「ご馳走様っと」

 俺達はバーベキューを楽しんだ後、テントで一休みしていた。

「肉がたくさんあったのが良かったわね」

「ですわねー、まあ普通のエルフならまず食べないのだけれど」

「お前らはエルフっぽくないから気にしなくて良いと思う」

「「あん?」」

 エルフ二人に睨まれるがどうってことはないいつも通りだ。

「私はシュエリアよりはエルフっぽいわよ」

「そうですわ。エルフっぽくないのはわたくしだけですわ」

「それでいいのかシュエリア……」

 どうやらアシェはエルフ扱いされてないことに怒り、シュエリアの方はアシェと同じにされたのを怒っていたっぽいな、これは。

「まあそれより、飯食ったけどこれからどうする?」

「うん? そうですわねぇ」

 シュエリアは「うーん」と唸って考えるがいい案が浮かばない様だ。

「トランプ?」

「定番だな」

 そんなわけでトランプをして暇を潰すことにしたのだが……。

「またアイネの負けですわね」

「むむぅっ」

 四回程ババ抜きをして四回ともアイネの負け。

 ただの運ゲーだけでは説明が付かないくらいアイネは顔に出やすいタイプだった。

 特にババを持ってるとそこだけガン見してるのでめちゃくちゃ相手しやすい。

「別のゲームなら勝てますがっ?!」

「そうですわね、次は別のゲームにしますわ」

 そう言ってシュエリアがカードを並べる。並べる……。

 どうやらこの並びから察するに次のゲームは神経衰弱のようだ。

「記憶力勝負ですわ」

「一応言っとくが魔法は無しだからな」

「分かってますわよ」

 本当に分かっているだろうか?

 バーベキューの時に火を頼んだらライターじゃなくて火球が飛んで来て死ぬほどビビらされた所から、平時で平然と魔法を使う為に若干信用できないところがある。

「それじゃ始めますわよ」

 そう言って言い出したシュエリアから始まる神経衰弱。

 以外にも記憶力勝負はトモリさんが非常に強く、また引きもよかったのも合わさって圧勝だった。ちなみに二番は何とアイネだ。なにやら勘でわかるらしく、それは神経衰弱としてどうなんだと言う引きを見せていた。

「トモリって記憶力良いんですのねぇ」

「それほ~どで~も~」

「いや、凄いですよトモリさん」

 シュエリアや俺、アシェも記憶力で劣っていたという程では無かったにしても、引きと記憶が絶妙にマッチしてとても差が付いた試合になって居た。

 そこでシュエリアが二度目、三度目、四度目と神経衰弱を開始し、結果は一度だけシュエリアがギリギリ勝利して後はトモリさんの圧勝だった。

「トモリの場合これはラックの問題な気がするわね」

「そうだな……トモリさん勘が良いのかも」

「照れ~ます~」

 そんなところで神経衰弱も終わり、今度は七並べになった。

 これも結構運の要素が強いゲームなのでトモリさんが圧勝かと思ったが、そうでもなかった。むしろ勝ち続けたのはアイネだった。

「ようやく勝てましたっ!」

「そうだな……これはスゴイ」

 どうやらトモリさんは運というより勘が良かったようだ。運とも言う気はするが。それはそれとして運の要素がより強くなると今度はアイネが強い。

 皆得意分野があるっていうのはなんだかおもしろい物があった。

「ふぅ。結構遊びましたわね?」

「そうだな、そういえば義姉さん居ないけど、どこ行ったんだろうな」

「呼んだ?」

「うおぉ!」

 俺が義姉さんの話をするとテントにバサッと入って来る義姉さん。

「呼んだって言うかどこ行ってたんだろうって話を……」

「ああ、ちょっとエルフ達とお話しをねー。まあお仕事だよ。それはそうとちょっと外出ない?」

「うん? いいけど」

「シュエちゃん達もね」

「いいですわよ?」

 外に出て一体何をするつもりなのか。

 よくは分らないがとりあえず従ってみることにした。

「よーし、それじゃあここのシートに座るなり横になるなり好きにしてー」

「うん? おう」

 言われた通り、テントの近くに設置されたレジャーシートに腰を下ろす俺。

 シュエリアやトモリさん、アイネは寝転んでいる。

「で、星を視よう!」

「星かあ」

 それで外に出て欲しかったという訳か。

 にしても星か。都内とかじゃ殆ど見えないんだよな。

「ちなみにユウキは星座とかわかるんですの?」

「んや、全然」

「はぁ。使えないですわねぇ」

「酷い言われ様だ」

 世の中に由空を見て星座を答えられる奴がいくら居るかな。多分ほとんどがノーのハズだ。多分、きっと。

「アレがデネブであっちとそっちがベガ、アルタイルなのはわかる」

「どれですの」

「あれとそれとこっち」

「だからどれですの」

「星座とか説明するの無理じゃね」

 指さしたって指した先に星が多すぎる。どれがどれか知らない方からしたら分かったもんじゃないハズだ。

「なんかこう、繋いだ時にデカい三角形に見える奴」

「何処繋いでも大抵そう見えますわよ?」

「……だな」

 シュエリアの言葉があまりに身も蓋も無くてなんも言い返せない。

「まあ正直、星座とか言ったもん勝ちみたいなところあるからねー、実際繋いでも『いや、そうは見えないだろ!!』ってツッコみたくなるのばっかりだし、まあフィーリングだよ」

「星みようって言い出した本人が一番身も蓋もねぇな」

 まあフィーリングが重要なのはわかるが。

「つまりこう、ここで寝転んで星空を見て、あー綺麗だなぁと思ってればいいんですの?」

「そそ、それでいいのよー」

「シュエリアは難しく考え過ぎね。たまにはだらっと景色を楽しむのもいいってことよ」

「そうですわねぇ、頭空っぽのアシェを見習ってみますわ」

「そこまで言ってないわよ私」

 そんなわけで、皆でだらーっと星空を見る。

「くか~すぴ~」

「速攻寝たなトモリさん」

「淫魔が一番に寝落ちってどうなのかしら」

「さあ、どうなんだろうな」

 夜は強いというか、夜行性のイメージがあるけど、トモリさんだしなぁ。

「そしてその上で丸まって寝てる猫もいますわね」

「アイネは可愛いからいいんだよ」

 いつもなら寝てる時間なので眠かったのだろう。寝かせといて上げるのが優しさだ。

「夜も遅いからね~でも私は星を見るのを止めないよ!」

「それはいいからトモリさんとアイネをテントに移すの手伝ってくれ」

 俺が義姉さんに頼むと、「ならわたくしが」と転移まで使って速やかかつ静かにテントに移してくれた。

「それで義姉さんは星空見て何がしたいんだ」

「うん? うーんと、普通に皆と中々見れない綺麗な星空を見たいなってだけだよ?」

「裏表なく?」

「そだけど。え、何かあるように見えてるの?」

 あの義姉さんがただ星を見たいだけなんて乙女なこと言い出すとは……。

「熱でもあるのか」

「え、ホント? それは大変」

「義姉さんが」

「無いよ?! なんでお姉ちゃんなの!」

「いや、だって義姉さんが星みたいだけとか言うから」

「お姉ちゃんだって都会疲れして自然に身を委ねたい時くらいあるよ?!」

 どうやら嘘ではなく本当のようだ。なんだか疑わしい気持ちが中々ぬぐえないが。

「いい雰囲気になったら何かやらかす気かと思ってた」

「そ、そんなことしないよ。皆で来てるんだから」

「シュエリアとアシェが寝てたら?」

「してた」

「駄目じゃんか……」

 やっぱり少しくらいは企みがあったようだ。

 しかし。

「はー、星っていいですわねぇ、なんだかとっても癒されますわ」

「そうね、都会じゃ見れないし、森の中からも見えないものね」

「エルフ二人、思ったより夜空を満喫してるな」

「寝る気配ないね」

「だな」

 とりあえず、俺はシュエリアの隣で一緒に黙って星を眺め、義姉さんもまたそれにならってアシェの傍で星を眺める。

 そんな風に、俺達のキャンプは綺麗な星空を見て幕を閉じて行った。


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