表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
153/266

おめでたですわ?

「もーういーくつねーるーとー」

「なんでこの時期にその歌を歌い出した」

 いつも通りの休日、昼間から皆で一緒にだらだらしていると、シュエリアがふいに歌い出した。

「ねーるーと~、二周~年~」

「何の話だ」

「この作品の話ですわ」

「マジか」

 もうこの作品二年になるのか、このノリが、この……この無駄話が。

「初めの頃から読んでる人が居たらビックリな年月ですわ。二年間これ読んでるってそうとう暇人ですわよ」

「とんでもなく失礼な事言うなお前」

 そこは二年間も読んでくれていることに感謝すべきだと思う俺である。シュエリアはなんか違うみたいだが。

「きっとわたくしみたいな奴ですわよ」

「暇人ってことじゃねぇか。失礼な」

 これじゃあ結局暇人扱いから何も変わっていない。

「世の中暇で暇で仕方ない。そんな人間の一時の楽しみで在れたら光栄ですわね」

「急に良いこと言い出したな」

「メインヒロイン兼主人公として当然ですわ」

「え、俺の立場は?」

「一応語り手兼サブ主人公?」

「一応な上にサブなのか」

「わたくしがメインだから仕方ないですわ」

「さよですか」

「さよですわ」

 まあ別に一応でもサブでもいいが。コイツは相変わらずの自信家拗らせてんな。

「それで、まあ。二千二十二年六月二十八日をもって二周年記念ということで……せっかくだからおめでたい話でもしようかと思ってみましたわ」

「思ってみちゃったか」

 つまり今日はそういう話で暇つぶしをしたいと言う事だろう。

「で、無いんですの? おめでたい話」

「アシェの頭」

「あー」

「あー。じゃないわよ! 失礼ねアンタら!!」

「ふっ、おめでたい奴ですわ」

「何が?! 今の何がおめでたかったの?!」

「ふっ、おめでたい奴だ」

「アンタらそれ言いたいだけよね?!」

 憤慨するアシェだが、いやだって、いきなりめでたい話しろって言われてもな。

「こういう時は鯛の話でもしとけばいいでしょ」

「おめで鯛ってか」

「そうよ。そんなんでいいでしょ」

「アシェの頭は鯛と」

「まず私から離れてくれない?!」

「別にくっ付いてないぞ」

「思考がよ! 阿保か!!」

「おおぅ」

 まさかアシェに阿保かとツッコまれる日が来るとは……。

「まあ鯛は置いとくとしても、アイネって可愛くね?」

「唐突に何言い出すのこの馬鹿は」

「頭おめでたいんですわ」

「違うわ。分かんねぇかな」

 俺は「めでたい話」ならぬ「愛でたい話」をしてみたつもりだったのだが。

「めでたいと愛でたいを掛けたつもりだったんだけど?」

「やっぱりおめでたい奴ですわ」

「ふっ、おめでたい奴ね」

「お前らそれ言いたいだけだろ」

 どうやら愛でたい話は駄目なようだ。アイネ可愛いのに。

「でも愛でたいと言えばやっぱり私っ、猫だと思うのですっ」

「まあ、愛玩動物ですものねえ」

「何故でしょう、自分から言い出したのに動物扱いに若干不服な自分がいますっ」

「まあアイネは人であり猫だからな……難しいよな」

 人の部分と猫の部分、両方あってアイネなので動物と言い切られると微妙な気持ちになるのかもしれない。

「そういえ~ば~めでたい~話と言え~ば~」

「トモリさん?」

 なにやらおめでたい話を思いついたらしいトモリさん。なんだろう、大丈夫かな。

「スタバは~二千二十一年の三月で~創業五十周~年だったそうな~おめでとうござ~いま~す~?」

「今年じゃないんですね、去年の話ですねそれ」

 試しにググってみたが創業が千九百七十一年だそうだ。すげぇ歴史あるチェーン店だったようだ。初めて知った。

「去年は~おめでた~?」

「そうですね。というかトモリさんよくそんなこと知ってましたね」

「好きな~ので~」

「好きな人でも知らないと思いますよ……」

 ていうかもう既におめでたい話から若干ズレ始めてる気がする。

「おめでたい話がスタバの知識の話に変わりかけてますわね」

「だな、他にめでたいって言うと……新年とか?」

「あけおめですわね。流石に百を超えた年月生きてると今更一年くらいそんなにめでたいか。そう思ってしまいますわね」

「まあ俺ら不老不死になっちゃったしなあ」

 サザエさん時空でもないのに一生このままなのだ。新年とか言われても徐々に何ともなくなりそうで怖いな。

「でも今年もよろしくはしたいですわね?」

「まあ、毎年よろしくしたいよな。何せ不老だから一生の付き合いだし」

「ですわねぇ」

 そう言いながら体を俺に預けて肩に頭を置くシュエリア。

「まあアンタらは年中イチャ付いてて飽きないくらいだから大丈夫でしょ」

「何か言われ様が酷い気もするがまあ、いいや」

「ですわねぇ」

「くっ、このバカップルめ」

 俺とシュエリア的には自然体なんだけど、どうやらアシェにはイチャ付いて居るように見えるらしい。

「他におめでたい物とか無いんですの?」

「うん? そうだなあ。鏡餅とか?」

「あれって何なんですの」

 シュエリアの疑問ももっともだ。あれの存在意義知ってる奴なんて最近じゃ稀なんじゃないだろうか。

「縁起物の一つだよ。日と月を表してると言われてたり、幸福と財産を表して縁起がいいともされている物だな」

「そういえば縁起物と言えば正月にはそういうの多いですわよね?」

「そうだな。門松なんかもそうだ。松竹梅と縁起物を合わせた縁起物だしな」

「なんでそれが縁起良いのかは聞いたら長くなりそうですわね」

「そうでもないが。ググった方が早い」

 人の口から説明するよりパッとググった方が早いことって意外とあると思う。

「ふうん、まあ大体わかりましたわ。正月は縁起物がいっぱいでおめでたいですわね?」

「だな」

 まあ、全然正月の季節じゃないけど。

「あ、そういえば赤飯とかもおめでたい奴よね?」

「おめでた~」

「まあそうだな」

 アレはなんで赤飯なんだったか。えっと?

「赤色に邪気を払う力が……云々かんぬん。ふむなるほど」

「あ、赤飯と言えばですわ」

「うん? なんだ?」

 赤飯で思い付くのってなんだ。

「わたくし、妊娠――」

「マジでか?!」

「――してたらいいなぁと思う事がありますわ。子供、暫くはいいかなと思っていたんだけれど、案外欲しくなってきましたわ」

「お、おう」

 ビックリした、えらく心臓に悪かった。

 いや、そうなるようなことは覚悟したうえでしている訳だが、いきなりこんな無駄話にぶっこまれたら誰だって心臓に悪いはずだ。

「お前、もうちょっとこう、相手の気持ちとか考えような」

「え、わたくしそんな酷いこと言ってないですわよ……?」

「まあ、そうだけど」

 精神的にビックリするので止めて欲しいものだ。

「それにしてもユウキ」

「何だシュエリア」

「お腹すきましたわ」

「そんな気はしてた」

 鯛に鏡餅、赤飯と食い物の話ばかり出て、腹が減ったんだろう。

 まあ、飯テロみたいなもんだ、全然違う気もするが。

「じゃあ今回はこれで」

「ですわ。飯はよ」

「はいはいはい」

 そんなわけで。

 俺達の物語二周年の無駄話はいつも通り幕を閉じたのだった。


ご読了ありがとうございました!

感想、評価、ブックマーク等頂けますと励みになります!!

次回更新は来週日曜日21:00までを予定しております。


※2022年6月26日。更新時間を変更致しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ