キャンプしに行きますわ
日曜日を週初めとして土曜日までの更新としましたので今週分の更新になります。
「暇ですわ」
「暇かあ」
いつも通りの休日、いつも通りに暇したシュエリアが「暇」と言う。
「暇ですわぁ」
「分かったからくっ付くな暑苦しい」」
「ラヴいからですの?」
「ラヴラヴの熱々だからじゃねぇよ、暑いんだよ。夏なんだよ」
もう七月だ、夏だ、クソ暑いのだ。
「まあ確かに、暑いですわよね、暇ですわ」
「お前はそれしか言わないのか」
「まあ確かに、暑いですわよね、暇ですわ」
「本当にそれしか言わなくならなくていいんだよ!」
古いゲームのNPCみたいに同じことしか喋らなくなるシュエリア。暑さで頭をやられたのだろうか。いつも通りな気もするが。
「暇ですわ~暇暇暇~」
「分かったっての。さて、そうは言ってもどうしたものか」
新作のゲームはこの前の休みにやり込んでしまったし、アニメも一話ごと見るタイプなので新しいのとかはもう観てしまっている。
うーん。どうするか。
「動画サイトでドラマでも見るか?」
「うーん? そう言う気分じゃないですわね」
「じゃあどういう気分だよ」
「もうもっとこう、目新しいことをしたいですわね?」
「目新しいことねぇ」
そんなもんがホイホイあったら暇しないだろうけど、現実はそんなに楽しいことばかりでもない。
「一度見たアニメでも二回目見るの面白いぞ」
「それはまあ、同じの何度も見ちゃうこともあるけれど、そうじゃなくて、今までしたことないことをしたいですわ」
「うーん、それがなあ」
なんだかんだこの二年近く、俺とこのシュエリアは色々なことをやってきている。今になって全くもって目新しいことと言われるとネタ切れにもなってくる。
「アウトドア……?」
「何するんですの?」
「……キャンプ……とか?」
「知識あるんですの?」
「無い」
「詰みましたわね」
速攻詰んでしまった。いや、詰んでない気もするけど。
「ググってみたら簡単にキャンプ初心者に優しい情報が出てきたりしないだろうか」
「そうですわね、可能性はありますわね」
「ググって……うっわ、必要な道具結構あるんだなぁ」
「どれどれ……本当ですわ、これ全部揃えるんですの?」
ざっと見ただけで二十近い準備道具があるように見える。これでも初心者向けなのだろうから本当のキャンプ好きには少ないと感じるかも知れない。
「ペグハンマーにシュラフ? 余り聞かない物までありますわね」
「そうだな……義姉さんにでも聞いてみるか」
あの人ならこんなこともあろうかと準備してそうな気がする。
「電話するか……っと。あ、義姉さん、俺俺、うん? たっくんって誰だよ……。え、分かってて言ってる? 俺俺詐欺対策? あーあー、悪かったよ、ちゃんと名前で言えばいいんだろユウキだよ。で、話があるんだけど……え、キャンプ場押さえてある? なんでこっちの行動パターン把握してんだよ……まあいいや、じゃあ準備は……義姉さんがしてくれるのか、わかった、行くだけでいいのな。場所は? え。ああ、了解。んじゃ」
「どうだったんですの?」
「何故かキャンプ場が押さえてあって道具も全部あるからエルフの森まで来て欲しいってさ」
「なんでそこまで準備良いんですの……怖いですわね」
もうストーカー行為はしていないと思っているのだが……盗聴くらいはされているんだろうか……。
「まあその辺は会って聞いてみよう。皆集めて行こうぜ」
「転移で良いですわよね」
「まあエルフの森だしなあ」
一般人は居ない……と思うのでまあ大丈夫だろう。いや、キャンプ場近いなら見られる危険性も……大丈夫なのか?
「最悪マジックってことで乗り切ろう」
「何の話かわからないけれどそうしますわ」
そんなわけで他のメンツも呼んでキャンプする為にエルフの森に移動する。
移動したら義姉さんはシュエリアが魔法で探知してすぐに見つかった。
「やあやあ皆! 神秘の森、エルフキャンプ場へようこそー!」
「どういうことだってばよ」
「そういうスタンスでやってるんですの?」
「そだよー。エルフ達の自活の為にキャンプ場の管理させてるんだよ」
「そういうことか……ってそれじゃ転移じゃマズかったか」
「いやいや、そこまで踏まえて今日は休業。実質貸し切りだから大丈夫」
「流石義姉さん、抜かりないな。ところで盗聴してない?」
「え。してないけど。なんで?」
なんか不思議そうに首をかしげてこちらを見て来る義姉さんを見て、盗聴は無さそうだと思った。この人の場合巧妙な演技ができてもおかしくは無いが。
「キャンプ場押さえてあったし」
「あー、シュエちゃんとゆう君の行動パターン的にそろそろかなぁって」
「どういう分析されたらそうなる?!」
怖いなこの義姉。
「冗談冗談。実は前からシュエちゃんにキャンプしたいって言われててさ。今日はたまたま定休日に私もこっちの様子見に来てただけだよ」
「そこに俺から電話が来て、何故ピンポイントにキャンプだと?」
「え、だってシュエちゃんのことだからそれっぽい答えになるまで『気分じゃない』とか言ってキャンプになってそうだなぁって思ったのと、珍しく電話だったから勘で?」
「なるほど……まあ確かに」
シュエリアがそもそもキャンプの気分だったのだとしたら、それを知っていた義姉さんが準備しておいてくれているのもまあ、わからなくはない。
「そんなわけだから、盗聴とかはしてないよ」
「そっか。疑ってごめん」
「ううん。疑われるようなことしてたからね実際」
義姉さんはそう言うと、「そんなことより」と言ってキャンプ場を案内してくれた。
「ここは初心者で『ゆ〇キャン』みてキャンプしたくなった人向けだから設備バシバシに揃ってるからテントさえあればぶっちゃけキャンプ出来ちゃうくらいだよー」
「凄いな、貸し出しの道具とか山のようにあるんじゃないかこれだと」
「そこはほら、エルフ達が管理してくれるから皆で管理して貰ってる分大々的にやらせて貰ってるよ」
まあこれなら貸し出しだけでも大分儲かりそうだ。初心者向けというだけあってどれも安価と思われる値段だし、なるほど、義姉さんも色々考えている様だ。
「まあ私達はオーナーだから無料で使っちゃうけどね。定休だし」
「定休日でもエルフ達は道具の管理とか忙しそうだな」
「それでも皆で交代でやってるから楽だって評判だよ? シフト制のバイトみたいな感覚かなぁ」
「いや、別にブラック環境を疑った訳じゃないからさ」
まさか異世界人相手にこっちの労働基準を知らないのを良いことにブラックな扱いをしているなんてことは無いはずだ。
「にしても森が近いんだな」
場所は森のど真ん中というよりは森から少し外れたところにある平原だった。近くには川と池がある、自然豊かな場所だった。
森の方は……うん? なんだか知らない木が生えている。まあ俺も木に詳しい訳ではないから知らないのもあるだろうけど。そういう感じじゃない気が……。
「日本にもこんな景色あるんだなぁって思うよね」
「義姉さんが言うかそれ」
「まあ異世界から木を移植したりしてるから見た目違って当たり前なんだけど」
「何やってんだアンタ?!」
この人なんてことしてんだ。っていうかどうやったんだそれ。
「まあまあ。落ち着いて。いやね? エルフ達がこっちの木もいいけど故郷の木の方が良いっていう物だから、シュエちゃんに頼んでちょっとずつこっちに移植したんだよね」
「シュエリアか……まあコイツなら転移とかでちょちょいっとやれんのかな」
「ですわ」
何故か褒められたつもりなのか、ドヤ顔で胸を張るシュエリア。別に褒めてないが。
「それで~この風景~なん~ですね~」
「何か妙に落ち着くなと思ったらそういうことだったのねぇ」
風景に見惚れるトモリさんとエルフならではの感想を漏らすアシェ。
「さ、それじゃあ早速テント設営から始めよっか!」
義姉さんの言葉に従って皆がテント設営の為の準備を始める。
俺達のキャンプはまだ始まったばかりだ! ……という感じで続く。
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次回更新は翌週の土曜日21:00までを予定しております。
ちなみに今回は久しぶりに次週に続きます。




