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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
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怪談ですわ

「怪談って不思議ですわよねぇ」

「何が」

 いつも通りの日常。昼も過ぎて幾分かした頃、シュエリアが唐突に変なことを言い出した。

「必ず『○○とでも言うのだろうか』で締める辺りが不思議ですわ」

「不思議に思う所そこかよ。っていうか必ずでは無いだろ」

 かなりありがちなだけで、必ずではない、どっちかと言えばあるある程度だ。

「せめて怪談の内容に興味持てよ」

「ぶっちゃけどれも似たり寄ったりですわよね」

「ぶっちゃけ過ぎだ」

 正直言うと確かにどれも似たり寄ったりだ。イマドキでは余りに慣れ過ぎて下手したらヤ〇ザや顕〇会に絡まれた話の方が怖いまである。

「そんなわけで怪談をしたいと思いますわ」

「するのか今の流れで」

 怪談なんて似たり寄ったりって話はどこ行った。

 さも怪談なんてつまらないというような流れだったのに。

「という事で全員集めますわよ」

「はいはい」

 俺の膝上で寝てるアイネ以外のメンバーを招集するところからスタートだ。

 まあ、ラ〇ン一つで簡単に呼べるわけだが。

「で、怪談するのよね」

「ですわ」

「たの~しみで~す~」

 なんだか乗り気なトモリさんだが、怪談に淫魔とは言えリアル怪談キャラが居ていいのかと思うのは俺だけだろうか。

「まずは誰から聞こうかしら」

「では~わたしか~ら~」

「乗り気ですねトモリさん」

 なんだかとても乗り気なトモリさん、一番手を行こうとは勇気がある。

 そもそも怪談話、トモリさん持ってるんだろうか。

「これは~体験談~なんです~が~」

「魔王のリアル体験談」

 魔王が怪談話をリアルにするってどういうことだろう。なんで魔王なのに怪談に遭遇してるんだ。魔王なのに。

「これは~最近の~話~なので~すが~」

「最近なんだ」

 魔界であったとか、そういう話ではないのか。

「ここからは~……よし。ハキハキ喋りますね」

「あ、はい」

 まあ語るのに今の口調のままじゃだらっとするわな。

「スター〇ックスに行こうと思って家を出たのですが、ふとお散歩も兼ねてみようかなと思ったのです」

「ほうほう」

「それで知らない道をゆったり歩いていると、当然知らない場所ですから、知らない場所に知らない階段とかもある訳です」

「まあ、そうなりますか」

 いくらこの辺が地元でもいつも通らない道にはそう詳しくはないだろう。

「それで、とりあえずその階段を上ってみることにしたのですが、なんだか足取りが重く、変だなぁと思いながら登るわけです」

「お、おぉ、それで?」

「はい。階段を上って、上って。ようやく上まで付いた時に、ふと気になって振り向いたんです。そしたら……」

「そしたら……?」

「階段が凄く急で、上り難かったんです」

「…………うん?」

 おや、これは?

「いやあ、あれは上り難いのでもっと緩やかにして欲しいです」

「天然か!!」

 これ怪談じゃなくて階段の話じゃないか。

「駄目でしたか?」

「途中までは思ったより良かったんですけどね!」

「オチが付いたと思ったのですが」

「ついたけども!!」

 ギャグ路線でオチつけてどうすんだ……怪談だろこれ。

「そういうのなら私もあるわよ」

「アシェか……大丈夫だろうな?」

「任せて。これはこっちの世界に来て直ぐの話なんだけどね?」

 任せろと言って話し始めたアシェだが、大丈夫だろうか、嫌な予感しかしないのだが。

「買い物に出かけてあるデパートに入ったんだけど」

「まさかと思うがエスカレーターを逆に移動してて中々前に進まなかったとか言わないよな」

「何でわかったのよ!?」

「お前が阿保だからだよ!!」

 異世界人ホントこんなのばっかりか、怪談というか階段の話しかしてねぇじゃねぇか。

「任せてって言った段階で不安感で先読み出来たわ」

「トモリの後だから行けると思ったんだけど……」

「阿保過ぎる……」

 階段の話の後に更に階段の話とか、オチと言うか流れとして読み易いわ。先読み容易だわ。

「まあ怪談話なんて普通持ってないよな」

「ですわねぇ」

「そうですね、私も会談の話ならあるんですけどっ、サミットってご存じですかっ?」

「ご存じだけどそれ首脳会談だから。怪談違いだからな」

「ではシンポジウムはどうでしょうっ?」

「討論会な。会談っちゃあ会談かもしれないけど怪談じゃあないから」

「怖いですよ猫の会談っ、基本的に発情期なんかは何処見てもシてる猫しかいないので恐怖ですっ」

「確かに怖そうだけど!」

 人の絵面にしたらちょっとだけ怖いかも知れない。知れないが……。

「そうか、俺らの今してるのは怪談の会談ってか」

「ユウキ、つまらないですわよ」

「分かってるよ……」

 なんとなく言ってみただけだ、面白いとは思ってない。

「そもそも言い出しっぺのシュエリアに怖いモノってあるのか?」

「ありますわよ」

「マジか?」

 さて、ホントかウソか、コイツに怖いモノなんて無さそうな気がするんだが。

「さて……題して、饅頭怖い」

「語り口からアウトだよ!!」

「駄目ですの?」

「駄目ですねぇ!!」

 なんでコイツこれを怪談で行けると思ったんだろう。

「怖い物がいっぱい出て来る話ですわよ?」

「それ嘘だから、本当は全然怖くないから」

「ここらで一杯お茶が怖いですわ」

「オチ言っちゃったよ! この話のオチもう言っちゃったよ!」

「じゃあもう生きてる人間が一番怖いですわ」

「哲学みたいなこと言い出したな」

「でもやっぱりビーフシチューが怖いですわ」

「食いたいだけだよなぁ、それ!」

「もちろんお茶も怖いですわよ? 特に紅茶はダメですわ」

「ティーカップ差し向けながらいう事かそれ?!」

 これもう単なる催促でしかないよね。

「仕方ないですわねぇ。じゃあ行きますわよ、とっておきの」

「とっておきの?」

 なんか嫌な予感しかしないんだけど。

「痴漢冤罪が一番怖いですわ」

「確かにとびきり怖いけどな!!」

 怖いの意味が違いすぎやしないか。

「つまり生きてる人間が一番怖いのですわ。怪談しかり、いつも恐怖の元凶は人間なのですわ」

「知ったようなこと言い出したなぁ……」

 にしても、結局怪談、関係ないなこの話。

「そんなわけでユウキこの話にはオチを付けたいと思いますわ」

「ん?」

 いつもはオチもないだらっとした無駄話なのに、どうしたんだか。

「ここらで一杯、ビーフシチューが怖いですわ」

「結局それがオチかよ!」

 こうして、俺達の怪談ならぬ会談(?)は下らないオチで終わったのであった。


ご読了ありがとうございました!

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次回更新は来週金曜日18:00までを予定しております。

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