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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
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梅雨の時期? ですわ

「暇ですわ……そしてジメジメしてますわ」

「そうだな」

 今年ももう梅雨の時期だ。毎日のように雨が降って湿り気が強い。

「梅雨入りって奴だな。明けるのはまだ先だろう」

「梅雨入りねぇ……梅雨って何ですの?」

「へ?」

 梅雨って何って……そりゃあ、アレだ、なんだ。

「雨が……たくさん降る時期……だよ」

「めっちゃ自信なさげにたどたどしく来ましたわね」

 実際梅雨ってなんだって聞かれたら「雨が降る時期」くらいにしか思っていなかったのでいざ「何か」と問われれば正確なところはわからない。

 なので。

「教えてグー〇ル先生」

「出ましたわね」

 わからないことがあったらグー〇ル先生に訊くのが手っ取り早いのだ。

「ザックリ言うと五月から七月に掛けて曇りや雨の日が多い時期の事で雨期の一種。らしいぞ」

「へぇ。ナメクジ注意報の季節ですのね」

「唐突に変なボケかましてくるな」

 確かにこの時期多いけど、ナメクジ。

 梅雨と言えば紫陽花やナメクジの季節な感じもある、確かにある。

「ふむ……ナメクジと言えば」

「ユウキですわね」

「なんでだよ!」

「ナメクジ野郎って意味ですわ」

「何で唐突にディスられてんの俺?!」

 何故か嫁に急にディスられることになった俺だが、何かしただろうか。

「クソ雑魚ナメクジって奴ですわ」

「確かにお前から見たらそうだろうけども!」

 それだと人類全体ナメクジなんだけど。

「で、冗談はさておき、ナメクジがどうかしたんですの?」

「いや、単に寄生虫とか怖いよなぁって」

「あぁ……テレビとかでやってますわよね、ナメクジが這った野菜とかそのまま食べて寄生虫が体内に……みたいな」

「そうそう」

 まあ日本でそんなことは訊いた覚えがないが、ナメクジはあれで結構怖い生き物だ。

「そう考えるとナメクジって別に雑魚じゃないですわね。モンスターとかにしたら強そうですわ」

「何でモンスターにした?」

「エ〇ゲならありですわね」

「まあそうだな、そうだけど」

 モンスターにしたら強そうってなんだろうか。コイツ生物をモンスターに変えたりもできるのか……?

「ハッ、今気づいたのだけれど!」

「うん? なんだ」

 なんかシュエリアがショックを受けたような、何かマズいことでもあったような表情でこちらを見て来る。

「わたくし、相合傘したことないですわ!! 嫁なのに!!」

「うっわ、すっごくどうでもいい」

 この阿保は相変わらずの阿保だった。なんつうどうでもいいことを真顔で言うのだろう。

「どうでも良くないですわ。ラブラブイベントですわ」

「なんだそれは」

 なんとなく意味はわかるが、つい何だと問いたくなってしまった。

「何って、イチャイチャする口実ですわね」

「そう聞くとなんか……なんだろう」

 言葉にしにくい何かこう、口実って言うのが引っかかるのか微妙な気持ちになってしまった。

「口実なんて無くてもイチャイチャすればいいし、ていうかしてるし、相合傘したいからは口実というより目的の方では」

「梅雨で雨ばっかりだから相合傘は仕方ないですわ」

「傘二本使えばいいだけ……」

「仕方ないですわ」

「お、おう」

 なんか圧が凄いので、仕方ないってことにしておこうと思った。

「じゃあ早速外に出ますわよ!」

「はいはい」

 もうこうなっては逆らっても仕方が無いし、敢えて逆らう理由もないので流されることにする。

「にゃんだかシュエリアさんが悪巧みしている気配がしますっ!」

「しま~す~」

「くっ、面倒なタイミングで来ますわね」

「本当に悪巧みしてる奴の言葉だなそれ」

「なんか悪巧みって聞こえたけど……呼んだ?」

「呼んでねぇ」

 悪巧みに反応してアシェまで来た。どうなるんだこれ。

「わたくしはただユウキと相合傘をしようとしていただけですわ」

「なら私も兄さまとしますっ」

「わたし~も~」

「呼ばれたからには私もやるわよ」

「だから呼んでないって」

 コイツはコイツでなんで呼ばれたと思ってんだ。

「とにかく、外出ますわよ」

「お、おう」

 とは言えこの人数、相合傘とかいうのからもはやかけ離れた何かになる気しかしないんだが。

「とりあえずユウキが傘を持って」

「はいよ」

「で、わたくしが左隣りですわ」

「ふむふむ」

 まあここまでは予想通り、この後どうするかが問題だ。

 もう今の時点で定員オーバーでギリギリだ。これ以上は流石に無理だろう。

「トモリはユウキの影に入って、アイネは猫の姿で頭の上、アシェはユウキの背中にしっかりくっ付くんですわ」

「そんな手が」

 それならギリギリ行けるか……しかしどうなんだろう、主に影になるトモリさんと猫になるアイネ。相合傘と言えるだろうか?

「で、やってみたわけだが、どうだ」

「動き難いわね」

「そうですわね、歩調を合わせないといけないですわ」

「俺とアシェはそれ以前の問題だと思うが」

 抱き着かれながら歩くって滅茶苦茶メンドイ。ただただ動き難いのだ。

「アイネはどうだ?」

「みゃ~ん」

「なんか機嫌よさそうだから良いみたいだな」

 それでいいのかと妹に問いたいが、返って来るのは鳴き声なので何を言っているかまではわからない。

「トモリさんは大丈夫なんですか、これで」

「微妙~か~と~?」

「ですよね……」

 アイネはまだ傘に一緒に入っているがトモリさんに至っては能力で俺の影に入ってるだけだ。今の所、相合傘から一番遠い。

「じゃあ今度は傘を増やして範囲を広げると言う方法をとりますわ」

「ふむ?」

 そんなわけで傘を四本程増やし、再チャレンジ。

「フォーメーションを組みますわ」

 そう言うとシュエリアは傘を持ったアイネ達を四角になるように並べて、最後に俺を真ん中に連れてきて傘をささせた。

「これなら濡れずに全員近場ですわ」

「いや、駄目だろこれ……」

 これじゃあただ単に俺とシュエリアが相合傘して他の四人は近くを囲んでるだけだ。

 相合傘というにはちょっと違う。

「これ、まったく相合傘じゃないわよね。その他四人居るだけよね?」

「そ、そうですわね」

「駄目じゃん」

 というかこの人数で相合傘は無理がある。

 ていうか更に言えばこの人数で相合傘する必要ある? 答えはノーだろうが、どうせ暇つぶしなのでそんなことを一々言ったりはしないが。

「こうなったら実用性皆無のアレで行くしかないですわね」

「アレ?」

 何か策があるらしい(実用性無いらしいが)シュエリアの言うとおりにまた陣形を組む。

「わたくしが左隣、アイネが頭の上、トモリがユウキの前からハグしてアシェが背中からですわ」

「な、なるほど……これならまあ、全員入れるが……」

 かなりギリギリ収まってる感じなので、トモリさんやアシェは背中濡れてるし、そもそもシュエリアと俺だけでもお互い肩は濡れている状態だ。

 濡れてないのは俺の頭上のアイネくらいだ。

「これ、動けなくね」

「動けないですわよ。実用性無いですもの」

「そもそも実用性を求めるなら全員傘させばいいのよ」

「それもそうだが」

 こうなって来るともう、別に相合傘じゃなくてもこういう距離感だったらなんでもいいんじゃねぇかと思えてくるくらい情緒がない。

「相合傘のシュチュエーションとしてこれは無いだろう」

「ですわねぇ」

「まあ分かり切ってたわよね、この人数でやったらこうなるって」

「です~ね~」

「みゃ~」

 どうやら全員理解はしていたらしく、この実用性と相合傘っぽくない状態にも特に気にした様子はない。

「というか、濡れたから着替えたいわ」

「ですわね?」

「です~」

 どうやらもう相合傘は良いらしい。結局相合傘特有の雰囲気とかドキドキとか、まったく皆無だったな。

「ユウキは何か暖かい食事を用意して欲しいですわ」

「ん、もう昼か」

 時間を見るともうそんな時間だった。無駄話と無駄行動をしていただけなのに時間の流れが相変わらず早い。

「それじゃこれで相合傘は終わりだな」

「良い暇つぶしになりましたわ」

「さよで」

「さよですわ」

 という訳で、今日も今日とて下らない会話と行動で俺達の暇は潰されて行くのであった。


ご読了ありがとうございました!

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次回更新は来週金曜日18:00までを予定しております。

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